犬のワクチン接種で予防できる病気や接種時期、気をつけることとは?

犬のワクチン接種で予防できる病気や接種時期、気をつけることとは?
公開日:2023年12月26日

日本で犬を飼育する上で義務化されている狂犬病ワクチン。伝染性が高く、病気になってしまうと非常に強い症状を出す病気を予防する混合ワクチン。おもに愛犬のワクチンはその2種類に分けられます。この記事では、ワクチン・予防接種の必要性、予防できる病気、接種時期や気をつけることなど飼い主さんが気になる情報について解説します。読んでいただくと、ワクチンについて少し詳しくなれると思います。

犬のワクチン接種の重要性

犬のワクチン接種の重要性

現在日本で登録されている犬はおよそ600万頭で、そのうち狂犬病ワクチンの接種率は約70%と国から発表されています。

狂犬病は狂犬病予防法によって予防接種が義務化されているので、本来は犬を飼育していれば必ず接種しなければいけません。犬の健康状態によっては接種できずに猶予を持たせる場合もありますが、この場合はかかりつけの獣医師とよく話し合っていきましょう。

狂犬病は哺乳類なら全てかかる可能性があり、かかった場合の死亡率はほぼ100%といわれています。人間も死にます。とくに犬は狂騒状態、非常に攻撃的になりウイルスを多く含む唾液を分泌しながら攻撃してきて、それによって人間や他の動物にこのウイルスを広めることが危険視されています。

現状、日本は洗浄国とされており国内での発症は起きていませんが、世界中ではいまだに死者を毎年5万人以上出している恐ろしい病気です。人間が狂犬病にかかる原因の99%は犬からといわれています。世界全体のグローバル化にあわせて、日本への狂犬病にかかった動物の侵入のリスクは高いと考えられています。

過去に狂犬病が存在して、長い年月さまざまな努力によって洗浄国を保っている日本は、一度も発生していないオーストラリアのように狂犬病ワクチンを打たないということができないため、現状は法律に則って狂犬病ワクチンを接種することが犬を飼育する飼い主の義務となっています。

混合ワクチンはパルボウイルス、ジステンパーウイルス、犬伝染性肝炎(アデノウイルス1)、アデノウイルス2、犬パラインフルエンザ、犬コロナウイルス、それからレプトスピラの複数の型が含まれることが多いです。集団生活をしている犬用にボルデテラのワクチンも存在します。

とくにパルボウイルスやジステンパーウイルスはコアワクチンと呼ばれ、重要な予防するべき病気でそれ以外の病気はノンコアワクチンと呼ばれます。
ワクチンは感染力が高い病気、重篤化する病気を防ぐ愛犬を守る大切な盾となってくれます。

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そもそもワクチンって何?

そもそもワクチンって何?

ワクチンは病気に対する免疫力を強化することによって、病気への感染する可能性、病気への抵抗性を高めることにより重症化を予防するものです。

体は体外から侵入したものに対して免疫が働きます。物質が悪影響を及ぼすものなら免疫によって攻撃して病気の原因となるものを破壊します。
その病気を抗原、病気に対する免疫を抗体と呼びます。
ワクチンは発症させないように変化させた抗原を体に取り込ませることで、抗体を作らせます。免疫は一度抗体を作ったことがあると、次の侵入時に大量の抗体を作ることができるために、病気と戦う力を高めることができます。

残念なことに、この抗体の記憶は永遠には続かないために継続的にワクチンを接種することで病気への抵抗力を維持していくものです。

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ワクチンで防ぐことができる病気

ワクチンで防ぐことができる病気

狂犬病

いまだに世界中に存在し、日々人間を死にいたらしめている恐ろしい病気です。

犬が感染すると神経症状を起こし、凶暴になり攻撃性を持ち、咬傷による病気の伝播を起こします。致死率はほぼ100%、狂犬病に感染したことがわかったら殺処分されます。

日本国内では1957年以降犬の発症報告はなく、洗浄国とされています。
この努力はとても書き尽くせないので、ぜひご自身で調べていただくとよいでしょう。

パルボウイルス感染症

激しい下痢を主体とした病気で特効薬が存在しておらず、適切な対処療法で体力を回復させることを目指しますが、子犬での発症例が多いこともあって救命できないことも多い病気です。

一番厄介なことはパルボウイルスが非常に強いウイルスで、施設や土壌を汚染して長い時間感染力を維持することです。多頭飼育現場などで発生すると凄惨な状態になることもあります。

ジステンパーウイルス感染症

神経症状を引き起こす感染症で、これも子犬に多く、命を落とす子も多いです。
飼育動物での発症はワクチンの普及によって少なくなっていますが、野生動物での発症はむしろ増加傾向にあり、まだまだ注意が必要です。

犬伝染性肝炎

発熱、下痢、嘔吐、肝炎、ブルーアイと呼ばれる目の変化などを起こす病気で原因はアデノウイルスの1型、感染力が高いために環境を汚染することもあります。

犬伝染性喉頭気管炎

呼吸器疾患を引き起こす病気、アデノウイルス2型によって引き起こされます。風邪のような症状を引き起こす感染症で、単独であれば致死率は高くありませんが、混合感染などを起こすと重症化します。

犬パラインフルエンザウイルス感染症

風邪のような症状を出す病気で、感染力が非常に強い病気です。単独感染は比較的軽い症状ですみますが、混合感染や二次感染で重篤化してしまうことがあります。

犬コロナウイルス感染症

下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こす病気で、子犬に感染すると重篤な嘔吐や水下痢などを引き起こし重症化することがあります。

犬レプトスピラ感染症

人獣共通感染症、人間にもうつる病気です。
発熱、黄疸、腎機能不全、肝機能不全などを起こす病気でネズミの尿から経口、傷口などから感染します。重症化することも多く、また、人間もかかるために注意が必要です。
以前は西日本を中心にしている病気でしたが、近年は拡大傾向が認められています。

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犬のワクチンの接種間隔

犬のワクチンの接種間隔

世界的な基準として、コアワクチン(パルボ・ジステンパー)は子犬のときは生後2ヵ月に一度、3ヵ月に追加接種、半年後に一度接種し、その後は2年~3年ごとの接種をすすめています。
また追加接種時には抗体価を測定し、不足している場合のみ投与するという形をすすめています。

ただ、その土地、その個体ごとに合わせた摂取方法を取ることが大事である、ということもいわれています。
抗体価に関しても、2年目で足りていて、3年目に足りていなかったから追加接種という形にすると、抗体価が低下した危険な時期が存在していた可能性があることになります。
現状、日本において、義務である狂犬病予防でさえ70%であることを考えると、混合ワクチンの接種率はそれを下回っていることが予想されます。そして、未登録で犬を飼育している方もいらっしゃるかもしれません。
都市部と、地方でも状況が異なると考えられますので、ワクチン接種間隔はかかりつけの動物病院とよく話し合って接種することをおすすめいたします。

必要以上のワクチン接種は健康問題を引き起こす可能性が示唆されていますので、それも含めてご自身とペットを取り巻く環境などを考えて、かかりつけの動物病院と相談するのが一番です。

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犬のワクチンの金額

犬のワクチンの金額

狂犬病は3,000円程度、6種混合ワクチンが5,000円~10,000円程度、8種以上だと8,000円~12,000円程度が標準的なのではないかと思いますが、値段の差は診察料を含んでいたり、副反応への対応などを含んでいたりなど、多少の差があります。

定期的なワクチン接種は獣医師に動物を定期的に診てもらえるチャンスなのでワクチンの値段だけで判断せず、さまざまなことを考えてかかりつけの動物病院を作ることを私はおすすめします。

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犬のワクチンの副反応

犬のワクチンの副反応

ワクチンは病原性を取り除いたとはいえ、体内に異物を入れる行為です。
免疫が過剰に反応してしまい、体調を壊してしまう可能性があります。
過去に比べるとさまざまな工夫で副反応はずいぶんと減っているなとは感じますが、体調を崩してしまう子も中にはいます。

そして、最も強い免疫反応がアナフィラキシーショックという状態を引き起こします。
ワクチン接種後短時間で引き起こされ、とても強い反応を起こすために、素早い対応をする必要があり、手遅れになると場合によっては命を落とします。

ワクチン接種後は安静に過ごしていただくことがなにより大事になります。
そして、すこしでもおかしいなと思ったらすぐに動物病院へ連絡しましょう。
初回ワクチンのときや2回目のワクチン時は15分~30分ほど病院のそばにいるようにして様子をみるのもひとつの方法だと思います。

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まとめ

ワクチンは愛犬を恐ろしい病気から守ってくれる大事な盾となってくれます。
感染を防ぎ、重症化を防ぎ、うつりやすく重症化しやすい病気から愛犬を守ることは飼い主様にできる大切な対策です。

狂犬病予防は法律で定められた義務で、違反すれば罰則もあるのでしっかりと接種してあげてください。

不安なことがあればかかりつけの動物病院でしっかりと話し合うとよいでしょう。定期的なワクチン接種を通して獣医師と良い関係を作って愛犬のことをいつも診てくれるかかりつけの動物病院を作ってください。

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ライター情報

獣医師あずま一平いっぺい

東 一平
所属
株式会社 アイエス 代表取締役、アイエス動物病院 院長
経歴
1978年 千葉県に生まれる
1997年 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2003年 同大学卒業
2003年~2004年 アイエス動物病院に勤務
2004年~2005年 東京都内の動物病院に勤務
2005年 千葉県市川市のアイエス動物病院の院長に就任
現在もアイエス動物病院院長として日々診療にあたりながら、YouTubeやX(旧Twitter)、ブログなどで情報発信を続けています。
所属学会
日本小動物歯科研究会、日本獣医皮膚科学会、比較眼科学会、日本獣医麻酔外科学会所属

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(掲載開始日:2023年12月26日)
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