弁護士保険とは?補償が適用される事故やメリット・デメリットを解説

弁護士の机にある天秤と六法全書
公開日:2024年12月10日

交通事故を起こしたときや、それにともなう法的トラブルが発生したとき、また労働問題が発生したときなど、日常生活を送るうえで弁護士に相談するシーンはさまざまです。
しかし、経済的負担から弁護士に相談するのが難しい場合もあるでしょう。そのようなとき、費用をおさえて弁護士に相談や依頼ができる弁護士保険に加入していると便利です。

この記事では、弁護士保険への加入を検討する方に向けて、保険の概要や補償が適用される事故の種類、メリット・デメリットなどを解説します。

弁護士保険とは?

六法全書と弁護士バッジ

弁護士保険とは、日常生活を送るうえで発生するさまざまな法的トラブルの解決費用(弁護士費用)を補償します。法律相談料や弁護士費用(着手金/報酬金)などが補償されるため、トラブルが起きたときに役立てることができます

弁護士に相談や依頼をする場合、トラブルの内容によっては数十万円、数百万円ほどのまとまった金額が必要になる場合があります。しかし、経済的な理由から弁護士へ相談するのが難しい、その金額をすぐに準備するのは難しい、という方もいるでしょう。

しかし、弁護士保険に加入しておけば、弁護士に相談や依頼をする際にかかる費用の負担を軽減できるため、法的トラブルに遭遇したとしても弁護士に頼りやすくなります。また、弁護士保険は当事者と相手方のいずれも補償対象としているケースが多く、さまざまなトラブルで役立ちます。

なお、弁護士保険は「弁護士費用保険」という名称で呼ばれる場合もあります。呼び方が違うだけで、基本的な商品内容は弁護士保険と同じです。

弁護士保険の補償内容

弁護士保険の補償内容は弁護士費用や法律相談料など、弁護士に相談や依頼をした際にかかった費用の種類によって異なります。

具体的な補償内容は保険によってさまざまですが、よくある例としては「弁護士への法律相談時に支払う法律相談料を年間約10万円まで補償」、「弁護士と契約を結び交渉などの依頼にかかる弁護士費用を1事案につき1名ごとに約300万円まで補償」などが挙げられます。

ただし、保険のプランによって補償内容は変わってくるため、加入前によく確認しましょう。

弁護士保険の加入条件と補償対象者

弁護士保険に加入する際は、加入条件が設けられている場合があるため、事前の確認が必要です。加入条件は保険によってさまざまですが、例としては以下が挙げられます。

【弁護士保険の加入条件の例】

  • 保険契約者が満18歳以上である
  • 日本国内に住んでいる
  • 日本語の読み書きができ、重要事項説明書や必要書類の内容を理解できる

また、加入条件のほかに、補償対象者もあわせて確認しましょう。弁護士保険の補償対象者は保険会社やプランによって異なり、本人と家族を対象とする保険もあれば、被保険者本人のみを対象とする場合もあります。

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弁護士保険の補償が適用されるトラブルの種類

自動車同士の衝突事故

弁護士保険の補償が適用されるトラブルには、大きく分けると「特定偶発事故」と「一般事件」の2つになります。

【弁護士保険が補償されるトラブル】

  • 特定偶発事故(偶発的・突発的な事故)
  • 一般事件(特定偶発事故以外の事故)

以下では、それぞれどういった事故が該当するのか詳しく解説します。

特定偶発事故

特定偶発事故とは、偶然かつ突発的に発生した作用によって、体への傷害や財物の損壊が起きた事故のことです。おもに以下の事故が対象となります。

特定偶発事故とは

特定偶発事故とは
※上記は一例です。保険商品によって補償範囲は異なります

【特定偶発事故の例】

  • 交通事故:自動車、自転車、交通機関などの運行中の事故。自動車で信号待ちをしている間に後続車に追突されてケガを負った、自動車の運転中、不注意により歩行者にケガを負わせたなど
  • 人身傷害事故:他人から一方的に暴行を受けてケガを負った事故
  • スポーツ事故:スポーツ中のアクシデントで相手にケガを負わせてしまった
  • 物損事故:歩行中に人にぶつかり相手の持ちものを壊してしまった、お店の商品を壊してしまった など

一般事件

一方、一般事件(一般事故と呼ぶこともあります)とは特定偶発事故以外の事故をさします。一般事故に該当する事故の例は以下のとおりです。

一般事件とは

一般事件とは
※上記は一例です。保険商品によって補償範囲は異なります

【一般事件の例】

  • 家庭内トラブル:家族や親族間で起きた離婚や相続のトラブル
  • 労働トラブル:セクハラやパワハラ、不法労働などのトラブル
  • 住まい・近隣トラブル:欠陥住宅に関するトラブル、近隣住民とのトラブルなど
  • 男女トラブル:ストーカー被害などのトラブル
  • 消費者トラブル:悪徳商法や強引な勧誘などによるトラブル
  • いじめに関するトラブル:子どものいじめによる親同士のトラブル
  • インターネットトラブル:インターネット上で生じたトラブル
  • 医療トラブル:医療ミスに関するトラブル

前述したとおり被害者や加害者にかかわらず、弁護士保険の被保険者であれば補償を受けることができるため、上記のようなさまざまなトラブルにも安心して対応できます。

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弁護士保険に加入するメリット

メリット

弁護士保険への加入を迷っている方は、保険に加入した際の具体的なメリットを整理してみると良いでしょう。メリットを整理することで、ご自身にとって必要な保険かどうかを判断しやすくなります。

【弁護士保険のおもなメリット】

  • 弁護士への相談や依頼にかかる経済的負担を減らせる
  • 泣き寝入りをしないで済む
  • 適正な慰謝料や賠償金を提示してもらえる
  • 加入者向けのさまざまなサービスを利用できる
  • 保険商品によっては家族も補償対象となる

以下では、弁護士保険のメリットを詳しく紹介します。

弁護士への相談や依頼にかかる経済的負担を減らせる

弁護士保険の大きな魅力は、トラブルに遭遇した際の弁護士費用に備えられる点にあります。

事件の種類によって弁護士費用は異なりますが、たとえば法的トラブルで弁護士に相談をする場合は着手金や報酬金で数十万円から100万円を超える費用がかかる可能性があります。

以下は、民事事件を依頼する際の着手金、報酬金の一例です。

着手金・報酬金の一例

経済的利益の額 着手金の目安(税抜) 報酬金の目安(税抜)
300万円以下 経済的利益の8% 経済的利益の16%
300万円超~3,000万円以下 経済的利益の5%+9万円 経済的利益の10%+18万円
3,000万円超~3億円以下 経済的利益の3%+69万円 経済的利益の6%+138万円
3億円超 経済的利益の2%+369万円 経済的利益の4%+738万円

上記はあくまで一例です。事件の種類によって費用は異なります。

弁護士保険に加入している場合は、上記の弁護士費用が補償される場合があります。

なお、弁護士保険の保険料は商品によって異なりますが、月額約1,000円〜5,000円のケースが多いでしょう。なかには1,000円未満の保険料で加入できる保険もあります。

月々数百円から数千円の保険料を支払うことで、10万円、20万円と高額になりやすい弁護士費用の補償を受けられるのは、弁護士保険ならではの大きなメリットです。

泣き寝入りしないで済む

法的トラブルに巻き込まれた際には、弁護士への依頼にかかる高額な費用の支払いができず、泣き寝入りしてしまう場合もあるでしょう。たとえば、「弁護士費用を支払えるほどの経済的な余裕がない」「高額な弁護士費用を請求されないか心配で弁護士を頼れない」などの状況はよくあるケースです。

しかし、弁護士保険に加入している場合は弁護士費用の負担についての不安がなく、気軽に弁護士を頼れるため、経済的な理由で泣き寝入りする事態を避けられるでしょう。

適正な慰謝料や賠償金を提示してもらえる

相手方がいるトラブルの場合、当事者同士で解決しようとすると、感情的な話し合いになり交渉がうまくいかないことがあります。長い時間をかけても不本意な結果で終わる可能性もあるでしょう。

しかし、弁護士に任せれば相手方との交渉も任せられるため精神的な負担も軽減し、法律に則った公正中立の立場から、適正な慰謝料や賠償金額を提示してもらえます。

加入者向けのさまざまなサービスを利用できる

弁護士保険のなかには、保険加入者に向けた無料サービスを提供している商品もあります。以下は弁護士保険に付帯する無料サービスの一例です。

【弁護士保険の加入者向けの付帯サービスの例】

  • 法律文書のチェック
  • 弁護士の紹介
  • 弁護士の無料相談窓口
  • 税金の相談サービス
  • トラブル防止に役立つ弁護士保険ステッカーの配布

なお、サービスの利用回数や時間に制限がある場合もあります。無料サービスを重視して弁護士保険を探す際は、サービスの詳細条件も確認しておきましょう。

保険商品によっては家族も補償対象となる

弁護士保険には、契約者本人に加えて家族も補償対象とする商品や、家族を補償対象に追加できる特約を設けている商品もあります。家族の補償範囲は保険によってさまざまですが、配偶者や一定の年齢以下の子どもを補償対象に含むケースが一般的です。なかには、3親等以内の親族・姻族をカバーしてくれる保険もあります。

働く世代の方や外出頻度が高い家族がいる場合は、トラブルに巻き込まれる可能性も高くなりやすいです。たとえば、勤め先の会社でハラスメントが起きたり、通勤中に交通事故を起こしたり、外で遊んでいる子どもが物損事故を起こしたりなど、トラブルはいつ起きるかわかりません。
しかし、家族も補償対象とする弁護士保険に加入しておけば、家族がトラブルに巻き込まれた場合の弁護士費用の負担を軽減できます。

なお、家族が法律上の賠償責任を負った場合の賠償金は、個人賠償責任保険金での支払いが可能です。家族のトラブルが心配なら個人賠償責任保険に加入する、あるいは個人賠償責任保険の特約を付帯できる弁護士保険に加入すると安心でしょう。

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弁護士保険のデメリット

デメリット

弁護士保険はメリットだけでなく、いくつかデメリットもあります。弁護士保険のおもなデメリットは以下のとおりです。

【弁護士保険のデメリット】

  • 補償対象外となる期間がある(待機期間・不担保期間)
  • 加入時にすでに発生しているトラブルは補償の対象外
  • 補償対象外となるトラブルもある
  • 縮小てん補割合が決められている

以下で弁護士保険のデメリットを詳しく紹介します。

補償対象外となる期間がある(待機期間・不担保期間)

弁護士保険には、加入時に一定の待機期間が設けられている場合があります。ただし、交通事故などのトラブル(特定偶発事故)は、待機期間も不担保期間も適用されず、すぐに補償を受けられるケースが一般的です。解決したいトラブルが待機期間や不担保期間の適用となるかは、保険会社へ確認しましょう。

待機期間とは

弁護士保険における待機期間とは保険契約後の責任開始日から一定の間、法的トラブルが起きても補償を受けられない期間です。

待機期間の設定基準は保険商品によって異なりますが、一般事故を対象に責任開始日から約3ヵ月間の待機期間を設けているケースが一般的です。

不担保期間とは

弁護士保険によっては、待機期間とは別に不担保期間が設けられていることがあります。
不担保期間とは保険の補償を受けられない期間で、一般的に特定のトラブルに対して設けられています。たとえば、「契約日から1年経過した後に補償の対象となる」などです。

どういったトラブルが該当するかは保険によってさまざまですが、基本的には以下の一般事件が特定のトラブルに該当するケースがあります。


【不担保期間が設けられるトラブルの例】

  • 離婚や相続など家族間で起きたトラブル
  • ハラスメントなど雇用主を相手方とした労働トラブル
  • 貸主を相手方とした貸借契約トラブル
  • ストーカー被害に関するトラブル

なお、不担保期間は1年や2年などの年間単位で設けられている場合がほとんどです。

加入時にすでに発生しているトラブルは補償の対象外

弁護士保険への加入時にすでに発生しているトラブルは、一般的に補償の対象外です。

補償の対象となるのは、あくまで加入後に発生したトラブルです。「弁護士保険への加入はトラブルに直面してから検討すれば良い」と考えていると、解決したいトラブルに対して必要な補償を受けられないため注意してください。

補償対象外となるトラブルもある

弁護士保険に加入していても、トラブルの内容によっては補償の対象外となる場合があります。以下は補償の対象外となるケースの一例です。

【弁護士保険の補償対象外となるケースの例】

  • 相手方への請求額・相手方からの請求額が一定額未満
  • みずからの故意または重大な過失によって招いた問題
  • 暴行や脅迫、詐欺などの加害者行為
  • 刑事事件や少年事件、医療観察事件
  • 行政・税務の不服申し立て、行政事件訴訟
  • 自殺・自傷行為
  • 麻薬摂取時や泥酔状態におこなった行為

補償対象外となるケースを把握しておくことで、トラブルが起きた際に弁護士保険で対応すべきか、弁護士保険以外での対応が必要かどうか迅速に判断できる可能性があります。トラブルの内容によって補償を受けられるケースと受けられないケースがあることを、事前に確認しておきましょう。

縮小てん補割合が決められている

弁護士保険の多くは、保険金の「縮小てん補割合」が定められています。縮小てん補割合とは、弁護士費用として実際にかかった金額のうち、保険金として支払われる金額の割合です。

弁護士保険の保険金は、着手金や法律相談、報酬など、費目ごとに保険金が決められており、縮小てん補割合の多くは報酬にかかる保険金で設定されています。ただし、着手金は100%で報酬は0%、着手金は80%で報酬は50%など、商品やプランにより縮小てん補割合は異なります。

縮小てん補割合によっては、支払限度額を超えていなくても保険金の全額を受け取ることができない場合があり、契約者が自己負担しなければならない(免責金額が発生)可能性もあります。

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自動車保険などの「弁護士費用特約」があれば弁護士保険は不要?

クエスチョンマークと男性

一部の自動車保険には、付帯できる特約のひとつに弁護士費用特約を設けられています。

自動車保険の弁護士費用特約とは、自動車事故の被害に遭った場合の弁護士費用を補償してくれる特約をさします。弁護士保険と同様に、弁護士への依頼費用や法律相談費用を補償してくれる点が特徴です。

また、自動車事故だけでなく、日常生活全般のトラブルを対象とする弁護士費用特約もあります。補償内容によっては、自動車保険の加入時に弁護士費用特約を付帯させるだけでさまざまなトラブルをカバーすることが可能です。

ただし、自動車保険に付帯できる弁護士費用特約は、補償の対象になるトラブルの種類が制限されているケースがあるため注意してください。たとえば、家族間で生じる離婚問題をはじめとする体やモノに被害が発生していないトラブルや、被保険者が加害者となるトラブルは、補償の対象外とされる場合があります。

一方で、弁護士保険では幅広い範囲のトラブルを補償の対象としているうえ、当事者や相手方の立場に関係なく補償を受けられる場合が多いです。

それぞれ補償範囲が異なる以上、弁護士費用特約が付帯できる保険に加入しているからといって弁護士保険が不要とは一概にいえません。現在、弁護士費用特約を付帯した保険に加入している方は、特約の補償内容を確認し、十分でないと感じる場合は弁護士保険への加入をおすすめします。

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弁護士保険を探すなら保険の比較サイト活用がおすすめ

スマートフォンを操作する人

ご自身の状況に適した補償内容や保険料の弁護士保険を効率良く探したい場合は、保険の比較サイトを活用するのがおすすめです。

保険の比較サイトでは、複数の保険の補償内容や保険料、特徴などを一目で見比べられます。ひとつひとつの保険を調べると時間や手間がかかりますが、保険の比較サイトを利用すれば複数の保険を一括で比較できるため、より効率的にご自身のニーズにあった商品を探せます。

気になる保険が見つかった場合は、そのまま申込みを進められますので、ぜひご活用ください。

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まとめ

弁護士保険に加入すると、法的トラブルが発生した際に弁護士費用についての不安を持つことなく、気軽に弁護士へ相談や依頼をおこなうことができます。突然のトラブルが起きたときに高額な弁護士費用を支払えるか不安な方は、この機会にご自身に適した弁護士保険を探してみると良いでしょう。

また、弁護士保険で受けられるサービスや補償内容は各保険で異なります。ご自身のニーズにより適した保険に加入するためにも、複数の保険をよく比較してから選びましょう。複数の弁護士保険を比較して探す場合は、一覧画面で補償内容や保険料を見比べられる保険の比較サイトをぜひご活用ください。

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監修者情報

ファイナンシャルプランナー新井あらい智美ともみ

新井 智美

ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定を受けると同時に、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。

資格情報
日本FP協会会員(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
HP
https://marron-financial.com/

CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。

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  • このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
  • 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。

(掲載開始日:2024年12月10日)
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