火災保険とは?補償内容や加入時の注意点、家財保険との違いをわかりやすく解説!
火災保険について「火災にのみ備える保険」というイメージをもっている方もいるでしょう。実際には、火災保険は火災だけでなはなく、風災や水災などの自然災害や盗難などの日常生活におけるさまざまなリスクによって生じた建物や家財の損害に備えることができます。
この記事では、その火災保険の特徴や補償内容、加入時の注意点についてわかりやすく解説します。また、「家財保険」や「地震保険」との違いについてもご紹介します。
火災保険には入るべき?基本知識を解説
一般的に「火災保険」は、火災だけでなく、自然災害(落雷、風災・水災・雹(ひょう)災・雪災など)で建物や家財に損害が発生した場合にも保険金が支払われます。
総務省によれば、日本における2021年の総出火件数は35,222 件。過去10年間をみても、3万5,000件前後から4万件台で推移していることがわかります※1。そもそも火災は日本全国どこでも発生する可能性があり、大きな損害をもたらすおそれがあります。さらに、自宅からの出火のみならず、隣家からの「もらい火」による火災の損害あるため、ご自身でどれだけ注意をしていても避けられないケースもあります。
とくに日本では火災に関する法律として失火責任法が定められており、失火者(過失によって火災を起こした者)に重大な過失※2がある場合を除き、原則として損害賠償請求ができません。たとえば、隣家での失火にともなうもらい火により自宅が損害を負っても、失火責任法により隣家の方に重大な過失がなければ損害賠償を請求できず、ご自身で損害を負担する必要があるということです。
火災保険は、自宅からの出火による火災はもちろん、もらい火による損害についても補償されます。自然災害による自宅の損害への備えとしても有効であるため、加入についてぜひ検討しておきたいものです。
※1総務省「令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)」
※2この場合の重大な過失というのは、過去の事例では寝たばこをしていたり、料理中に油を使用していたにもかかわらず長時間目を離したりなど、ほとんど故意とも捉えられるような過失を指します。
火災保険の加入率
火災保険への加入を検討する際には、実際にどれくらいの方が火災保険に加入しているのか気になる方もいるでしょう。
内閣府の調査※3によると、全国の持家世帯のうち、火災保険加入件数は61%にあたる2,123件となっており、火災共済への加入も合わせると82%にのぼることがわかっています。
法律上、火災保険への加入義務はありませんが、保険に加入していない場合にはどのようなリスクが生じる可能性があるのかを理解しておく必要はあるでしょう。
火災保険に入ってないとどんなリスクがある?
もしも火災保険に加入していないと具体的にはどのようなリスクが想定されるのでしょうか?おもなリスクとして以下の4つがあげられます。
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■①火災によるリスク
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火災保険に加入していない場合、持ち家である自宅から出火して自宅や家財が焼失してしまうと、家の建て替えや引越しなどの費用がかかるうえ、住宅ローンがのこってしまうリスクもあります。また、家具や家電製品の新調費用や、火事の後にのこったものを片付ける費用も必要となるでしょう※4。一方、賃貸住宅の場合でも、入居者は賃貸借契約上の責任である「原状回復義務」を負わなくてはなりません。
※4保険会社によっては、緊急時の仮住まい費用や残存物の片付け費用、住宅の建て替え費用などをオプションで用意していることもあります。
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■②隣家の火災に巻き込まれるリスク
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火災は、自宅からだけでなく、隣家などから発生することもあります。そのようなもらい火によって建物や家財に損害が出ると、前述のように失火者に重大な過失がない限り損害賠償請求ができないことがあります。万が一、火災保険に加入していなければ、修繕費は自己負担しなければなりません。
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■③自然災害によるリスク
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火災保険に加入することで、火災だけではなく、自然災害(落雷、風災・水災・雹(ひょう)災・雪災など)による損害も補償されます。したがって、火災保険に加入することで火災や地震、自然災害などのリスクに幅広く備えられることになりますが、万が一の備えがない場合には、自然災害による自宅の損害については自己負担する必要があります。
とくに、今後は温暖化にともなう気候変動の影響を受けて大雨による降水量が増加し、洪水などの災害リスクがより高くなる可能性も考えられます。内閣府が公開している「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会 報告」によると、気候変動の予測計算(2080~2100 年平均)と過去の再現結果(1984 ~2004 年平均)を比較したところ、現状以上の温暖化対策(温室効果ガスの排出削減の強化など)がなにもとられなければ、大雨による降水量は平均25.5%増加すると予測されています※5。
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■④地震によるリスク
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災害大国と呼ばれる日本。ひとたび大きな地震や噴火、それによる津波などが発生すると、建物や家財が甚大な損害を被る可能性もあるため、備えが必要だと感じている方も多いでしょう。
地震や噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害によって建物や家財が焼失した場合において、火災保険とあわせて地震保険に加入することにより、損害による補償が可能になります(地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットで加入する必要があります)。したがって地震保険に加入していない場合には、自宅の損害を自己負担する必要があります(地震保険について詳細は後述します)。
火災保険ではどこまで補償される?
ここからは、火災保険の補償内容と補償対象について解説します。
火災保険の補償内容
火災保険の補償内容は多岐にわたりますが、一般的な補償内容は以下のとおりです。
火災保険のおもな補償内容
補償内容 | 補償される一例 |
---|---|
火災 | 失火やもらい火による損害 |
落雷 | 落雷による火災や電化製品などの損害 |
破裂・爆発 | ガス漏れなどによる爆発や火災など、破裂や爆発による損害 |
風災・雹(ひょう)災・雪災 | 台風や雹(ひょう)・大雪などによる損害 |
水災 | 台風や大雨などにともなう洪水・床上浸水などによる損害 |
建物の外部から物体の衝突など | 物件への自動車の衝突、石・ボールなどの衝突など、建物外部からの物体による損害 |
水濡れ | 上階からの水漏れや配管の設備の故障で水浸しになるなど、水漏れによる損害 |
騒擾(じょう)・労働争議 | 騒擾(じょう)や集団行為にともない物件が壊されるなど、破壊行為や暴力による物件の損害 |
盗難 | 盗難にともなう盗取・汚損・損傷による損害 |
不測かつ突発的な事故 | 自宅で起きた、故意ではなく突発的な事故による損害 |
※補償対象は保険会社や契約内容によって異なります。
火災保険に加入していたとしても、地震による火災や津波、噴火などで受けた損害は補償の対象外となっています。これらの災害に備えたい場合は、後述する地震保険に加入する必要があります。
火災保険の補償対象
火災保険は、原則「建物」と「家財」に補償対象が分かれています。そのため、建物のみ補償、家財のみ補償、あるいは建物+家財の補償という3種類の契約方法が一般的に選択できます。
この場合の建物は家だけではなく、門や塀・物置や車庫・庭木・屋外設備なども補償の対象です。また、家財とは自宅に収容している家具や家電のことで、敷地内もしくは建物内にある自転車や原動機付自転車なども含まれます。なお、高価な貴金属や骨董品などは補償されない場合があるため、あらかじめ火災保険の契約内容を確認しておきましょう。
火災保険のおもな補償対象
補償範囲 | 補償対象 |
---|---|
建物のみ |
|
家財のみ |
|
建物・家財の両方 | 建物のみ、家財のみの補償対象をトータルでカバー |
※補償対象は保険会社や契約内容によって異なります。
火災保険と家財保険・地震保険の違い
火災保険のほかに自然災害に備えられる保険として、家財保険と地震保険があげられます。火災保険とこれらの保険の違いを解説します。
火災保険と家財保険の違い
家財保険とは、火災保険の一種です。前述の図のとおり、火災保険の補償対象は「建物」と「家財」に分かれますが、おもに建物の中にある家具や家電製品などの家財を補償するものを「家財保険」と呼びます。火災の損害のほか、自然災害や盗難などによる家財の損害を幅広くカバーします。
大きな被害で家具にも損害が出ると、それなりにまとまったお金が必要になるため、火災保険に加入する際には、建物だけではなく家財への補償もしっかりつけるとよいでしょう。
火災保険と地震保険の違い
火災保険と地震保険は補償の範囲が異なります。火災保険は、火災や自然災害によって生じた損害を補償する保険ですが、地震・津波・噴火などによる損害は補償されません。一方、地震保険は、地震・噴火またはこれらを原因とする津波による損害が補償されます。
なお、地震保険は単体では加入できず、火災保険の加入時にあわせて加入する必要があります。すでに加入中の火災保険にも、途中で地震保険を付加することも可能です。
また、地震保険も火災保険と同様に、補償対象は「建物」と「家財」で、それぞれで付帯しなくてはいけません。一般的には建物、家財ごとに火災保険の保険金額の30~50%に相当する額の範囲内で、地震保険の保険金額を決めることになります。
火災保険は、建物の所在地や構造などにより、各保険会社が保険料を設定しています。一方、地震保険は所在地と建物の構造により国で保険料を定めており、どの保険会社で加入しても補償内容も保険料も一律です。
災害が多い日本で暮らす備えとして、火災保険とあわせて地震保険の加入についてもぜひ検討してみましょう。
火災保険に加入する際の注意点
火災保険は、住む場所や建物の構造・性能などさまざまな条件で保険料が決まりますが、火災保険に加入することを検討している場合には、まずは以下の4つについて事前に確認しておきましょう。
- 保険金額は適切な額を設定する
- 補償対象を正しく決める
- 明記物件の場合はあらかじめ申し込む
- 家計とのバランスを考えて契約期間を設定する
保険金額は適切な額を設定する
火災保険は、保険の対象となる建物や家財の損害に対して補償するものです。そのため、火災や自然災害などで損害が発生した場合にどのくらいの補償が必要なのかを考えて保険会社から支払われる保険金額をご自身で設定しなければなりません。
万が一のために保険金をたくさん受け取ろうと保険金額を高く設定すれば、その分保険料も高くなるだけでなく、実際の損害額以上は補償されません。反対に、保険金額を低く設定し過ぎると保険料はおさえられますが、万が一のときの補償が手薄になってしまいます。
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■「再調達価額(新価)」または「時価」により補償金額が変わる
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保険金額を決めるには、まずは保険の対象となる建物や家財がいくらくらいの価値があるのかを評価する必要があります。保険金額の設定については「新価(再調達価額)」と「時価」の2つの考え方があります。
新価(再調達価額)とは、現在住んでいる家と同等な家を新しく取得するためにかかる費用を保険金額として設定するという方法です。一方で、時価は、購入時から時間が経った現在の価値のことを指します。再調達価額(新価)と時価額の違い
再調達価額(新価) 損害が生じたものを再築または再取得するのに必要な金額をもとに決める方法。
建物が全焼したときなどは、支払われた保険金で同じ建物を建てることも可能。時価 同等のものを新規購入するときに必要な金額から経過年数や消耗により減少した価値を差し引いて決める方法。建物が全焼した場合、支払われた保険金だけでは同じ建物を建て直したり買い替えをしたりすることができない可能性がある。 時価で保険金額を設定してしまうと、新しく家を調達する際に保険金額が足りない可能性が出てくるため、新価(再調達価額)で設定することをおすすめします。なお、現在は、新価(再調達価額)で保険金額を設定するのが一般的です。
補償対象・補償範囲を正しく決める
前述のとおり、火災保険の補償対象は「建物」と「家財」に分かれています。
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■持ち家と賃貸では補償範囲が異なる
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居住している物件が持ち家の場合には、「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」のいずれかで契約をすることになります。「建物のみの補償でも十分では?」と考える方もいるかもしれませんが、家財が損傷し、買い替えが必要になると想像以上にお金がかかることも少なくありません。そのようなときに「家財保険」で家財も補償されれば、支払われた損害保険金で、生活に必要な家電や家具を買いなおすことができます。「建物」「家財」がそれぞれなにを補償対象としているのかを確認し、必要な補償をカバーできるのか考えて正しく選びましょう。
なお、賃貸物件の場合には大家さんがすでに建物部分の火災保険に加入していることが多いため、入居者は建物部分に関する補償は必要なく「家財のみ」で契約することになります。
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■自宅のリスクを確認することが大切
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また、火災保険は、各保険会社により補償内容に応じたいくつかのプランを用意していたり、一部の補償を付帯するかしないかを自由に選択できたりします。補償される範囲が広くなれば、その分保険料は高くなりますが、必要性の低い補償を対象外にすれば保険料はおさえやすくなります。
たとえば、水災(水害)の補償を付帯すれば、台風や暴風雨、豪雨、洪水、高潮、土砂崩れ、融雪洪水などによる被害を受けたときの補償の対象となる場合でも、場合によっては不要と判断できるケースもあるでしょう。自宅の構造や立地、マンションであれば階数などを考慮したり、ハザードマップ※6で災害リスクを確認したりしたうえで、必要な補償の範囲を決めましょう。
明記物件の場合にはあらかじめ申し込む
明記物件とは、家財に保険を付ける場合にあらかじめ申し込みをして保険証券などに明記しておかなければ火災保険の補償対象外となってしまうものを指します。具体的には、1個または1組の価格が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董などの貴重品・美術品などの貴重品のことです。
保険の対象にするには契約時に手続きをおこない、保険証券などに明記することが必要です。うっかり明記をし忘れて補償の対象ではなかったということがないようにしましょう。
ただし、契約時に明記しなくても(明記し忘れた場合でも)補償の対象とする商品もあります。たとえば、1個または1組の損害額が30万円を超える場合はその損害額を30万円とみなしたり、1回の事故につき限度額(合計100万円や300万円など)を設けたりするケースがあります。保険会社によって異なるため確認する必要があります。
家計とのバランスを考えて契約期間を設定する
火災保険の中には、住む期間にあわせて契約期間を自由に設定できる商品もあります。長期契約とすると割引を受けられるケースが多くありますが、支払いは一括や年払いに限られるケースもあります。一度に大きな出費となる場合があるため、住む期間や家計とのバランスを考えて契約期間を設定することが大切です。
なお、火災保険の保険期間が1年以下の契約は、申し込みを撤回または解約(クーリング・オフ)することができません。短期の契約をする場合には注意しましょう。
まとめ
この記事では、火災保険の補償対象や家財保険・地震保険との違いなどについて解説しました。
そもそも、火災保険には加入義務はありません。しかし、万が一の火災や自然災害などによる損害からご自身の大切な家や家財を守るための備えとして有効な手段です。いくらご自身で注意をしていても、もらい火などで損害を受ける可能性もゼロではなく、自然災害に見舞われるリスクもあるでしょう。ご自身の住居のリスクも踏まえたうえで火災保険や地震保険を検討すると良いでしょう。
火災保険はさまざまな保険会社が販売しているため、ご自身にあった保険を選ぶことが難しいと考える方もいるかもしれません。保険選びに迷った場合は、比較サイトなどを活用することをおすすめします。複数の保険会社の保険料や補償内容をまとめて比較でき、ご自身に適した保険を探しやすくなるでしょう。
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なお、ご自身で調べたもののよくわからない、という場合には保険アドバイザーに相談することもできます。
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監修者情報
ファイナンシャルプランナー田仲幹生
外資系生命保険会社にて営業、その後税理士事務所に勤務しながらファイナンシャルプランナー資格を勉強し、CFP®と1級FP技能士を取得。その後、自身のFPとしての知識と投資・資産運用の経験を活かし独立、㈱あせっとびるだーずを設立し現在に至る。法人として株式投資や不動産投資をおこないつつ、ファイナンシャルプランナーとしての相談業務や投資と資産運用を教えるマネースクールなどを運営する。
- 資格情報
- 日本FP協会会員(CFP®)、1級FP技能士、宅地建物取引
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年8月8日)
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