生命保険と税金法人契約について
<法人が生命保険に加入する目的って?>
法人(会社)が保険に加入する主な目的は、福利厚生、退職金準備、節税などが挙げられます。
具体例を挙げると、
- 社員や役員が死亡した時に死亡退職金を遺族に渡す
- 経営陣が突然死亡した場合に会社の体制を立て直す期間に必要な資金準備をする
- 節税を行い、お金を残すことによって将来の設備投資や退職金などの資金準備をする
などがあります。
<法人が支払う生命保険の保険料は全額経費?>
税金は簡単に言うと、収入から支出を引いて残った利益に対してかかるものです。しかし、支出の中には本当に仕事に使ったお金と、単に現金を他の財産に交換しただけのものがあります。例えば、社員の給料や交通費、事務用品などは仕事のために使ったお金ですが、金の延べ棒や土地などは現金が形を変えただけで、実際に使ったとは言えません。現金が形を変えたものまで支出として認めると不公平ですし、税金を徴収できなくなります。そこで税金を計算する際の支出として認めるものを「損金」とし、現金と同等ものと考え、課税の対象とする支出を「資産」として扱います。
- 損金 ⇒実際に使った支出として、税金の対象とならない(経費となる)
- 資産 ⇒現金の形が変わっただけで実際の支出と認められず課税の対象となる
生命保険の場合、保険商品や契約形態により、満期金や解約返戻金、死亡保険金などが損金ではなく資産と考えられる場合もあります。このため、すべての生命保険の保険料を損金とすることができないのです。
損金になると思い、保険料を払ったが損金として認められず、課税された場合、現金がないにも係わらず税金を支払うことになりかねないので、法人で生命保険に加入する場合は、どのような税務になるかを事前に確認しましょう。
ここでは、代表的な終身保険、定期保険の保険料が損金になるか資産になるかを説明します。
<終身保険の保険料の税務>
終身保険の保険料の税務は、受取人が法人か、被保険者の遺族かによって異なります。受取人が法人の場合は資産に計上、遺族の場合は給与として損金として計上します。
- 終身保険の保険料の税務
-
保険金受取人 税務処理 法人 資産 遺族 損金(給与)
終身保険は解約しない限り必ず死亡保険金が受け取れる商品ですから、限りなく現金に近い商品と言えるでしょう。よって、死亡保険金を法人が受け取ればそれは法人の財産ですから資産とみなされます。これに対して、遺族が受け取れば、社員の代わりに保険料を払っていると考えられるので会社としては経費、社員からみると給与となります。
<定期保険の保険料の税務>
定期保険の保険料の税務は、保険金受取人によって異なります。保険金受取人が被保険者の遺族の場合、その保険料は被保険者に対する給与となり、会社としては経費になるのは終身保険と同じです。保険受取人が法人の場合はその保険が定期保険であるのか長期平準定期保険であるのか逓増定期保険であるのかによって処理が異なります。
定期保険の保険料
定期保険の税務処理は、全額損金として処理します。定期保険はある一定の期間のみを保障する保険です。期間を過ぎると価値は0になるので、財産とは考えられないので保険料は経費として処理します。
長期平準定期保険、逓増定期保険の保険料
長期平準定期保険や逓増定期保険も定期保険なので、期間を過ぎると価値が0になってしまいますが、途中で解約をすると解約返戻金が戻ってくるため、法人の契約では解約返戻金を見込んで、退職金準備、節税などのために活用しています。よってその解約返戻金に相当する部分を資産として扱います。
年齢が上がると死亡のリスクも上がることから、本来であれば定期保険などの死亡保険は毎年保険料がアップしていくはずです。ところが一部の保険会社などを除き、保険期間満了までは保険料が変わらず一定です。つまり加入したばかりは実際よりも保険料を多く支払い、保険期間の後半に進むにつれて、保険料が不足していることになります。その不足分は最初に多く支払っていた分の保険料を充てていくといった仕組みになっています。
期間の長い長期平準定期保険や逓増定期保険生命保険の場合は特に最初のうちに余分に支払う保険料が多いため、それが期間の前半で解約返戻金として蓄積され、期間の後半には不足する分に充てられることにより減少していきます。よって、この2つの定期保険の場合、期間のはじめの頃の保険料は資産に計上して、後半には損金計上するといった2段構えになっているのが特徴です。
満期まで継続すれば、結局は支払ってきた保険料のすべては損金に計上されます。経費、資産とする比率は契約期間などで異なりますので、以下で説明しましょう。
●長期平準定期保険の保険料
長期平準定期保険とは、保険期間の満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、保険に加入した時の被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるものをいいます。
- 長期平準定期保険となる条件
-
(1) 保険期間満了時の被保険者の年齢 70歳超 (2) 契約年齢 + (保険期間 × 2) 105超
(例)長期平準定期保険となるかの計算例
被保険者の契約時の年齢50歳、保険契約期間30年の定期保険は長期平準定期保険となるか?
- 保険期間満了時の被保険者の年齢 50歳+30年 = 80歳 > 70歳
- 契約年齢+(保険期間×2) 50歳+(30年×2)= 110 > 105
⇒どちらにも該当するため、長期平準定期保険として保険料の税務処理を行う
死亡保険金受取人を法人とした場合の長期平準定期保険の保険料の税務は、その保険期間の時期により異なり、次のように処理を行います。
-
保険期間の開始の時から
当該保険期間の60%に相当する期間残り40%に相当する期間 1/2 損金
1/2 資産全額 損金
及び、左記資産計上額を残りの期間に均等に取り崩して損金とする
●逓増定期保険の保険料
逓増定期保険とは、下図のように死亡保険金が保険期間満了までに増加する定期保険を言います。
死亡保険金受取人を法人とした場合の逓増定期保険の税務は、その保険期間の時期により異なり、次のように処理を行います。
- 逓増定期保険の税務
-
保険期間満了時の被保険者の年齢 契約年齢+
(保険期間×2)保険期間の開始の時から当該保険期間の60%に相当する期間 残り40%に相当する期間 Ⅰ 45歳以下 - 全額 Ⅱ 45歳超~70歳以下 95歳以下 1/2 損金
1/2 資産全額 損金算入
及び、左記資産計上額を残りの期間に均等に取り崩して損金とするⅢ 70歳超~80歳以下 90歳超~120歳以下 1/3 損金
2/3 資産Ⅳ 80歳超 120歳超 1/4 損金
3/4 資産計上
(例)逓増定期保険の保険料の税務処理方法の判断例
被保険者の契約時の年齢45歳、保険契約期間30年の逓増定期保険の税務処理は?
- 保険期間満了時の被保険者の年齢 45歳+30年 = 75歳
- 契約年齢+(保険期間×2) 45歳+(30年×2)= 105
⇒上記表のⅢに該当するため、保険期間の開始の時から当該保険期間の60%に相当する期間は、1/3を損金、2/3を資産とし、残り40%に相当する期間は全額損金及び、当初60%の期間に資産計上した額を残りの期間に均等に取り崩して損金とする。
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