ヨークシャー・テリアの特徴やかかりやすい病気について知っておこう

ヨークシャー・テリアの特徴やかかりやすい病気について知っておこう
公開日:2023年12月12日

日本でもよくみかけるテリア犬の一種で、可愛らしい雰囲気と気品がただよう堂々とした姿で人気なヨークシャー・テリア。「ヨーキー」の愛称で親しまれています。これから飼う予定の方も、すでに飼っている方も、ヨーキーの特徴やかかりやすい病気について知っておきましょう。

ヨークシャー・テリアの歴史

ヨークシャー・テリアの歴史

ヨークシャーとはイギリスのロンドンより北に位置する地方の名前です。19世紀にはイギリスの重要な工業地帯としてとても栄えていたそうです。そんなヨークシャー州でネズミ退治のために誕生したのがヨークシャー・テリアです。

マンチェスター・テリア、スカイ・テリア、マルチーズなどを交配させて誕生したといわれています。1862年に誕生した際には「ブロークン・ヘアード・スコッチ・オア・ヨークシャー・テリア」という名前がつけられていましたが、長すぎるために定着せず、1870年頃に現在の名前に改名されました。

また、誕生したばかりの頃のヨーキーは、体重5kg前後と今よりも大きな体格だったそうですが、愛玩犬として流通させるために小型化されました。イギリスでは親しい間柄になると相手の名前の語尾に「ie」や「y」をつけることがあり「Yorkshire Terrier:ヨークシャー・テリア」の愛称として「Yorkie:ヨーキー」と呼ばれています。

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ヨークシャー・テリアの特徴と性格

ヨークシャー・テリアの特徴と性格

ヨークシャー・テリアの特徴

おもな特徴は以下のとおりです。

ヨークシャー・テリアのおもな特徴

体重 1.5kg〜3kg
体高 15cm〜18cm
眼が丸く、耳は成長につれて立ち耳から垂れ耳に変化することがある。
子犬のときはブラック&タン(赤褐色)で、成長とともに変化し、1才までに少しずつタン色の毛がゴールドに、黒い毛が他の色(グレーやシルバー、ブルー)に変化し、最終的に本来のダーク・スチール・ブルー(青みの強い灰色)に変わる。その後も毛色は変化し、生涯に7回変化するともいわれている。
被毛 最大の魅力はシルキーコートと呼ばれるなめらかで美しい被毛。その綺麗な毛色から「歩く宝石」とも呼ばれている。比較的抜け毛が少ないタイプだが、長毛種であり伸び続けるため、定期的なトリミングが必要。また、毛が絡まりやすく、すぐに毛玉ができてしまうため日々のブラッシングも大切。
平均寿命 14〜16歳

ヨークシャー・テリアの性格

自分よりずっと大きな犬に向かっていくような勇敢な「テリア気質」をもつ一方、飼い主さんに対して絶大な信頼を寄せる甘えん坊でもあります。明るく、好奇心旺盛で活発な性格といわれています。

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ヨークシャー・テリアのかかりやすい病気

ヨークシャー・テリアのかかりやすい病気

先天性門脈体静脈短絡(先天性門脈シャント)

消化管から吸収された栄養などは門脈という管を通って肝臓へ運ばれ代謝されます。

先天性門脈体静脈短絡(先天性門脈シャント)とは、生まれつきシャント血管(本来のルートとは別にできた分かれ道)があり、肝臓を通らずに門脈から直接全身へ循環する血管に流入してしまう病気です。肝臓で代謝されるはずの毒素により、神経系、消化器系、泌尿器系などに異常をきたします。

また、成長因子も肝臓を通らないため、肝臓自体が成長せずに小さいことがあります(小肝症)。症状は1歳未満で発症することが多く、食後に元気がない、歩くとふらつく、痙攣(けいれん)などがみられます。しばしば発育不良も観察されます。治療は通常外科手術が第1選択で、シャント血管を縫合糸で結紮(けっさつ)、閉鎖する方法が一般的です。

急性膵炎

急性と慢性に分類され、急性膵炎は消化酵素が膵臓内で活性化されてしまうことで、膵臓に炎症が起こる病気です。幅広い年齢でみられます。

オスよりもメス、避妊/去勢しているほうが発症しやすいといわれています。手術歴や肥満、内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症)、糖尿病、ゴミあさりなどの不適切な食生活などもリスクとなります。

症状は食欲不振、活動性の低下、嘔吐、下痢、激しい腹痛など。重症になると多臓器不全になり死亡することもあります。点滴や吐き気止め、消炎鎮痛剤、抗炎症薬などで治療します。脂肪を制限した食事療法も必要になります。

腸リンパ管拡張症

リンパ管が何らかの原因により閉塞や破綻を起こし、小腸でリンパ液が管腔内に漏れて、タンパク質が漏れ出してしまう病気で、タンパク漏出性腸症の主要な病気です。

生まれつきの原発性と、腸炎やリンパ腫など他の粘膜の病気が併発する二次的なものがあります。ヨークシャー・テリアでは前者の原発性が多くみられますが、多くの場合腸炎の併発もみられます。

症状は、慢性的な下痢が続いて、体重が減る、腹水や胸水が溜まるなどがみられるのが一般的ですが、下痢を全く起こさず、健康診断で発見されるケースもあるため要注意です。

治療は脂肪を制限した食事療法が最も重要となり、合わせて併発している腸炎等の病気に対しての治療が必要となります。

水頭症

脳脊髄液(のうせきずいえき) という液体成分の流れが滞ったり、産生量が増えてしまったりする、うまく吸収されないなどが原因で、脳の隙間(=脳室)に脳脊髄液が過剰に溜まってしまう状態をいいます。

脳が圧迫されることで、初期症状としては、学習遅延(しつけを覚えない)や意識障害(ボーッとしている)があります。症状が進行すると、ふらつき、失明、歩行異常、旋回(グルグル同じところを歩きまわる)、痙攣(けいれん)発作などのさまざまな神経症状があらわれます。

水頭症は産まれつきの構造的あるいは機能的な異常で起こる先天的な水頭症と、脳腫瘍や脳炎など他の脳の病気によって引き起こる後天的な水頭症がありますが、ヨークシャー・テリアでは前者の先天的な水頭症が多くみられます。

先天的な場合には、根本的な治療の第1選択は外科治療です。一時的なコントロールのためや、何らかの理由で外科手術ができない場合には、症状の緩和を目的に内科治療もおこなわれます。

膝蓋骨内方脱臼(パテラ)

膝のお皿の骨が内側に外れてしまう状態が膝蓋骨脱臼です。ヨークシャー・テリアのような小型犬に多くみられます。小型犬では、発育期に骨形成の異常が生じ、その結果、膝蓋骨と付着する筋肉(大腿四頭筋)の方向が異常になり引き起こされます。

後肢を挙上していたり、寝起きに立ち上がろうとしてキャンと鳴いたりするなどがあれば要注意です。進行度合いに応じてグレード1~4に分類され、症状に応じて保存療法(運動制限、減量、生活環境の改善、内科治療)や外科治療がおこなわれます。

乾性角結膜炎

涙の産生量が少なくなることで、目が乾燥したり炎症を引き起こしたりする病気です。光に過敏になるほか、目が傷つきやすくなり、痛みを生じます。結膜が充血したり、油っぽい目やにが発生したりする場合もあります。涙液量の回復や症状の改善、二次的な角膜の変化を防ぐために治療がおこなわれます。

気管虚脱

肺へ空気を送る気管がつぶれてしまう病気で、中年齢の小型犬に多いです。

初期は軽い咳からはじまり、進行するとガァーガァーとガチョウが鳴くような音を出すこともあります。つぶれ方がひどければ、十分な量の空気が通れず呼吸困難を起こし、さらに重症化すると呼吸停止を引き起こして死に至る場合もあります。

重症度に応じて内科治療や外科治療がおこなわれます。興奮時に呼吸状態の悪化がみられることがあるほか、肥満や高体温も要注意です。できるだけストレスを与えないことが大切になります。

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ライター情報

獣医師/ペット栄養管理士森井もりい知里ちさと

森井 知里
所属
yourmother合同会社
略歴
1992年 三重県に生まれる
2011年 麻布大学獣医学部動物応用科学科に入学
2013年 麻布大学獣医学部獣医学科に転学科、在学中、料理教室で講師を務める
2018年 獣医師国家資格取得
2018年 東京都内動物病院に勤務
2019年~2021年 千葉県内動物病院に勤務
2022年~2023年 東京大学附属動物医療センターで内科系研修医として勤務
2023年4月~ yourmother合同会社に勤務
所属学会
日本ペット栄養学会

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(掲載開始日:2023年12月12日)
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