ドルコスト平均法とは?メリットやデメリット、投資のポイントも解説

「ドルコスト平均法」は、値動きのある金融商品を定期的に一定金額で購入する投資手法です。主に株式や投資信託などを対象に、一定金額で定期的に購入することで、平均購入価格を平準化し、「高値つかみ」などのリスクを軽減する効果が期待できます。
この記事では、これから投資を始める方に向けて、ドルコスト平均法の基本的な考え方やメリット・デメリット、投資に活用する際のポイントをわかりやすく解説します。
ドルコスト平均法のやり方とは?

ドルコスト平均法とは、価格が変動する金融商品を一定期間ごとに一定金額ずつ購入する投資手法です。たとえば、投資信託を毎月一定額で積み立てる方法が代表的です。
定期的に同じ金額を投資すると、金融商品の価格が高いときには少なく、価格が低いときには多く購入することになります。その結果、長期的に続けることで購入タイミングが分散され、1単位あたりの平均購入価格が平準化されます。これにより、価格変動リスクを緩和する効果が期待できます。
ただし、ドルコスト平均法は必ずしも利益を保証するものではありません。特に短期的な投資では期待した成果が得られにくい点に注意が必要です。
なお、「ドルコスト」と名前に含まれていますが、外貨取引に限らず、株式や投資信託、FX(外国為替証拠金取引)など、さまざまな金融商品に適用できる手法です。
ドルコスト平均法vs一括投資、なにが違う?
金融商品の購入手法には、ドルコスト平均法のほかに「一括投資」があります。
一括投資とは、まとまった資金を一度に投資する方法です。市場価格が上昇した場合、大きなリターンを得られる可能性がありますが、逆に価格が下落した場合には損失が大きくなるリスクも伴います。
一方、ドルコスト平均法は購入タイミングを分散するため、相場の影響を受けにくい特徴があります。たとえば、相場が下落しても、平均購入価格が低くおさえられることで、最終的な利益を確保できる可能性があります。
一括投資によるリスクのイメージ

出典:「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(金融庁)
(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/guidebook_202307.pdf)をもとに当社作成
ドルコスト平均法のメリット

金融商品への投資でドルコスト平均法を取り入れるメリットは、おもに以下があげられます。
【ドルコスト平均法を取り入れるメリット】
- 「高値つかみ」のリスクを軽減できる
- 少額から投資を始められる
- 相場の値動きに一喜一憂しなくて済む
- 投資を始めるタイミングを考えなくて良い
それぞれについて詳しく解説します。
「高値つかみ」のリスクを軽減できる
株式や投資信託などの金融商品は価格が日々変動します。そのため、相場の動きを予測して売買のタイミングを見極めるのは簡単ではありません。タイミングを誤ると、高値で購入してしまう「高値つかみ」のリスクがあります。
ドルコスト平均法では、一定金額を定期的に購入するため、高値のときには少なく、安値のときには多く購入できます。このように購入タイミングを分散することで、結果的に高値つかみを回避しやすくなります。
たとえば下図のように、毎月1万円の積立投資をした場合をみてみると、基準価額が低い時には多く買い、基準価額が高い時には少なく買うということになります。
ドルコスト平均法は高値つかみを避けることができる

少額から投資を始められる
ドルコスト平均法は、まとまった資金を準備する必要がありません。たとえば、毎月1万円ずつ積み立てるなど、無理のない金額で投資を始められるため、初心者にも適した方法です。
相場の値動きに一喜一憂しなくて済む
一括投資では、相場の動向を見極める必要があり、初心者には難しいと感じることも多いでしょう。一方、ドルコスト平均法は決まったタイミングで長期的に一定金額を投資するため、相場の値動きに神経を使う必要がありません。精神的な負担が少なく、多忙な方にも適した投資法です。
投資を始めるタイミングを考えなくて良い
ドルコスト平均法では、投資を始めるタイミングが相場の高値でも安値でも、長期的に続けることで購入価格が平準化されます。そのため、タイミングを気にせず、思い立ったときに投資を始められるのが特徴です。
ドルコスト平均法のデメリット(注意点)

分散投資によって価格変動リスクをおさえることに適したドルコスト平均法ですが、いくつか気を付けておきたいデメリット(注意点)もあります。おもな注意点は以下のとおりです。
【ドルコスト平均法のデメリット(注意点)】
- 短期投資には向かない
- 手数料の負担がかかる
- 相場の動向によっては損失がでる可能性がある
以下で詳しく解説します。
短期投資には向かない
前述のとおり、ドルコスト平均法は一定金額を少しずつ継続的に積み上げていく手法のため、長く投資を続けるほど、相場の値動きによる影響を受けにくくなり、リスクを減らした運用成績が期待できます。
また、投資期間が長期にわたるほど、景気後退などにより一時的に資産が値崩れしても、後に相場が回復したときに損失をカバーしやすくなることがあります。
一方、期間が短い場合は十分な投資効果を得られない可能性があります。基準価額が上がるタイミングを予測することは難しいため、長期で運用して値動きの影響を受けにくくすることが重要です。
手数料の負担がかかる
金融商品の売買や保有には手数料が発生することが一般的です。長期間の運用を前提としたドルコスト平均法では取引回数が増えるため、手数料の負担が大きくなる場合があります。
商品を取扱う保険会社や証券会社、金融商品などにより、手数料の設定や金額は異なります。最近は購入手数料がかからないノーロードの投資信託も増えており、またNISA(つみたて投資枠)は投資信託も国内外の株式も販売手数料が無料となっているなど、投資先によって手数料に違いが出る可能性があります。
とくに、投資信託の信託報酬は運用中、常に発生します。運用成績にも影響する可能性があり、手数料が0.1%と1.0%では運用益に大きな違いが出るため、手数料がかかりすぎていないかあらかじめ確認しておきましょう。
相場の動向によっては損失が出る可能性がある
これまでお伝えしてきたとおり、一括投資に比べて、ドルコスト平均法は価格変動リスクをおさえやすい投資手法ですが、ドルコスト平均法による投資だからといって必ず利益を出せるわけではありません。
相場が長期的に下落し続ける場合には損失が発生する可能性があります。たとえば、「下落相場」のときに投資信託をドルコスト平均法にもとづいて毎月2万円ずつ購入するとします。
下落相場で毎月2万円を積み立てた場合
1ヵ月目 | 2ヵ月目 | 3ヵ月目 | 4ヵ月目 | 5ヵ月目 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
基準価額 | 1口 5,000円 |
1口 4,000円 |
1口 2,500円 |
1口 2,000円 |
1口 1,000円 |
47口 4,7万円 |
購入口数 | 4口 | 5口 | 8口 | 10口 | 20口 | |
投資金額 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 |
投資金額は5ヵ月間で合計10万円、保有する投資信託は47口となります。しかし、相場が右肩下がりに下落を続けていく下落トレンドにある場合には、5ヵ月間で合計4万7,000円となり(1口1,000円×47口=4万7,000円)、投資金額の10万円から大きく減ってしまう可能性があります。
ドルコスト平均法を上手に活用するポイント

ドルコスト平均法をできるだけ上手に活用するためのポイントをいくつか紹介します。
【ドルコスト平均法を投資に活用するポイント】
- NISAの投資枠を活用する
- 10年、20年の長期投資でじっくり資産形成する
- 投資を終えるタイミングを計画しておく
NISAの投資枠を活用する
ドルコスト平均法を活用して投資する場合は、少額から始められ、かつあらかじめ決められた日程で自動的に買付けできる積立投資がおすすめです。積立投資をするためには、株式を対象とした株式累積投資(株式るいとう)や投資信託の積立サービスNISA(つみたて投資枠)などを利用することができます。
なかでもおすすめなのが、NISA(少額投資非課税制度)です。NISAとは、株式の配当や投資信託の分配金、それぞれの売却益などに対して課される20.315%の税金が非課税になる制度です。
NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠に分かれており、つみたて投資枠で少額ずつ定期的に投資するドルコスト平均法を活用できます。
なお、つみたて投資枠の投資上限額は年120万円で、投資対象は金融庁の基準を満たした長期・分散・積立に適した投資信託から選べます。非課税の恩恵を受けながら分散投資をしたい方におすすめです。
10年、20年の長期投資でじっくり資産形成する
ドルコスト平均法は、長期投資で運用成績を上げやすく、コストを平準化できる手法のため、長い目で資産形成することが大切です。
また、投資信託の長期運用に際し、分配金の再投資を選択すると、複利効果が大きいとされています。
複利とは、運用益を元本に組み入れて再投資したときの利回りのことです。元本部分のみに対する運用益を指す単利とは異なり、複利は利益が新たな利益を生み出すことでより効率的に資産を増やすことができるとされています。
たとえば、元金100万円で利回り10%の投資信託を10年間運用する場合、単利と複利の資産には次のような違いがあります。
投資期間と複利効果の関係

※上図はあくまでもシミュレーションのイメージであり、将来の成果運用を保証するものではありません。
※上図において、税金などは考慮しておりません。
このように、毎年同じ金額を積み立てていくと、10年で約59万円の違いが出ます。長期で運用すると、さらに大きな複利効果を得られる可能性があります。
投資を終えるタイミングを計画しておく
ドルコスト平均法で長期運用を進めていくと、投資を終えるタイミングを見失う恐れがあります。ドルコスト平均法は、思い立ったらいつでも始めやすい投資手法ですが、投資を終えるタイミングをあらかじめ計画しておくことがおすすめです。
投資を終えるタイミングに決まりはなく、考え方は人それぞれです。投資の目標金額を決める、マイホーム購入や子どもの進学などのライフステージにあわせる、ご自身がリタイアするときにあわせるなど、適切なタイミングを事前に決めておくと良いでしょう。
ただし、ドルコスト平均法は長期運用による複利効果の恩恵を受けているため、一括投資のように、予測することがむずかしい相場の価格変動を無理に読む必要はありません。
また、世界経済の急変などから長期的な暴落が続く場合は、後から損失をリカバリーするのがむずかしい可能性もあります。そのときは計画を軌道修正しましょう。

新井FPからの
ワンポイントアドバイス
ドルコスト平均法の恩恵を受けやすいのは、価格変動が大きい商品です。たとえば、国内債券だとほぼ値動きがなく、ドルコスト平均法を利用する必要性はあまりないでしょう。
ただし、外国債券、国内株式、外国株式の順に価格変動が大きくなるため、自分が購入する投資信託がどのような投資先に投資しているのかを確認することが大切です。外国株式に多く投資している場合はドルコスト平均法を使うことによって、購入価格の平準化を大きくすることが期待できます。
また、投資信託によって投資先は異なります。外国株式に投資している投資信託でも、投資先がアメリカだけなのか、全世界の株式に投資しているのかで値動きは異なるでしょう。
ドルコスト平均法を活用するには、まず購入する投資商品の値動きの幅がどのくらいなのかを確認することが大切です。
まとめ
ドルコスト平均法は、金融商品を一定金額で定期的に購入し、コツコツ積み立てる投資方法です。特に、長期的な資産形成を目指す方に適しています。一括投資のようにまとまった資金を用意する必要がないため、少額から始められ、購入時期を分散することで価格変動リスクをおさえられる効果があります。
そして、相場の値動きを気にせずにご自身が思い立ったタイミングでいつでも始められ、定期的に同じ金額で同じ金融商品を購入し続ければ良いため、投資初心者でも活用しやすいといえます。
しかし、短期間で大きなリターンを見込みにくい、手数料が負担になる可能性があるなどのデメリットも把握しておくことが大切です。
ドルコスト平均法を投資に活用するときは、特徴をおさえて、長期投資による資産形成を目指しましょう。
監修者情報
ファイナンシャルプランナー新井智美

ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定※を受けると同時に、国家資格である1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。
- 資格情報
- CFP®(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
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(掲載開始日:2025年3月17日)
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楽天インシュアランスプランニング株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第1049号