REIT(リート)とは?仕組みや選び方、投資のポイントを解説

REITと書かれた木製ブロック
公開日:2025年3月17日

REIT(リート)とは、不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)のことです。一般的な不動産投資では、実物の不動産を所有するために高額な資金が必要になる場合がありますが、リートなら数万円程度から始めることができます。また、不動産の管理や運用は専門家が担当するため、不動産投資初心者でも取り組みやすい点が特徴です。

この記事では、リートの仕組みや投資対象の種類、選び方、メリット・デメリット、投資のポイントについて解説します。さらに、リートの始め方や注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

REIT(リート)とは

Real Estate Investment Trustと書かれた木製ブロックを指で持ち上げる

REITとは、Real Estate Investment Trustの頭文字を組み合わせた言葉で、「リート」と発音します。日本語では「不動産投資信託」と訳され、投資家から集めた資金で不動産を所有し、賃貸や売買などの運用によって得られる収益を投資家に分配する投資信託を指します。

リートはアメリカで誕生した投資手法で、現在では世界各国で広く利用されています。日本国内の不動産に投資するリートは「J-REIT(Jリート)」と呼ばれています。また、東京証券取引所に上場する不動産投資信託全銘柄で構成された指数に「東証リート指数」というものがあり、その指数に投資する投資信託商品などもあります。

リートの仕組み

リートは、投資家から集めた資金で「不動産投資法人」が運用し、不動産の賃貸料や売却益の一部を投資家に分配するという仕組みです。投資家は投資証券を購入することで、間接的に不動産に投資をすることになります。

なお、「不動産投資法人」とは、投資家から集めた資金で不動産を購入し、資産運用していくために設立された法人を指します。実際の運用や資産管理は、委託を受けた運用会社や資産保管会社、事務受託会社などが担当するのが一般的です。

リートに関わる会社の役割

リートに関わる会社 役割
運用会社 投資不動産の選定や投資戦略の決定。不動産価値維持のための修繕計画の立案や実行、資金調達も実施する
資産保管会社 不動産などの資産の管理。信託銀行が資産保管会社になることが一般的
事務受託会社 会計や納税、投資法人債に関する事務を担当。業務ごとに専門の会社が選定される

リートと一般的な不動産投資の違い

リートは、不動産から利益を得る仕組みですが、金融商品であるため、一般的な不動産投資とは異なり、実際に物件を購入する必要はありません。

一方、一般的な不動産投資は物件を購入して投資を始めるため、高額な初期資金が必要になる傾向があります。また、リートは株式市場で売買できるのに対し、一般的な不動産投資では物件を手放すのに時間がかかる場合があります。特に、収益性が低い物件や立地に問題がある物件の場合、売却が難しくなる可能性もあります。

さらに、リートでは不動産投資法人などが実際の運用をおこなうのに対し、一般的な不動産投資では物件の購入から管理、運用までを投資家自身がおこなう必要があります。そのため、リートに比べて手間がかかる点も一般的な不動産投資の特徴です。

リートと一般的な不動産投資とのおもな違い

比較項目 リート 一般的な不動産投資
投資対象 オフィスビルや商業施設を含む多様な不動産 おもにマンションやアパートなど住居用の不動産
初期資金 少額から投資可能 物件によって異なるが、ローンを組んで資金を準備することもある
流動性 高い 低い
リスク 一般的な不動産投資のリスクに加え、投資法人の破綻リスクもある 災害リスク、地価下落リスクなど

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REIT(リート)の種類

Reitと書かれた木製のブロックの上に置かれたさまざまな大きさの家のミニチュア

リートは投資する不動産によって、いくつかに分類することができます。
おもな分類は以下のとおりです。

【リートの分類】

  • 単一用途特化型:ひとつの用途の不動産に投資するリート
  • 複数用途型:複数の異なる用途の不動産に投資するリート
  • 地域特化型:一定のエリアの不動産に投資するリート
  • 上場投資信託のREIT型ETF:取引所に上場している複数のREITに投資するETF

投資対象資産がオフィスビルやマンションなどの1種類に限られるリートを「単一用途特化型リート」、複数の種類に投資するリートを「複数用途型リート」と分類します。また、投資対象資産が一定のエリアに絞られた「地域特化型」、上場投資信託の「REIT型ETF」などもあります。

投資対象による種類

リートではどのような不動産に投資するのでしょうか。具体的には投資対象は以下のようにわけられます。

投資対象資産によるリートの特徴

投資対象資産 リートの特徴
オフィスビル
  • ●賃貸借契約の期間が短く、稼働状況や賃料収入が景気の影響を受けやすい
  • ●都市部に多い
商業施設、ホテル
  • ●運営において専門性が求められる
  • ●稼働状況や賃料収入が景気の影響を受けやすい
マンション
  • ●運営において専門性が求められる
  • ●賃料が安定し、景気の影響を受けにくい
住宅
  • ●地方都市を含むさまざまな地域の物件が対象となる
  • ●賃料が安定し、景気の影響を受けにくい

一般的に、マンションや住宅といった個人が居住する不動産は景気の影響を受けにくい傾向にあります。一方、会社や商業施設、ホテルは景気の影響を受けやすく、不景気になると空室率が増えることで、賃料収入が下がる可能性があります。

運営において専門性が求められるため、投資する前に運営会社の実績についても確認しておくほうがよいでしょう。

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REIT(リート)に投資するメリット

MERITの文字が置かれたノートとボールペン、クリップ

一般的な不動産投資と比べて、リートには複数の不動産に分散投資することで、費用を少額におさえられると同時にリスクも分散できるというメリットがあります。さらに、以下のようなメリットも挙げられます。

【リートに投資するメリット】

  • 少額から投資ができる
  • 高い利回りや安定した分配金を期待できる
  • 流動性が高く換金しやすい
  • 分散投資ができる

それぞれのメリットについて解説します。

少額から投資ができる

リートは1口(1単元)から取引が可能で、数万円で購入できるものもあります。そのため、まとまった資金がなくても不動産投資を始めることができます。また、実際の不動産投資とは異なり、自身で物件の管理をおこなう必要がないため、手間がかからない点もメリットです。

高い利回りや安定した分配金を期待できる

リートは、賃貸収入を得て利益を投資家に還元するというビジネスモデルのため、比較的安定した高い利回りが期待できます。とくにJリートの場合、利益の90%超を配当することで不動産投資法人の法人税が非課税となるため、さらに高利回りを期待できる可能性があります。

また、賃料収入はあらかじめ予測可能なため、分配金も安定している傾向があります。

流動性が高く換金しやすい

リートは株式市場に上場しているため、流動性が高く、換金しやすい点もメリットです。リートの価格は毎日変動するため、低価格のときに購入し高価格のときに売却すれば、その差額が値上がり益となります。

分散投資ができる

リートは、複数の不動産に投資することでリスクを分散しています。たとえば、災害などで特定の不動産から得られる収益が減少しても、全体で見れば大きな損失につながりにくい仕組みです。

一方、実際に物件を購入する一般的な不動産投資で分散投資をおこなう場合、多くの不動産を購入する必要があるため、多額の資金が必要になります。しかし、リートなら少額でも分散投資が可能なため、投資資金が少なくてもリスクをおさえた投資が可能です。

また、証券取引所に上場しているリート全銘柄を対象としたリート指数に連動するタイプの上場投資信託(REIT型ETF)を利用すれば、特定のリートの値動きに左右されにくくなり、リスクをおさえた分散投資がしやすくなります。

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REIT(リート)に投資するデメリット

Demeritと書いてあるたてかけられたメモ帳

全ての投資にはメリットとデメリットがあります。リートがご自身にあった投資方法かどうかを見極めるにはメリットとデメリットを正しく理解し、比較検討することが大切です。


リートに投資するデメリット

  • 元本や利回りが保証されていない
  • 不動産市場や経済情勢など、周辺環境の影響を受ける
  • 上場廃止や倒産のリスクがある
  • 投資対象が地震や火災により損害を受ける可能性がある

それぞれのデメリットについて解説します。

元本や利回りが保証されていない

リートは株式市場に上場され、ほかの株式と同様に、常に取引価格が変動しています。元本や利回りが保証されていないため、値下がりして売却時に損失を被る可能性もあります。

不動産市場や経済情勢など、周辺環境の影響を受ける

リートは不動産市場の影響を受けるため、分配金の低下やファンドそのものの価値が下がることがあり、見通しを立てるのが難しい場合があります。また、経済情勢や金利の変動、税制や建築規制など、不動産関連の法制度の変更による影響を受ける可能性もあります。

さらに、国内リートか海外リートか、住宅やホテルなどの特化型リートか複合型リートかによっても、注目すべきポイントが異なります。主な留意点は以下をご覧ください。

リートの種類別の留意点

リートの種類 見るべきポイント
国内リート 分配金利回り、有利子負債率、優待サービスの有無や種類
海外リート 対象不動産がある国の景気や地価の動向、日本円との為替相場
特化型リート 比較的安定した分配金を期待できるが、不動産セクターの好不況は要確認
複合型リート 特定の不動産セクターには左右されにくいが、高割合を占めるセクターの好不況は要確認

また、周辺環境がおよぼすリートへの一般的な影響については以下をご覧ください。

周辺環境の変化とリートへの影響

周辺環境 リートへの影響
金利 金利が上昇すると利回りが低下する可能性がある
法制度 法人税などの上昇や建築規制強化により利回りが低下する可能性がある
景気 オフィス・商業施設・ホテルは景気が悪化すると利回りが低下する可能性がある

上場廃止や倒産のリスクがある

リートが上場基準を満たさなくなった場合や、不動産投資法人が倒産した場合、リートの価値が大きく低下する恐れがあります。そのため、こまめに運用状況を確認し、適切な売却時期を逃さないことが重要です。

投資対象が災害リスクにより損害を受ける可能性がある

地震や洪水といった天災や火災などの災害リスクによって、対象の建物があるエリア全体の価値が下がってしまう恐れもあります。地価が下落すると、リートの価格や分配金が変動する可能性があります。

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REIT(リート)に投資する際に注意したいポイント

NOTICEと書かれたノートに下線を引いている人、コーヒーカップ、電卓、クリップ

リートに投資する場合、税金や証券会社への手数料などの費用が発生するので注意しましょう。


リートに投資する際の注意点

  • 手数料がかかる
  • 配当控除が受けられない

それぞれ注意すべきポイントについて詳しく解説します。

手数料がかかる

リートの購入時や売却時には、証券会社に売買手数料を支払う必要があります。また、運用中には運用手数料(信託報酬)が発生します。投資家が直接支払うわけではありませんが、手数料は価格に反映されているため、実質的に負担している点に注意が必要です。運用手数料はリートを保有している間、常に発生するため、運用期間が長くなるほど手数料の総額も増加します。

なお、手数料の形態は証券会社によって異なるため、リートを購入する前に必ず確認しておきましょう。

配当控除が受けられない

リートの配当は、原則として全額が課税対象となるため、配当控除を受けることはできません。

また、売却益には20.315%の税金が課されます。ただし、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの非課税投資制度を利用すれば、課税対象外となります。手元に残る利益を増やすためにも、これらの非課税投資制度を積極的に活用しましょう。

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REIT(リート)の始め方

資産状況のデータとパソコン、電卓、ボールペン

まずは、以下の手順でリートを始めるとよいでしょう。


【リートの始め方】

  1. 1. 投資信託・ETF・株式の個別銘柄のいずれに投資するかを決める
  2. 2. 証券口座を開設する
  3. 3. 投資スタイルにあうリートを選択し、購入する

まずは、投資期間やリスク許容度、投資資金などを考慮し、投資信託・ETF・株式の個別銘柄のいずれに投資するか決めましょう。

次に、証券口座を開設します。すでに保有している口座でも問題ありませんが、NISA口座を利用すれば、運用益や売却益が非課税になるため、より効率的な運用が可能です。

口座開設後、投資スタイルにあうリートを購入します。証券会社によって手数料が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

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REIT(リート)の選び方

複数の白いブロックとひとつだけ異なる緑色のブロック

手軽で少額から始められるリートですが、リートの種類を選ぶときには、以下のポイントに注意してください。


リートを選ぶポイント

  • リートの基本情報を確認する
  • 過去の運用成績を調べる
  • 運用会社について調べる

それでは、それぞれのポイントについて解説します。

リートの基本情報を確認する

まずは、リートの目論見書を確認し、用途や地域、運用方針などを把握しましょう。不動産セクターや地域ごとの好不況を考慮することで、今後の成長を予測できる場合があります。

また、運用方針やリートごとに開示されている決算情報も、隅々までしっかりと確認してください。利益を上げるためにどのような工夫(不動産の維持管理や成長戦略)をおこなっているかを調べることで、将来性を分析しやすくなります。

過去の運用成績を調べる

目論見書や証券会社のウェブサイトから、過去の運用成績も確認してみましょう。運用成績と分配金の関係や、運用成績が思わしくないときに実施された対策を調べることで、リート商品をより深く理解することができます。

ただし、リートは市場の影響を受けて急変する可能性があるため、運用成績だけでなく、景気や不動産動向もあわせて考慮することが重要です。また、対象不動産のセクターや地域ごとの好不況もチェックしておきましょう。

運用会社について調べる

同じ運用会社が運用する他のリート商品の基本情報も参考にしましょう。とくに、運用実績が短いリート商品の場合、同じ運用会社の他のリート商品を詳しく調べることで、運用方針をより理解しやすくなります。

また、個人投資家向けのイベントやセミナーでは、運用会社に関する情報が提供されることがあります。インターネットなどで情報をこまめに収集し、こうしたイベントに参加するのもおすすめです。

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まとめ

少額の資金から不動産投資ができるリートは、資産運用のひとつとして検討したい投資方法です。分散投資がおこなわれているため、価格変動が比較的穏やかで、初心者でも始めやすいとされています。また、プロが運用を担当するため、一般的な不動産投資と比べて手間がかからない点もリートの特徴です。

リートを活用した不動産投資を始める際は、仕組みや注意点をしっかりと理解し、長期投資による資産形成を目指しましょう。

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監修者情報

ファイナンシャルプランナー新井あらい智美ともみ

新井 智美

ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定を受けると同時に、国家資格である1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。

資格情報
CFP®(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
HP
https://marron-financial.com/

CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。

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(掲載開始日:2025年3月17日)
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