自転車保険は家族も補償の対象に!補償内容や加入時のポイントを紹介

昨今、自転車保険への加入を義務化する自治体が増えています。その背景には、自転車利用者による事故の増加や、深刻な死亡事故により高額な損害賠償請求が求められる事例が発生していることもあるようです。通学などで自転車を利用することが多い子どもが自転車事故を起こすケースも想定されるでしょう。
自転車保険にはさまざまな商品やプランがありますが、家族みんなで自転車事故に備えたい場合は「家族型」のプランがおすすめです。家族型の自転車保険に加入すると、ひとつの保険で家族全員をカバーすることができます。
この記事では、家族型の自転車保険の概要や補償内容、加入時にチェックしたいポイントについて解説します。これから家族も含めた自転車保険の加入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
自転車保険とは

自転車保険とは、自転車の運転中に事故を起こしたときの損害やケガに備えられる保険です。自転車保険に加入すると、相手への損害賠償責任の補償やご自身がケガをした際の補償を受けられます。
自転車による事故は自動車事故に比べて「被害が小さいのではないか」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実は重大な被害が生じるケースもあります。死亡事故や深刻な障害がのこる事故に発展しているケースもあり、なかには学生が運転する自転車が相手方に衝突し、9,000万円を超える賠償金が発生した事例もあります(詳細は後述します)。
自転車保険の加入を義務化する自治体も増えており、2024年10月時点では34の都府県が加入を義務化しています。
なお、自転車保険は自転車本体にかける保険ではないため、自転車を2台以上持っていたり、買い替えたりした場合、車体の変更や登録の手続きは必要ありません。
「家族型」の自転車保険の範囲
自転車保険のなかには、保険に加入する本人だけでなく、その家族も補償の対象となる「家族型」のプランを用意している商品もあります。ひとつの保険で家族全員をカバーできるため、家族それぞれが自転車保険に加入する場合に比べると、保険料をおさえやすくなります。
一般的な家族型の自転車保険で補償の対象となる家族の範囲は次のとおりです。
「家族型」の自転車保険の補償対象者の範囲

【家族型の自転車保険の補償対象者の範囲】
- 被保険者(本人)
- 被保険者(本人)の配偶者
- 被保険者(本人)またはその配偶者の同居の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)
- 被保険者(本人)またはその配偶者の別居の未婚の子
ただし、別居している既婚の子や別居の親族は、補償の対象外となる場合があるため注意してください。
家族型の自転車保険はどんな人におすすめ?保険料はおさえられるの?
家族型の自転車保険は以下のような方におすすめです。
【家族型の自転車保険がおすすめな方】
- 自転車を利用する家族の人数が多い
- 保険の管理をシンプルにしたい
前述のように、家族型の自転車保険はひとつの契約で家族全員が補償を受けられます。家族それぞれが自転車保険に加入する手間を省けるため、自転車を利用する家族の人数が多い場合はとくに向いています。
また、家族が別々の保険に加入していると保険の管理が複雑になりやすいですが、家族全員をまとめてカバーできる家族型の自転車保険なら、保険の管理がシンプルになります。補償内容の見落としを避けられたり不要な保険料を支払わずに済んだりすることで無駄なく補償を受けることができるでしょう。
家族型の自転車保険で受けられる補償

一般的な自転車保険は、相手にケガをさせたり、モノを壊したりした場合の損害賠償責任に備えられる「個人賠償責任保険」と、ご自身や家族のケガに備えられる「傷害保険」がセットになっています。それぞれの保険のおもな違いは以下のとおりです。
自転車事故に備えるための各保険の補償対象
保険の種類 | 事故の相手 | ご自身 | |
---|---|---|---|
生命・身体 | 財産(もの) | 生命・身体 | |
個人賠償責任保険 | ○ | ○ | × |
傷害保険 | × | × | ○ |
出典:一般社団法人 日本損害保険協会 「自転車事故と保険」をもとに作成
以下でより詳しい補償内容について解説します。
事故の相手へのケガやモノに対する補償
相手にケガをさせたり、相手のモノを壊したりして法律上の損害賠償責任が発生した場合に備える保険を「個人賠償責任保険」といいます。
個人賠償責任とは、法律上の義務として他人に与えた損害を補填する責任です。自転車事故により相手にケガを負わせた場合や相手のモノを壊してしまった場合、当事者に損害賠償責任が生じます。
損害賠償の方法は金銭賠償が基本です。自転車事故の場合は、ケガの治療費やモノの修理費などが例としてあげられます。「重傷を負わせてしまった」「高額なモノを壊してしまった」など、事故内容によっては賠償金が高額になる場合もあり、ご自身だけでは支払いが難しくなる可能性も考えられます。
しかし、損害賠償責任の補償を受けられる自転車保険に加入していると、こうした高額な賠償金を賄うことができます。また、保険によっては自転車事故以外の賠償責任も補償してくれます。
なお、未成年の子どもが自転車事故を起こしてしまった場合には、親に損害賠償責任が生じます。「家族のなかで自転車を利用するのは子どもしかいないから」と保険への加入を見送っていると、子どもが事故を起こした際に高額な賠償金を請求される可能性があるため注意が必要です。
ご自身や家族のケガの補償
「傷害保険」は、ご自身や家族がケガをした場合に備えられる保険です。
一般的な自転車保険には、自転車の運転中に負ったケガを補償してくれる傷害保険が付いています。たとえば、「自転車同士で衝突してケガをした」「自転車で電柱にぶつかってケガをした」場合は、傷害保険による補償を受けられます。
補償の対象となる事故は保険によって異なり、補償対象を自転車事故に限定している保険、自転車事故以外の事故で負ったケガも補償してくれる保険などさまざまです。ご自身や家族のニーズに応じて、適した保険を選びましょう。
また、受けられる補償も保険ごとに異なります。以下は傷害保険で受けることができる補償内容の一例です。
【障害保険の補償内容の例】
- 死亡保険金
- 入院保険金
- 手術保険金
- 通院保険金
- 後遺障害保険金
家族型の自転車保険の加入時のチェックポイント

家族型の自転車保険に初めて加入する場合、どのような点に注目して保険を選ぶべきか悩んでしまうこともあるでしょう。ここからは、家族型の自転車保険へ加入する際にチェックしておきたいポイントを紹介します。
補償内容に見合う保険料か
自転車保険の保険料は、個人向けの保険が年間2,000円〜3,000円程度、家族型の保険は年間5,000円〜6,000円程度が相場です。1契約あたりの保険料を見比べると家族型の保険のほうが高い傾向にあるものの、3人以上の家族がいる場合は個人向けの保険を個別に契約するよりも、家族型の自転車保険に加入したほうが1人あたりの保険料をおさえられます。
ただし、補償内容を加える場合は、保険料が高くなるケースもあります。家族型の自転車保険に加入する際は保険料が補償内容に見合っているかを確認し、保険料の支払いによる家計への影響も考慮しながら選びましょう。
なお、補償内容と保険料を比較しながら家族型の自転車保険を選びたい方は、以下の比較サイトを活用するとよいでしょう。
損害賠償責任の補償
家族型の自転車保険に加入する際は、損害賠償責任の補償内容の確認も重要です。
前述のように、自転車事故によって高額な損害賠償請求が発生した事例は存在しますが、以下はその高額な損害賠償請求が発生した事例の一部をまとめたものです。
自転車事故で高額な損害賠償を命じられた事例
判決認容額※ | 事故の概要 |
---|---|
9,521万円 | 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折などの傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、2013年7月4日判決) |
9,330万円 | 男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折などで約2ヵ月後に死亡した。(高松高等裁判所、2020年7月22日判決) |
9,266万円 | 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失など)がのこった。(東京地方裁判所、2008年6月5日判決) |
6,779万円 | 男性が夕方、ペットボトルを片手に、スピードを落とさずに下り坂を走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷などで3日後に死亡した。(東京地方裁判所、2003年9月30日判決) |
5,438万円 | 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷などで11日後に死亡した。(東京地方裁判所、2007年4月11日判決) |
※判決認容額は、上記裁判の判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(概算額)。
上記のほかにも、数千万円単位の高額な損害賠償請求が発生した事例はあります。自転車保険に加入する際は、こうした高額な賠償金に備えられる商品を選ぶことが大切です。
損害賠償責任の補償内容は保険によって異なり、数千万円から1億円や2億円まで補償する保険がある一方で、無制限で補償してくれる保険もあります。高額な賠償金が発生した事例も参考にしつつ、ご自身が安心できる補償がある自転車保険を選びましょう。
ただし、上記のように、過去には1億円近い賠償金の支払いが命じられた事例がある点を踏まえると、1億円という補償額が保険選びのひとつの目安になるでしょう。さらにロードバイクなど速度が出やすい自転車に乗っている場合は、事故を起こした際の被害が大きくなるケースが予想されるため、補償額が高いプランに加入すると安心です。
なお、補償額が上がるにつれて保険料も上がります。したがって、保険料とのバランスも考えながら加入する保険を決めましょう。
家族型の自転車保険加入時の注意点

家族型の自転車保険に加入する際は、いくつかの注意点があります。ここからは、家族型の自転車保険加入時の注意点を紹介します。
現在加入している保険の補償と重複していないか
家族型の自転車保険の加入の際には、現在加入している別の保険と補償内容が重複していないかを確認しましょう。たとえば、現在、自動車保険に加入しているという場合には、「自転車特約」も付帯されているケースがあります。その場合には、自転車保険と補償内容が重複する可能性があります。
仮に複数の保険を契約していても、損害賠償責任を負ったときは実際の損害額を超えて保険金を受け取ることはできません。保険料をおさえるためにも、加入予定の自転車保険と加入中の保険の補償内容が重複している場合は、契約内容を見直してみると良いでしょう。
ただし、ひとつの保険だけでカバーしきれないほどの高額な賠償金が発生した場合など、状況によっては補償内容の重複が役立つケースもあります。たとえば、3,000万円までを補償する自転車保険、1,000万円までを補償する別の保険にそれぞれ加入した状態で事故を起こしてしまい、4,000万円の損害賠償金が発生したとします。
ひとつの保険だけでは4,000万円に足りませんが、この場合は各保険の保険金を合算して賠償金を支払えます。そのため、補償内容の重複が必ずしも無駄になるとはいえません。
また、保険によっては日常生活のケガを補償する傷害特約が付帯する場合もあります。現在加入中の保険に付帯する傷害特約の補償が自転車保険の傷害保険の補償と重複しないかどうか、加入前によく確認しておきましょう。
家族一人ひとりの補償の見直しがしにくい
家族型の自転車保険は、家族一人ひとりの補償を見直しにくい点に注意が必要です。
ひとつの保険で家族全員をカバーする家族型の自転車保険は、一人ひとりの補償内容を調整できない場合があります。たとえば、6,000万円まで補償する家族型の自転車保険に加入している状況で「よく自転車を利用する子どもだけ1億円の補償を受けられるようにしたい」と思っても、同じ保険に加入している限り、受けられる補償は家族全員6,000万円までです。
そのため、家族型の自転車保険は、家族全員が納得できる補償内容の商品を選ぶことが大切です。これから加入する予定の方は、家族と相談しながら自転車保険を決めることをおすすめします。
まとめ
家族型の自転車保険に加入すると、家族全員のケガや損害賠償責任に備えられます。また、家族が個別で自転車保険に加入する場合に比べると、保険料をおさえやすくなります。家族が自転車を利用する機会が少しでもあるのなら、万が一の場合に備えて家族型の自転車保険に加入しておくことをおすすめします。
なお、家族型の自転車保険の具体的な補償内容は、保険やプランによって異なりますので、事前によく比較してから決めましょう。保険の比較サイトを利用すると、複数の保険の補償内容や保険料、特徴などを一覧で見比べられます。
ひとつひとつの自転車保険について、それぞれ個別に確認をすると手間もかかりますが、保険の比較サイトを利用すれば複数の商品を比較でき、ご自身のニーズにあった商品をより効率的に探せます。気になる保険がみつかった場合は、そのまま申込みに進むことも可能であるため便利です。ぜひ活用してはいかがでしょうか。

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監修者情報
ファイナンシャルプランナー新井智美

ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定※を受けると同時に、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。
- 資格情報
- 日本FP協会会員(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2025年2月18日)
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