シニア(高齢)の犬が気をつけたい病気とその対策について解説

シニア(高齢)の犬が気をつけたい病気とその対策について解説
公開日:2023年12月12日

犬も人と同様に年齢を追うごとに、さまざまな変化が体に起こります。シニアになったから仕方がない、と思うような変化が実は病気であり、治療をすることで改善が望める場合があります。シニア(高齢)犬でなりやすい病気を知っておくことで、早期に異常を発見できるようにしましょう。この記事では、シニア犬が気をつけたい病気やその対策についてわかりやすく解説します。

そもそもシニアって何歳から?

そもそもシニアって何歳から?

犬の場合、一般的には7歳~8歳頃からシニア期に入るといわれていることが多いですが、正確な定義はありません。犬種によっても寿命が異なるため、寿命が短い犬種は、より若い年齢からシニア期といわれることが多いです。寿命の半分を過ぎたころからシニア、3分の2が過ぎたらハイシニアということもあります。
以下では、シニア犬が気をつけたい病気について詳しく解説します。

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シニア犬が気をつけたい病気①肥満

シニア犬が気をつけたい病気①肥満

シニア犬が気をつけたい病気として「肥満」があります。肥満も立派な病気です。同じフード・同じ量を摂取していても基礎代謝が落ちることで、太っていく場合があります。定期的な体重、体型のチェックが大切になります。

ボディコンデイションスコアとは

犬により、骨格の大きい小さいに幅があるため、この犬種の理想体重は、何㎏であるというような体重による評価は困難です。そのため、ボディコンディションスコア(BCS)という評価方法で体格を評価します。

犬の減量方法

運動量を増やすのには限界があるため、基本的に食事制限をすることで犬はダイエットをおこないます。まずは、今食べている食事量を10%減らして与えるようにしてみましょう。

ただし、食事量が減ることで、お腹がすいておねだりが増えたりする場合があります。そういった場合には、グラム当たりのカロリーの低いダイエット用のフードを活用するようにしましょう。病院で販売されている減量用フードの中には、市販されているものよりさらにカロリーの低いものがあります。

また、甲状腺機能亢進症などの病気によって、摂取カロリーがかなり低くても痩せない場合があります。ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ダックスフントなどで甲状腺機能低下症は起こりやすいといわれています。ダイエットを頑張ってもなかなか痩せない場合は、動物病院へぜひご相談ください。

肥満は万病のもとで関節や心臓などにも悪影響を与えます。適正な体型を維持するようにしましょう。

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シニア犬が気をつけたい病気②関節炎

シニア犬が気をつけたい病気②関節炎

シニア犬が気をつけたい病気として「関節炎」があります。関節炎は、関節軟骨がすり減り、炎症を引き起こし違和感や痛みを引き起こします。

おもに、以下の症状があります。

関節炎の症状

  • 散歩に行かず歩きたがらない
  • 階段などを嫌う
  • 立ち上がるのに時間がかかる
  • 尾を下げていることが多い
  • 寝ている時間が多い
  • 足をかばうなど、歩き方が変わった
  • 歩行速度が落ちた

関節炎の症状は、年をとったからそんなものだろうと見逃されるような症状であることが多いです。愛犬を真正面や真後ろからみて、歩幅や歩き方を観察したり、爪をチェックしたりしましょう。爪の上部が削れている場合は、関節炎による痛みや、神経疾患を抱えている可能性があります。

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シニア犬が気をつけたい病気③心臓病

シニア犬が気をつけたい病気③心臓病

シニア犬が気をつけたい病気として「心臓病」があります。循環器系の疾患は犬の死因トップ3に入る病気です。
最も多い心臓病は僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁という、左心房と左心室の間にある血液が逆流しないように蓋の役割をしている弁が、さまざまな理由により機能しなくなり、血液に逆流を起こすことで、全身へうまく血液を送れなくなり、トラブルを引き起こす病気です。

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズ、チワワ、ポメラニアン、シーズー、トイプードルなどで多いとされています。

僧帽弁閉鎖不全症の症状

  • 咳をする
  • 呼吸が早い(荒い)
  • 疲れやすい
  • ふらつく
  • 寝ていることが多い
  • 元気がない
  • 舌の色がおかしい

上記は、病気が進行した場合にみられる症状です。病気の初期には、症状がありません。そのため、定期的な健康診断(聴診、レントゲン検査、超音波検査、血液検査など)が大切です。

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シニア犬が気をつけたい病気④腎臓病

シニア犬が気をつけたい病気④腎臓病

シニア犬が気をつけたい病気として「腎臓病」があります。泌尿器系の疾患は犬の死因トップ3に入る病気です。その中でも慢性腎臓病は犬の約10頭に1頭は病気にかかるといわれています。

慢性腎臓病も初期の状態では、症状を示すことがなく、症状を表した段階(腎臓病が発見できる段階)では、すでに腎臓の残された機能はおよそ3分の1程度になっています。腎臓病の進行度合いにより、食事療法や投薬治療などの治療が必要です。

早期に腎臓病向けのフードに切り替えたり、動物病院に通っていたりしても、予防ができることは証明されていません。腎臓の機能低下が疑われた場合に、定期的にモニタリングしながら、適切なタイミングで治療を開始することが大切です。血液検査で数字を追っていくことが多いですが、血圧や尿検査なども腎臓の状態を把握する上で重要な項目です。

慢性腎臓病の症状

  • たくさん水を飲む
  • たくさん薄いおしっこをする

症状が進行した場合の症状

  • 食欲が落ちる
  • 体重が落ちる
  • 元気がなくなる
  • 嘔吐、下痢
  • 貧血
  • けいれん

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シニア犬が気をつけたい病気⑤がん(腫瘍)

シニア犬が気をつけたい病気⑤がん(腫瘍)

シニア犬が気をつけたい病気として「がん(腫瘍)」があります。腫瘍は犬の死因トップ3に入る病気です。肉眼でみて判断できる体の外にできるがんから、体の中にできるがん、血液のがんなど、さまざまなタイプが存在します。定期的な健康診断によって早期発見、早期治療がとても大切です。

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シニア犬が気をつけたい病気⑥乳腺腫瘍

シニア犬が気をつけたい病気⑥乳腺腫瘍

シニア犬が気をつけたい病気として「乳腺腫瘍」があります。メスは初回発情前後で、避妊手術をおこなわないと、発情ごとに将来的な乳腺腫瘍になるリスクが増大していきます。

乳腺腫瘍は腫瘍の中では珍しく、発生リスクを下げることができる病気です。予防方法は、初回発情前後で避妊手術をすることです。

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シニア犬が気をつけたい病気⑦子宮蓄膿症

シニア犬が気をつけたい病気⑦子宮蓄膿症

シニア犬が気をつけたい病気として「子宮蓄膿症」があります。メスが避妊手術をしていないと、細菌感染により子宮に膿がたまる子宮蓄膿症を発症することがあります。突然ぐったりし始めたり、陰部からの異臭や膿がでていたりすることで気づくことが多いです。

避妊手術をしていな犬は、必ず発情出血が始まった日や期間の記録をとっておきましょう。発情がこない、出血期間が異常に長いなどは、子宮蓄膿症となっている可能性もあります。
未避妊の犬は非常に高確率で子宮蓄膿症にかかるといわれていることから、避妊手術をすることを強くおすすめいたします。

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シニア犬が気をつけたい病気⑧前立腺肥大症

シニア犬が気をつけたい病気⑧前立腺肥大症

シニア犬が気をつけたい病気として「前立腺肥大症」があります。去勢手術をおこなってないオスは、性ホルモンによって前立腺が加齢とともに大きくなり、血尿や尿が出にくいなどの排尿障害や血便、便が出にくい、便が細くなるなどの排便障害を引き起こすことがあります。

良性の前立腺過形成による前立腺の肥大であれば、去勢手術が予防法になります。

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シニア犬が気をつけたい病気⑨会陰ヘルニア

シニア犬が気をつけたい病気⑨会陰ヘルニア

シニア犬が気をつけたい病気として「会陰ヘルニア」があります。去勢手術をおこなっていないオスは、性ホルモンによって肛門の周囲(会陰部:えいん)の筋肉が薄く緩くなってしまい、その隙間から臓器(膀胱や腸など)や脂肪が飛び出てしまい、肛門周囲が腫れ上がってしまう病気になりやすいです。

飛び出てしまう穴のサイズや飛び出てしまう内容物によって手術の適応や内容が変わりますが、治療の多くは手術によって飛び出た臓器を元に戻し、飛び出た穴をふさぐ治療になります。

去勢手術をおこなうことで、発生率は低下します。

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シニア犬が気をつけたい病気⑩歯周病

シニア犬が気をつけたい病気⑩歯周病

シニア犬が気をつけたい病気として「歯周病」があります。犬は人と異なり最短で3日で歯石がつくといわれています。歯石は細菌の温床で、歯を支える骨を溶かしたり、炎症を引き起こしたりします。

無麻酔による歯石除去は、歯周ポケット内の歯石が除去されず、歯周病の予防効果は乏しく、顎の骨を折るなどの大きなケガを引き起こす可能性があります。必ず麻酔をかけた状態で歯石除去をおこなうようにしましょう。

歯周病の予防は、毎日の歯磨きです。いきなり歯磨きをできる犬はそういません。子犬のときからまずは口の中を触るトレーニングから始め、徐々に歯ブラシを使えるように訓練していきましょう。

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まとめ

シニア犬は年に2回は健康診断を

日々の体重測定や、全身を触ってチェックすることは、病気の予防や早期発見をするために非常に大切です。

年齢を追うごとにどうしても病気が増えていってしまうため、年に2回は健康診断をすることをおすすめいたします。かかりつけの動物病院の先生とコミュニケーションをよくとり、シニア期を迎えたいですね。

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ライター情報

獣医師成田なりた有輝ゆうき

成田 有輝
所属
yourmother合同会社 代表
略歴
1988年 埼玉県に生まれる
2007年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
2011年~ウサギのハート公開
2013年 獣医師国家資格取得
2013年~2019年 東京都内動物病院に勤務
2018年~DC one dish 設立
2019年 フードメーカー勤務
2020年~yourmother合同会社 設立
2023年 日本獣医腎泌尿器学会認定医取得
所属学会
日本獣医腎泌尿器学会、日本獣医エキゾチック動物学会

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(掲載開始日:2023年12月12日)
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