新NISAで上限額が拡大!旧制度からの変更点も解説

NISAと書かれた赤い矢印のパネルと電卓、ノート、ペン
公開日:2025年3月17日

2024年から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートしました。しかし、非課税で投資できる上限額がいくらに変わったのか、正確に把握していない方も多いのではないでしょうか。新NISAでは、上限額の変更だけでなく、利用者にとって有利な改正も加えられており、しっかりと理解しておきたいポイントです。
この記事では、旧NISAから新NISAへの移行に伴う変更点や、新NISAの投資上限額について詳しく解説します。

2024年スタートの新NISA、上限額などの変更点は?

変更点と書かれた木のブロックとボールペン、電卓、スマートフォン

2024年から始まった新NISAでは、投資上限額の引き上げや非課税保有期間の無期限化など、投資家に有利な制度拡充がおこなわれたことで大きな注目を集めました。旧NISAと新NISAのおもな違いは、下表のとおりです。

旧NISAと新NISAの違い

旧NISA(~2023年) 新NISA(2024年~)
つみたてNISA 一般NISA つみたて投資枠 成長投資枠
非課税保有期間 20年間 5年間 無制限
年間投資枠 40万円 120万円 120万円 240万円
非課税保有限度額 800万円
(40万円×20年)
600万円
(120万円×5年)
1,800万円(総枠)
(うち成長投資枠は1,200万円)
併用 併用できない。どちらかを選択 併用できる
投資枠の再利用 不可 売却した翌年以降に再利用可能
口座開設期間 2023年まで 無制限

以下では、新NISAでのおもな変更点をさらに詳しく解説します。

変更点① 新NISAではつみたて投資枠・成長投資枠ができた

新NISAには、旧制度のつみたてNISAを引き継ぐ「つみたて投資枠」と、旧制度の一般NISAを引き継ぐ「成長投資枠」があります。

新NISAの2つの投資枠

新NISAの2つの投資枠

「つみたて投資枠」とは

つみたて投資枠は、旧NISAのつみたてNISAを引き継ぎ、同様の方法で一定の投資信託に積立投資できる枠です。
年間で投資できる額は成長投資枠より少ない120万円となっており、投資対象が長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られる点や、買付方法が積立投資に限られる点において、成長投資枠と異なります。

なお、非課税保有限度額(総枠)は、成長投資枠と合算して1,800万円です。積立投資に特化しているため、老後資金や教育資金などを長期投資でコツコツ形成していきたい方に向いています。一度積立設定をすれば、以後は自動で買付がおこなわれるため手間がかからず、長く投資を続けやすいしくみです。

「成長投資枠」とは

成長投資枠は、旧NISAの一般NISAを引き継ぎ、同様の方法で投資信託や上場株式などに投資できる枠です。年間で投資できる額はつみたて投資枠よりも多い240万円で、非課税保有限度額は1,200万円(つみたて投資枠とあわせて総枠で1,800万円以内)です。

成長投資枠は投資信託のほか、上場株式やREITなどにも投資できる点、積立投資と一括投資の両方に対応している点で、つみたて投資枠と異なります。

つみたて投資枠より柔軟に投資をおこなえるため、まとまった資金を短期~中期で投資したい方や、非課税で株式などの幅広い金融商品に投資したい方に向いています。

新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できる

旧NISAはつみたてNISAと一般NISAのどちらか一方を選択する必要がありましたが、新NISAでは、つみたて投資枠・成長投資枠は併用が可能になりました。

変更点② 年間投資枠が360万円に拡大

年間投資枠とは、NISA口座で1年間に投資できる上限額のことです。旧NISAの年間投資枠はつみたてNISAが40万円、一般NISAが120万円で、つみたてNISAと一般NISAは併用できなかったため、どちらか一方しか利用できませんでした。

一方、新NISAで1年間に投資できる上限額は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円です。新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は併用することができるため、あわせて年間360万円まで非課税で投資できます。

年間投資枠が大幅に拡大

年間投資枠が大幅に拡大

変更点③ 非課税保有限度額(総枠)が新設(最大1,800万円)

非課税保有限度額(生涯を通じての非課税保有限度額)とは、NISA口座において非課税で保有できる金融商品の総額(簿価(取得金額)ベース)のことです。旧NISAの非課税保有限度額は、つみたてNISAが800万円(40万円×20年)、一般NISAが600万円(120万円×5年)でした。

一方、新NISAの非課税保有限度額は、つみたて投資枠と成長投資枠をあわせて総枠で1,800万円まで拡大されています。毎年360万円の投資上限額まで投資すれば、最短5年で非課税保有限度額を埋められます。

また、簿価(取得金額)ベースで計算するため、投資した商品が値上がりして評価額(時価)が1,800万円を超えても非課税での保有が可能です。

ただし、成長投資枠の非課税保有上限額は1,200万円です。そのため、1,800万円の枠を使い切るには、つみたて投資枠で少なくとも600万円分は投資しなければなりません。

なお、つみたて投資枠の非課税保有上限額は1,800万円なので、つみたて投資枠だけで1,800万円の枠を使い切ることは可能です。

非課税保有限度額は1,800万円に拡大

非課税保有限度額は1,800万円に拡大

変更点④ 非課税保有限度額(総枠)が再利用できるようになった

旧NISAの場合、保有商品を売却しても非課税保有限度額は再利用することはできませんでした。

一方新NISAでは、商品を売却した場合、売却した商品の簿価(取得金額)分の非課税保有限度額が翌年に復活するしくみが導入されました。たとえば、80万円で取得した商品が値上がりして100万円で売った際には、購入時の金額80万円分の非課税投資枠が復活します。

ただし、売却により空いた枠を利用できるのは翌年以降です。また、枠が復活しても年間投資限度額が上乗せされるわけではないので注意しましょう。

変更点⑤ つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になった

旧NISAでは、つみたてNISAと一般NISAは併用できませんでした。

しかし、新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠があわせてひとつの制度となり、それぞれの枠を併用できるようになっています。これにより、つみたて投資枠で積立投資をしながら、成長投資枠では株式に一括投資するといった、柔軟な資産運用が可能になりました。

変更点⑥ 非課税保有期間が無期限になった

旧NISAは、非課税で商品を保有できる期間がつみたてNISAでは20年間、一般NISAでは5年間と決まっていました。

一方、新NISAでは非課税保有期間が無期限になり、売却による非課税投資枠の再利用も可能になったことから、運用目的にあわせてより柔軟に運用期間を設定できるようになっています。

なお、新NISAでは非課税保有期間に終わりがないため、一般NISAで非課税期間終了時におこなわれていたロールオーバーと呼ばれる手続きも不要になりました。

変更点⑦ NISA制度が恒久化した

旧NISAは、つみたてNISAで最長2042年、一般NISAで最長2027年まで新規の口座開設が認められる時限的な制度でした。

一方、新NISAでは口座開設期間の制限が撤廃され、恒久的な制度となったため、より長期的な目線で資産運用をおこなえるようになりました。

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新NISAを利用する際の注意点

注意点と書かれた木のブロックと電卓、スマートフォン、ボールペン、ノート

次に、新NISAで効率的に資産運用をおこなうために、注意すべきポイントを4つみていきましょう。

年間投資枠の持ち越しはできない

新NISAの年間投資枠が余っても、翌年以降へ持ち越すことはできません。

たとえば、今年のつみたて投資枠で80万円を投資して40万円分の枠が余った場合も、翌年のつみたて投資枠は120万円のままで、160万円に拡大するわけではないのです。

年間投資枠は、毎年1〜12月を区切りとして1年ごとに設定されます。なるべく早くNISAの枠を埋めたい方は、毎年12月までに年間投資枠を使い切ることを意識しましょう。

なお、旧NISAでは非課税口座(勘定)を開設できる期間に制限があったため、年間投資枠を使い切れずに残してしまうと、非課税保有限度額(総枠)が減ってしまう点がデメリットでした。

しかし、新NISAでは非課税口座を開設できる期間に制限はなくなり、新たに生涯を通して利用できる1,800万円の非課税保有限度額(総枠)が設けられています。年間投資枠を使い切れなくても非課税保有限度額(総枠)は減らないため、無理して年間投資枠を使い切る必要はないといえます。

成長投資枠では購入対象外となる商品がある

新NISAの成長投資枠では、おおむね旧制度の一般NISAと同様の金融商品に投資できます。

ただし、整理・監理銘柄や信託期間20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託、ヘッジ以外の目的でデリバティブ取引を用いた一定の投資信託などは対象から除外されています。

開設できる口座は1人につき1口座

開設できるNISA口座は、1人1口座のみです。NISA口座の開設には審査があり、別々の金融機関で申込みをしても、NISA口座を複数開設することはできません。

なお、NISA口座を運用する金融機関の変更は1年単位でのみ可能であり、変更したい年の前年10月1日から当年9月末までに手続きをおこなう必要があります。

損益通算や繰越控除はできない

損益通算とは、取引(売買)で生じた損失と利益を相殺し、課税対象となる利益(所得額)を減らすことをいいます。

一方、繰越控除とは、損益通算をしても利益から控除しきれなかったその年の損失を、毎年確定申告をおこなうことを条件に、翌年以降最長3年間繰り越せる制度のことです。

非課税であるNISA口座で発生した損失は、税制上ないものとみなされるため、特定口座や一般口座など、ほかの口座の取引で利益が出ていても損益通算や繰越控除ができません。そのため、結果として課税対象となる利益(所得額)が大きくなり、税負担が増える可能性があります。

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新NISAの始め方

屋外でスマートフォンを操作する人

新NISAの制度内容を正しく把握したら、資産運用を始めてみましょう。以下の見出しでは、新NISAを始める際の手順を、3つのステップで具体的に解説します。

【NISA口座の開設手順】

  • ① 口座を開設する金融機関を決める
  • ② NISA口座を開設する
  • ③ 投資商品を選んで購入する

STEP① 口座を開設する金融機関を決める

まずは、NISA口座を開設する金融機関を決めましょう。金融機関によって取扱い商品数や手数料が異なるため、複数の金融機関を比較して選ぶことが大切です。2023年までに旧NISA口座を開設していた方は、同じ金融機関で自動的に新NISA口座が開設されるため、特別な手続きは不要です。

STEP② 金融機関でNISA口座を開設する

口座開設の申込み方法は、ウェブサイト・店頭・郵送・電話など、金融機関によって異なります。申込み時は、以下の本人確認書類の提出が必要です。

【本人確認書類の例】

  • 運転免許証
  • 住民票の写し
  • 個人番号カード(マイナンバーカード)
  • パスポート
  • 健康保険証
  • 住民基本台帳カード
  • 印鑑証明書 など

なお、利用できる本人確認書類は金融機関により異なる場合があるため、事前に金融機関で確認してください。

申込み後は、金融機関を通じて税務署で審査がおこなわれます。この審査は、NISA口座を二重開設していないかを確認するためのもので、2〜4週間程度かかる場合があるため、余裕を持って申込みましょう。
なお、金融機関によっては、税務署での審査完了前に取引が可能となる「仮開設」をすることできる場合があるため、気になる方は事前にチェックしてみてください。審査が完了すると、金融機関からメールや郵送で結果が通知されます。

STEP③ 投資商品を選んで購入する

審査に通過したら、初期設定をして実際に金融商品を購入しましょう。
資金の入金には、口座振替や銀行振込みなど、さまざまな方法があります。積立投資の場合、クレジットカードからの引落を選択すると、金融商品の購入でポイントを獲得できる金融機関もあります。

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新NISAに関するよくあるQ&A

虫眼鏡とQ&Aの立体文字

最後に、新NISAの上限に関してよくあるQ&Aをまとめて紹介します。

Q:新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は、別々の金融機関で利用できる?

つみたて投資枠と成長投資枠は、別々の金融機関で利用できません。そのため、利用する金融機関をひとつに絞って選ぶ必要があります。

なお、年単位(1〜12月)でNISA口座を開設する金融機関を変更することは可能です。金融機関を変更した場合、変更前の金融機関のNISA口座で保有している商品は、その金融機関で売却するまで非課税扱いのまま保有できます。

ただし、変更先の金融機関に非課税扱いのまま移管することはできません。商品を変更先の金融機関に移管するには、一旦課税口座(特定口座・一般口座)に課税扱いとして移管する必要があります。

Q:新NISAの運用中に海外に行く場合、口座や保有商品はどうなる?

転勤などのやむを得ない理由で一時的に海外へ渡航する場合、事前に手続きをすれば出国中でも最長5年間、非課税で商品を保有できる可能性があります。5年以内に出国する可能性がある方は、出国中も口座を保持できる金融機関を選ぶと良いでしょう。

ただし、出国中に新規の取引はできません。また、非課税のまま保有できる金融商品の種類は、国内株式などに限定される場合があるため注意してください。

出国中のNISA口座や保有商品の取扱いについては、金融機関によって異なる場合があります。気になる方は、金融機関の公式サイトなどで詳細を確認しましょう。

Q:新NISAで月々または年間の非課税枠の上限を超えたらどうなる?

NISA口座では、非課税枠(年間投資枠、生涯を通じての非課税保有限度額)の上限を超える商品の買付はできません。

上限を超えて投資をしたい場合は、税金のかかる課税口座(特定口座、一般口座)でおこなう必要があります。

Q:新NISAの上限を最短で埋めるには?

つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の年間投資枠を毎年使い切れば、最短5年で新NISAの投資枠を埋められます。

とはいえ、新NISAでは年間投資枠を使い切れなかったとしても、非課税保有限度額(総枠)(生涯を通じての非課税保有限度額)が減るわけではありません。焦って投資をすればその分リスクも大きくなるため、投資に回す額やタイミングを慎重に検討したうえで、無理のない金額で投資しましょう。

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まとめ

新NISAの開始により、NISA口座の年間投資枠は360万円、生涯を通じての非課税保有限度額(総枠)は1,800万円に拡大しました。新NISAではほかにも複数の制度変更がおこなわれたため、制度内容を正しく理解して、資産運用に役立てましょう。

ただし、NISAに元本保証はありませんので、場合によっては資産が減ることもあります。商品を購入する際は、商品の特性や取引のしくみ、リスクなどをよく理解したうえで、ご自身の判断と責任のもと実行してください。

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監修者情報

ファイナンシャルプランナー竹国たけくに弘城ひろき

竹国 弘城

RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。趣味はサウナ(サウナ・スパプロフェッショナル)。

資格情報
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)
HP
https://www.rapportco.com

CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。

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(掲載開始日:2025年3月17日)
2501045-2601
楽天インシュアランスプランニング株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第1049号