地震保険に加入するべき?火災保険との関係や違い、加入率を紹介
災害大国と呼ばれる日本。世界のマグニチュード6を超える地震の約2割は日本で発生し、活火山の約1割が日本に集中しているといわれてます。ひとたび大きな地震や噴火、それによる津波などが発生すると、建物や家財が甚大な損害を被る可能性もあるため、備えが必要だと感じている方も多いでしょう。
この記事では、地震への備えとしての地震保険の必要性や、具体的な補償内容についてわかりやすく解説し、加入率やメリット・注意点についてもご紹介します。「地震保険は必要?」「地震保険の加入率はどのくらい?」など地震保険について知りたい方はぜひ参考にしてください。
「地震保険」とは?
そもそも地震保険は、地震などによる被災者の生活の安定を目的とした保険です。しかし、大地震が発生すると民間の保険会社だけでは保険金を支払いきれないケースもあるため、地震保険で民間の保険会社が負うべき保険金のうち、一定額以上を政府が代わりに引き受けて確実に保険金が支払われるしくみになっています。これを「地震保険の再保険制度」※といいます。
ただし、政府でも財政負担には限度があるため、1回の地震等によって支払う保険金に限度額(総支払限度額)が設けられています。この限度額を超えない限り、保険金は契約どおり支払われます。関東大震災級の地震が発生した場合でも保険金の総額がこの額を超えることがないように決定されており、適時見直されています。また、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの巨大地震によって発生した巨額な保険金も総支払限度額内であり、実際に保険金が支払われています。
なお、地震保険は政府と損害保険会社が共同で運営する公共性の高い保険であり、どの保険会社で加入しても、加入条件や補償内容が同じ場合は保険料も同じという特徴があります。
※地震保険の再保険制度とは、地震保険契約の全部を日本地震再保険株式会社に集め、同社を通じて純保険料の一部を政府に再保険料として支払い、政府も災害時の準備金として積み立てること。このような仕組みによって、大災害時においても保険金の支払いが確実に行われるようになっています。
地震保険は火災保険とセットで加入する保険
地震保険は、単独で加入することができません。地震保険への加入を希望するときは、火災保険に加入したうえでその火災保険に付帯する必要があります。そのため、火災保険と地震保険は、同じ保険会社に加入することになります。
なお、地震保険は、普及促進のために、原則として付帯しないことを意思表示しない限り火災保険に自動付帯されることとなります。
地震保険と火災保険の補償内容の違いは?
地震保険に加入にあたっては、補償内容や補償対象を正しく理解する必要があります。具体的に、地震保険と火災保険の補償にはどのような違いがあるのでしょうか?
火災保険と地震保険の補償内容の違い
火災などの原因 | 火災保険 | 地震保険 | 火災保険+地震保険 |
---|---|---|---|
地震・噴火・津波 | × | 〇 | 〇 |
上記以外 | 〇 | × | 〇 |
※保険会社によって補償内容が異なる場合もあります。
出典:一般社団法人 日本損害保険協会 地震保険特設サイトをもとに作成
火災保険では、建物や家財の火災による損害などを補償していますが、地震による火災および倒壊などは、火災保険では補償されません。したがって、地震による損害に備えるには地震保険が必要であるという点が大きな違いとなります。以下でさらに詳しくみていきましょう。
地震保険の補償対象
前述のとおり、地震保険は火災保険では補償されない地震や噴火、これらにより発生した津波による損害が補償されますが、「被災者の生活の安定に寄与することを目的」とする保険であるため、保険の対象となるものは以下に限られます。
【地震保険の補償対象】
- 建物(住居のみに使用される建物および併用住宅※1)
- 家財(家具や家電製品など)※2
※1建物は、住居と店舗が一緒(併用住宅)の場合には補償対象となりますが、店舗や事務所のみに使用されている建物や営業用什器・備品や商品などの動産は補償の対象外となります。
※2家財は、家具や家電製品、衣類、自転車(排気量125cc以下の原動機付自転車)などを含みます。1点または1組あたりの金額が30万円を超える貴金属や有価証券、自動車などは地震保険の補償対象に含まれません。
具体的には地震等を直接または間接の原因として、建物や家財が火災、損壊、埋没、流失となった場合であり、次のような損害が該当します。
【地震保険の補償対象となる損害の例】
- 地震による倒壊、破損
- 地震によって生じた火災による焼損
- 地震によって河川の堤防やダムが決壊し、洪水となったため生じた流失、埋没
- 噴火にともなう溶岩流、噴石、火山灰や爆風によって生じた倒壊、埋没
- 地震や噴火の結果生じた土砂災害による流失、埋没
- 津波によって生じた流失、倒壊
出典:一般社団法人 日本損害保険協会「損害保険Q&A」より抜粋
なお、地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で決めることが可能です。ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度額となります。保険金は損害の程度に応じて保険金額の一定割合※3が支払われますが、損害が「一部損」に至らないときや門、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみの損害のときには、保険金は支払われません。
※3地震保険期間の始期日によって損害の程度の区分が異なります。
火災保険の補償対象
火災保険は、以下の表のとおり、火災や自然災害などさまざまなものに備えることができます。しかし、地震や噴火、これらを原因とする津波による損害の補償は受けられません。そのため、これらの災害による損害に備えたい場合には、地震保険への加入が必須です。
火災保険のおもな補償内容
補償内容 | 補償される一例 |
---|---|
火災 | 失火やもらい火による損害 |
落雷 | 落雷による火災や電化製品などの損害 |
破裂・爆発 | ガス漏れなどによる爆発や火災など、破裂や爆発による損害 |
風災・雹(ひょう)災・雪災 | 台風や雹(ひょう)・大雪などによる損害 |
水災 | 台風や大雨などにともなう洪水・床上浸水などによる損害 |
建物の外部から物体の衝突など | 物件への自動車の衝突、石・ボールなどの衝突など、建物外部からの物体による損害 |
水濡れ | 上階からの水漏れや配管の設備の故障で水浸しになるなど、水漏れによる損害 |
騒擾(じょう)・労働争議 | 騒擾(じょう)や集団行為にともない物件が壊されるなど、破壊行為や暴力による物件の損害 |
盗難 | 盗難にともなう盗取・汚損・損傷による損害 |
不測かつ突発的な事故 | 自宅で起きた、故意ではなく突発的な事故による損害 |
※保険会社や契約内容によって異なる場合があります。
火災保険の契約時に、どのような損害まで補償をつけるかご自身で選択することで、実際に被った補償対象の損害に対して保険金を受け取れます。
火災保険に加入中でも後から地震保険をセットできる?
前述のとおり、火災保険契約がなければ地震保険を契約することはできませんが、すでに火災保険を契約している場合には、火災保険の保険期間の途中でも地震保険を付帯することができます。
ただし、火災保険と同じ保険会社が提供する地震保険である必要があるため、ほかの保険会社で地震保険のみあらたに加入することはできません。
また、保険金額についても注意が必要です。地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30~50%の範囲内かつ建物5,000万円、家財1,000万円の限度内で設定することが条件となるため、補償が十分ではないときは火災保険の契約を見直す必要が生じます。
地震保険の加入率は?
各調査年度で締結された民間保険会社の火災保険契約のうち、地震保険を付帯している割合は69.0%(2021年)です。2012年は56.5%、2016年は62.1%であることからも、年々増加していることがわかります。
また、世帯全体からみた加入率としては、地震保険に加入している世帯は34.6%(2021年)です。2012年は27.1%、2016年は30.5%であることからも、地震保険に加入する世帯も少しずつではありますが徐々に増加していることがわかります。
地震保険に加入するメリットは?
地震保険に加入するメリットとしては、次の2つがあげられます。
- 地震・噴火・津波に備えられる
- 地震保険の保険料はどの保険会社も一律である
それぞれについてみていきましょう。
地震・噴火・津波に備えられる
地震や噴火、これらによって発生した津波による被害は、火災保険では補償されません。地震保険に加入することで、火災保険でカバーできない災害に対して備えることができます。また、地震保険では、建物だけでなく家財も補償範囲にすることができます。
地震保険の保険料はどの保険会社も一律
地震保険の保険料は、保険対象となる居住用建物の構造、所在地などによって算出されます。補償範囲と補償金額、地域が決まれば、加入する保険会社に関係なく保険料と補償内容は一律です。
地震保険は、火災保険のように保険会社を比較する必要はありません。すでに火災保険に加入している場合であれば、あらたに地震保険を付帯することで加入することができます。
地震保険に加入する際の注意点は?
ここでは、地震保険に加入する前に知っておくべき注意点を解説します。地震保険への加入を迷ったときの参考にしてください。
地震保険は自動車や貴金属は補償対象外
地震保険では、自動車や貴金属などは補償対象外となります。したがって、これらを地震や津波などによる自動車の損害に備えたいときは、自動車保険で「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」などを付帯することも検討するとよいでしょう。
また、地震によって貴金属などの30万円を超える財産に損害があった場合、地震保険では補償されません。高額貴金属などを補償対象に設定できる火災保険もありますが、たとえ火災保険で補償対象に設定可能であっても、付帯する地震保険では貴金属などを補償対象にできません。
まとめ
地震保険は、地震や噴火、これらによる津波を原因とする損害を補償する保険です。地震保険と火災保険はそれぞれ補償する範囲が異なるため、広く災害に備えるためには両方の保険に加入していることが大切です。なお、地震保険は単体では加入できないため、火災保険とセットで加入する必要があります。
地震保険の場合は、補償範囲と補償金額、地域が決まれば、保険料と補償内容はどの保険会社でも共通です。すでに火災保険に加入している方は、加入中の火災保険にそのまま付帯する形で契約しましょう。ただし、地震保険の補償対象は、居住の用に供する建物および家財に限られ、自動車や貴金属などは対象外であるため注意が必要です。たとえ火災保険で貴金属などを補償対象に設定していても、付帯する地震保険では補償の対象外となります。
まだ火災保険に加入していない場合は、比較サイトで検討するとよいでしょう。複数の保険商品から、保険料や保障内容を比較して、ご自身にあった保険を選ぶことができます。
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なお、ご自身で調べたもののよくわからない、という場合には保険アドバイザーに相談することもできます。
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監修者情報
ファイナンシャルプランナー生川奈美子
株式会社アスト 代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、相続診断士、終活カウンセラー、住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター。大手生命保険会社に12年勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。2007年に株式会社アストを設立。現在、「わくわくの明日と共に」をモットーに、子育て世代、リタイア世代のライフプラン作成や家計相談、相続相談などのコンサルタントとして活動中。また、各種マネー講座の講師や執筆も担当。2015年度金融知識普及功労者として金融庁・日本銀行から表彰を受ける。
- 資格情報
- ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、相続診断士、終活カウンセラー、住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年5月15日)
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