火災保険の見直しは必要?適切なタイミングとポイント・注意点について解説
火災や自然災害による損害から自宅や家財を守るための火災保険。「加入はしているが契約内容を見直したことはない」という方もいるのではないでしょうか?火災保険は年単位での加入が一般的であるため、契約内容を見直すことなく何年も継続している方もいるかもしれません。この記事では、火災保険の見直しはそもそも必要なのか、見直しに適したタイミングはあるのか、チェックするべきポイントはなにか、という点についてわかりやすく解説します。
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火災保険も適度な見直しが必要?
火災保険に加入をしたあと、定期的な契約内容の見直しはそもそも必要なのでしょうか?多くの方は、時間の経過にあわせてライフスタイルやライフステージの変化があるでしょう。そのため、その時々の状況にあわせて火災保険の見直しは必要になると考えられます。
火災保険の見直しで補償内容と保険料を最適化できる
契約内容を見直すことで、ご自身のいまの状況にあった補償内容にし、負担する保険料も最適化できます。
たとえば、家財に対する補償は、損害にあったときに買い直しが可能な金額を設定することが理想ですが、必要な補償額が常に一定とは限りません。ライフスタイルや同居する人数の変化によっても家財の量や質は変化するため、必要な補償額も変わるでしょう。
ライフスタイルの変化にあわせた見直しを怠ると、補償額を必要以上に大きく設定して保険料の負担が増えていたり、必要なときに十分な補償が受けられなかったりする可能性があります。定期的な見直しによって補償内容と保険料を最適化すれば、負担をおさえつつ必要な補償を受けられるようになるでしょう。
途中解約をしても解約返戻金を受け取ることができる
契約の見直しに際して、火災保険を途中解約することもあるかもしれません。火災保険の保険料はほとんどが掛け捨てですが、解約時にのこりの保険期間があれば、所定の返戻率によって算出されたのこりの期間分の保険料が払い戻されます。火災保険の見直しを考えるときは、払い戻される金額も保険会社に確認するとよいでしょう。
火災保険の見直しに適切なタイミング・時期とは?
火災保険を見直して、契約内容を変更したり保険を乗り換えたりするタイミングには、おもに以下があげられます。
- 自宅を購入・新築したとき
- 家の増改築(リフォーム)をしたとき
- 居住する人数が変化したとき
- 保険の更新(満期)時期がきたとき
- 賃貸住宅を契約・入居したとき
もちろん、それ以外のタイミングでも、補償内容や期間、負担している保険料などの見直しはいつでもできます。家計の状況を把握するために定期的な見直しは大切です。
以下では、火災保険の見直しのタイミングについて詳しくみてみましょう。
自宅を購入・新築したとき
自宅の購入や新築によって住まいが変わり、新たに住居を取得した際には、立地などから災害リスクを考慮し補償内容を設定する必要があります。これまで契約していた火災保険を解約し、新たな住居を対象に新たな火災保険に加入することもあるでしょう。
万が一、新たな住居にあわせた補償内容を設定していないと、補償の対象外となり最悪の場合には家を失って住宅ローンだけがのこるという事態もありえます。新居や家財を守り、ご自身や家族が安心して暮らせるよう、適切な補償内容を設定しましょう。
家の増改築(リフォーム)をしたとき
火災保険の保険料は、建物の所在地や面積、構造などで設定されます。自宅のリフォームによって建物の構造等に変化がある場合には、建物の評価額なども変わる可能性があるため、火災保険の内容を見直しましょう。
火災保険では建物に変化が生じた場合、保険会社への通知義務があります。通知が漏れていると、必要なときに保険金の受け取りや保険会社からの案内を受けられなくなる可能性があるため、保険会社への連絡は忘れずにおこないましょう。
居住する人数が変化したとき
子どもの誕生や独立、親との同居など、その家に住む人数が変化するときも、火災保険の見直し時期となるでしょう。
住む人数に増減があれば、必要な家財も変わり、家財の量も変化します。必要となる補償内容や金額も変わってくるため、状況にあわせた契約内容にする必要があります。
保険の更新(満期)時期がきたとき
更新(満期)の時期も見直しを検討すべきタイミングです。今後も同じ補償を継続するのか、補償内容を変更するのか、ほかの保険会社のプランの方が適しているのかなどを考え、比較・検討しましょう。
なお、火災保険の期間はこれまでは最長10年でしたが、2022年10月1日以降に新規契約または更新する場合の保険期間は最長5年に改定されました。保険料にも影響するため、保険を更新・変更する際は、保険期間も確認しましょう。
賃貸住宅を契約・入居したとき
賃貸住宅を契約するとき、火災保険への加入を求められることがあります。法律上の義務ではありませんが、賃貸借契約の際に貸主や不動産会社から加入を求められ、契約時に保険を紹介されることが多いでしょう(賃貸契約時に勧められた火災保険以外の選択も可能です)。
賃貸借契約の際に検討したい火災保険の項目としては、以下があげられます。
- 家財保険(家財を対象にした火災保険)
- 借家人賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
家財保険(家財を対象にした火災保険)とは、家具・家電など自宅にある財産の損害を補償する保険です。火災や爆発、風水害などで家財に損害が発生したときが対象となり、なかには盗難被害などを補償しているものもあります。
借家人賠償責任保険は、物件を借りている人が貸主(大家さん)に対して損害賠償責任を負うことになった場合の、原状回復費用が補償される保険です。たとえば、火災や漏水を発生させ、借りている部屋に修繕が必要になった場合などが補償対象となります。この保険は、家財保険の特約のひとつであり、単体での加入はできません。
そして、個人賠償責任保険とは、日常生活を送るなかで他者に損害を与えてしまい、法律上の損害賠償責任を負ったときに補償される保険です。
たとえば、集合住宅の一室を借りていて、漏水によって下の階に住んでいる人の家財に損害を与えたり、ベランダからものを落として直下にいた人を負傷させたりした場合などが補償対象となります。損害を与えた物品の弁償や、ケガをさせた相手への治療費に保険金をあてられます。
賃貸住宅への入居時に火災保険へ加入する場合は、以上の3点が補償されるかを確認しておくとよいでしょう。
火災保険を見直しする際のチェックポイント
火災保険の見直しの際には、自宅の構造や居住地域の災害リスク、補償内容や期間がライフスタイルにあったものかなどを踏まえて選びましょう。
ここからは、見直すときにチェックしたい注意点を解説します。
保険料は建物の構造によって変化する
火災保険の保険料が決まる要素のひとつとして、「建物の構造」があります。建物の構造の違いによって「構造級別」というものが定められ、その判定により保険料を決定しています。
構造級別は、「建物の種類」と「建物の性能」によって判断されます。構造によって負担する保険料が変化し、燃えにくい構造の住宅であるほど、保険料は低く設定されています。そのため、木造よりも耐火性・耐燃性のあるコンクリート造の方が、保険料は低くなります。
保険を見直す際、保険料がいくらになるのかは確認すべき大切なポイントですが、自宅の構造級別を正しく把握していなければ、正しい見積もりになりません。火災保険の見直し時に保険料を比較する場合は、自宅の構造級別を確認し正しい見積もり結果を集めましょう。
地域の災害リスクにあわせた補償内容にする
近年、気候変動の影響を受けて、ゲリラ豪雨による洪水や土砂災害の発生件数が増えています。冠水や土砂崩れの被害を受けると、自宅の損害だけでなく家財への影響も避けられません。
各自治体が発表しているハザードマップでは、地震や洪水、土砂災害リスクが高いとされる地域を確認できます。国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、場所ごとにどのような災害が起きやすいのかを、地図や写真に重ねて表示できます。こうした情報を参考に、自宅のある地域の災害リスクを考え、必要な補償が受けられる火災保険に加入しましょう。
地震保険への加入も検討する
阪神淡路大震災や東日本大震災など、日本では大きな地震がたびたび発生しています。地震などの自然災害により、生活基盤に大きな被害を受けた場合は公的支援を受けることができますが、公的支援だけでは生活の再建が難しい場合があります。
そのため、地震への備えとして考えておきたいのが「地震保険」です。地震などによる損害にしっかりと備えられるようにしたいと考える方が増えており、地震保険の火災保険への付帯率は年々上がっています※。
火災保険は火災や自然災害から自宅や家財を守ってくれる保険ですが、地震による損害は対象外であり、地震が原因で発生した火災や津波に対しては補償がされません。しかし、地震保険は、単独で加入することができず、火災保険とセットで加入する必要があります。
地震はいつ、どこで起こるのか、予想ができません。火災保険の見直しをする際には、もしものときに備えて、地震保険についてもあわせて検討するとよいでしょう。
補償内容がほかの保険と重複していないか確認する
火災保険に加入する際は、補償内容の重複に注意しましょう。たとえば、火災保険は、個人賠償責任保険を特約として設けている場合があります。個人賠償責任保険とは、日常生活のなかで発生した事故により、ご自身や家族が損害賠償責任を負った場合に補償が受けられる保険です。
たとえば、集合住宅に居住しており、漏水で下の階に住んでいる人の家財に損害を与えてしまった場合には個人賠償責任保険の補償対象となります。ほかにも、バルコニーやベランダからものを落下させて直下にいた人を負傷させてしまったり、外出時に立ち寄った店でうっかり高価な商品を壊してしまったり、飼い犬が散歩中、歩行者にかみついてケガをさせた場合なども補償対象となります(補償内容は保険会社により異なります)。
この個人賠償責任保険特約は火災保険だけでなく、自動車保険やクレジットカードに付帯しているケースもあるため、保険が重複していないか確認しましょう。仮に、複数の保険で個人賠償責任保険に加入しても、補償が必要な際に受け取れるのは、実際の損失額相当分のみです。それぞれの保険から保険金が受け取れるわけではないため、重複して加入することによる恩恵はあまりありません。
火災保険以外の保険加入状況や補償内容についても確認し、補償内容が重複しているなら、どちらかにしぼることによって、適切な保険料の負担となり、保険料をおさえられる可能性もあります。
適切な保険期間の保険を選ぶ
火災保険では、保険期間を一般的に1年~5年の間で設定することが可能です(2022年10月以降、火災保険の保険期間は最長で5年となりました)。保険料は長期契約にするほど割引かれるケースが多くなりますので、長期契約を検討することは保険料をおさえる方法のひとつです。
ただし、適切な保険期間であるか注意する必要があります。たとえば、数年以内に自宅の処分を考えているなら、長期間の契約は不要です。今後のライフプランを考え、適切な保険期間となるよう選択しましょう。
火災保険の見直し時はここに注意
火災保険の見直しをする際は、気をつけておきたい点もあります。保険内容によっては保険料が高くなったり、補償が受けられない空白期間ができてしまったりする可能性があるからです。
以下で詳しくみてみましょう。
保険料が高くなる可能性がある
火災保険の保険料は保険会社ごとに異なりますが、建物の構造・所在地、築年数などのほか補償内容や保険金額など、さまざまな要素にもとづいて決まります。
たとえば、地震や大雨による洪水・土砂災害などが多くなっている地域では、災害リスクが高いと判断され、保険料が高くなるケースもあります。
現在の火災保険を途中解約し、新たに火災保険を契約する場合には、保険料が高くなる可能性もあります。乗り換え後に前に、保険料はいくら変わるのかを正確に把握することが重要です。
保険乗り換え時に空白期間を作らない
火災保険の見直しにあたり、現在の保険を解約して新しい保険に乗り換える際には、補償期間の空白がないよう注意しましょう。
万が一、空白期間中に火災や自然災害に見舞われると、補償を受けることができません。保険の乗り換え時は、解約した保険の補償期間が終了したら、すぐに新しい保険の始期日がくるように設定しておきましょう。
質権設定されていると借入先金融機関の承諾が必要になる
住宅ローンを利用していると、金融機関が火災保険に対して「質権」を設定している場合があります。質権とは、貸したお金を確実に回収できるよう、他者の物品を担保とする権利のことです。
金融機関が火災保険に質権設定すると、住宅ローンの返済が完了するまでに火災保険の保険金が支払われた場合、金融機関はローンののこりを回収するために保険金を請求する権利を持ちます。もしも家が全焼してしまった場合でも、金融機関は貸したお金を回収できるしくみです。
質権は住宅ローンが完済されれば解除してもらえますが、完済前に保険を解約する場合は金融機関の承諾が必要です。火災保険の見直しをする際には、火災保険に質権設定されていないか確認し、設定されている場合は金融機関の承諾を得たうえで保険の乗り換えなどを進める必要があります。
なお、質権設定した場合、火災保険の証券は契約者の手元には届かず、住宅ローンを借入れた金融機関に届けられ保管されるため、契約者の手元には証券の写しや契約証明書が届きます。
まとめ
火災保険は、定期的に家族構成やライフスタイルの変化、ライフプランにあわせた見直しが必要です。たとえば、新居の購入や建築、家のリフォームなどをおこなったのであれば、住まいの構造や立地などにあわせて適切な補償内容も変わります。また、居住する人数が変化すれば家財の量も変わるため、家財補償で必要となる補償額も変わります。火災保険の見直しにより補償内容と保険料を最適化し、保険料の負担をおさえつつ必要な補償を受けられるようになるでしょう。
なお、見直しに際して加入している火災保険の途中解約をすることになった場合であっても、のこりの保険期間の保険料については、所定の返戻率で算出された金額が解約返戻金として受け取れます。のこりの保険期間を確認し、手続きをするようにしましょう。その際の注意点としては、保険の空白を作らないことです。万が一、 保険の空白期間が生じてしまうと、その間に火災や自然災害に見舞われると保険による補償が受けられなくなってしまいます。
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なお、ご自身で調べたもののよくわからない、という場合には保険アドバイザーに相談することもできます。
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監修者情報
ファイナンシャルプランナー田仲幹生
外資系生命保険会社にて営業、その後税理士事務所に勤務しながらファイナンシャルプランナー資格を勉強し、CFP®と1級FP技能士を取得。その後、自身のFPとしての知識と投資・資産運用の経験を活かし独立、㈱あせっとびるだーずを設立し現在に至る。法人として株式投資や不動産投資をおこないつつ、ファイナンシャルプランナーとしての相談業務や投資と資産運用を教えるマネースクールなどを運営する。
- 資格情報
- 日本FP協会会員(CFP®)、1級FP技能士、宅地建物取引
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年7月25日)
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