資産運用はしない方がいい?した方がいい理由と失敗しやすい人の特徴を紹介
資産運用について気にはなっているものの、「失敗すると損をするのでは......?」と疑問を感じる方もいるもしれません。
日本は現在、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、投資に対する税制優遇制度を整備・拡充し、貯蓄から投資への流れを後押ししています。その背景には、少子高齢化により厳しさを増す公的年金の財政状況や社会保険料の負担、税負担増大の可能性などがあり、将来への備えとして資産形成の重要性がますます高まっていることなどがあげられます。
このような状況を踏まえて、資産運用を「したほうがよい」か「しないほうがよい」か、投資のリスクも踏まえてぜひご自身で考えてみましょう。この記事では、資産運用を失敗しやすい方の特徴をご紹介しながら、資産運用の必要性やポイント、方法についても解説します。
目次
資産運用はしない方がいい?
「資産運用はしない方がいいのでは」と思う方がいるのは、資産運用が否定的に捉えられる理由があるからかもしれません。以下ではそのように考えられるおもな理由についてあげてみましょう。
投資は怖い・危険というイメージがある
株式や投資信託などの金融商品に投資をした資産運用は「怖くて危険なもの」「ギャンブルのようなもの」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、投資とギャンブルは目的やしくみがまったく異なります。ギャンブルは一般的に娯楽目的でおこなわれ、運など不確実なものに結果が左右される可能性が高いものです。
一方、資産運用は、お金を預貯金や投資に配分して効率的に増やしていくことです。将来への備えなどを目的としてお金を増やすことが資産運用の目的であり、娯楽目的のギャンブルとは本質的に異なります。
元本割れのリスクがある
株式や投資信託などの金融商品を活用した資産運用では資産が増える可能性もありますが、一方で資産が減る可能性もあります。はじめに投資した金額を下回る「元本割れのリスク」があることが、資産運用はしない方がいいといわれる理由のひとつにあげられるのではないでしょうか。
リスクとは「リターンの不確実な度合い」のこと。リスクを低くおさえようとするとリターンも低下し、高いリターンを得ようとするとリスクも高まります。株や投資信託などは価格が日々変動するため、元本を上回ることもあれば下回ることもありますが、一時的に元本が下回るタイミングをみて「投資をすると損失を出す可能性があるから投資はやめた方がいい」と判断する方もいるでしょう。
なお、金融商品や運用方法の選択次第で、リスクをある程度コントロールすることは可能です。たとえば、預貯金や個人向け国債など元本割れリスクがほとんどない商品を中心に資産運用をする方法もありますし、株式や投資信託などの金融商品でも、決まった額でコツコツと長期的に積立投資をすることにより価格変動による振れ幅をおさえながら資産運用をおこなう方法もあります。
資産運用で失敗しやすい人(投資しない方がいい人)の特徴は?
資産運用で失敗しやすいと思われる人はどのような人なのでしょうか?おもに以下の特徴があると思われます。
【資産運用で失敗しやすいといわれる人の特徴】
- 資産運用をする資金に余裕がない人
- 運用目標を決めずに投資を始める人
- 資産運用のための勉強や情報収集を面倒に感じる人
- すぐに利益を出したい人
以下では、資産運用で失敗しやすい人の特徴を詳しく紹介します。
資産運用をする資金に余裕がない人
資産運用は、当面使う予定のない「余裕資金」でおこなうのが基本です。生活費のようなすぐに使う予定のあるお金まで資産運用に回してしまうと、運用がうまくいかなかったときにお金が足りなくなるおそれがあります。
そもそも使う予定の決まっているお金は、運用できる期間が限られます。お金が必要なときにお金が増えている保証はなく、ちょうど下落しているタイミングと重なるかもしれません。
ご自身の生活も危うくなるリスクを抱えた状態で資産運用をおこなえば、過度なプレッシャーから冷静な判断ができなくなり、売買のタイミングを誤るなどの失敗もしやすくなります。
運用目標を決めずに投資を始める人
運用目標が決まっていないと、投資で失敗して損失を出しやすくなります。なぜなら、明確な運用目標がないまま漠然と資産運用を始めると、必要以上にリスクを取ってしまう可能性があるからです。
運用目標とは、なにのために資産運用をするのか、その目標のために達成したい金額や時期を明確にすることです。たとえば、「15年後までに子どもの教育資金を500万円貯める」「60歳までに老後の生活資金に2,000万円を準備する」といった具合に定めることもできるでしょう。
いつまでにいくら資産を増やすのか、期間を定めていないと、日々変動する金融商品の値動きに一喜一憂し、短期的な売買を繰り返して利益がなかなか積み上がらない場合もあります。
反対に、いつまでにいくら資産を増やすのか、運用目標が明確であれば、必要となる利回りや投資額を逆算でき、適した金融商品や運用方法は自然と定まってきます。
資産運用では適切なリスク管理も欠かせません。許容できるリスクの範囲では目標達成に必要な利回りが得られそうにない場合は、そもそも目標に無理がないのか、目標自体の見直しが必要になる場合もあります。
資産運用のための勉強や情報収集を面倒に感じる人
資産運用をおこなうには、知識を身につけ、ご自身の運用目的にあった金融商品や運用方法を選ぶ必要があります。基本的な知識がない状態で資産運用を始めてしまうと失敗しやすく、失敗に学ばず運用を続ければ、同じ失敗を繰り返しかねません。
資産運用で身につけるべき基本的な知識としては、金融商品の特徴・特性や資産運用のリスクやリターンのしくみなどがあげられます。
金融商品には、流動性・安全性・収益性の3つの特性があり、どの要素が優れているのかは金融商品ごとに異なります。3つの要素はトレードオフの関係にあり、基本的に全てに優れた金融商品はありません。そのため、目的に合った特性を持つ金融商品の選択が重要なのです。
資産運用のリスクには、価格変動リスクや信用リスク、流動性リスク、金利変動リスク、為替変動リスクなど、さまざまなリスクがあります。ご自身が選択した金融商品にはどのようなリスクがあり、そのリスクをどの程度まで許容し、対処するのか、資産運用で安定して利益を出し続けるためにはリスク管理が欠かせません。
すぐに利益を出したい人
資産運用で利益を得るためには、価格変動リスクをおさえた運用をするために長期投資が前提となるため、すぐに利益を出したい方は資産運用に向いていません。
長期投資とは、すぐに売ったり買ったりせず、長期にわたり金融商品を保有し続ける投資方法です。投資期間が長くなるほどリターンは安定する傾向があり、複利効果も期待できます。
長期投資を軸に、積立投資や分散投資をあわせて実施することでトータルのリスクをおさえることが資産運用をする際のポイントです。
積立投資とは、ご自身が決めたタイミング・金額で定期的に金融商品を購入する投資方法のことで、分散投資とは、投資先や購入する時期を分散させることで、価格の変動をおさえ、安定したリターンを狙う投資方法です。長期投資に積立投資や分散投資を組み合わせることが、リスクをおさえてリターンを安定させることにつながります。
資産運用をした方がいい理由とは?
前述のとおり、少子高齢化により厳しさを増す公的年金の財政状況や社会保険料の負担、税負担増大の可能性などを背景として、将来に備えた資産形成の重要性がますます高まっています。このような背景を踏まえ、資産運用をした方がいいおもな理由として、以下の3つが考えられるでしょう。
【資産運用をしたほうがいいおもな理由】
- 資産を増やせる可能性がある
- インフレによる資産の目減りに備えられる可能性がある
- 複利効果で効率よく資産を増やせる可能性がある
それぞれの理由の内容を解説します。
資産を増やせる可能性がある
現在の日本は金利が低いため、銀行にお金を預けてもお金はほとんど増えません。金利とは、お金の借り手が貸し手に支払う対価の割合のことです。金利が高いと、預金額に金利をかけ合わせた利子を多く受け取ることができますが、金利が低いと受け取ることができる利子は少なくなります。
日本では日銀の金融政策によって金利が低い状況が長く続いており、金融機関にお金を預けていてもほとんど増えません。効率よく資産を増やしたいのであれば、資産運用(株式や投資信託などリスク資産への投資)が必要になってきます。
株式や投資信託などのリスク資産に投資すれば資産が減るリスクもありますが、資産が増える可能性もあります。
インフレによる資産の目減りに備えられる可能性がある
日本の国民負担率(国民所得に占める税金と社会保険料の割合)は年々ほぼ増加傾向にあり、今後も負担する社会保険料や税金が増えることが予想されます。また、物価も上昇傾向にあり、今後も物価の上昇(インフレ)が続けば、かかる生活費も増えることになります。
このような年々増加傾向にある社会保険料や税金、インフレの影響に備える方法のひとつが資産運用です。
たとえば、現在100円で買えるモノが1年後に110円払わないと買えなくなった場合、1年後の100円は今の価値で約91円にしかなりません。このようなインフレによる資産の目減りを防ぐには、100円を110円まで増やさなければならず、そこで資産運用が必要になるのです。
複利効果で効率よく資産を増やせる可能性がある
複利とは利子の計算方法のひとつで、当初の元本に運用で得られた利益を加えたものを新たな元本として利子を計算する方法です。一般的に運用を長く続けるほど複利効果は大きくなり、効率よく資産を増やせます。これは元本に組み入れた利益が利益を生み、元本が雪だるま式に膨らんでいくからです。
単利と複利の違い
単利と複利はいずれも利子の計算方法ですが、運用で生じた利益(利子)を元本に組み入れるかどうかに違いがあります。
単利の場合は、資産運用を始めた時点の元本のみを運用します。運用で利益が生じても元本には組み入れません。
複利の場合は、資産運用で生じた利益を元本に組み込んで運用します。つまり複利とは、元本と利益の合計額を対象として利息を計算する方法です。得た利益を元金に組み込むことで運用額が大きくなり、組み込まない場合に利益を生み出せる可能性があります。
投資リターンを年10%と想定した場合の例
たとえば元本100万円、年利回り10%というケースを考えてみましょう。
単利の場合、毎年得られる利益は10万円(=元本100万円×10%)です。複利の場合は、最初の年に生じた利益10万円を元本に組み入れるため、2年目の元本は110万円になります。そのため2年目の利益は11万円(=110万円×10%)になります。2年目の利益額は単利が10万円、複利だと11万円で1万円増える計算です。
投資期間と複利効果の関係
したがって、元本100万円、年利回り10%で一定と仮定した場合、元本と利益をあわせた10年後の資産は、単利の場合には200万円、複利の場合には259万円になります。複利効果によって資産を効率よく増やせていることがわかります。
【投資リターン年10%で10年間投資した場合】
単利の場合:(投資元本)100万円+(投資成果の合計)100万円=200万円
複利の場合:(投資元本)236万円+(投資成果の合計)24万円=259万円
ただし、運用益がマイナスになることによって、複利効果が得られないこともありますのでご注意ください。
資産運用を始める際におさえておきたい金融商品5つ
資産運用を始める場合、なにがよいか迷ってしまう方もいるでしょう。おすすめの金融商品としては、預貯金・株式・投資信託・債券・外貨預金の5つの金融商品があげられます。
預貯金
預貯金とは、金融機関にお金を預けて受け取ることができる利子で資産を増やす運用方法です。
預貯金の特徴は安全性の高さです。資産運用を始める方のなかには、資産が減ることや失うことが心配で、なるべくリスクを取りたくない方もいるでしょう。安全性が高い預貯金は、そのような方や、生活費や急な出費や収入の減少に備える緊急予備資金、近いうちに必要となる資金を運用するのに向いています。
お金を預けている金融機関が倒産しても、預金保険制度があるため、国内に本店がある金融機関であれば、原則として預金者1人あたり元本1,000万円までとその利子は保護され、戻ってきます。
ただし、預貯金には収益性が低いというデメリットがあります。現在の日本は金利が低く、受け取ることができる利子が少ないため、金融機関にお金を預けてもほとんど増えません。
株式
株式とは、株式会社が資金を調達するために発行する証券をいいます。株式を購入しておこなう資産運用が株式投資で、購入時と売却時の価格差で売却益を得たり、配当金を受け取ったりして資産を増やす運用方法です。
また、日本では株主優待制度を採用している企業もあり、株式を購入して株主になれば自社製品や金券などの優待品を受け取ることができる場合もあります。
国内株式は通常100株単位で取引されますが、証券会社によっては1株単位で取引できる「単元未満株取引」や通常の10分の1の株数で取引できる「株式ミニ投資」などが用意されていることもあります。これらを利用すれば、少額から投資することができます。
ただし、株式投資は値動きの大きいハイリスク・ハイリターンな投資であり、うまくいかなかったときの損失が大きくなるおそれもあるため注意が必要です。まとまった資金を投資できる方でも、まずは少額から始めましょう。
投資信託
投資信託とは、複数の投資家から集めたお金を資産運用の専門家がまとめて投資・運用する金融商品です。運用で得られた利益は投資家に還元されます。「投資先や売買のタイミングなど難しい判断はプロに任せたい方」、「なるべく手間をかけずに資産運用したい方」などに向いた金融商品です。
なお、投資信託はそもそも株式や債券など複数の金融商品、あるいはさまざまな地域に資金を分散して投資します。投資先を分散することで、個々の投資先の価格変動の影響を受けにくくなり、資産運用にともなうリスクが軽減されるメリットがあります。
投資信託は100円〜1万円程度の少額から投資できるため、資産運用の初心者でも始めやすい点もメリットです。資産運用というと、「かなりの額のお金を用意しないと始められない」とイメージする方もいますが、株式投資や投資信託でも少額で投資を始めることができるためかならずしも多額の資金を準備する必要はありません。
なお、投資の際は、投資信託の投資対象や運用方針、購入時・保有中・売却時にかかるコストを目論見書などでよく確認しておきましょう。
債券
債券とは、国や地方公共団体、企業などが発行している借用証書のようなもので、国や企業などの発行体が投資家から資金の借入れをおこなうために発行するものです。
国が発行する国債や、企業が発行する社債などがあります。債券を購入すると、定期的に利子を受け取ることができ、満期日を迎えれば額面金額を受け取ることができるため、比較的安定的に資産を増やすことができます。たとえば、個人向け国債は国が元本を保証する非常に安全性の高い債券で、預貯金よりも高い金利が期待できる商品です。
債券は、安定した収益が期待でき、満期日を迎えると額面どおりの金額を受け取ることができます。ただし、債券の発行元が破綻したり財務状態が悪化したりすると、利払いが遅れたり、元本が約束どおりに返済されないおそれがあります。
外貨預金
外貨預金とは、外国の通貨でおこなう預金で、円預金と同様、受け取る利子で資産を増やす運用方法です。外貨預金には円預金よりも金利が高いものもあり、高金利の外貨預金であれば円預金よりも多くの利子を受け取ることができます。
円に換算した外貨預金のリターンは、為替レートの変動によって左右されます。為替レートとは、二国間の通貨を交換する際の比率のことです。預け入れたときよりも払い戻すときの為替レートが円安になっていると為替差益が生じてリターンは大きくなり、円高になっていると為替差損が生じてリターンは小さくなります。為替差損が大きいと、受け取った利子を考慮しても円換算したときに損失が出るおそれもあります。
日本円と外貨を交換する際には、外貨為替手数料がかかる点にも注意しましょう。
知っておきたい投資の税制優遇制度
NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)は税制上の優遇を受けながら投資ができる制度です。
日本証券業協会の調査※によれば、投資について興味・関心を持ったりしたきっかけとして、NISAやiDeCoをあげた方は全体の42.8%と半数近くを占めています。とくに、20歳代~30歳代は、ほかの年代に比べるとその割合が高く(62.8%)、投資に関する税制優遇制度である点は投資を始める大きなポイントとなっていることがわかります。
※日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査(2023年)」
それでは、NISAとiDeCoはどのような投資方法なのか、以下ではそれぞれの投資方法の特徴や初心者におすすめである理由を紹介します。
NISAとiDeCoの違いと特徴
NISA(2024年~) | iDeCo | |||
---|---|---|---|---|
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |||
対象年齢 | 18歳以上 | 原則20~65歳未満 | ||
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 | 14.4~81.6万円 | |
非課税保有限度額 | 1,800万円 (うち成長投資枠は1,200万円まで) |
制限なし | ||
対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託など | 投資信託・保険・預貯金など | |
税制メリット | 積立時 | ー | 全額所得控除の対象 | |
運用時 | 運用益は非課税 | 運用益は非課税 | ||
受取時 | 上場株式の配当金等は非課税(株式数比例配分方式を選択している場合) | 退職所得控除・公的年金等控除の対象 | ||
引出制限 | 制限なし | 原則60歳到達まで引出不可 |
(2024年7月時点)
※上記のNISAは2024年1月から開始した制度の概要です。
NISA
NISA(少額投資非課税制度)とは、NISAの口座(非課税口座)内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。2024年以降のNISAでは、つみたて投資枠では年間120万円、成長投資枠では年間240万円まで投資できます。2023年までの制度と異なり、2024年から始まった新制度では、非課税保有期間が無期限化されて口座開設期間も恒久化されました。
NISAのメリット
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をしたとき、これらを売却して受け取った利益や配当について約20%の税金(所得税15.315%、住民税5%、計20.315% )がかかります。NISA口座で購入した商品であれば、利益が生じても税金がかかりません。税負担をおさえながら投資ができるNISAは、初心者におすすめの方法のひとつです。
非課税保有期間に制限があることや年間投資枠が少額であることなど、従来のNISAのデメリットが解消され、2024年からの新制度はより使いやすくなっています。ただし、NISAの対象商品は全て元本保証のないリスク商品であり、損失が生じるリスクがある点には注意が必要です。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度で、運営管理機関が選定する運用商品のなかからご自身で商品を選んで投資します。iDeCoは老後資金を若いうちから準備するための制度です。
iDeCoは月々5,000円から始められ、掛金額を1,000円単位で自由に設定できます。税制優遇を受けながら老後に向けた資産形成を進めたい方に適しています。
いつでも商品を売却して引き出せるNISAとは異なり、原則60歳まで拠出した掛金や運用益を引き出せません。お金が必要になった場合でも、60歳になる前にお金を引き出して使うことができないため、それまでに必要なお金まで投資しないように注意しましょう。
老後に備える資金であっても、いざというときにはすぐに使える形で運用したいのなら、iDeCo以外の方法を考えましょう。
iDeCoのメリット
iDeCoのメリットは、税制優遇措置により税負担が軽減される点で、拠出した掛金は全額が所得控除の対象になるため、所得税や住民税が軽減されます。また、通常、金融商品を運用すると運用益に課税されますが(所得税15.315%、住民税5%、計20.315%)、iDeCoの運用益は非課税で再投資されます。
さらに、一般的に老後に受け取る年金や一時金は課税されますが、iDeCoの場合には年金として受け取る場合には「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合には「退職所得控除」によって税負担を軽減するしくみが用意されています。
資産運用を始めるときのコツ
初心者が資産運用を始めるときには、以下の4つをおさえておきましょう。
【初心者が資産運用を始める際のコツ】
- 資産運用をする目的・理由を明確にする
- 余裕(余剰)資金を使って少額から始める
- 長期投資・積立投資・分散投資によってリスクをおさえる
- 金融商品の特徴やリスクの理解を深める
以下ではそれぞれの内容を解説します。
資産運用をする目的・理由を明確にする
目的や理由を明確にせず漠然と資産運用を始めてしまうと、「利益を得たい」という気持ちが先行して、リスクや売買のタイミングを冷静に判断できず、大きな損失を出す可能性が高まります。
そうならないためにも、運用の目的や理由は明確にしておきましょう。目的や理由が明確になっていれば、必要な利回りや投資額をイメージしやすくなり、適切なリスク管理のもとで資産運用をおこなえます。
資産運用をする目的の設定の仕方としては、たとえば、「子どもの教育費のために10年後までに500万円を貯めたい」「老後の生活資金として65歳までに1,000万円を用意したい」といった内容が考えられます。ご自身やご家族のライフプランを考えて資産運用の目標を設定すると良いでしょう。
余裕(余剰)資金を使って少額から始める
資産運用は余裕資金を使って少額から始めることが大切です。理由は、手持ち資金全てを投資に使うと、損失が出たときに生活に困るリスクがあるからです。
余裕資金とは、当面使う予定のないお金のことです。病気になったり事故に巻き込まれたりしてかかる治療費や入院費など、万が一に備える資金は、資産運用に回さずにのこしておく必要があります。
ちなみに、万が一に備える資金を「緊急予備資金」といいます。一般的な会社員の場合、緊急予備資金は生活費の3〜6ヵ月が目安とされています。理由は、一般的に3〜6ヵ月程度あれば、仕事復帰や転職、起業など、生活の立て直しに目途が立つと考えられているためです。
また、「翌年に子どもの受験を控え、受験費用や入学費用は確実に用意しておく必要がある」というケースでは、運用がうまくいかず資産が減ってしまうと、支払いができず困ることにもなりかねません。
長期投資・積立投資・分散投資によってリスクをおさえる
初心者が資産運用を始めるときには、長期投資・積立投資・分散投資によってリスクをおさえながら運用することも大切です。
長期投資で、時間を味方につけながらコツコツと少額から積立投資をすることにより、株価など投資商品の日々の値動きに一喜一憂することなく、リスクをおさえながら将来に向けた資産形成がしやすくなります。そのために、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を利用するのもひとつの方法でしょう。
初心者がいきなりハイリスク・ハイリターンな投資に手を出すと、冷静な判断や適切なリスク管理ができず、資産を大きく減らしてしまうリスクが高まるため注意しましょう。
金融商品の特徴やリスクの理解を深める
資産運用をおこなうときには、ある程度の知識が必要です。資産運用をおこないながら経験を積み、知識を得ることもできますが、金融商品の種類やそれぞれの特徴、リスクを理解しておくことは大切です。また、ご自身に合う金融商品の選択や売買のタイミングの判断など適切におこなうための知識も身につけておくほうがよいでしょう。
具体的な方法のひとつとして、書籍や資産運用セミナーの活用もあるでしょう。資産運用のセミナーのなかには無料のものもあり、資産運用の種類や特徴についてプロから学べるため、活用してみるといいでしょう。
お金のセミナー
「お金のプロ」から学んで「お金の知識」も蓄えましょう
まとめ
「元本割れのリスクがある」「ギャンブルのようで怖い」といったイメージがあることから「資産運用」や「投資」にマイナスなイメージをお持ちの方もいるでしょう。しかし、資産運用はギャンブルとは本質的にまったくことなるものであり、年金の減少やインフレへの備えとしても有効であるなど、多くの方にとってメリットは大きいものでしょう。
資産運用を始める場合のコツは、余裕資金で少額から始めること、そして長期投資・積立投資・分散投資によってリスクをおさえることなどです。
資産運用に関する基本的な事項を理解しないまま資産運用を始めると失敗しやすくなります。金融商品ごとの特徴やリスクなど基本的な知識を身に付け、理解を深めるようにしてください。資産運用を始めるにあたっては、最初に書籍やセミナーなどを活用するのもひとつの方法です。
監修者情報
ファイナンシャルプランナー 竹国 弘城
RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。趣味はサウナ(サウナ・スパプロフェッショナル)。
- 資格情報
- 1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの最終更新日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2024年9月25日)
2407383-2407