猫のノミ・ダニによる皮膚病とは?おもな症状と予防方法、治療方法を解説

猫のノミ・ダニによる皮膚病とは?おもな症状と予防方法、治療方法を解説
公開日:2023年11月27日

「完全室内での飼育だからノミ・マダニの予防は不要なのでは?」とお考えの飼い主さんも多いかと思います。しかし、みつかってから慌てていては遅いのがノミ・マダニ。愛猫を病気から守るためにはしっかりとした予防が大切です。この記事では、ノミ・マダニがどんなもので、刺されたり寄生されたりしたらどのような病気が引き起こされるのか、予防はどうしたらよいのか、みつけた場合はどう対処するのかをわかりやすく解説します。

完全室内の飼育でもノミ・マダニの予防は大事

ノミ・マダニ予防のお話になると「うちの子は外にでないから」と予防が不要だとお考えの飼い主さんがまだまだいらっしゃいます。しかし、外出した飼い主さんにノミやマダニが付着し、知らず知らずのうちに持ち帰ってしまうこともあります。

もちろん、ノミ・マダニは網戸から侵入してくることもあります。しっかり予防しておくことで、愛猫をノミ・マダニから守りましょう。

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ノミとはどんな生き物?

ピーン、ピョンっと飛んで、みつけても次にどこに行ったかわからなくなるような小さくて茶色い虫がノミです。ノミ取りくしを使っていても、完全に取りきれるものではありません。

ノミは猫の体表で卵を産み、卵はツルツルなので体表から落ちます。落ちた卵が室内でふ化し、幼虫がサナギになり、そのサナギが成虫となって吸血のために猫に寄生します。ノミにとって環境がよいと「卵→幼虫→サナギ→成虫」のサイクルを3週間もあれば完了します。環境が悪くても、サナギの状態で1年ほどはじっと耐えることも可能です。

ノミ取りくしを使ってもノミは完全には取りきれない
ノミ取りくしを使ってもノミは完全には取りきれない

ノミの駆虫は大変!

厄介なことにノミのサナギに効く薬はありません。一度駆虫薬を利用しても、そのときにサナギがいればそのサナギが成虫になるまで駆虫ができないのです。

ノミに寄生された場合には、愛猫への駆虫薬の利用はもちろん、室内への駆虫薬散布を定期的に実施する必要がでてきます。具体的には、ノミの卵が隠れやすいカーペットの処分をはじめ室内の徹底的な掃除が必須になります。家具の隙間などノミは部屋のいたるところに潜みます。大変なことになる前に、しっかり予防しておくことが重要です。

ノミの成虫による吸血は、愛猫だけでなく飼い主さんも対象です。人が被害を受けてから気づくことも少なくありません。人がノミに刺された場合は人の皮膚科を受診しましょう。

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ノミのみつけ方

愛猫にノミが寄生していないかどうか、日々の確認が大切です。愛猫の毛をかき分け、地肌を確認します。黒い点々がないか探してみましょう。

ブラッシングして、この黒い点々が落ちてこないか確認することもおすすめです。疑わしい黒い点々がみつかったら、水でぬらしたティッシュでトントンとなじませてみてください。黒い点々が血でにじんだら、ノミの糞です。ノミは吸血するため、糞に血が含まれています。糞の新鮮さによって赤色~茶色とにじむ血の色が異なることがあります。

ノミをみつけたら動物病院へ!

ノミの成虫は動きが素早いためみつけることは簡単ではありません。糞がみつかればノミがいると考え、すぐに動物病院を受診しましょう。簡単にノミの成虫がみつかる場合は寄生数が多いのだと考え、受診しましょう。

みつけたノミの成虫をつぶす方もまれにいらっしゃいますが、ノミの卵が飛び散ったり、ノミの体内に寄生する瓜実条虫がでてきたりする可能性があります。つぶさず、ガムテーブでの捕獲がおすすめです。

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ノミが原因で起こること

さまざまな病気も、実はノミが原因であることがあります。たとえば、人が猫にかまれたりひっかかれたりした際にリンパ節が腫れたりする「猫ひっかき病」の原因菌であるバルトネラ菌はノミが運んでいます。

ノミアレルギー

ノミに吸血されることで皮膚に強いかゆみが起きるため、ノミの駆虫はもちろん、炎症をおさえる薬が必要になったり、かき壊しによる二次的な細菌感染のケアが必要になったりすることが多いです。

マンションの高層階で暮らしている猫が背中の皮膚炎で受診したところ、ノミアレルギー性皮膚炎であったことがあります。予防が大切です。

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)の寄生

瓜実条虫はノミの体内に潜んでいます。猫が毛づくろいでノミを口にすることで寄生します。猫の肛門まわりに米粒のような白い虫が伸縮運動をしているようでしたら、それは瓜実条虫です。少量の寄生の場合はお尻まわりの違和感程度ですが、寄生数が増えてくると下痢などの消化器症状につながります。

治療の際には内服等による瓜実条虫の駆虫とあわせてノミの駆虫の徹底が大切です。瓜実条虫は人がノミをつぶした際に爪の隙間に入り、食事した際に口に入る場合もある、人獣共通感染症です。

貧血

ノミの成虫は吸血するので、ノミの寄生数が多ければ猫は貧血になってしまいます。治療にはノミの駆虫の徹底と栄養補給が大切です。

もちろん貧血の場合は他に原因がないかもあわせて検査する必要もでてきます。定期的な予防をしっかりしていて、ノミの寄生がない場合は貧血の原因からノミを除外することができるので、より早い診断にもつながります。こうした点からも、予防が大切です。

毛艶の低下

ノミアレルギー性皮膚炎や貧血など、重症ではなくとも、毛艶の低下や触り心地の変化で、異変に気づく飼い主さんもいらっしゃいます。予防にあわせて日頃から愛猫の全身を触ることができる関係性を作っておくことも大切です。

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マダニとはどんな生き物?

ほこりの中に紛れているような、目にみえないダニとは異なる、マダニについてお話しします。

マダニは目にみえます。愛猫にマダニが食いついていた場合は慌てて抜かずに、速やかに動物病院を受診しましょう。下手に抜くと、マダニの頭部の一部が愛猫の皮膚の中に残ってしまい、炎症を起こすことがあります。イボのようなものができたと受診されたところ、マダニだったというケースも多いです。
「卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニ」と一段階成長するたびに吸血が必要です。吸血が終わると自然と抜け落ちます。

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マダニのみつけ方

マダニは、草むらから体温のある生き物のへ飛び移ります。ノミと同様に飼い主さんの靴下などに付着してくることがありますので気をつけましょう。

吸血前のマダニは小さいのでみつかりにくいです。吸血して身体が大きくなってきたタイミングでみつかることが多いです。猫の目元や脇の下など、比較的柔らかいところに寄生しがちですが、全身どこにでも寄生します。日頃から愛猫の全身チェックをする習慣が大切です。耳の中も要チェックです。

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マダニが原因で起こること

ノミと同様に、マダニによる咬傷や吸血が原因で猫がアレルギー性皮膚炎や貧血になることがあります。マダニによって媒介されたヘモプラズマ症によって貧血になることもあります。マダニはさまざまな病原菌を媒介するため、長時間吸血されないように予防を徹底しておくことが大切です。

マダニによって媒介される感染症

人についていたマダニが猫を吸血することもあれば、猫についていたマダニが人を吸血することもありえます。マダニに人がかまれることで、発熱や頭痛などを起こす日本紅斑熱、野兎病、Q熱、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染する場合があります。

マダニに猫がかまれることで感染した原因菌やウイルスが、今度は猫から飼い主さんへ感染するケースもあります。とくにSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は近年感染者数が増えています。マダニ対策をしっかり実施することが重要です。あわせて人が倦怠感や発熱で病院を受診する場合、猫を飼育していることを伝えることも大切です。

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他にもいろいろなダニがいる

耳の表面にぼこぼこと丘疹(きゅうしん)が頭~頸部に広がる「ネコショウセンコウヒゼンダニ」、大量の耳垢(黒くて乾燥していることが多い)とかき壊しの原因になる「ネコミミヒゼンダニ」、その他、「ネコニキビダニ」や「ネコツメダニ」などかき壊しをはじめ皮膚病の原因となるダニがさまざまいます。かかりつけの先生の診断と指示のもと、駆虫薬の使用と定期的な診察が必要になります。

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予防が一番大切

「うちの子は大丈夫」「みつかってから駆虫」という考えはとても危険です。予防として定期的に駆虫薬を利用している飼い主さんが増えたことで、外部寄生虫による皮膚炎はかなり減ってきています。
何か皮膚トラブルが起きたときに、しっかりと予防をしている場合は外部寄生虫を原因から除外することができるため、早期治療につながります。

日頃から愛猫を守ってあげることは飼い主さんの重要な役割のひとつです。

動物病院処方の駆虫薬の使用を!

せっかく予防のために駆虫薬を使うのであれば、動物病院で診察を受け、症状にあった薬を動物病院で処方してもらいましょう。

内服が苦手な猫が多いので、滴下タイプの駆虫薬がおすすめです。1ヵ月に1回、製品によっては3ヵ月に1回のものもあります。フィラリアやお腹の虫の駆虫ができるものなど、さまざまな駆虫薬がありますので、かかりつけ医と相談のうえ、愛猫にピッタリの駆虫薬を選びましょう。せっかく予防するのであれば、フィラリア予防もできるものがおすすめです。

動物病院処方の駆除薬がおすすめ
動物病院処方の駆除薬がおすすめ

なかなか受診する機会の少ない猫さんでも、こうして予防の相談をしたり、飼い主さんだけで病院に駆虫薬を購入しに行ったりと、動物病院とのコミュニケーションツールとしても、ノミ・マダニ駆虫薬は大切な役割を担っていると考えています。

この記事が、動物病院へ相談に行ってみるきっかけになればうれしいです。

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ライター情報

獣医師笹尾ささお美香みか(旧姓:濵口)

濵口 美香
所属
猫の診療室モモ 勤務医
略歴
1988年 鹿児島県に生まれる 牛舎と鶏舎がご近所で動物に囲まれて育つ
1991年~2007年 長崎に引っ越し 猫との生活を始める
2007年~2013年 麻布大学獣医学部獣医学科卒 在学中ツシマヤマネコの普及啓発活動に取り組む
2013年~2016年 千葉県の犬猫動物病院にて勤務
2016年 動物保険会社へ転職 動物病院での診察業務・ペットショップの子犬子猫の往診・イベントでの健康相談業務・動物看護専門学校での講師を務める
2017年 子育てに専念
2018年~現在 品川区の猫の診療室モモにて勤務
2022年~Luna spay clinic 開業
資格
獣医師免許、JSFM CATvocate認定プログラム修了

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(掲載開始日:2023年11月27日)
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