NISAと投資信託の違いとは?初心者向けに解説

投資の初心者向けに紹介される資産運用の方法や金融商品として、「NISA(少額投資非課税制度)」や「投資信託」などを耳にすることがあるのではないでしょうか。
しかし、投資初心者の方のなかには、そもそもNISAや投資信託それぞれの違いについてもあまりよくわからない......という方もいるかもしれません。
この記事では、NISAと投資信託の違いやそれぞれのメリットとデメリット、NISAで投資信託を運用する場合のポイントなどを解説します。
NISAと投資信託の違い

「NISA」と「投資信託」は、これから投資を始めようとする方は耳にする機会があるでしょう。それぞれ別の意味を持つ言葉であり、NISAは投資のために利用する「制度」、投資信託は投資をする際に購入する「金融商品」を指します。
NISAと投資信託の違い
NISA | 投資信託 |
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NISAは2014年に始まった制度ですが、一部の内容を変更した新NISAの制度が2024年からスタートしました。それにともない、つみたてNISAの名称は「つみたて投資枠」に、一般NISAの名称は「成長投資枠」に変更されています。
また、旧制度のつみたてNISAでは、投資できる金額が年間40万円まで、非課税で商品を保有できる期間が20年までと決められていました。しかし、新NISAのつみたて投資枠では年間120万円までの投資、成長投資枠では年間240万円までの投資が可能となり、さらに非課税保有期間が無期限に変更されました。
なお、新NISAの制度の詳細は以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
投資信託の購入時に、NISAを利用する場合・しない場合でどう違う?

金融機関でNISA口座を開設することにより、投資信託に非課税で投資することができます。一方、NISA口座ではなく、証券口座を開設し特定口座や一般口座といった課税口座で投資信託に投資することもできます。
NISAを利用して投資信託に投資する場合と、NISAを利用せずに投資信託で投資する場合とでは、課税されるかどうかといった点以外にも、年間投資枠、対象商品、対象年齢などに違いがあります。
具体的な違いは以下のとおりです。
投資信託の購入時にNISAを利用する場合・しない場合の違い
NISAを利用して 投資信託に投資する場合 |
NISAを利用せずに 投資信託に投資する場合 |
|
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税率 | 非課税 | 運用益の約20% |
年間投資枠 | つみたて投資枠は120万円まで、 成長投資枠は240万円まで |
制限なし |
対象商品 |
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投資信託 |
対象年齢 | 18歳以上 | 金融機関によって異なる |
上記のように、税率、年間投資枠、対象商品、対象年齢などがNISAを利用する場合としない場合で異なります。
税率については、NISAを利用せずに特定口座や一般口座などの課税口座で投資信託などの金融商品に投資する場合は、金融商品を売却して得た利益に対して約20%かかります。一方、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税となり、運用益をそのまま受け取ることができます。
年間投資枠については、つみたて投資枠は年間120万円まで、成長投資枠は年間240万円までといった年間投資枠の制約が設けられています。
NISA口座と課税口座は併用できる?

結論、NISAを利用した投資信託への投資と、NISAを利用しない投資信託への投資は併用することもできます。たとえば、NISA口座で投資信託に投資しながら、特定口座や一般口座などの課税口座で投資信託に投資することもできます。
そもそも、NISAの制度を利用する場合にはNISA口座を開設し投資信託を購入しますが、NISAを利用しない場合には、証券口座を開設して特定口座や一般口座などの課税口座で投資信託を購入します。NISA口座と特定口座や一般口座は併用でき、それぞれの口座を同時に利用して資産運用することができます。
ただし、特定口座や一般口座などの課税口座で保有している商品をNISA口座に移動することはできません。また、NISA口座の複数開設もできないため注意しましょう。
投資信託のメリット

前述のように、投資信託はNISA口座でも特定口座・一般口座などの課税口座でも購入することができますが、いずれの口座で投資するにしても、まずは投資信託そのもののメリットやデメリットなどを理解することが大切です。まずは、投資信託で資産運用するメリットについてご説明します。
【投資信託で資産運用するメリット】
- ① 少額から投資できる
- ② 分散投資でリスクの軽減が期待できる
- ③ 投資の専門家に運用を任せられる
- ④ 透明性が高い
以下でそれぞれの詳しい内容を解説します。
メリット① 少額から投資できる
投資をおこなうには、金融商品を購入するための資金が必要です。どのくらい資金が必要になるのかは、どの金融商品にどれだけ投資するのかによって異なります。まとまった資金が必要な場合もあれば、少額からでも始めることができる場合もあります。
たとえば、国内の上場株式に投資する場合、一般的に100株から売買することができます。仮に1株あたりの価格が1,000円とすると、まずは10万円の資金が必要になる計算です。
一方、投資信託では1万円などの少額からでも投資を始めることができます。
メリット② 分散投資でリスクの軽減が期待できる
できるだけ安定した資産運用をおこなうには、投資先を分散させる「分散投資」を心がけることがポイントです。値動きが異なる複数の異なる資産に分散したり、投資タイミングを分けて投資することで、ひとつの資産に投資する場合、一括投資をする場合に比べてリスクをおさえやすくなるからです。
投資信託の投資対象にはさまざまなものがあり、国内外の株式・債券のほかに、これらとは値動きの異なる不動産(REIT)やコモディティなど多様です。投資対象の異なる投資信託をいくつか保有することで、複数の資産に対して投資をすることが可能になります。
また、1つの投資信託の中で、複数の資産に対して投資をおこなっている投資信託もあり、意識的に分散投資をおこなうことが難しい初心者の方でも分散投資を実現しやすいでしょう。
なお、価格が変動する商品に対して常に一定の金額を定期的に購入する「ドル・コスト平均法」を実践すると、投資のタイミングを分けて投資することができ、リスクをより軽減しやすくなります。一定の投資金額で長期的に購入することで、価格が低い場合には購入量が多くなり、高い場合には購入量が少なくなるため、商品の平均購入単価をおさえやすくなるからです。
メリット③ 投資の専門家に運用を任せられる
前述したように、投資信託は複数の投資家から集めたお金を資産運用の専門家が投資・運用し、運用の成果として生まれた利益を投資家に還元する金融商品です。
実際の運用は資産運用の専門家が投資家に代わっておこなってくれるため、投資の知識が浅い初心者の方でも始めやすいという特徴があります。
メリット④ 透明性が高い
投資信託の価値を表す基準価額は、原則として毎営業日公表されているため、価値の変動がわかりやすいという特徴があります。
さらに、決算ごとに監査法人による監査を受けているので、金融商品としての透明性も高いです。
ちなみに、NISA口座で投資信託を購入し資産運用する場合、運用する金融商品は金融庁が選定したものの中から選ぶことになります。選択肢が金融庁の基準を満たした金融商品のみに限られるため、投資初心者の方でも始めやすいでしょう。
投資信託のデメリット(注意点)

投資信託はさまざまなメリットがある一方で、以下のデメリット(注意点)もありますので、理解しておきましょう。
【投資信託で資産運用するデメリット(注意点)】
- ① 元本は保証されない
- ② 手数料がかかる
- ③ 短期間で利益を上げにくい
それぞれについて順番に解説します。
注意点① 元本は保証されない
投資信託は預貯金などとは異なり、元本割れのリスクがある金融商品です。
元本割れとは、金融商品の価格が購入価格を下回ることです。たとえば、10万円で購入した金融商品が価格変動によって8万円や9万円になっている状況を指します。
投資信託の基準価額は経済状況や市場環境の影響を受けて毎日変動するため、購入した時の基準価額を上回ることもあれば、下回ることもあります。値動きによっては、元本割れを起こす可能性があることも理解しておきましょう。
注意点② 手数料がかかる
投資信託で資産運用する場合は、さまざまな手数料がかかります。おもな手数料は以下のとおりです。
投資信託の取引の際のおもな手数料
時期 | 手数料の種類 | 概要 | 支払先 |
---|---|---|---|
購入する時 | 購入時手数料 | 投資信託の購入時にかかる費用 (投資信託や販売会社によってはこの費用がない場合もある) |
販売会社に直接支払う |
保有している時 | 信託報酬 | 投資信託を運用・管理するための費用 | 投資信託の信託財産から間接的に支払われる信託財産の中から運用会社・販売会社・受託会社へ支払われる |
換金する時 | 信託財産留保額 | 投資信託を換金する場合にかかる費用 (投資信託によっては徴収しないものもある) |
販売会社に直接支払う |
まず、投資信託を購入する際、投資家は販売会社に「購入時手数料」を支払います(NISAで投資信託を取引する場合は、購入時手数料は無料とされている場合があります)。
加えて、運用期間中は信託財産から間接的に運用・管理費用として「信託報酬」が差し引かれ、運用会社・販売会社・信託銀行の3者で配分されます。さらに信託財産からは、「監査報酬」「売買委託手数料」などの費用が差し引かれます。また、換金時に「信託財産留保額」がかかるファンドもあります。
なお、投資信託によっては、上記以外の費用が発生する場合もあります。投資信託の購入の前に目論見書を確認するようにしましょう。
注意点③ 短期間で利益を上げにくい
投資信託は、その日の取引が終了するまで価格が確定しない金融商品です。投資信託の価格は「基準価額」といい、基準価額において投資信託の購入や換金がおこなわれます。
投資信託は複数の銘柄を組み入れて構成されており、1日に1回基準価額が算出・公表されるしくみです。基準価額は、投資信託の取引の申込みを締め切った後に公表されるため、投資家は当日の基準価額がわからないまま投資信託の取引をおこないます。この取引方法を「ブラインド方式」と呼びます。
ブラインド方式では、株式のように1日の値動きの変化にあわせて取引はおこなえず、株式のようなタイムリーな取引はできません。
NISAで投資信託に投資する場合のポイント

NISAで投資信託を資産運用する場合は、以下ポイントをおさえておきましょう。
【NISAで投資信託に投資する場合のポイント】
- NISAの非課税保有限度額(総枠)は1,800万円、年間投資枠は360万円まで
- NISA以外の口座で保有中の投資信託はNISA口座に移管できない
- NISAのつみたて投資枠で購入できる投資信託は決められている
それぞれについて、以下で詳しい内容を解説します。
NISAの非課税保有限度額は1,800万円、年間投資枠は360万円まで
2024年に開始した新NISAの非課税保有限度額(総枠)は、成長投資枠とつみたて投資枠あわせて1,800万円が上限です。そのうち、成長投資枠の上限は1,200万円までと制限がありますが、つみたて投資枠は上限いっぱいまで非課税で金融商品を保有できます。
また、1年間に非課税で投資ができる年間投資枠は、成長投資枠とつみたて投資枠あわせて360万円までです。年間投資枠の内訳は以下のとおりです。
NISAの年間投資枠
投資枠 | 年間投資枠 |
---|---|
成長投資枠 | 240万円 |
つみたて投資枠 | 120万円 |
保有中の投資信託はNISA口座に移管できない
NISA以外の口座で保有している投資信託をはじめとした金融商品は、NISA口座に移管できません。したがって、投資信託をNISA口座で保有したい場合には、NISA口座で新たに投資信託を購入する必要があります。
NISAのつみたて投資枠で購入できる投資信託は決められている
NISAのつみたて投資枠で購入できる投資信託は、金融庁が定めた条件を満たしている商品のみに限定されています。金融機関によっては、希望の商品を取扱っていない可能性もあるため注意しましょう。
なお、つみたて投資枠で購入できる投資信託は、長期・積立・分散投資に向いている商品に厳選されています。すでに厳選された商品から購入する投資信託を選べるため、商品選びに失敗したくない投資初心者の方にとっても利点となるでしょう。
初心者が投資を始めるならNISA口座と課税口座どちらがおすすめ?

初めて投資をする場合には、まずはNISAのつみたて投資枠を利用して資産運用に取り組むことをおすすめします。
先述のとおり、NISAのつみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁が設ける条件をクリアしたものに限定されています。投資リスクを考慮したうえで長期・積立・分散投資に適した商品が厳選されているため、初心者でも始めやすいでしょう。
また、これは初心者に限ったことではありませんが、金融商品の運用益が非課税になる点も大きなメリットです。
ただし、つみたて投資枠は年間の非課税投資額が120万円までと決められています。年間120万円を超えて投資したい場合は、別の証券口座と併用しても良いかもしれません。
まとめ
NISAは安定的な資産形成をサポートする国の少額投資非課税制度であり、投資信託は複数の投資家から集めたお金を資産運用の専門家が運用してくれる金融商品です。
投資信託は「少額から始められる」「分散投資でリスクの軽減が期待できる」などのメリットがある一方で、「元本は保証されない」「短期間で利益を上げにくい」などのデメリット(注意点)もあります。実際に投資信託を資産運用する際には理解しておきましょう。
監修者情報
ファイナンシャルプランナー新井智美

ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定※を受けると同時に、国家資格である1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。
- 資格情報
- CFP®(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
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(掲載開始日:2025年3月17日)
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