火災保険に入らないとどうなる?賃貸・持ち家それぞれのケースごとに紹介

火災保険に入らないとどうなる?賃貸・持ち家それぞれのケースごとに紹介
公開日:2023年8月8日

賃貸物件の契約をしたり、マイホームの購入をしたりした際に、火災保険の加入を促された経験はありませんか?なかには、「火災保険についてよくわからなかったが手続きをした」という方もいるかもしれません。しかし、もしも火災保険に加入しない場合には、どうなるのでしょうか?

この記事では、本当に火災保険には加入しなければならないのか、火災保険に加入しないとどのようなリスクがあるのか、についてわかりやすく解説します。

火災保険にはどんな補償がある?

「火災保険には必ず加入しなければならないのか」ということについて解説する前に、まずは火災保険がどのような補償があるのかについて説明しましょう。

そもそも火災保険とは、一戸建てやマンション、アパートなどの「建物」と、その建物内の家具や家電製品などの「家財」を対象として、火災や自然災害などによる損害を補償する保険のことです。具体的にはおもな補償対象は以下になります。

火災保険のおもな補償対象

補償範囲 補償対象
建物のみ
  • 建物
  • 門、塀、垣
  • 物置、車庫
  • 玄関ドア、窓
  • 庭木
  • 冷暖房装置
家財のみ
  • 家具
  • 家電製品
  • 衣類
  • 自転車、排気量125㏄以下の原動機付自転車
建物・家財の両方 建物のみ、家財のみの補償対象をトータルでカバー

補償対象は保険会社や契約内容によって異なります。

火災保険は火災による自宅の損害だけではなく、水災や風災などによるさまざまな自然災害による自宅の損害リスクに対応できます。上の表に記載されているような物置や自転車なども含まれています。

火災保険では具体的にどのような損害による補償を受けられるのでしょうか。おもな補償内容は以下のとおりです。

火災保険のおもな補償内容

補償内容 補償される一例
火災 失火やもらい火による損害
落雷 落雷による火災や電化製品などの損害
破裂・爆発 ガス漏れなどによる爆発や火災など、破裂や爆発による損害
風災・雹(ひょう)災・雪災 台風や雹(ひょう)・大雪などによる損害
水災 台風や大雨などにともなう洪水・床上浸水などによる損害
建物の外部から物体の衝突など 物件への自動車の衝突、石・ボールなどの衝突など、建物外部からの物体による損害
水濡れ 上階からの水漏れや配管の設備の故障で水浸しになるなど、水漏れによる損害
騒擾(じょう)・労働争議 騒擾(じょう)や集団行為にともない物件が壊されるなど、破壊行為や暴力による物件の損害
盗難 盗難にともなう盗取・汚損・損傷による損害
不測かつ突発的な事故 自宅で起きた、故意ではなく突発的な事故による損害

保険会社や契約内容によって異なる場合があります。

出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況_2022年度(2021年度統計)」

火災・落雷・破裂・爆発

火災保険で補償される「火災」とは、自宅のストーブからの引火で火災が発生し、住宅が焼失した場合などご自身で起こした火災があげられます。さらに、隣家などから発生した「もらい火」により自宅や家財が焼けてしまった損害についても補償を受けることができます(ただし、一部対象外となる場合もあります)。

もらい火は、火元となる隣家から損害賠償を請求できないケースが多いため、ご自身で火災保険に加入して備えておくことが重要になります。その他にも落雷による建物や電化製品などの損害、家具や衣類などの家財が損害を負った場合にも備えることができます。

そのほか、「落雷」による火災や「破裂」「爆発」による火災・ガス漏れなどの損害についても、建物や電化製品・家具・衣類などの家財が損害を負った場合に備えることができます。

風災・雹(ひょう)災・雪災

台風や暴風雨などによる風災、雹(ひょう)災または豪雪、雪崩などの災害が発生した場合の損害に対しても補償の対象となります。たとえば台風で物が飛んできて窓ガラスが割れたり、雪の重みで屋根が損壊したりした場合などが補償の対象となります。

とくに、近年は台風などの自然災害は頻繁に起きているため、自然災害による損害の補償を受けられる火災保険について関心を持つ方も多いかもしれません。

水災

台風、豪雨などによる洪水や土砂崩れなどにより床上浸水が発生した場合なども補償の対象です。温暖化により大雨の被害が拡大している中で、とても重要な補償となります。

地震もしくは噴火またはこれらによる津波で生じた損害は火災保険では補償されません。これらのリスクに備えるには、火災保険に地震保険をセットして加入する必要があります。

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火災保険は必ず入らなければいけない?

火災保険の加入は任意であり、賃貸物件と持ち家、どちらも法律上の加入義務はありません。火災保険に加入をしていない場合、万が一火災などで建物や家財に損害が生じたときには、自己負担で修復する必要が出てきますが「ご自身の貯蓄などで修復することができる」あるいは「修復して元通りにする必要がない」という前提の方であれば、必ずしも火災保険は必要ではないでしょう。

しかし、火災保険の加入を求められるケースもあります。それはどのようなケースなのか、賃貸物件と持ち家、それぞれの場合について確認しておきましょう。

賃貸物件の場合

賃貸物件の場合、火災保険の加入は法律で義務付けられているわけではありません。しかし実際は賃貸物件の契約の際に、大家さんや不動産会社に火災保険(家財保険)の加入を求められることがあります。

日本には失火責任法という法律があり、失火者は重大な過失がない限り損害賠償責任を負いません。しかし、賃貸契約では、「原状回復義務」といって入居後に生じた損傷について、時間の経過や通常の使用による損耗を除き、退去時にもとの状態に修復して返却しなければなりません。

入居者がこの義務を確実に果たせるように、借家人賠償責任特約を付けた火災保険(家財保険)への加入を賃貸契約の条件とするケースが多いです。借家人賠償責任特約とは、賃貸物件の入居者(借家人)が借りている部屋に損害を与えた場合に、家主に対して負う損害賠償責任を補償する特約です。

加入する火災保険については、大家さんや不動産会社に保険会社や商品を指定されることもあります。自由にご自身で選択して加入できる場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

持ち家の場合

持ち家の場合も賃貸と同様に火災保険の加入を義務付けられているわけではありませんが、住宅ローンを組んで購入するときには、金融機関や不動産会社から火災保険の加入を求められることがあります。これは、住宅ローン債権の担保になっている建物が焼失しても、保険金によって債権を回収できるようにするためです。

内閣府の試算によると、全世帯のうち2,880万件の世帯(おおよそ82%)の方が火災保険に加入しています。それだけ多くの方が日常生活を送るうえで発生するリスクに備えていることがわかります。

持ち家の場合、一戸建てかマンション、アパートかで火災保険の補償対象が異なります。たとえば分譲マンションの場合には、ご自身のお部屋である「専有部」のみを補償対象として火災保険に加入するのが一般的です。しかし、物件によっては専有部に加えて共有部に関しても火災保険をかける必要がある場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

出典:損害保険料率算出機構資料より内閣府作成

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火災保険に入らない場合に起こりうるリスク

火災保険に入らない場合に起こりうるリスク

火災保険に加入しない場合にどのようなリスクが想定されるのでしょうか。ここからは火災保険に加入しないことで起こりうるリスクを詳しく見ていきます。

もらい火の被害にあっても補償されない

もらい火の被害を受けたとしても補償されない点が、火災保険に入らない場合のリスクといえます。

日本では「失火責任法」により、もらい火で自宅が損害を被った場合であっても、失火者に重大な過失がなければ損害賠償請求はできません。この場合の重大な過失とは、油を加熱したまま席を外すなどの事例があげられます。

失火者に重大な過失がなければどうすることもできないため、ご自身で損害を負担しなければなりません。

風災や水災による損害を自己負担しなければならない

猛烈な雨や台風などで水害が発生する件数が年々増加しています。令和元年には台風第15号の影響により、千葉県で約7万棟もの住宅が被害を受けたという事例もあります。火災保険に加入していなければ、それらの災害で発生した損害をご自身で負担しなければなりません

火災保険に加入しておくほか、ハザードマップでお住まいの地域の災害発生リスクについて調べておきましょう。ハザードマップは、自然災害による被災想定区域や避難場所・避難経路といった情報を示した地図のことで、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」で確認できます。

出典:国土交通省「近年の自然災害の発生状況」

公的支援だけでは住宅再建できない場合が多い

災害で持ち家が被害を受けた場合、修理や建て替えにかかる費用は高額になるケースもあります。たとえば、東日本大震災で住宅が全壊し、再建にかかった費用の平均が2,500万円であったのに対し、公的支援と義援金などでそのうち約400万円しかまかなえなかったというデータがあります

さらに、建て替え費用だけではなく、家財の買い替えや引っ越し費用などもかかります。地震による損害は火災保険では補償されないため、地震保険による備えも重要です。ただし、地震保険の保険金額には限度があり、火災保険金額の30〜50%かつ、建物5,000万円以内、家財1,000万円以内と決まっています。

地震保険はあくまで生活の再建・安定が目的であり、保険金だけでは建物や家財を元通りに直せないことは知っておきましょう(地震による損害を補償してくれる特約によっては、火災保険金額の100%を補償する商品もあります)。

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補償や特約を上手に選んで保険料をおさえよう

前述のとおり、ご自身でどれだけ注意していても、もらい火や自然災害による自宅の損害リスクをゼロにすることはできません。そのため、多くの人は火災保険への加入は重要なことです。
ただし、加入に際して気になるのが保険料でしょう。補償内容を充実させるほど、保険料は高くなりますが、以下について留意することで、保険料がおさえやすくなります。ぜひチェックしておきましょう。

【火災保険の保険料をおさえるポイント】

  • 必要な補償を選んで火災保険に加入する
  • 火災保険の保険金額(補償金額)を適切に設定する
  • 保険の補償期間を長め(5年など)にする
  • 保険料の払込み方法を月払いから年払い、一括払などに変更する

必要な補償を選んで火災保険に加入する

火災保険は、各保険会社により補償内容に応じたいくつかのプランを用意していたり、一部の補償を付帯するかしないかを自由に選択できたりします。補償される範囲が広くなれば、その分保険料は高くなりますが、必要性の低い補償を対象外にすれば保険料はおさえやすくなります。

■水災補償

たとえば、水災(水害)の補償を付帯すれば、台風や暴風雨、豪雨、洪水、高潮、土砂崩れ、融雪洪水などによる被害を受けたときの補償の対象となる場合でも、場合によっては不要と判断できるケースもあるでしょう。自宅の構造や立地、マンションであれば階数などを考慮したり、ハザードマップで災害リスクを確認したりしたうえで、必要な補償の範囲を決めましょう。

■地震補償

地震保険は火災保険とセットで加入することができます。火災保険では補償されない地震による火災や倒壊、津波などに備えられます。地震保険は火災保険とセットでしか加入できず、火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲でしか保険金額を設定できないという制約があります。しかし地震上乗せ特約などを付加することで、地震による損害が生じた場合に、地震保険金とあわせて最大100%の補償を受けることも可能です。2021年度の地震保険の付帯率は全国平均69%で、火災保険加入者の半数以上が加入しています

出典:損害保険料率算出機構

■類焼損害補償特約・失火見舞費用特約

ご自身が原因の火災で隣家などに損害を与えてしまっても、重大な過失がなければ損害賠償責任は負うことはありません。ただし、法律上の賠償責任はないとはいえ、迷惑をかけてしまったことに対して何らかのお詫びや償いをしたいと思うこともあるでしょう。とくにその場所に住み続けるのであれば、ご近所との関係を保つためには重要です。

類焼損害補償特約は、もらい火の被害を受けた方が火災保険に加入していない場合、あるいは加入している火災保険から十分な補償が受けられない場合に、不足分を補償します。失火見舞金費用特約は、もらい火の被害者に対して、一定額の見舞金を支払うものです。ご自身の状況などを考慮し、必要に応じて特約の付帯を検討してみるとよいでしょう。

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まとめ

この記事では、本当に火災保険には加入しなければならないのか、火災保険に加入しないとどのようなリスクがあるのか、賃貸物件と持ち家のケースにわけて解説しました。

結論的には、賃貸物件でも持ち家も火災保険の加入が義務付けられているわけではありませんので加入は任意となります。しかし、賃貸契約や住宅ローン契約において、火災保険の加入が条件になるケースは多いといえるでしょう。

仮に火災保険に加入しない場合には、火災や自然災害などで自宅が損害を受けた場合に、自己負担で修復する必要があります。ご自身でどれだけ火災に気を付けていたとしても、もらい火の被害や自然災害のリスクを完全に防ぐことは難しいもの。生活の基盤である家のさまざまな経済的リスクからご自身を守るために、火災保険への加入で備えることは必要ではないでしょうか。ただし、自己負担での修復が可能である、必ずしも修復の必要がないなどの方にとっては必ずしも必要ではないケースもあります。

なお、火災保険を検討する際には、補償内容や保険料、割引サービスの種類、割引率は保険会社によって異なるため、複数の火災保険の情報を比較できる比較サイトを利用するとよいでしょう。

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監修者情報

ファイナンシャルプランナー竹国たけくに弘城ひろき

竹国 弘城

RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。趣味はサウナ(サウナ・スパプロフェッショナル)。

資格情報
1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)
HP
https://www.rapportco.com

CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。

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  • このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
  • 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。

(掲載開始日:2023年8月8日)
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