猫に歯磨きは必要?やり方や頻度、難しいときの対処法を解説

歯磨きをされながら目を閉じる猫
公開日:2025年6月11日

猫の歯磨きと口のケアは、歯と口の健康を保つために大切な習慣のひとつです。猫は人と比較して歯垢が溜まりやすく、歯のケアを怠ると「歯周病」になってしまうことがあります。
歯周病が進行すると猫の口内環境が悪化し、歯のトラブルやそのほかの疾患の原因になりかねません。猫の健康的な生活を守るためにも、定期的な歯磨きとオーラルケアを習慣づけて、口内を清潔に保つことが必要です。

この記事では、猫の歯磨きと歯周病などの歯に関する基本的な知識、猫の歯磨きのやり方を解説します。歯磨きの頻度や難しいときの対処法も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

猫に歯磨きは必要?

動物病院で歯磨きをしてもらっている猫

猫の口内でよくあるトラブルが歯周病です。歯周病に罹患すると、歯を支える骨や歯茎に影響を与えるほか、全身性疾患の原因にもなります。歯周病を防ぐために、歯磨きをはじめとするデンタルケアが大切です。

また、猫の主食となるキャットフードの中でも、とくに柔らかいものは口の中に食べカスが残りやすくなるため、定期的な歯磨きでのオーラルケアが必要です。

子猫のときから口に触れられる行為に慣らし、歯磨きの習慣をつけると良いでしょう。

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猫に歯磨きをしていないとどうなる?

黄色い歯ブラシで歯磨きをしてもらっている猫

前述のとおり、猫に歯磨きをしないと歯周病に罹患する可能性があります。また、口内炎も猫にみられる口内のトラブルです。歯磨きをおろそかにすると、猫の健康に大きな悪影響を及ぼす病気になってしまいます。

歯周病の原因になる

歯周病は、歯垢(プラーク)に存在する歯周病原細菌によって生じる感染性炎症性疾患です。猫の約8割は歯周病に罹患するといわれています。

歯磨きをしていないと、口の中には歯垢が溜まります。歯垢は細菌のかたまりで、歯垢をそのままにすると石灰化して歯石になり、歯肉炎や歯周炎を含む歯周病の原因になります。歯周病が進むと、歯を失ってしまうほか、全身性疾患の誘因となる場合もあるため、注意しましょう。

口内炎の原因になる

口内炎は、口の中の粘膜などに生じる炎症です。猫の口内炎では、口腔尾側粘膜や頬粘膜や歯茎、舌の赤い腫れ、潰瘍などがみられます。

口内炎の明確な原因は不明であり、歯磨きだけで口内炎を防ぐことはできませんが、定期的な歯磨きは口内炎の早期発見につながります。

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猫の歯磨きのやり方は?

獣医に差し出された歯ブラシのにおいをかぐ猫

猫は「歯磨き」という行為に慣れていないため、最初から歯ブラシで磨くと嫌がる可能性があります。まずは口に触れるところから始め、段階的に歯ブラシでの歯磨きに慣れさせましょう。

歯磨きをおこなううえでのステップは、次のとおりです。

【歯磨きのおもなステップ】
(ステップ1)口周りを触る行為に慣れさせる
(ステップ2)歯磨きしやすい代用品を試す
(ステップ3)歯ブラシで歯磨きする

それぞれのステップについて以下で詳しく解説します。

(ステップ1)口周りを触る行為に慣れさせる

はじめに、猫の口周りに優しく触れてみましょう。頭を撫でる延長で口に触ると、猫に余計な警戒心を与えることなく、自然に口に触れやすくなります。また、猫の口周りを触る前に歯磨きジェルをつけて味を覚えさせたり、触れた後にご褒美をあげたりする方法もおすすめです。

口周りに触れる行為に猫が慣れてきたら、指を猫の口の中に入れ、歯や歯茎を触ってみましょう。はじめは前歯を触り、徐々に奥歯へと移ります。猫が嫌がるときは無理をせず、時間をかけて口周りや口の中を触ることを意識しましょう。

(ステップ2)歯磨きしやすい代用品を試す

猫が口に触られることに慣れてきたら、歯磨きしやすい代用品に挑戦しましょう。代用品のおもな例は以下のとおりです。

【歯ブラシの代用品の例】

  • 猫用の歯磨きシート
  • ガーゼ
  • コットン
  • 綿棒
  • 歯磨きジェル

市販されている猫用の歯磨きシートは、猫にとって抵抗感が少なく、歯磨きもしやすい代用品です。歯磨きシートを使う際は、指に歯磨きシートを巻き付けて、猫の歯や歯茎を優しく磨きます。片方の手で猫が動かないように抱き、歯磨きシートをつけた指で1本ずつ磨きましょう。

歯磨きシートの代わりに、ガーゼやコットン、綿棒などを利用することもできます。その場合は、事前に少し湿らせてから歯や歯茎を磨きましょう。

(ステップ3)歯ブラシで歯磨きする

歯ブラシシートなどで問題なく歯磨きできるようになってきたら、歯ブラシでの歯磨きへ移行しましょう。

はじめに、歯ブラシを少し湿らせ、猫の閉じた口に優しくあてます。その後、口を閉じたまま歯ブラシで撫で、猫を歯ブラシに慣れさせましょう。

猫が歯ブラシに警戒しなくなったら、口の中に歯ブラシを入れ、45度の角度で歯にあててブラッシングします。前歯からブラッシングを始めて、犬歯や奥歯を磨きましょう。歯ブラシの先端を使い、歯周ポケットがきれいになるように、優しくブラッシングするのがポイントです。

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猫の歯磨きの頻度は?

テニスボールにじゃれる子猫

猫の歯磨きは、毎日おこなうことが理想的です。たとえば、「ご飯の後」や「おやつの前」のように習慣化させると、歯磨きを忘れることも少なくなります。毎日が難しい場合は、少なくとも1週間に2~3回程度おこなうと良いでしょう。

なお、猫の歯磨きは、歯周ポケットを清潔にする目的でおこなうため、食前や食後にこだわる必要はありません。「歯磨きをする」ことを優先して、定期的におこないましょう。

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猫の歯磨きが難しいときの対処法は?

飼い主に抱きかかえられて歯を磨かれている猫

猫によっては、どうしても歯磨きに慣れず嫌がってしまうこともあります。とくに、成猫になってから歯磨きの習慣を身につけるのは難しいケースも考えられます。

以下では歯磨きが難しいときの対処法を解説するので、愛猫が歯磨きを嫌がる場合は活用してみましょう。

無理に歯磨きをしない

嫌がる猫に無理に歯磨きをしてしまうと、「歯磨き=嫌なこと」という学習をしてしまい、その後歯磨きができなくなる恐れがあります。猫が嫌がったら無理に歯磨きをせず、口周りを触ることに慣れさせながら、少しずつステップを踏んで進めることが大切です。

また、歯磨きペーストを歯茎や歯ブラシにつけると受け入れやすくなる場合もあります。猫が好むフレーバーがついたものや、飲み込んでも大丈夫な歯磨き粉も提供されており、歯を磨く際に便利です。デンタルケア商品などを活用しながら、無理のない範囲で気長に進めましょう。

なお、長時間の歯磨きは猫にストレスを与えるため、できるだけ短時間で歯磨きを終えるように心がけましょう。動物病院のなかには歯磨き指導をおこなう病院もあるため、ご自身での歯磨きが難しいときは利用すると良いでしょう。

猫用の歯磨きおやつやガムを使う

歯磨きおやつやガムは、噛むことでデンタルケアをサポートする商品です。おやつ感覚でおいしく食べられ、噛むことで歯の汚れも落とせるので、気軽に利用できる点が特徴です。

ただし、歯磨きおやつやガムの効果は限定的であるため、あくまで猫の歯磨きをサポートするための補助として活用しましょう。

猫用の歯磨きグッズを使う

おやつやガム以外にも、近年はさまざまな猫用の歯磨きグッズが提供されているため、活用するのがおすすめです。

前述のとおり、猫が好む味がついた猫用の歯磨き粉を活用すると、ブラッシング中もおいしさを感じることができ、歯磨きに慣れやすくなります。
また、デンタルケアに特化したドライフードやリキッドタイプのオーラルケア用品、猫用の歯磨きおもちゃのほか、水に入れるだけのオーラルケア用品など、手軽に遊びながらデンタルケアできるグッズもあります。

猫が歯磨きを嫌がるときは、便利な歯磨きグッズを併用して、猫の口のケアをおこないましょう。

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猫の歯磨きに関するよくある質問

クエスチョンマークと猫

最後に、猫の歯磨きに関するよくある質問をQ&A形式で紹介します。猫の歯磨きをおこなうときの参考にしてください。

Q.猫は、歯磨きをいつから始めたら良い?

猫の歯磨きは、順応しやすい子猫の時期から始めるのがおすすめです。たとえば、「口に触る」などの歯磨きに向けたトレーニングは、生後3週間頃から始めると良いでしょう。

なお、猫の歯は生後7ヵ月でほぼ永久歯に生え変わり、それまでは乳歯がある状態です。乳歯のある間は歯ブラシでのブラッシングは控え、永久歯に生え変わる生後7ヵ月を目安に始めましょう。

Q.猫の歯に歯石がついていたら?

歯石は、歯磨きでは取ることができません。歯石が蓄積すると歯周病の原因になるため、動物病院を受診しましょう。動物病院では歯石取りの必要性を含めて診断し、必要な場合は全身麻酔をかけて歯石除去をおこなう場合もあります。

Q.歯に異常があるときはどうすれば良い?

歯周病は、歯石の付着、歯肉の炎症、歯周炎による出血、歯がぐらつくなどの段階で進行します。初期段階では歯茎の赤みや腫れ、口臭などの症状がみられるため、歯磨きをしているときに血が出ているなどの異常を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。

また、猫にとって歯周病以外に、口内炎などもよくある疾患です。歯磨きをする際は、日頃から猫の口内をよく確認するようにしましょう。

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歯の異常に備えたいときはペット保険への加入がおすすめ

歯ブラシにじゃれる猫

歯科治療に限らず、ペットの診療は自由診療となるため、治療費は全額自己負担になります。そのため、歯周病や口内炎など、猫の歯や口の異常に備えたい方は、ペット保険への加入がおすすめです。ペット保険に加入すると、歯の治療費の補償が受けられるため、もしものときも安心です。

なお、歯科疾患の治療や、予防目的の歯石取りを補償の対象外としている保険会社もあるため、事前の確認が必要です。どれを選べばいいかわからないという方は保険の比較サイトを活用すると、猫の年齢や補償内容などを複数の保険会社で比較できるため、ご自身に合う保険を選びやすくなります。


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まとめ

体を横たえて正面を向く猫

猫に歯磨きをすることは、歯周病や歯石予防に効果的です。順応性の高い子猫のときから、歯磨きの習慣をつけてデンタルケアやトレーニングをおこなうと、歯周病などの対策になります。

なお、猫の歯磨きをおこなうときは、猫が嫌がる場合もあるため、まずは口に触られることから慣れさせましょう。歯を磨くときは、猫の歯に45度の角度で歯ブラシをあて、優しく磨きます。おやつ感覚で歯のケアをサポートできる猫用の歯磨きおやつやガムを利用するのもおすすめです。

また、日常的に口の中をチェックする習慣も大切です。もしも、歯茎の腫れや出血、口臭の強まりなどの異常に気づいたら、早めに動物病院を受診して相談しましょう。その際、歯周病などの歯科診療が補償対象となるペット保険に入っていれば、万が一のときに費用をおさえられて安心です。

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監修者情報

井上いのうえひとみ

井上ひとみ

獣医師。住之江公園南トート動物病院副院長。幼少期から動物が好きだったため小学校では飼育委員をし、自宅では犬や猫、ハムスター、フェレット、うさぎ、ラットなどたくさんの動物たちと暮らす。大学在学時には一時的にタヌキを保護していた経験もある。大阪府立大学農学部獣医学科(現:大阪公立大学獣医学部・獣医学研究科)を卒業後は大阪府内の動物病院での勤務を経て友人と動物病院を開業。現在は保護犬5匹、保護猫2匹と一緒に暮らす。

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  • このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
  • 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。

(掲載開始日:2025年6月11日)
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