犬もがん(癌)になるの?症状、治療法、治療費や気になる原因も解説

犬もがん(癌)になるの?症状、治療法、治療費や気になる原因も解説
公開日:2023年8月30日

最近では、人間と同様に犬もがんに罹患しやすい傾向があります。とくに、高齢になるほど罹患率が高くなっているので、愛犬に「もしものことがあったら...」と心配されている方もいるのではないでしょうか。

犬のがんは人間のがんと同様、早期発見・早期治療が重要になります。早期に対応することにより進行をおさえたり、症状を和らげたりできるほか、適切な治療により治癒する可能性も期待できます。愛犬のがんの罹患に備えるためにも、飼い主が犬のがんの症状や種類、治療費などについて知っておくことが大切です。

この記事では、犬のがんの症状や治療法、治療費のほか、がんを罹患する原因と対策についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

犬のがんとはどんな病気?

犬の死因のトップは、がんといわれています。がんとは、遺伝子異常を持つがん細胞が、細胞分裂により増殖することで罹患する病気です。正常な状態でもがん細胞は毎日発生していますが、健康で若い犬なら病原菌などから身体を守る免疫力が高く、がんを罹患する確率は低いでしょう。しかし、高齢などにより免疫力が低下すると、がん細胞が増殖し、がんを罹患しやすくなります。

がんは早期発見・早期治療により、治癒できる可能性があるだけでなく、進行をおさえたり症状を緩和したりすることができる病気です。日常生活からがんのリスクに備えて、愛犬の健康をサポートしていきましょう。

悪性腫瘍と良性腫瘍の違い

一般的に、「がん」は悪性腫瘍のことをいいます。腫瘍には「悪性」と「良性」がありますが、腫瘍の増殖のスピードが早く、成長にともない周囲の組織を破壊している場合は、悪性腫瘍と診断されることが一般的です。

また、悪性腫瘍は、血液やリンパ液、気道などを通って異なる部位に転移することがあります。転移の範囲が広がると、全身ががんに侵されるだけでなく、治療が終わったがんが再発する可能性も高いとされています。

一方、周囲の組織を圧迫しつつ、ゆっくりと成長する腫瘍は良性腫瘍と診断されることが多いです。良性腫瘍は、転移や再発の可能性が低い傾向にあります。

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犬のがんが疑われる症状とは?

続いて、がんの早期発見につながるチェックポイントをご紹介します。愛犬の様子に異変を感じたり、以下の症状が見られたりしたときは、早めに動物病院で受診してください。

犬のがんを早期発見するためのチェックポイント

以下の症状が見られるときには、
早めに動物病院で受診を
  • 皮膚にしこりがある
  • 呼吸が苦しそうに見える
  • よだれが増えている
  • 食欲が低下している
  • 元気がない
  • 食事量が変わっていないのに体重が低下している
  • お腹が膨らんでいる
  • 嘔吐や下痢、便秘
  • 血尿

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犬のがん(悪性腫瘍)の種類と特徴

犬のがんには、さまざまな種類があり、罹患する部位によって症状や治療法が異なる場合もあります。また、犬種や遺伝によって罹患しやすいがんなどもありますので、それらすべてを把握しておくのは難しいかもしれません。

もしも愛犬に異変やがんの症状が見られる場合は、ご自身で原因を断定して対処しようとせずに、早めに動物病院を受診することが大切です。以下でおもながんの種類と特徴を解説します。

乳腺腫瘍

「乳腺腫瘍」とは、乳腺の組織の一部が腫瘍化し、しこりができる病気です。犬の乳腺は左右に5対あるため、しこりがないか、触って確認してみてください。

乳腺腫瘍は、女性ホルモンの影響を受けて腫瘍化するため、雌犬ではもっとも発生頻度が高いがんとされています。一般的に避妊手術をすることで予防できるといわれており、手術の時期は初回発情前(生後6ヵ月前後)がベストなタイミングのようです。早期治療により治癒の可能性が高くなるため、飼い主が早めに気づくことが大切です。

皮膚がん(メラノーマ)

「皮膚がん(メラノーマ)」は見た目が黒っぽいため、悪性黒色腫とも呼ばれます。顔や口、足などの体表のさまざまな部位にしこりやイボができることで発生します。

また、メラノーマは発生部位により悪性度が異なる点が特徴です。皮膚にできるメラノーマは良性のことが多いものの、生体検査などを実施しなければ判断は困難です。まずは動物病院を受診してください。

一方、口腔内や爪床(爪の付け根)に発生するメラノーマは悪性のものが多いです。リンパ節や肺に転移しやすいため注意が必要です。口腔内にしこりが見られたり、口臭が強いときや、爪をなめていたり、歩きにくそうにしている場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

肥満細胞腫

肥満細胞腫とは、肥満細胞が腫瘍化し、無制限に増殖する病気です。なお、肥満細胞はどの犬にもあり、体が太っている「肥満」とは関係ありません。

皮膚や皮下にしこりができたり、リンパ節や全身に転移したりすることもあります。肥満細胞腫は犬のがんのなかでもとくに多いため、注意が必要です。また、肥満細胞種は、悪性度により3段階のグレードに分類され、数字が大きくなるほど悪性度が高く、転移しやすい特徴を持っています。グレード2、グレード3の場合は手術に加え、状況により抗がん剤治療や放射線治療もおこないます。

無症状のうちにがんを早期に発見することにより、手術治療が有効になることがあります。皮膚にできる肥満細胞腫はいろいろな形があり、見た目からは判断できないため、気になったら早めに動物病院を受診し、病理検査などで悪性度を確認してもらいましょう。

血管肉腫

血管肉腫とは血管内皮に由来する悪性腫瘍のことで、脾臓や心臓などのさまざまな臓器に発生する可能性があり、転移しやすいという特徴があります。また、進行速度が速いため、発見したときには悪性度が高くなっていることも珍しくありません。

血管肉腫は血液を豊富に含むため、罹患すると、少しの衝撃で出血しやすくなります。そのため、大量出血によりショック状態を起こしたり、炎症により周囲の組織と癒着したりすることも少なくありません。手術後、化学療法により余命を延ばせることがありますが、平均的な予後は半年ともいわれています。

リンパ腫

リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球が増殖したものです。肝臓や腎臓、腸、皮膚などさまざまな部位に発生する可能性があります。

リンパ腫は、発生した部位により症状が異なり、多中心型や消化器型、皮膚型など、多岐にわたります。もっとも多いタイプは多中心型です。多中心型の症状としては、元気消失、食欲減退、下痢、呼吸困難、衰弱などが見られることがあります。

治療しない場合、診断から1〜2ヵ月の余命といわれていますが、適切な治療をおこなうと比較的長期の延命を期待できます。

発生リスクの高い犬種は、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、ボクサーなどがあげられますが、すべての犬種で発生する可能性があるため、丁寧な観察とこまめな受診が必要です。

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愛犬ががんにかかってしまった!どんな治療法がある?

愛犬ががんにかかってしまった!どんな治療法がある?

愛犬が万が一がんに罹患してしまった場合、気になるのはその治療です。犬のがんのおもな治療法としては、以下のものがあげられます。

  • 外科療法(手術)
  • 抗がん剤療法
  • 放射線療法
  • 免疫細胞療法

それぞれの特徴などについて説明します。

外科療法(手術)

外科療法は、腫瘍そのものを切除して取り除く手術で、もっとも効果的な治療法のひとつとされています。手術は、腫瘍が小さく、広い範囲に転移していない早期に実施することで、根治(がんを完全に治すこと)できる可能性が高くなります。

しかし、手術には多量出血や正常な臓器の機能低下、喪失などのリスクをともないます。また、腫瘍の位置や悪性度によっては、手術だけでなく抗がん剤治療、放射線治療などもあわせて必要になる場合があります。

抗がん剤療法

抗がん剤治療とは、抗がん剤を注射や内服で全身に投与する治療法です。手術では取り切れなかった腫瘍や、リンパ節などに転移した腫瘍などを治療するときに用いられます。なお、治療の頻度は、犬の体重や薬剤の種類によっても異なります。

抗がん剤治療では、腫瘍を完治させることは難しいですが、がん細胞の増殖抑制や腫瘍の縮小、成長を遅らせるなどの効果が期待できる治療法です。がん細胞以外の細胞にも抗がん剤が作用するため、正常な細胞もダメージを受けるリスクがあります。

一般的に、抗がん剤治療は完治ではなく生活水準の維持を目標として実施される傾向にあります。強い副反応が出るケースは多くはありませんが、腫瘍の種類により抗がん剤治療が、効きやすいがんと効きにくいがんがある点に注意が必要です。

放射線療法

放射線療法とは、X線という放射線の一種を使って撮影する検査で、がんの根治あるいは細胞増殖抑制を目的としておこなわれる治療法です。放射線治療は、がんを完全に治すことを目指す「根治」と、犬が感じる痛みや苦痛症状を和らげる「緩和」があり幅広く適用されます。

しかし、放射線治療のみではがんの治癒は難しいとされています。また、放射線を照射したがん周囲の正常細胞も傷害され、後遺症がのこることもあるため、注意が必要です。

免疫細胞療法

免疫細胞療法とは、自己の持つ免疫力(自然治癒力)を高めてがん細胞の増殖や再発をおさえることを目的とした治療法です。おもな免疫細胞療法の種類と特徴については、以下をご覧ください。

免疫細胞療法の種類と特徴

免疫細胞療法の種類 特徴 メリット デメリット
活性化リンパ球(CAT)療法
  • がん細胞を攻撃するTリンパ球を増殖・活性化させる治療方法
  • 微小ながんに対して効果があると考えられ、術後の再発予防や延命を目的とした使用に効果的
  • 体への負担が少ない
  • 副作用がほとんどない
  • 採血から投与までに2週間前後かかる
樹状細胞(DC)療法
  • Tリンパ球にがん細胞の情報を認識させ、がん細胞への攻撃力を高めることができる治療方法
  • 腫瘍を縮小させたり、進行を食い止めたりする目的で使用される
  • 体への負担が少ない
  • 副作用がほとんどない
  • 採血から投与までに1〜2週間前後かかる
脂肪幹細胞(ADSC)療法
  • 損傷を受けた組織の修復・再生を促す脂肪幹細胞を増殖して体内に投与する治療方法
  • 失われた臓器・器官の機能回復を促す効果が期待できる
  • 体への負担が少ない
  • 増殖能が高い
  • 採取から投与まで2週間前後かかる
キラーセル(KC)療法
  • がん細胞の殺傷能力の高いキラー細胞を増殖・活性化させて体内に投与する治療方法
  • がん細胞への高い攻撃力が期待でき、初期のがんや術後の再発予防に効果的
  • 全身に散らばったがん細胞にも働きかける
  • 副作用がほとんどない
  • 採血から投与までに2週間前後かかる

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犬のがんの治療にはいくらくらいの費用がかかる?

がん治療の種類によって治療費の目安は変わります。また、麻酔前検査を実施するか、入院は必要かなどによっても異なります。目安となる費用は以下をご覧ください。

治療にかかる費用の目安

がん治療の種類 治療費の目安
手術(乳腺腫瘍) 1回:10万~20万円
抗がん剤治療 1ヵ月:5万~10万円
放射線治療 全体:50万~100万円
(照射回数により金額は異なります)
免疫細胞療法 1回:6万円~

乳腺手術の場合は部分切除、片側切除、全切除の順で、手術金額も大きくなります。上の金額はあくまで目安のため、詳しくはかかりつけの動物病院などでご確認ください。

犬の治療費は、任意加入のペット保険に加入していない限り、全額自己負担となります。治療が長引くと高額になることもあるため、ペット保険に加入して、治療費に備えておくことが大切です。

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犬のがんの原因とがんを防ぐ対策

犬のがんの原因とがんを防ぐ対策

がんは犬種を問わず罹患する可能性がある病気です。原因不明なこともありますが、運動不足や栄養価の低い食事、日々のストレスなどの生活習慣や老化などが原因で罹患することもあります。がんを罹患するおもな原因と対策について見ていきましょう。

生活習慣(運動不足・食事・ストレス)

犬は人間と同じように、健康的でストレスの少ない生活習慣を送ることで、病気を予防できます。一方で、運動不足による肥満やストレスを抱えている状態では、がんをはじめとするさまざまな病気に罹患しやすくなります。また、食生活が原因で免疫力の低下が起こる可能性もあります。

そのため、飼い主は散歩やドッグランで適度な運動をさせることや、ストレスを与えないために環境を急に変えないこと、正しい食生活を心がけることが大切です。

たとえば、穀物に豊富に含まれている果糖やブドウ糖などの単糖類は、がん細胞の栄養になりやすいといわれています。一般的なドックフードは、主原料に穀類が使われていて、炭水化物を多く含んでいるため、できるだけ控えたほうがよいでしょう。そのため、脂質が少なくタンパク質が豊富な鶏ささみなどが含まれているドッグフードなどを与えることを意識しましょう。

ほかにも、おやつ・食事の量に気をつけることでも、痩せ過ぎや太り過ぎを回避し、病気に罹患しにくい健康な体にすることができます。

老化

犬も人間と同様に、高齢になると老化で身体能力が低下するため、運動を嫌がるようになります。その結果、体力が落ちて免疫力が低下して、病気への抵抗力が落ちていきます。免疫力が下がると、がんなどの病気に罹患しやすくなるため注意が必要です。

がん予防の対策として、運動不足の解消をすることはもちろん、ブロッコリーやキャベツなどの野菜を与えるなど、食事面での対策も効果的です。ブロッコリーやキャベツなどの野菜には、老化の原因のひとつともいわれる活性酸素の働きをおさえる成分が含まれています。抗酸化成分を含む食材の摂取が不十分なときは、獣医師に相談したうえで、サプリメントの補給も検討してみてください。

遺伝

ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーなどの大型犬は、比較的がんになりやすいといわれています。また、親をはじめとする先祖ががんで亡くなっているときも、注意が必要です。

犬種や家系的にがんに罹患しやすいと考えられるときは、早期発見・早期治療できるように定期的に検診を受けるようにしましょう。

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犬のがんに備える保険を選ぶなら比較サイトの利用がおすすめ

犬のがん治療は高額になることもあります。必要な治療を必要なタイミングで受けるためにも、ペット保険の加入を検討しましょう。ペット保険は数多くあり、補償の内容や保険金の請求方法、給付割合なども保険会社によって異なります。ぜひペット保険の比較サービスを利用して、サービスや内容を見比べてみてください。

また、ペット保険の比較サービスでは、保険料の事前見積もりができます。愛犬の病気に備えるためにも、補償内容や保険料をしっかりと比較してから選びましょう。

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まとめ

犬も人間と同じく、がんを罹患する可能性があります。早期発見と早期治療により、悪化をおさえられる可能性があるだけでなく、治癒を期待できる場合もできます。日頃の愛犬とのスキンシップで身体をチェックしたり、定期的に健康診断を受けたりして、早期発見できるようにしておきましょう。

愛犬ががんを罹患したときに適切な治療を受けさせるためにも、ペット保険に加入して治療費に備えておくことも大切です。ぜひペット保険の比較サービスで補償内容や保険料を比較して、愛犬に合った保険を見つけてください。

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監修者情報

獣医師嘉本よしもと浩之ひろゆき

嘉本 浩之

さいたま動物病院の院長。麻布大学卒業後、獣医師免許を取得。ペッツネクスト株式会社代表取締役ほか、獣医神経病学会、日本獣医皮膚科学会など複数の学会に所属。メディアにも多数出演。

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  • このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
  • 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。

(掲載開始日:2023年8月30日)
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