パグの特徴とは?なりやすい病気についても解説

パグの特徴とは?なりやすい病気についても解説
公開日:2023年12月26日

しわくちゃで愛くるしい見た目と、活発な性格で人気犬種のパグ。比較的小型で室内でも飼育しやすく、古くから愛玩犬として親しまれてきました。
一方で、短頭種と呼ばれる鼻が短い犬種で、かかりやすい病気も多く知られています。そんなパグの魅力となりやすい病気について解説します。

パグのルーツ

パグのルーツ

パグの起源についてはさまざまな説があるようですが、もとは中国から広まったと考えられています。中国では古くから短頭種が好まれており、マスティフのような大型の短頭種が愛玩目的で飼育されていたそうです。

上流階級に好まれる犬種だったようで、ヨーロッパには1500年ごろオランダの商人が持ち帰ったことでオランダ王室に寵愛され、その後イギリス王室にも広まっていきました。
1600年代にはオランダとの貿易を通じて日本にも持ち込まれていたようです。

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パグの見た目

パグの見た目

パグはその可愛く愛くるしい見た目が特徴的です。一番魅力的ところはしわくちゃなお顔でしょう。そのしわくちゃが、昔は「皇」の字に見えるからという理由で、「皇の印」と呼ばれていたこともあったそうです。
また、鼻は短く、丸い頭、折れ耳で尻尾は根元が"くるん"とした巻き尾が特徴です。

小型犬に分類され、利用体重は体格にもよりますが約6㎏~8㎏前後と、室内でも飼育しやすいサイズです。筋肉がつきやすく、引き締まった体つきが理想的です。

毛色はフォーンとブラックの2種類がほとんどですが、まれにアプリコットやシルバーという毛色の子もいます。

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パグの性格

パグの性格

パグは古くから愛玩動物として飼育されてきた歴史もあり、人と生活することに長けています。とても明るく人懐こい性格で、飼い主に忠実。それゆえ、愛情深い犬種といわれます。
活発で遊びが好きなので運動量は多い犬種です。

ほかのわんちゃんに対しても友好的な子が多いですが、わがままな一面もあり、ごはんやおもちゃへの執着が強く出ることがあります。

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パグの飼いやすさ

パグの飼いやすさ

ダブルコートなので換毛期には抜け毛が増えますが、ダブルコートの中でもとくに抜け毛が多いといわれ、通年で抜け毛は多い犬種です。

活発なのでマンションやアパートなどの集合住宅では、足音が階下へ響きやすいかもしれません。
また、太りやすく、運動要求量も多いのでお散歩は必須でしょう。

短頭種なので、室温の管理をしっかりしないと室内でも熱中症になってしまうことがあります。しかし、成犬でも6kg程度の小型犬なので室内飼いでも問題なく過ごせます。

警戒心が少なく、無駄吠えもあまりしないので番犬には不向きですが、家庭犬としては飼いやすい犬種です。

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短頭種の犬とは

パグをはじめとする短頭種とは、頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い犬種のことです。ほかに、チワワ、フレンチブルドッグ、シーズーなどの犬種も含まれます。

短頭種の犬とは

鼻が短く、口の面積が狭いのでパンティングによる熱発散が苦手で熱中症リスクが高いので、とくに夏場は注意が必要です。

外鼻孔(=鼻の穴)も狭いことが多く、通常カンマ型なのに対し、一部の短頭種では直角の線状で極端に狭くなっていることがあります。
これらの外貌のために、換気不全に陥りやすく、呼吸器の異常は常に注意が必要です。

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パグがかかりやすい病気

パグがかかりやすい病気

パグがかかりやすい病気については、以下でそれぞれ詳しく解説します。

短頭種気道症候群

パグの複雑な解剖学的特徴によって起こる、気管虚脱・鼻腔狭窄・軟口蓋過長などの呼吸器系の疾患を、まとめて「短頭種気道症候群」と呼びます。

鼻が短く、口や鼻の構造が狭い空間に詰まっているため、さまざまな弊害が生じてしまいます。
熱中症リスクがほかの犬種より高いのもそのためです。

症状の程度には個体差がありますが、肥満体形は症状を悪化させるので、体形維持には注意しましょう。

気管虚脱

空気の通り道である気管が途中で潰れていまい、呼吸が正常におこなえない病気です。

気管の筋肉や軟骨が脆弱化していたり、短頭種では生まれつき気管が細かったりすることで、吸気時の陰圧に耐えられずに気管が潰れてしまいます。重症化すると、平常時でもガーガーとガチョウのような特徴的な呼吸音が聞こえます。

鼻腔狭窄

生まれつき鼻の穴が狭い状態のことをいいます。息が吸いづらいのでブーブー音を鳴らして呼吸をしていたり、酸素が十分に取り込めずにチアノーゼ(=酸欠で舌の色が紫色になること)になっていたりすることがあります。

軟口蓋過長

口腔内上側の硬い部分(硬口蓋)から伸びた、柔らかい部分を軟口蓋と呼びます。人間でいう「のどちんこ」の部分にあたるのですが、これが通常よりも長く、気管の入り口に覆いかぶさるように垂れ下がっている状態のことを、軟口蓋過長といいます。
吸気時や嚥下時に気道が閉塞されるので、気道に負担がかかり、気管虚脱を誘発することもあります。

熱中症

体温上昇にともなって重度に脱水し、血液が濃縮されることで低血圧に陥る病態のことをいいます。最悪の場合、死亡することもあるので、夏場は日中のお散歩を避けたり、室温を低めに設定したりするなどの熱中症対策が欠かせません。

犬は人間より地面に近く、アスファルトの反射熱も相まって、人よりも熱中症になりやすいので、とくに注意しましょう。

アトピー性皮膚炎

一般的な疾患で、さまざまな犬種に起こりうるアトピー性皮膚炎ですが、パグではその約10%が発症するといわれています。1歳までに何らかの皮膚症状(外耳炎、指間皮膚炎、膿皮症など)をみつけたら疑うべきでしょう。

症状がひどいときには、ステロイドやかゆみ止めの内服、薬用シャンプーなどで治療をおこないますが、根本治療は難しく、治療が長引くことが多い病気です。

間擦疹

尻尾の付け根のくぼみや、顔のしわにおこる、蒸れと摩擦による皮膚炎のことです。体の構造上の問題なので、完全に防ぐことは難しいですが、清潔に保つことである程度予防できます。

乾性角結膜炎(=ドライアイ)

眼球が突出気味で、瞼が完全に閉じきれていなかったり、遺伝的要因や、皮膚炎の影響で涙の産生量が少なくなったりすることで起こります。
慢性的にドライアイだと角膜損傷や結膜炎など、ほかの眼科疾患のリスクが高くなるので、羞明(=目を細めたり、瞬きを頻回にすること)がある場合には、早めに病院へ行きましょう。

虚血性大腿骨頭壊死(=レッグカルベペルテス病)

若齢犬で発症する、原因不明で大腿骨頭(大腿骨と骨盤の関節部)が溶けてしまう病気です。
あまり一般的ではない病気ですが、パグではほかの犬種より発生が多いという報告があります。1歳以下で跛行(=足を引きずる症状)がみられたら、レントゲンを撮ることを推奨します。

壊死性髄膜脳炎(=パグ脳炎)

原因不明の免疫介在性脳炎。パグ以外に、ヨークシャテリアやマルチーズなどでも起こりうる病気ですが、以前はパグでとくに多く報告があったため通称「パグ脳炎」と呼ばれています。
視覚障害やけいれん発作など、さまざまな神経症状を起こし、命にかかわる病気です。

診断にはMRIや脳脊髄液検査といった精密検査が必要になるので、検査費用も治療費も膨らんでしまうことが多いでしょう。

肥満細胞腫

おもに皮膚にできる腫瘍のことをいいます。基本的には悪性腫瘍なので、悪性度によって治療方法も異なりますが、外科手術による切除が必要となります。
パグでは、年齢を問わずその発症リスクがほかの犬種と比べ2倍以上高いという報告があります。

通常7歳以上の高齢犬で発症し、好発部位は後肢、会陰、陰嚢といわれていますが、全身で起こりうる腫瘍です。日頃からコミュニケーションの一環として身体を触って、できものがないかチェックすることが大切です。

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まとめ

短頭種であるパグはかかりやすい病気も多く、初期症状に注意が必要です。事前にどんな病気にかかりやすいかを知っておくと、早期発見につながるでしょう。おかしいと思ったときは、早めに獣医さんに診てもらってください。

パグはとても明るくて人懐こい性格なので、一緒に遊びに出かけたり、アウトドアなどのアクティビティを一緒に楽しんだりできる犬種です。熱中症に気をつけながら、さまざまなところへのお出かけを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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ライター情報

獣医師脇谷わきたに萌子もえこ

脇谷 萌子
所属
城東鶴見どうぶつ病院
略歴
1990年 東京都大田区に生まれる
2009年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
2015年 獣医師国家資格取得
2015年~2018年 東京都内動物病院に勤務 横浜市内2次診療センター神経科にて研修
2018年~2019年 大阪市内動物病院に勤務
2019年~ 城東鶴見どうぶつ病院に勤務
所属学会
獣医神経病学会
資格
獣医師免許、普通自動車第二種運転免許

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(掲載開始日:2023年12月26日)
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