火災保険に水災補償は必要?加入率や補償内容も解説
火災保険は、火災だけでなく、風災・水災・雪災などの自然災害による損害も補償します。台風や暴風雨、豪雨により、洪水や土砂崩れなどの災害が起こることがありますが、このような水災によって建物や家財に損害があった場合にも、火災保険で備えることが可能です。 この記事では、水災補償の必要性や、水災補償で補償される被害例や補償範囲などをわかりやすく解説します。水災補償の付帯率や検討する際のポイントについてもご紹介していますので、水災に対する備えを検討している方や、火災保険を見直している方はぜひ参考にしてください。
水災(水害)とは?
水災とは、台風や暴風雨などにより引き起こされた「洪水」や「高潮」、「土砂崩れ」などによる損害のことです。
日本の国土は7割が山地であり、急勾配な河川が多いため、大雨などによる河川の氾濫が起きやすい特徴があります。また、梅雨や台風による集中豪雨も多く、水災による損害は全国各地で見られます。
災害大国ともいわれる日本で暮らす以上は、水災リスクを含む自然災害に備えることが大切です。まずは、水災による被害とは実際にどのようなものがあるかを確認していきましょう。
水災(水害)で予想される被害例
たとえば、次のようなケースは水災による被害と考えられます。
【水災で予想される被害例】
- 台風による大雨で床上浸水し、壁の張り替えが必要になった
- 豪雨により土砂崩れが起こり、家が流された
- 高潮により床上浸水し、家財の半分以上が使えなくなった
- 豪雨により雨漏りが起こり、家財が使えなくなった
上の被害例のほかにも、局地的な大雨や集中豪雨によって下水道等の処理能力を超えてしまうことにより、大量の雨水がマンホールや側溝から地上にあふれるといったケースも想定されるため、都市部でも注意する必要があります。
火災保険の「水災補償」とは?
前述のような水災(水害)が起きた場合の備えとして、検討しておきたいのが火災保険の「水災補償」です。
水災補償とは、火災保険に付帯できる補償のひとつで、水災によって建物や家財に損害を受けた場合に補償を受けられるものです。
水災補償で補償される範囲
水災補償を付帯すると、台風や暴風雨、豪雨(ゲリラ豪雨)によって生じた洪水や融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などにより家屋が流された場合や、居住部分が床上浸水して建物や家財が損害を受けた場合などに保険金を受け取ることができます。
【水災で補償される災害の範囲】
- 洪水・融雪洪水※1
- 高潮
- 土砂崩れ
※1 融雪洪水とは、多量の積雪が急激な気温上昇などによって一時にとけ、河川を増水させて起こる洪水のこと。 積雪の多い地域では春先に起こる可能性があります。
また、水災補償のおもな補償対象は火災保険の基本補償と同じように「建物」と「家財」に分かれており、どちらか一方、あるいは両方を補償対象として選択することができます。具体的には、以下のとおりです。
火災保険のおもな補償対象
補償範囲 | 補償対象 |
---|---|
建物のみ |
|
家財のみ |
|
建物・家財の両方 | 建物のみ、家財のみの補償対象をトータルでカバー |
※補償対象は保険会社や契約内容によって異なります。
なお、水災補償は火災保険に付帯されている補償であるため、単独で加入することはできません。水災保険という商品は存在せず、火災保険に水災補償を付帯させることで補償を受けられるしくみになっています。
火災保険の水災補償の適用条件
水災補償が適用されるためには、一定の条件があります。保険会社によって条件は異なりますが、一般的には以下のような場合に保険金が支払われます。
【水災補償が適用されるケース】
- 損害を受けたものが補償対象に含まれている場合
- 再調達するのに必要な価格の30%以上の損害を受けている場合
- 床上浸水または地盤面から45㎝を超える浸水による損害を受けている場合
そのほかにも、加入している保険によって自己負担額などの条件が決まっていることがあります。保険契約の内容を確認し、水災補償の適用条件を調べておきましょう。
火災保険の水災補償が受けられないケース
火災保険に加入し、水災補償を付帯していても、水災による損害に対して補償を受けられない場合もあるため注意が必要です。次のいずれかに該当するときは、水災補償を受けられない可能性があります。
【水災補償が適用されないケース】
- 前述の「水災補償が適用されるケース」からはずれる場合
- 地震によって津波や土砂崩れが生じ、建物や家財に損害が生じた場合
火災保険に水災補償を付帯すると、土砂崩れによる損害も補償対象となります。しかし、土砂崩れの発生原因が地震による災害だった場合には地震保険でなければ補償を受けることができません。災害の発生原因によって補償の可否が変わる場合があるため、補償対象や補償条件などを確認することが大切です。
たとえば、住宅の近くに崖や小山などがあり、地震によって生じる土砂崩れなどの被害に備えたい場合には、火災保険の水災補償をつけるだけでなく、地震保険にも加入するとよいでしょう。なお、地震保険に加入するときも、補償対象を建物と家財から選択、あるいは建物・家財の両方に指定できます。家財に対しての補償を受けたいときは、忘れずに家財も補償対象にしておくことが必要です。
火災保険の「水災補償」はいる?いらない?
火災保険に加入する際に水災補償を付帯すれば、近年増加している水災リスクに対応でき安心です。しかし、「保険料が高くなってしまうからつけたくない」「マンションの高層階だから必要ない」などと考える方もいるかもしれません。
水災補償の必要性を考える際には、まずは近年の水災被害の状況をふまえつつ、立地条件や自宅の構造、マンションの階数などにおける水災リスクに確認するとよいでしょう。
近年の水災被害の状況
日本では、夏から秋の長期間にわたり、台風が発生するおそれがありますが、とくに近年は水災による被害が増加傾向にあり、実際に保険会社による保険金支払いも大きく増加しています。損害保険料率算出機構の調査によると、水災による保険金の支払い金額を2011年~2015年度平均と2016年度~2020年度平均で比べてみると、約4倍※2に増えています。
なお、水災リスクには、河川の氾濫などにより生じる「外水氾濫」だけでなく、局地的な集中強盗により雨が河川等へ排水しきれなくなり、下水道管や水路から水があふれる「内水氾濫」もあります。内水氾濫は河川から離れた地域でも発生し、地面がアスファルト等で舗装された都市部で起きやすいため「都市型水害」とも呼ばれます。マンホールから水が噴出したり、トイレや風呂場から下水が逆流したりして、住宅や道路が浸水・冠水します。過去10年の水害被害額において、外水氾濫以外による被害額も全体の4割強を占めているため注意する必要があります。
ハザードマップで自宅のリスクを確認
ご自身の住む地域にどのような水災リスクがあるのかを知るためには、まずは国土交通省が運営しているハザードマップポータルサイト※3などを利用して確認するとよいでしょう。
河川に近い地域の住居では、床上浸水による被害が想定されますが、ハザードマップでは、河川の氾濫による洪水や土砂災害等の危険度を知ることができます。とりわけ、山間部や低地、過去に氾濫を起こした河川の近くに住む場合には、万が一に備えて水災補償を検討しておいたほうがよいでしょう。
なお、河川から離れている地域でも、内水氾濫に備え「内水ハザードマップ」を作成している自治体もあります。
火災保険の水災補償の付帯率
損害保険料率算出機構によると、2021年度における火災保険の水災補償付帯率の全国平均は65.4%※4でした。つまり、火災保険に加入しているうちの約3分の2が水災補償を付帯していることがわかります。火災保険に加入している多くの方が、台風や豪雨を原因とする水災にも備えているといえるでしょう。
※4 出典:損害保険料率算出機構「火災保険 水災補償付帯率」
まとめ
火災保険の水災補償では台風や豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどに備えることができます。水災補償を付帯しなければそのぶん保険料はおさえられますが、ご自身のすまいがこれらの被害を受ける可能性があるのかどうかをまずは確認することが大切です。
また、近年はゲリラ豪雨も増えてきており、台風の時期以外にも水災が生じる可能性は十分にあります。危険性が高いと考えられる地域におすまいの方や、水災による損害に対しての備えをしておきたいという方は、火災保険に水災補償を付帯することをおすすめします。
すまいの水災リスクが高いかどうかは、国土交通省で公開しているハザードマップなどでチェックすることが可能です。河川が近い地域に住んでいる場合の被害だけでなく、河川から離れている都市部でもマンホールから水が噴出したり、トイレや風呂場から下水が逆流したりして、住宅や道路が浸水・冠水する被害も起きています。ご自身のすまいのリスクをしっかりとチェックしましょう。
なお、これから火災保険に加入するにあたり、保険の選び方がよくわからない、という場合には、比較サイトを活用すると、複数の火災保険の情報を一覧で比べることができるため、ご自身にあった保険を選びやすいでしょう。付帯サービスだけでなく、補償内容や保険料、対応しているサービスなどを確認することができます。
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監修者情報
ファイナンシャルプランナー稲村優貴子
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客さまに直接会って人生に関わるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2001年FP資格を取得し独立。2006年から6年間日本FP協会鳥取支部長。現在LifeForYou代表として年間500件の相談・講演・執筆・メディア出演業務をおこなっている。得意分野はライフプラン、保険、iDeCo、年金、家計節約、不動産。
- 資格情報
- 日本FP協会会員(CFP®)、ヨガインストラクター(全米ヨガアライアンスRYT200)野菜ソムリエ、アスリートフードマイスター®
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年6月20日)
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