iDeCoと個人年金保険の違いを比較!併用についても解説

天秤にのせられたiDeCo、個人年金保険と書かれたパネル
公開日:2025年3月17日

人生100年時代に向けて長い老後生活が予想されるなか、老後資金に不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
iDeCo(個人型確定拠出年金)や個人年金保険は、どちらも老後資金を準備する資産形成の手段のひとつです。いずれも公的年金の上乗せとして備えられますが、所得控除の種類や受け取り時の税金、受け取るタイミングなど、いくつかの違いがあります。

この記事では、iDeCoと個人年金保険の違いを解説します。また、iDeCo・個人年金保険がおすすめの方やiDeCoと個人年金保険の併用ができるかどうかについても解説するため、ぜひ参考にしてください。

iDeCoも個人年金保険も老後に向けた資産形成の手段

木製のブロックを手で積み上げている様子

iDeCo(個人型確定拠出年金。以下、iDeCoといいます)と個人年金保険は、どちらも公的年金に上乗せして備えられる私的年金のひとつです。

日本の年金制度は、以下のような3階建ての構造となっています。1階部分の「国民年金」と2階部分の「厚生年金」を総称して「公的年金」といいます。

日本の年金制度

区分 概要
国民年金(1階部分) 20歳以上60歳未満の方が加入する年金制度
厚生年金(2階部分) 会社員や公務員などが加入する年金制度
私的年金(3階部分) 任意で加入する年金制度(iDeCoや個人年金保険など)

そして、3階部分にあたるのが、iDeCoや個人年金保険などの個人が任意で加入できる「私的年金」です。

私的年金のひとつである「iDeCo」と「個人年金保険」の概要を、以下でそれぞれ解説します。

iDeCoとは?

iDeCoは、老後の資金づくりのために任意で加入できる年金制度です。

加入者が掛金を拠出し、投資信託や定期預金など、みずから選んだ方法で運用します。そして、60歳以降に掛金と運用益を給付として受け取ります。受け取る金額は運用実績によって変動するため、利益を得られる場合もあれば、投資した金額を下回るケースもあります。

なお、iDeCoに加入できるのは、20歳以上65歳未満の方です(一定の条件を満たさない方を除く)。

また、掛金は毎月5,000円から拠出でき、自営業者・会社員・会社員の被扶養者など国民年金の加入区分に応じて上限(拠出限度額)が設定されています。

iDeCoの加入資格と拠出限度額

iDeCoの加入資格と拠出限度額

1 企業型DCとは、企業型確定拠出年金のことをいう。

2 DB等とは、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済制度をいう。

3 企業年金等(企業型DC、DB等)に加入している場合 月額5.5万円-事業主の拠出額 (各月の企業型DCの事業主掛金額+DB等の他制度掛金相当額)(ただし、月額2万円を上限)

4 任意加入被保険者(国民年金に任意で加入した方:60歳以上65歳未満の方、または、20歳以上65歳未満の海外居住者の方で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない方)も含む。


iDeCoは、税制上の優遇措置が3つ設けられており、所得税と住民税を軽減できる点が特徴です。

【iDeCoの3つの税制優遇措置】

  • 掛金が全額所得控除の対象となる
  • 運用益が非課税で再投資される
  • 受給時に公的年金等控除または退職所得控除の対象となる

個人年金保険とは?

個人年金保険は、老後資金に備える手段として、みずから申込みをして加入できる貯蓄型の保険です。保険料を払込み、契約時に定めた一定の年齢になると年金を受け取ることができます。

個人年金保険の特徴は、保険ならではの保障がある点です。たとえば、年金の受給開始日までに被保険者が亡くなった場合には、死亡保険金が支払われます。また、個人年金保険加入中に支払った保険料は、一定の条件を満たせば「個人年金保険料控除」の対象となり、所得税と住民税が控除されます。

個人年金保険の種類は、大きく分けて「定額個人年金保険」と「変額個人年金保険」の2つです。

個人年金保険の種類

項目 特徴
定額個人年金保険 契約時に将来受け取ることができる年金額が確定する
変額個人年金保険 運用実績にもとづいて将来の年金額や解約返戻金の額が変動する

定額個人年金保険と変額個人年金保険の違い

一般的に、定額個人年金保険は契約時に定めた予定利率(保険会社が契約者に約束する運用利回り)で運用されるため、将来の年金額は契約時点で確定します。そのため、保険会社が破綻したり契約を中途解約したりしなければ、基本的に払込んだ保険料を下回ることはありません。

ただし、着実に積立ができる一方で、インフレ(物価の上昇)が起きると資産が目減りする点には注意が必要です。たとえば、100万円を受け取ることができる定額個人年金保険を契約していた場合、物価が2%上昇して100万円のものが102万円になったとしても、定額個人年金保険で受け取ることができる年金の額は100万円のまま変わりません。

一方、変額個人年金保険は、積立期間の運用実績によって将来の年金額が決まります(将来の年金原資あるいは年金受取総額に関して一時払保険料分などを保証するものもある)。株式や債券を中心に資産運用をし、運用実績によって将来受け取れる年金額、死亡給付金額、解約返戻金が変動する個人年金保険です。


年金の受け取り期間による個人年金保険の種類

個人年金保険は、年金を受け取る期間の違いによって、おもに以下の3種類に分けられます。

【年金の受け取り期間による個人年金保険の種類】

  • 確定年金:契約時に定めた一定期間、年金を受け取ることができる
  • 保証期間付終身年金:保証期間中は生死に関係なく年金を受け取ることができ、以後、生存している限り一生涯受け取ることができる
  • 有期年金:一定期間中、生存している限り年金を受け取ることができる

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iDeCoと個人年金保険の違いを比較

虫眼鏡とパソコンのキーボード

iDeCoと個人年金保険はどちらも老後の資金づくりに役立つ制度ですが、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。また、所得控除の種類、受け取り時の税金、受け取るタイミングなどにも違いがあります。

iDeCoと個人年金保険のおもな違い

iDeCo 個人年金保険
所得控除 小規模企業共済等掛金控除 生命保険料控除
運用益 非課税 非課税
(解約時または年金受け取り開始時まで繰り延べ)
受け取り時の控除
  • ●公的年金等控除(年金で受け取った場合)
  • ●退職所得控除(一時金で受け取った場合)
なし
受け取るタイミング 原則60歳以降 契約時に決めた一定年齢
解約 不可(掛金の拠出停止は可)

以下では、iDeCoと個人年金保険の違いについて詳しく解説します。

所得控除の違い

iDeCoと個人年金保険は、どちらも所得控除の対象です。所得控除とは、納税者個人の事情を税額に反映させるための制度で、税金を計算する際に所得から一定額を差し引くことができるしくみです。

【iDeCoと個人年金保険の所得控除の違い】

  • iDeCoの所得控除:小規模企業共済等掛金控除
  • 個人年金保険の所得控除:生命保険料控除

それぞれの所得控除を、以下で詳しく解説します。


iDeCoの所得控除

iDeCoで拠出した掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。

たとえば、iDeCoで掛金を月1万円拠出したと仮定しましょう。掛金の全額(年間12万円)を所得から差し引くことができるため、所得税10%・住民税10%であれば税金が年間2.4万円軽減されます。

掛金を月1万円拠出した場合に軽減される税金

項目 軽減される税金
所得税(10%) 1万2,000円
住民税(10%) 1万2,000円
合計 2万4,000円

なお、所得控除に加え、運用益に税金がかからない点もiDeCoの特徴のひとつです。金融商品で運用益を得る場合、通常は20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの運用益は非課税で再投資されます。


個人年金保険の所得控除

個人年金保険では、払込んだ保険料に応じて「生命保険料控除」が受けられます。

生命保険料控除の種類は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つです。

個人年金保険料税制適格特約が付加されていなければ「一般生命保険料控除」の対象になりますが、付加されている個人年金保険であれば「個人年金保険料控除」の対象となるため、一般生命保険料控除とは別枠で控除が受けられます。

なお、個人年金保険料税制適格特約を付加するためには、「年金受取人が契約者または配偶者である」、「保険料を10年以上にわたって定期的に払込む」などの条件を満たす必要があります。

個人年金保険料控除の控除額は、払込んだ保険料に応じて所得税が上限4万円、住民税が上限2.8万円です(新制度の場合※5)。

生命保険料控除に関して詳しく知りたい方は、国税庁ウェブサイト「No.1140 生命保険料控除」※6をご覧ください。


5 生命保険料控除制度には、2012年1月1日以降に結んだ契約を対象とする「新制度」と2011年12月31日以前に結んだ契約を対象とする旧制度があり、控除の種類や控除額が異なります。

※6 出典:「No.1140 生命保険料控除」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm)

受け取り時の税金の違い

iDeCoと個人年金保険は、受け取り時の税金にも違いがあります。

iDeCoの給付金の受け取り方法は、「年金」と「一時金」の2種類です(金融機関によっては併用も可能)。年金で受け取る場合は「雑所得」、一時金で受け取る場合は「退職所得」に該当します。ただし、年齢や収入に応じて控除を受けられます。

受け取り時の控除

受け取り方法 受け取り時の控除
年金として受け取る場合 公的年金等控除※7
一時金として受け取る場合 退職所得控除※8

収入金額から一定額を差し引いて税金を計算できるため、負担する税金を軽減することが可能です。

一方、個人年金保険の保険金は、年金として受け取る場合は「雑所得」、一時金として受け取る場合は「一時所得」の課税対象となります。会社員などの給与所得者の場合は年末調整で手続きをおこないますが、退職後は公的年金などとあわせてご自身で確定申告をおこなう必要があります。

※7 出典:「No.1600 公的年金等の課税関係」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm)
※8 出典:「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm)

受け取るタイミングの違い

iDeCoは、途中で掛金を減額したり、拠出を停止したりすることは可能ですが、原則として60歳になるまで掛金や運用益を引き出すことはできません。

一方、個人年金保険は、生命保険会社が定める範囲内で、年金の受け取り開始年齢を契約時に決定します。また、どうしてもお金が必要な場合は、保険を中途解約することで解約返戻金を受け取ることができます。

ただし、払込んだ保険料の一部は保険金の支払いや生命保険会社の経費にあてられるため、一般的に、中途解約した際の解約返戻金は払込んだ保険料よりも少なくなります。

なお、解約返戻金とは、保険契約を解約した際などに保険会社から契約者に支払われるお金です。

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iDeCoと個人年金保険、どっちを選ぶべき?

パソコンを一緒にみている夫婦とブタの貯金箱

iDeCoと個人年金保険はいずれも公的年金の上乗せとして加入できる制度ですが、どちらが適しているかは人によって異なります。それぞれの特徴や違いを踏まえ、ご自身にあった方法を選びましょう。

ここでは、iDeCoと個人年金保険が向いている方の特徴を詳しく解説します。

iDeCoがおすすめの方

iDeCoが向いている方の一般的な特徴は、以下のとおりです。

【iDeCoが向いている方】

  • 運用方法をご自身で決めたい、または決める時間を取れる方
  • 60歳になるまで使う予定がない余剰資金で掛金を拠出できる方
  • 掛金を多く拠出できる方

iDeCoは、運用商品をご自身で選んで運用するしくみとなっています。そのため、投資に関する基本的な知識を身につけ、複数の運用商品のなかからどのような組み合わせでどう配分するかをご自身で決めたい方に向いています。

ただし、iDeCoで拠出した掛金や運用益は、原則60歳になるまで引き出せません。そのため、掛金は60歳になるまで使う予定のない余剰資金から拠出する必要があります。

また、iDeCoの掛金は全額(上限あり)が所得控除の対象となるため、掛金を多く拠出した方が所得税と住民税を軽減できます。

とくに、個人事業主は拠出限度額が月額6万8,000円ともっとも高く設定されているため、所得控除の効果が大きくなります。

ただし、この6万8,000円は、国民年金基金または国民年金付加保険料との合算であるため、これらの制度との併用も含めて検討しましょう。

  • 国民年金基金:掛金を拠出することで公的な年金を上乗せできる制度。
  • 国民年金付加保険料:国民年金保険料に月額400円を上乗せして納付する保険料で、納付した月数に応じて将来の老齢基礎年金の額を増やすことができる制度。

個人年金保険がおすすめの方

個人年金保険が向いている方の一般的な特徴は、以下のとおりです。

【個人年金保険が向いている方】

  • 運用を保険会社に任せたい方
  • 安定的に老後の資金づくりをしたい方
  • 死亡保障を得たい方
  • 専業主婦(主夫)の方

ご自身に投資に関する知識がなく、運用を保険会社に任せたい方は、個人年金保険を検討しましょう。

また、個人年金保険は契約時点で将来の年金原資が確定するため、リスクを取って積極的に投資するよりも将来の年金額を確定させて安定的かつ計画的に老後に備えたい方に向いています。

さらに、個人年金保険は保険商品であるため、死亡保障が得られる点も特徴のひとつです。老後に備えつつ死亡保障も得たい方は、個人年金保険を検討すると良いでしょう。

加えて、個人年金保険は専業主婦(主夫)の方にもおすすめです。iDeCoの所得控除は、本人の所得からのみ控除されるため、収入のない専業主婦(主夫)は所得控除を受けられません。

一方、個人年金保険では、妻(夫)が契約者となっている保険料を夫(妻)が払込んだ場合、夫(妻)が所得控除を受けられます。そのため、収入のない専業主婦(主夫)の方は個人年金保険を優先的に検討すると良いでしょう。


新井智美

新井FPからの
ワンポイントアドバイス

自営業者や個人事業主などはiDeCoを上限まで利用するのがおすすめ

自営業者や個人事業主・フリーランスであれば、iDeCoを上限まで利用することをおすすめします。なぜなら、自営業者や個人事業主などは厚生年金被保険者ではなく、公的年金として受け取れるのは国民年金だけだからです。また、上限額まで利用することで控除可能額が大きくなる点もメリットです。

会社員や公務員の場合、職場によっては企業型確定拠出年金(DC)を導入しているところもあり、65歳まで掛金を拠出できるため、利用するのがおすすめです。ただし、企業型確定拠出年金では選べる商品が限られているため、補完する目的でiDeCoを併用しても良いでしょう。

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iDeCoと個人年金保険は併用できる?

運用報告書と通帳を見ながら電卓で計算をし相談している2人

結論から述べると、iDeCoと個人年金保険は併用が可能です。併用した場合、年末調整または確定申告で手続きをおこなえば、iDeCoと個人年金保険の両方で所得控除を受けることができます。

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象ですが、拠出できる掛金には上限があります。そのため、所得控除をより活用したい方は個人年金保険との併用を検討すると良いでしょう。

また、iDeCoは、商品の価格変動や景気の影響を受けるため投資した金額を下回る可能性があります。一方、定額個人年金保険は契約時に年金額が確定するため、iDeCoと併用することでリスク分散を図ることも可能です。

さらに、併用することでといざというときの現金化が可能になります。個人年金保険は途中で解約することができますが、iDeCoは原則として60歳まで解約できません。どうしてもお金が必要な事態に備えて、個人年金保険と併用することも手段のひとつです。

ただし、個人年金保険を中途解約すると保障がなくなることや、解約返戻金が払込んだ保険料を下回る可能性がある点には注意が必要です。

iDeCoと個人年金保険を併用した場合の控除額・税金シミュレーション

iDeCoと個人年金保険(個人年金保険料控除の対象となる保険契約)を併用し、掛金/保険料がそれぞれ毎月2万円だった場合の控除額と税金のシミュレーションを紹介します。

【iDeCoの控除額と軽減できる税金】

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象のため、控除額は以下のとおりです。

  • 控除額:所得税24万円、住民税24万円(計算式:2万円×12ヵ月=24万円)

軽減できる税金(所得税・住民税)の額は、以下のように計算できます(所得税率20%として計算)。

  • 所得税:24万円×20%=4万8,000円
  • 住民税:24万円×10%=2万4,000円

【個人年金保険の控除額と軽減できる税金】

一方、個人年金保険の場合、年間払込み保険料額が8万円を超えると、控除額の上限は一律で以下の金額になります。

  • 控除額:所得税4万円、住民税2万8,000円※9
    (計算式:年間払込み保険料額24万円(2万円×12ヵ月)で上限適用)

軽減できる税金(所得税・住民税)の額は、以下のように計算されます(所得税率20%として計算)。

  • 所得税:4万円×20%=8,000円
  • 住民税:2万8,000円×10%=2,800円

iDeCoと個人年金保険の控除額と軽減できる税金の額

項目 控除額 軽減できる税金の額
所得税 住民税 所得税 住民税
iDeCo 24万円 24万円 4万8,000円 2万4,000円
個人年金保険
(新制度の場合)
4万円 2万8,000円 8,000円 2,800円
併用した場合の合計 28万円 26万8,000円 5万6,000円 2万6,800円

このように、iDeCoと個人年金保険を併用すれば軽減できる所得税・住民税の額が大きくなる場合があります。

9 個人年金保険以外で払込んだ生命保険料は考慮していません。


iDeCoと個人年金保険を併用する場合の注意点

実際の控除額や税額は、掛金/保険料や所得税率によって変わります。たとえば、すでにほかの保険契約で一般生命保険料控除を上限まで利用している場合、新たに加入する個人年金保険が一般生命保険料控除の対象になると、それ以上控除を受けられません。

また、生命保険料控除で控除できる上限金額は以下のように決まっています。

  • 所得税:12万円(「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の合計)
  • 住民税:7万円(同上)

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iDeCoと個人年金保険の乗り換えはできる?

スマートフォンとタブレットをみながら検討をしている女性

iDeCoから個人年金保険、または個人年金保険からiDeCoに乗り換えることは可能です。その方法は以下のとおりです。

【iDeCoと個人年金保険を乗り換える方法】

  • iDeCoから個人年金保険へ乗り換える場合:掛金の拠出を停止して個人年金保険料にあてる
  • 個人年金保険からiDeCoへ乗り換える場合:解約返戻金をiDeCoの掛金にあてる

しかし、どちらの場合でも注意点があるため、iDeCoと個人年金保険の併用も含め、ご自身の状況にあわせて慎重に検討しましょう。以下で詳しく解説します。

iDeCoから個人年金保険に乗り換える場合

iDeCoの掛金の拠出を停止し、拠出していた掛金を個人年金保険の保険料にあてることで、毎月の負担額を変えずに乗り換えることが可能です。

iDeCoの掛金の拠出を停止したい方は、管理運営機関(iDeCoを扱う金融機関)に「加入者資格喪失届」を提出しましょう。

ただし、iDeCoは原則として60歳まで解約できないため、すでに拠出した掛金と運用益を引き出して個人年金保険の保険料にあてることはできません。

また、運用指図者(掛金を拠出せずにこれまで積み立てた資金の運用指図のみをおこなう方)として拠出を停止している期間も、手数料がかかる場合があります。

個人年金保険からiDeCoに乗り換える場合

契約中の個人年金保険はいつでも自由に中途解約できるため、iDeCoへの乗り換えが可能です。受け取った解約返戻金はiDeCoの掛金にあてることができます。

ただし、前述のとおり、解約返戻金の額は一般的に払込んだ保険料を下回ります。また、中途解約してしまうと保障がなくなるため、慎重に検討しましょう。

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iDeCoと個人年金保険の年末調整・確定申告の手続き

給与所得者の保険料控除申告書とボールペン

iDeCoで拠出した掛金と個人年金保険料で所得控除を受けるためには、年末調整または確定申告での手続きが必要です。

年末調整または確定申告で所得控除の手続きをおこなうことで、納め過ぎていた所得税が還付される可能性があります。

iDeCoの年末調整・確定申告

iDeCoで小規模企業共済等掛金控除を受けるためには、原則として年末調整または確定申告での手続きが必要です。

手続きの際には「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要となるため、年末調整や確定申告の時期まで大切に保管しておきましょう。この証明書は、毎年10月以降に国民年金基金連合会から送付されます。

【年末調整で手続きする手順】

  1. 会社員などの給与所得者が、年末調整で手続きする場合の手順は以下のとおりです。

  2. ① 勤務先から受け取る「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入する
  3. ② 申告書と小規模企業共済等掛金払込証明書を勤務先に提出する

「給与所得者の保険料控除申告書」の記入箇所は、右下にある「小規模企業共済等掛金控除」欄の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」と「合計(控除額)」の項目です。

一方、確定申告で手続きする場合は、以下の手順で申告しましょう。


【確定申告で手続きする手順】

  1. ① 確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄を記入する
  2. ② 確定申告書と小規模企業共済等掛金払込証明書およびそのほかの添付書類を税務署に提出する※10

10 e-Taxで確定申告をおこなう場合は、小規模企業共済等掛金払込証明書の添付を省略できます。


【事業主払込の場合】

  1. なお、会社員などでiDeCoの掛金を「事業主払込」(給与からの天引き)で払込んでいる場合は、年末調整や確定申告の手続きは不要です。

個人年金保険の年末調整・確定申告

個人年金保険で生命保険料控除を受ける場合も、年末調整または確定申告での手続きが必要です。生命保険会社から届く「生命保険料控除証明書」が必要となるため、届いたら大切に保管しておきましょう。

【年末調整で手続きする手順】

  1. 会社員などの給与所得者が、年末調整で手続きする場合の手順は以下のとおりです。

  2. ① 「給与所得者の保険料控除等申告書」の「生命保険料控除」欄に必要事項を記入する
  3. ② 申告書と生命保険料控除証明書を勤務先に提出する※11

【確定申告で手続きする手順】

  1. 確定申告をおこなう場合は、以下の流れで手続きします。

  2. ① 確定申告書の「生命保険料控除」の欄を記入する
  3. ② 確定申告書に証明書を添付、または確定申告書と証明書をあわせて税務署に提出する※12

11 保険料を給与天引きで払込んでいる場合、生命保険料控除証明書の添付は不要です。

12 e-Taxで確定申告をおこなう場合は、生命保険料控除証明書の添付を省略できます。

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【番外編】iDeCo・個人年金保険とNISAの違いも確認

資産運用のご案内と電卓、指示棒

将来に向けた資産形成の方法には、iDeCoや個人年金保険のほかに、NISA(少額投資非課税制度)もあげられます。3つのおもな違いは以下のとおりです。

iDeCoと個人年金保険とNISAのおもな違い

iDeCo 個人年金保険 NISA
所得控除 小規模企業共済等掛金控除 生命保険料控除 なし
運用益 非課税 非課税
(解約時または年金受け取り開始時まで繰り延べ)
非課税
資産の引き出し 原則60歳以降 可能
(契約時に決めた一定年齢に到達したとき)
可能
死亡保険金の有無 なし あり なし
運用の上限額
(年額)
14万4,000円~81万6,000円
(加入資格によって異なる)
なし
  • ●つみたて投資枠:120万円
  • ●成長投資枠:240万円
対象年齢 原則20歳以上65歳未満の全ての方
(ただし、65歳になるまで加入するには「国民年金に加入していること」が条件)
保険会社によって異なる 18歳以上の方

NISAは、少額からの投資をおこなう方を支援する少額投資非課税制度です。NISAは所得控除のしくみはありませんが、年間投資枠360万円(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)まで投資でき、運用益に税金がかからない制度です。また、いつでも資金を引き出せる柔軟性もNISAの大きな特徴です。

それぞれの特徴や違いを踏まえ、ご自身にあった方法を選択しましょう。なお、iDeCoとNISA、個人年金保険とNISAもそれぞれ併用が可能です。

NISAについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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まとめ

iDeCoと個人年金保険は、公的年金の上乗せとして任意で加入できる私的年金です。どちらも所得控除の対象ですが、iDeCoの方がより大きな控除効果が得られる点が特徴です。
ただし、iDeCoの掛金と運用益は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。

一方、個人年金保険は、iDeCoと比べて所得控除の効果は小さいものの、契約時に将来の年金額が確定するため、安定した老後の資金づくりが可能です(定額個人年金保険の場合)。
ただし、中途解約した際には、解約返戻金が払込んだ保険料を下回る可能性がある点には注意が必要です。また、インフレが起きた場合、資産が目減りするリスクも考慮する必要があります。

このように、iDeCoと個人年金保険にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、ご自身にあった方法で将来に備えましょう。また、併用することでiDeCoと個人年金保険の両方で所得控除を受けることが可能です。

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監修者情報

ファイナンシャルプランナー新井あらい智美ともみ

新井 智美

ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定を受けると同時に、国家資格である1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。

資格情報
CFP®(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
HP
https://marron-financial.com/

CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。

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  • このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
  • 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
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(掲載開始日:2025年3月17日)
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