犬のノミ・ダニによる皮膚病とは?おもな症状と予防方法、治療方法を解説

犬のノミ・ダニによる皮膚病とは?おもな症状と予防方法、治療方法を解説
公開日:2023年11月27日

ノミやダニが犬に寄生すると、体の表面を動いたり、皮膚をかむため、かゆみがでたり赤みが引き起こされたりします。このような皮膚への症状以外にも、感染症を媒介し、さまざまな病気の原因となるため、大切な愛犬にノミを寄生させないことがとても大切です。この記事では、ノミ・ダニが寄生するとどのような症状がでるのか、どのような病気を引き起こすのかを解説します。予防方法や治療方法を知り、しっかりと対策をしましょう。

ノミってどんな生き物?

ノミは気温が13度程度になると活性化する
ノミは気温が13度程度になると活性化する

ノミは吸血によって栄養を摂取する節足動物です。体長は2mm程度で、ゴマのように見える生き物。羽はなく、後ろ足でジャンプをすることで、犬の体表に飛び乗り寄生します。

その後すぐに、吸血を行い、産卵します。卵は地面に落ち、3~4日で孵化し、幼虫となり、さなぎになったあと、好適な条件がそろうと、羽化し、成虫となり、ふたたび犬の体表へ飛び乗るというライフサイクルを繰り返します。このライフサイクルは、最短で約2週間、最長で約6か月と、環境により変化し、環境の温度が13度で活性化します。

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ノミによって引き起こされる病気は?

ノミに寄生されると、以下のような病気が引き起こされる可能性があります。

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミが犬を吸血した際に、犬の体内に侵入したノミの唾液に対してアレルギー反応を引き起こす病気を、ノミアレルギー性皮膚炎といいます。

症状は、激しいかゆみや赤い発疹で、場合によっては寝られないくらいのかゆみになります。犬自身がなめたり、ひっかくことで、脱毛や皮膚に傷がつき出血したりすることもあります。食物アレルギーや犬アトピー皮膚炎も似たようなかゆみを示すため、精査が必要になります。

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)

瓜実条虫が寄生したノミを犬が飲み込むことによってお腹の中で、瓜の形をした片節(へんせつ)が多数つながっている50㎝~60㎝の細長い条虫に成長します。

いわゆる「さなだ虫」と呼ばれる虫で、寄生されると下痢などの消化器症状や、栄養不良に陥ります。糞便には、米粒のような古い片節が排泄され、そこに大量の卵が含まれています。まれに、そうめんのように長い成虫がお尻からでていることもあります。

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ノミはどうやってみつけるの?

犬の被毛に黒コショウを振りかけたように、ノミの糞がみられることがあります。これが、ノミの糞か、別のものなのかを判断するためには、ティッシュペーパーなどを水にぬらして、ノミの糞を上に置き、溶かすと判断がつきます。ノミの食事は血液のため、ノミ糞がとけると血液のような赤茶色に変化します。

肉眼でノミ本体が動いているのをみつけることもできます。しかし、基本的には毛を触ると、ノミは動いて毛の中に隠れてしまいます。ノミ本体をみつけるためには、犬の背中側にたくさん触れて、犬自体を一気にひっくり返すと、毛の薄いお腹にノミが集まるため、みつけやすくなります。ノミ取りクシなどを利用するという方法もあります。

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ダニ・マダニってどんな生き物?

マダニは犬に寄生して吸血すると1円サイズにまで大きくなることもある
マダニは犬に寄生して吸血すると1円サイズにまで大きくなることもある

ダニは、ノミと同様に昆虫ではなく、クモやサソリの仲間で、節足動物に分類されます。
ダニにはさまざまな種類があり、寄生する部位がその種によって異なります。
マダニはダニ目の後気門亜目(マダニ類)、マダニ科に属しており、卵から生まれると犬に寄生し、吸血しては、犬の体から離れ、脱皮を繰り返し、大きくなっていく生き物です。

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ダニによって引き起こされる病気は?

ダニに寄生されると、以下のような病気が引き起こされる可能性があります。

耳ダニ症

「耳疥癬 (ミミカイセン)」と呼ばれる病気のひとつで、ミミヒゼンダニと呼ばれるダニが耳に寄生することで引き起こされます。耳の中で角質などを食べて生活をしています。

ミミヒゼンダニに感染すると、耳の中を掃除しても、茶褐色~黒色の耳垢ですぐ汚れ、かゆみを引き起こします。さらに、頭を振ったり、耳をかいたりするしぐさが増え、飼い主さんに耳を触れられるのを嫌がるようになります。

集団で暮らしている(多頭飼い)場合に他の犬から感染してしまうことが多く、犬を迎え入れたときに、耳掃除をしても全然きれいにならないことで、発見されることもしばしばあります。

疥癬症(カイセン)

疥癬症は、ヒゼンダニ(イヌセンコウヒゼンダン)と呼ばれるダニによって引き起こされる皮膚病です。犬の皮膚に穴を掘って生活をしているため、かゆみや炎症が非常に強いのが特徴で、あまりのかゆさにかきこわして、出血することがよくおこります。全身の皮膚に、赤い発赤や脱毛、かさぶたなどがみられたり、皮膚が分厚くなったり、体臭が臭くなるなどもおこります。

ニキビダニ症

毛穴に生息するニキビダニによっておこる病気で、毛穴に住んでいることから「毛包虫」とも呼ばれます。またニキビダニは、学名がデモデックス・カニスといい、「デモデックス」ということもあります。健康な状態でも寄生していることが一般的です。しかし、体調の変化などによって異常に増殖してしまい、皮膚に炎症がおこります。

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ダニはどうやってみつけるの?

前述の3種類のダニは、肉眼でみつけることはできません。顕微鏡で観察する必要があります。ミミヒゼンダニは耳垢の中に発見することができますが、ヒゼンダニやニキビダニは、皮膚の中や毛穴の中にいるため、場合によっては診断のために、血がでるほど掻把 (そうは:専用の器具で、皮膚をかきとること)が必要になってくることがあります。

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マダニによって引き起こされる病気は?

マダニに寄生されると、以下のような病気が引き起こされる可能性があります。

バベシア症

バベシア症は、マダニが媒介するバベシア・ギブソニ、バベシア・カニスという2種類の原虫によっておこる病気。マダニの吸血によって犬の体内に入り、犬の赤血球に寄生し、赤血球をこわし、貧血を起こします(溶血性貧血という)。急性期には、発熱、貧血、血小板減少、血色素尿、脾腫(ひしゅ)などの症状も。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは、おもに重症熱性血小板減少症候群を保有しているマダニに人や動物がかまれることにより感染する感染症です。2011年に病原体が見つかった比較的新しい感染症で、2013年に国内で人の感染が初めて確認されました。

人では、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節の腫脹(しゅちょう)や皮下出血などあらゆる症状がでます。人の致死率は6.3%~30%と報告がある非常に怖い病気です。

犬も人と同じような症状を示すといわれ、犬の致死率は29%といわれています。SFTSウイルスをもつマダニにかまれるだけでなく、感染した動物の体液からも感染します。

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マダニはどうやってみつけるの?

マダニは、吸血すると体は非常に大きくなり、1円玉サイズ程度にまで達することがあります。前述のとおり、マダニに素手で触るのは非常に危険で、無理に引きはがそうとすると、マダニの口(口器)が皮膚に刺さったまま残ってしまう可能性があります。発見した際は無理して取らずにすぐに動物病院へ受診してください。

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ダニ・マダニは治療よりも予防をすることが大切

ダニ・マダニは治療よりも予防をすることが大切

ノミ・ダニが媒介する病気の多くは、予防をすることで防ぐことができます。背中につける液体のタイプや、味のついた食べるタイプの薬まで、種類がたくさんあります。そこに含まれる薬の種類によって、何に効くのか、またどのノミ・ダニの成長段階に効くかも変わってくるため、獣医師に相談のうえ、予防薬を決定してください。

予防薬は、治療にも使用されるため、ノミ・ダニに寄生してから駆除することもできます。しかし、感染してからの治療では、犬は不快な思いをするうえ、卵をまき散らすため、媒介する病気を防ぐことはできません。人の命にかかわる病気もあるため、忘れずに予防をしていきましょう。

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まとめ

シャンプーですべてのノミ・ダニを落とそうとする飼い主さんもいらっしゃいますが、完全に落としきることはまず難しく、ノミ・ダニによって引き起こされた皮膚病は、根本となるノミ・ダニを駆除しない限り改善しません。

また、ノミ・ダニよけの首輪なども販売されていますが、予防効果は低く、首輪に含まれる成分によって皮膚炎を起こすこともあるため、推奨されません。予防も治療も、かかりつけの動物病院へ相談をしに行くことが最善です。

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ライター情報

獣医師成田なりた有輝ゆうき

成田 有輝
所属
yourmother合同会社 代表
略歴
1988年 埼玉県に生まれる
2007年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
2011年~ウサギのハート公開
2013年 獣医師国家資格取得
2013年~2019年 東京都内動物病院に勤務
2018年~DC one dish 設立
2019年 フードメーカー勤務
2020年~yourmother合同会社 設立
2023年 日本獣医腎泌尿器学会認定医取得
所属学会
日本獣医腎泌尿器学会、日本獣医エキゾチック動物学会

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(掲載開始日:2023年11月27日)
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