猫が水を飲まないのは要注意?原因や起こり得る病気、対処法を解説

白い器の水を飲む猫
公開日:2025年6月11日

猫はもともと砂漠に住む動物で、一般的にあまり水を飲まないとされています。実際に1日中全く水を飲まないで過ごしたり、水を飲んでも吐いてしまったりすることも珍しくありません。
ただし、全く水分を摂らなくて良いわけではなく、健康を維持するためには、適切な水分補給が必要です。また、飲水量が不足すると、脱水症状をはじめ、さまざまな病気にかかるリスクがあります。

この記事では、猫が1日に必要な水分量や、水を飲まないことで発症する病気、飲まないときの注意点、飲ませ方の工夫について解説します。

猫が水を飲まないのは要注意?

ドライフードを食べる猫

もともと猫は肉食で、捕食した動物の体から必要な水分を摂取します。そのため、ほとんど水を飲まなくても健康に生活できる動物です。また、猫は砂漠で暮らしていたため、少しの水でも生きていけるといわれています。

ただし、猫の体は60~70%が水分でできているため、生命を維持するためにも水分摂取は大切だといえるでしょう。猫の主食であるキャットフードの場合、ドライフードは水分含有量が10%以下のため十分な水分を摂取することはできませんが、ウェットフードであれば適度な水分が含まれているため、通常すぐに脱水症状を起こすことはありません。

また、ミルクのみ飲んでいる子猫なら、ミルクで十分な水分を補給できるため、水を与えなくても問題ありませんが、ドライフードやウェットフードを食べるようになったら、ミルクよりは水分が少なくなるため、水を飲ませるようにしてください。

なお、前述のとおりキャットフードからも水分を摂取できますが、健康を維持するためには、適切な水分補給を心がけたほうがよいでしょう。
ご飯を食べず水も飲まない状態が続き、水を飲ませると吐くことがある場合は、猫が必要な水分を摂取できないだけでなく、何らかの病気にかかっている恐れもあるため、すぐに動物病院を受診してください。

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1日に必要な水の量は?

50mlのビーカー

健康な猫が1日に必要とする水分量は、体重1kgあたり30ml~70ml程度とされています。猫の大きさにあわせて必要な水分を与えるようにしましょう。

猫の大きさと1日に必要とする水分量

猫の大きさ(体重) 1日に必要な水分量
小型(2kg~4kg) 60ml~280ml
中型(4kg~7kg) 120ml~490ml
大型(7kg~) 210ml~

1日に必要な水分量は、大きさ以外に猫の運動量や年齢、毛種によっても異なります。また、ドライフードはウェットフードに比べて水分含有量が少ないため、ドライフードをメインに与えている場合は飲水量を増やす必要があります。

飲水として与える量の計算方法

1日に必要な水分量は、フードに含まれる水分と飲水量の合計です。たとえば、120ml必要な場合、フードに20mlの水分が含まれているなら、飲水で与える量は100mlです。

なお、一般的にウェットフードは約75%が水分、ドライフードは約10%が水分とされています。

1日にウェットフードを80g、ドライフードを100g食べた場合、以下が食事から摂取した水分量です。

【食事から摂取できる水分量の計算式】

(ウェットフード由来の水分量)
80g
×
75%
(ドライフード由来の水分量)
100g
×
10%
70g

水の比重は1(1g=1ml)のため、必要な水分量から70mlを差し引き、飲水として与える量を求めてください。

なお、実際の水分量はフードの成分表を参照しましょう。成分表にはフード100gあたりに含まれる水分量が記載されています。水分量が10gと記載されている場合は、水分の含有割合は10%として計算します。

飲んだ水の量の計算方法

飲水量は、水が減った量から測ります。計量カップで計測した水を水飲みボウルに入れ、24時間後に残った水の量を計測してください。

猫が水をたくさん飲んで途中で追加した場合は、追加分をメモしておきましょう。また、計測時間は24時間でおこなうのが基本のため、決まった時間で計測します。たとえば、朝8時に計測開始した場合、終わりは翌朝8時までです。

また、水は1ml=1gなので、ペットボトルの重さを測る方法でもおおよその飲水量の計測が可能です。まずは1日の最初に飲用ペットボトルの重さを測っておきましょう。

1日の終わりに、水飲みボウルに残った水を飲用ペットボトルに戻して全体の重さを測り、最初に測った重さから差し引きます。水飲みボウルに入れた時点でホコリなどが入っている恐れもあるため、計測したらペットボトルの水は捨ててください。

ただし、蒸発している分もあり正確な数値を調べるのは難しいため、あくまで目安として把握しておきましょう。

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猫が水分不足かどうかの見分け方は?

ガラスの器の水を飲もうとしている猫

猫が水分不足かどうかは、皮膚を軽くつまんで持ち上げたり、歯茎の状態や排尿量などをチェックしたりして確認できます。具体的な見分け方は以下を参考にしてください。

【猫の水分不足の見分け方】

  • 尿の量が減っている
  • 尿の色が濃くなる
  • 尿のにおいが強くなる
  • 涙や鼻水に粘り気がある
  • 皮膚の弾力が減る
  • 歯茎が乾く
  • 目がくぼむ
  • 口の中や鼻が乾燥している
  • 元気がないように見える
  • 食欲不振

猫の脱水症状を見分けるには、皮膚の弾力を確認するのもひとつの手段です。首や背中の皮膚をつまんで少し伸ばしてみましょう。健康な猫なら手を離すとすぐに皮膚がもとに戻りますが、熱中症などにより猫が水を飲まないで脱水症状が起こっている場合は戻るのに数秒かかります。

一般的に、軽度の脱水症状ですともとに戻るまでに2秒ほどかかり、重度の脱水症状ではもとに戻らず皮膚が持ち上がったままになります。

なお、歯茎が乾いていて、押すと色がすぐにピンクに戻らない場合も脱水のサインです。水分不足に素早く気づくためにも、日頃からよく観察することを心がけましょう。

子猫や老猫の水分不足の見分け方

子猫は胃腸が未発達のため、脱水症状を起こしやすい傾向にあります。そのため、冷たい水を避け常温で与えるようにしましょう。前述した脱水症状の見分け方のポイントをこまめにチェックし、元気がないときは早めに動物病院を受診してください。

また、老猫のなかには水をあまり飲まない子もいますが、年齢にかかわらず水分は必要なため、水分不足に陥っていないかこまめにチェックしましょう。

ただし、皮膚の弾力でチェックをおこなう場合、老猫は皮膚の弾力が弱いため、水分不足でなくてもつまんだ皮膚が戻りにくいことがあります。水分不足と誤って判断することがないよう、不安であれば動物病院で受診することをおすすめします。

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猫が水を飲まないことで引き起こされる病気は?

ふとんの上でまどろむ猫

猫は水をあまり必要としない生き物ですが、不足すると脱水症状に陥るだけでなく、病気になることがあります。そして、水分が不足したときにかかりやすい猫の病気には、さまざまな種類があります。おもに、以下の病気に罹患することがあるため注意しましょう。

膀胱炎

膀胱炎とは、膀胱結石や細菌感染が原因で生じる病気です。水分が不足して尿が濃くなると、膀胱炎を引き起こす恐れがあります。

膀胱炎に罹患すると排尿時に痛みが生じるため、トイレで辛そうな様子をみせることがあります。

尿路結石

尿路結石とは、尿中のミネラルが尿路で石化する病気です。猫は尿を濃縮する能力が高いため、もともと結石化しやすい傾向にありますが、水分不足が続くとさらに結石ができやすくなります。

尿路結石に罹患すると、トイレの回数が増えたり、血尿やトイレ以外での排尿がみられたりすることもあります。

慢性腎臓病

腎臓病(腎不全)とは、腎臓が機能しにくくなる病気です。腎臓の機能低下が長期にわたると、体内の老廃物が尿として排出されにくくなり、慢性腎臓病と診断されることがあります。慢性腎臓病も猫が罹患しやすい病気のひとつで、腎臓の機能を損なうこともあるため注意が必要です。

水分不足に陥ると、老廃物が腎臓に溜まりやすくなるため、慢性腎臓病に罹患しやすくなります。食欲や元気の低下、毛艶が悪くなるといった症状がみられることも少なくありません。

日頃からよく猫を観察することで早期に病気を発見し治療できるため、異常を感じた際は動物病院を受診して必要な治療を受けましょう。

歯周病

歯周病とは、細菌感染により歯の機能を支持する歯周組織が破壊される病気です。水を飲まないと口内の清潔さを保ちにくくなるため、歯周病に罹患するリスクが高まります。また、水を飲まないと歯周病が悪化する原因にもなるため注意が必要です。

食事量が減っている、以前よりも食事に時間がかかるようになった、硬いものを避けるようになったときは、歯周病に罹患しているかもしれません。

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猫が何日も水を飲まないときはどうする?

給水器から水を飲む子猫

猫が水を飲まないときや食事をしないとき、吐いてばかりいるときなどは、水分不足になる恐れがあります。

気温や湿度、運動量などによっても水分不足へのなりやすさは変わります。また、水を飲まなくなる前から脱水症状がある場合や、腎臓病など基礎疾患の要因などでも変わるため、一概には断定できません。何日も水を飲んでいないようにみえるときは、すぐに動物病院を受診しましょう。

猫は少ない水分で生きていけるとはいえ、水分不足になると、腎臓病や尿路結石などの病気に罹患する可能性もあるため、水を飲ませる工夫や対策が必要です。

飲みやすい器を選ぶ

猫によっては、飲水用の器の大きさや素材が好みではないという理由から、水をあまり飲まなくなるというケースもあります。そのため、器の材質を変える、飲み口が大きいものを選ぶ、猫専用の器にするなども、水分不足を防ぐひとつの方法です。

器は、陶器やガラス、金属、プラスチック、ステンレスなどのさまざまな素材があり、ペットショップでは猫専用の器も販売されています。愛猫が好む素材や大きさの器に変えてみるのも良いでしょう。

また、流水を好む猫の場合は、自動給水器を使用して与えてみるのも良いかもしれません。

飲みやすい水を選ぶ

猫が水を飲まない理由として、水自体が気に入らない可能性もあります。もし水道水のにおいが気になる場合は、一度沸騰させてから冷まして与えてみましょう。

基本的にミネラルウォーターはおすすめできません。とくに、マグネシウムやカルシウムが豊富な硬水は避け、中性の軟水を選んでください。また、水にフレーバーを付けると喜んで飲む猫もいます。たとえば、ミルクを飲水に混ぜて軽く味を付けてみましょう。ただし、味を付けることで脂質が増えるときは、食事やおやつで栄養バランスを調整してください。

なお、容器に入れている水が新鮮でないこと、温度が好みではないことなどが、水を飲まない原因の場合もあります。猫によっては新鮮な水以外は飲まないこともあるため、長時間置いたものではなくこまめに水を入れ替えるようにしましょう。

また、全ての猫が食器から飲水するわけではなく、温かい水や蛇口から流れている少し冷たい水など、好みの温度や飲み方も猫によって異なります。愛猫の好みを探って適量を与えましょう。

水分の多い食事を選ぶ

キャットフードにも水分が含まれていますが、水分不足のときには水分量の多いウェットフードがおすすめです。ウェットフードがないときは、ドライフードを水に浸し、ふやかしてあげるようにしましょう。

また、猫用のゼリーやスープなどの水分量が多いものを与えて、水分補給を促してみるのもおすすめです。

食べ物から水分をしっかり摂取できれば、水を飲まなくても多少は問題ない場合があります。食事として与える際は、ウェットフードやドライフードの成分表を参考に、摂取する水分量に不足がないかの確認を心がけてください。

水の置き場所を工夫する

猫によっては、においが気になるという理由から、食事のそばに水を置いているのを好まないこともあります。その場合は、水飲み器の置き場所を変えるだけでも効果があるかもしれません。

また、水飲み場を増やすのもひとつの方法です。洗面所や玄関、リビングなど、猫が新鮮な水を飲みたいときにすぐ飲めるよう、複数の場所に置いてみましょう。

自発的に飲まないときは人がサポートする

愛猫がどうしても水を飲まないときは、スポイトや注射器、哺乳瓶などを使って、少量ずつ与えてみましょう。

すぐに水を飲んでくれないときは、まずスポイトや哺乳瓶などで口の周辺を濡らしてみてください。猫が慣れたら、ゆっくり口の中に水を入れます。無理に飲ませようとすると、猫が水を飲むことを苦痛に思い、さらに水を飲まなくなる場合もあるため注意しましょう。

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猫に何かあったときの備えとしてペット保険を検討しよう

パソコンを操作する飼い主の手の上に乗る子猫

猫は水が不足すると脱水症状に陥るだけでなく、病気に罹患することがあります。異常がみられるときは動物病院を受診し、適切に対処することが必要です。その際、ペット保険に加入していれば、猫が病気にかかったときの治療費に備えられます。

しかし、ペット保険にもさまざまな種類があり、保険選びに迷って決められないケースもあるでしょう。そのようなときはペット保険の比較サイトを活用し、ペットの種類や年齢、求める補償内容など希望条件から絞り込んで複数の保険を見比べると効率良く探せます。

日頃から猫の病気やケガを予防しつつ、具合が悪いときは安心して動物病院を受診できるようにペット保険への加入をご検討ください。


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まとめ

緑色の器の水を飲もうとしている猫

猫は水をあまり必要としない動物ですが、全く水分を摂らなくて良いわけではありません。水分が不足し脱水症状が続くと、命の危険にさらされるだけでなく、病気に罹患するリスクも高まります。

そのため、愛猫が1日に必要とする水分量を把握し、飲水や食事から摂取できるようにしましょう。また、飲水の器の材質や置き場所を工夫して、猫が水を飲みやすい環境をつくることも大切です。病気を早期発見できるよう、こまめに猫の様子を観察するようにしましょう。

なお、水分不足が続いているときや病気の兆候がみられるとき、気になる症状があるときは、動物病院を受診しましょう。ペット保険に加入していれば、医療費の急な支払いにも備えられます。 ただし、ペット保険によって補償内容や保険料は異なりますので、比較サイトで複数のペット保険の情報を一覧で比べ、ご自身にあった保険を選ぶとよいでしょう。

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監修者情報

丸田まるた香緒里かおり

丸田香緒里

Animal Life Partner院長、往診獣医師協会代表。獣医師。日本大学卒業。動物病院勤務後「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。獣医中医師、ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、病院での診療のほか、シニアケアや飼い主の心のケアにより力を入れた往診診療をおこなう。
著書:「犬のいる暮らし 一生パートナーでいるために知っておきたいこと」(池田書店)

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  • このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
  • 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。

(掲載開始日:2025年6月11日)
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