葬式の保険とは?保険の種類やメリット・デメリット、選び方を解説
葬式は大切な方々に別れを告げる人生最期のセレモニーです。葬式にはさまざまな形式がありますが、一般的にはその費用は「基本料金」「飲食費」「返礼品」の3つに大別され、参列者の数によって増減はするものの、まとまった金額を用意する必要があります。のこされた家族の負担を軽減するためにも、生前から葬式代に備えておくことが大切です。
この記事では、葬式にかかる費用に備えるための保険の種類や選び方を解説します。
葬式の保険とは
葬式には「一般葬」や「1日葬」、「家族葬」などいくつかの種類があります。それぞれ費用は異なりますが、ある程度まとまった金額を用意しなければならない点は変わりません。
ただ、コロナ禍以降は、家族葬や市民葬のように葬式の規模を縮小する方が増えており、お通夜をおこなわない告別式からの葬式であれば20万円程度で済む事例もあります。ただし、20万円程度とはいっても、まとまったお金を短期間で用意するのは難しい場合もあるでしょう。
また、遺産を葬式代にあてようとしても、亡くなった本人の銀行口座が凍結されて預貯金をすぐに引き出せない、遺産分割が終わるまで自由に使えないなどの理由で、のこされた家族が葬式代を一旦立て替えなくてはならないケースもあり得ます。しかし、葬式代に備えられる保険に加入するなど生前から備えておけば、のこされた家族がすぐに保険金を受け取ることができ、葬式代の支払いにあてられます。
なお、葬式の保険は葬式代に備えるための保険のことで、「葬儀保険」などの名称で販売されています。そのほか、生命保険である「終身保険」「定期保険」「養老保険」「互助会」なども、葬儀費用の備えとなります。
【葬式代に備えることができる保険】
- 葬儀保険
- 終身保険
- 定期保険
- 養老保険
それぞれの特徴をみていきましょう。
葬儀保険
葬儀保険とは、のこされた家族の葬式の準備にかかる費用の負担軽減を目的とした保険で、死亡時に保険金を受け取る保険です。
葬儀保険はおもに少額短期保険業者が取り扱っています。少額短期保険とは、保険業のうち一定の事業規模の範囲内で比較的保険金額が少額(死亡保険の場合300万円以下、区分合計上限1,000万円)で、保険期間が短期(保険期間1年以内、損害保険の場合2年以内)の保険のことです。
葬儀保険は基本的に1年更新の掛け捨て型死亡保険で、一般的な生命保険に比べると保険料はお手頃である傾向があります。また、受取人の指定や保険会社から葬儀会社に直接葬儀費用を支払ってもらえることもあるため、手続きの負担が軽くなるメリットもあります。
なお、葬儀保険には通常「保険料定額タイプ」と「保険金定額タイプ」の2種類があります。保険料一定タイプは、毎月支払う保険料が一定で、更新時の年齢に応じて死亡保険金額が減っていきます。一方、保険金定額タイプは、死亡保険金額が契約期間にかかわらず一定で、更新時の年齢に応じて保険料が上がります。
終身保険
終身保険とは、保険期間の定めがなく、死亡保障や高度障害保障などの保障が一生涯続く保険のことです。被保険者が死亡した場合には死亡保険金、高度障害状態となった場合には高度障害保険金が支払われます。
満期がないため満期保険金はありませんが、途中で解約したときには解約返戻金を受け取ることができます。
なお、終身保険には貯蓄機能があり解約返戻金がある分、一般的な葬儀保険や定期保険よりも保険料が高い傾向にあります。しかし保険会社によっては、解約返戻金額を低くして保険料をおさえる「低解約返戻金型終身保険」もあります。
また、保険料を払込む期間は、保険料の払込みが一生涯続く「終身払」と一定期間で満了する「有期払」から選択可能です。一般的に「終身払」は「有期払」に比べて毎回払込む保険料が安くなります。ただし、保険料の払込みが一生涯にわたることを考慮する必要があります。
定期保険
定期保険とは、契約で定めた保険期間中に被保険者が死亡した場合、死亡保険金が支払われる保険です。保障は一定期間のみで貯蓄性がないため、保険料が比較的おさえられます。満期保険金がない、いわゆる掛け捨て型の保険で、途中解約しても解約返戻金はまったくないか、あってもわずかです。
なお、保険期間は「全期型」と「更新型」の2種類があります。全期型とは、30年間、60歳までなど、最初に定めた保険期間が満了するまで一定の保険料で保障され、満期を迎えると更新されることなく契約が終了するタイプです。
一方、更新型とは、5年、10年などを保険期間として設定し、満期を迎えたときは健康状態に関係なく同じ条件で契約を更新でき、保障が継続されるタイプです。ただし保険料は更新時の年齢で再計算されるため、通常は更新前よりも高くなっていきます。
養老保険
養老保険とは、契約で定めた一定の保険期間中に被保険者が死亡した場合には死亡保険金が支払われ、生存して満期を迎えた場合には死亡保険金と同額の満期保険金が支払われる保険です。
養老保険は貯蓄性のある保険であり、途中解約した場合には解約返戻金を受け取ることができ、そして先述したように満期まで生存した場合には満期保険金を受け取ることができます。ただし、解約返戻金や満期保険金の額は、払込んだ保険料総額を下回る場合もあります。
保険金の受け取り方は、「一時金」が主流ですが、保険会社により「年金」を選択できる場合があります。
葬式代に備える保険に加入するメリット・デメリット
葬式代に備えことができる保険として先ほどご紹介した各保険に加入するメリット・デメリットを以下で解説します。それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、保険を選ぶ際の判断材料にしてください。
葬儀保険のメリット・デメリット
葬儀保険には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
葬儀保険のメリット・デメリット比較
メリット | デメリット |
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葬儀保険は、一般的な生命保険に比べて保険料が手頃で、健康状態に不安があっても加入できる商品もあったり、高齢でも加入できたりするなどのメリットがあります。その反面、葬儀保険に長期間加入していると払い込んだ保険料の総額が受け取る保険金を上回る場合もあり、加入するタイミングについて十分な検討が必要です。
葬儀保険について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
終身保険のメリット・デメリット
終身保険には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
終身保険のメリット・デメリット比較
メリット | デメリット |
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終身保険には満期がなく保障が一生(終身)続くため、亡くなると保険金が支払われます。被保険者がいつ亡くなっても、指定した遺族に死亡保険金を確実にのこせるため、葬儀費用として利用することができます。ただし、葬儀保険や定期保険よりも保険料は高い傾向があります。
定期保険のメリット・デメリット
定期保険には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
定期保険のメリット・デメリット比較
メリット | デメリット |
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定期保険は、お手頃な保険料で一定期間の保障を確保できます。ただし、貯蓄性はないため、満期保険金がない点に注意が必要です。
養老保険のメリット・デメリット
養老保険には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
養老保険のメリット・デメリット比較
メリット | デメリット |
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※加入して間もない時期に途中解約した場合には解約返戻金を受け取ることができないケースもあります。
養老保険は、保険期間中に被保険者が死亡してもしなくても保険金を受け取ることができ、途中解約時には解約返戻金を受け取ることができます。しかし、葬儀保険や定期保険に比べて保険料は割高であったり、世の中の金利水準が下がることにより満期保険金や解約返戻金が払込んだ保険料総額を下回ったりする場合もあります。
葬式に必要な費用の相場
一般財団法人 日本消費者協会の「第12回葬儀についてのアンケート調査報告書」※によると、2020年以降の一般的な葬式に必要な費用の相場は以下のとおりです。
一般的な葬儀の費用相場
葬儀の費用 | 相場 | |
---|---|---|
葬儀一式費用 | 111.9万円 | 161万9,000円 |
通夜からの飲食接待費 | 12.2万円 | |
寺院へのお布施 | 42.5万円 | |
お香典の額 | 74.1万円 |
※「葬儀一式費用」「通夜からの飲食接待費」「寺院へのお布施」等の項目の金額は、各項目の費用が発生した人の平均額であり、これらの合計と葬儀費用の合計(161万9,000円)は一致しません。
ほかにも仏壇購入費や遺品整理費用など、遺族は葬式においてさまざまな費用に対する負担が必要となります。
葬式代に備える保険への加入がおすすめな方
葬式代に備える保険は、以下のような方におすすめです。
【葬式代に備える保険への加入がおすすめな方】
- 終活をしている方
- 葬式の費用で家族に迷惑をかけたくない方
- 親の葬式の費用をしっかり備えたい方
葬式を準備するためには、早急にまとまった費用を用意しなければならない場合もあります。そのため、遺産があってもすぐに使えないケースもあり、のこされた家族に一時的であれ経済的な負担がかかる可能性があります。
葬式に備える保険は、「将来を見据えて終活をしている」「葬式の費用を用意しておきたい」というご自身の葬儀に対してはもちろん、ご両親の葬式の費用を準備したいという方にも便利です。
葬式の保険で生前から備えておけば、のこされた家族がスムーズに葬式をおこなえるでしょう。
葬式代に備える保険の選び方のポイント
葬式代に備える保険を選ぶ際に、おさえておきたいポイントは以下のとおりです。
【葬式代に備える保険を選ぶ際のポイント】
- ① すぐに現金を受け取ることができるか
- ② 告知・診断書は必要か
- ③ 保障範囲・保険料
① すぐに現金を受け取ることができるか
まず、葬式代を備える際のポイントとして確認しておきたいのが「すぐに現金を受け取ることができるか」という点です。保険金が支払われるまでの日数は保険会社や保険の種類により異なるため、事前に確認しておくことが大切です。葬儀保険の場合は、保険金の支払いが比較的早く、死亡保険金請求書類を受け付けた日から翌営業日から5営業日に死亡保険金を受け取ることができるケースが一般的です。なかには、死亡保険金請求書類の受付後、翌営業日に保険金を受け取ることができる保険会社もあります。
② 告知・診断書は必要か
次に確認しておきたいのが、加入にあたり告知や医師の診断書などが必要になるのか、という点です。
生命保険や葬儀保険などに加入する際には現在の健康状態や過去の病歴などを保険会社に告知する必要があります。生命保険の場合、状況によっては医師の診断書の提出が求められるケースもありますが、葬儀保険の場合は医師の診断書の提出は求められないことが一般的です。ただし、生命保険も葬儀保険も商品や加入プランによって告知の内容や診断書の要・不要は異なるため、申込前に確認することが大切です。
③ 保障範囲・保険料
最後に、保険の保障範囲や保険料についてもチェックしましょう。葬儀代に備えることができる保険には、葬儀保険、終身保険、定期保険、養老保険などさまざまなものがありますが、保障範囲や保険料、加入条件などはそれぞれの保険で異なりますので、ご自身に必要なものを選ぶ必要があります。また、保険料が生活の負担にならないかなども大切なポイントです。
比較サイトで葬式に備える保険を選ぼう
ご自身が亡くなった直後、遺族が葬儀にかかるまとまったお金を負担するのは大変ですが、葬式代の負担を軽減するためには、葬儀保険、終身保険、定期保険、養老保険などを活用する方法があります。
それぞれの保険にメリット・デメリットがあるため、条件にあった保険を選びましょう。また、数ある保険会社から葬式に備えるための保険を選ぶのは手間がかかるため、保険料や保障内容を一覧で確認できる比較サイトの利用がおすすめです。
まとめ
葬儀一式費用、通夜からの飲食接待費、寺院へのお布施を合わせた葬儀費用の全国平均相場は161万9,000円とされています(2022年に日本消費者協会が発表した「第12回 葬儀についてのアンケート調査報告書」による)。
そのため、のこされた家族の負担を軽減するためには、ご自身で生前から備えておくことが大切であり、そのひとつの方法が保険への加入です。葬儀保険のほかにも、終身保険、定期保険、養老保険など、葬儀費用の準備ができる保険にはさまざまなものがあります。ご自身の条件にあう保険はないか検討してみてはいかがでしょうか。
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監修者情報
ファイナンシャルプランナー竹国弘城
RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。趣味はサウナ(サウナ・スパプロフェッショナル)。
- 資格情報
- 1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2024年12月19日)
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