家財保険とは?火災保険との違いや補償内容、持ち家と賃貸のケースについても解説
火災保険には、「建物」に対する補償だけでなく家具や家電製品など「家財」に対する補償もあります。しかし「家財にまで保険をかける必要があるの?」「火災保険と家財保険はどう違うの?」などの疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、家財保険の補償内容や、メリット・デメリット、火災保険と家財保険の違いについてわかりやすく解説します。さらに、「持ち家」と「賃貸」の場合でそれぞれ留意するべきポイントや検討するべき特約についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
家財保険とは?
火災保険は、火災や風災、水災などの自然災害や盗難などによって「建物」や「家財」などに生じた損害を補償する保険です。「建物」だけではなく、家具や家電製品などの「家財」に対しても補償をつけることができますが、この家財補償のことを「家財保険」と呼びます。
家財保険は火災保険とどう違うか
火災保険の補償対象は「建物」と「家財」の2つにわかれており、それぞれ別々に保険金額を設定して契約することとなります。
一般的に火災保険では「建物のみ」「家財のみ」「建物・家財の両方」の3つのパターンから補償対象を選ぶことができ、家財保険は火災保険に含まれる保険と考えることができます。火災保険の補償の対象を「建物のみ」とした場合には、家財は補償されません。
したがって、家財保険に加入していない「建物のみ」の状態だと、万が一、火災の被害に見舞われて家財が大きな損害を受けたときに家財の買い替え費用はすべて自己負担となります。
なお、火災保険におけるおもな補償対象については、以下の表のとおりです。
火災保険のおもな補償対象
補償範囲 | 補償対象 |
---|---|
建物のみ |
|
家財のみ |
|
建物・家財の両方 | 建物のみ、家財のみの補償対象をトータルでカバー |
※補償対象は保険会社や契約内容によって異なります。
■物件が「賃貸」か「持ち家」かで変わる
戸建て住宅や分譲マンションなどに住んでいる場合は、火災保険の対象を「建物のみ」「家財のみ」「建物・家財の両方」の3つから選ぶことができます。一方、賃貸マンションなどの賃貸物件に住んでいる場合には、建物部分の火災保険はオーナーなどの所有者が契約するため、入居者は「家財のみ」の保険に加入することが一般的です。
家財保険ではなにが補償される?
家財保険に加入にしていた場合、火災や自然災害などで家財が損害を受けたときに保険金が支払われますが、家財保険に加入していれば、あらゆる家財の損害に対し補償が受けられるわけではありません。
以下で、家財保険における補償内容や補償対象についてわかりやすく解説します。
家財保険の補償内容
建物や家財を対象とする火災保険では、以下の表にあるような事故によって生じた損害に対して保険金が支払われます。火災による損害だけでなく、自然災害による損害や盗難による損害などさまざまなものが補償内容に含まれます。
火災保険に加入するときには、これらの補償内容のうち必要な補償を選ぶことができます。どの補償を選択できるか、火災以外の災害についても家財保険で補償されるのかなど各保険会社で異なる場合がありますので、事前に確認しましょう。
たとえば、台風により契約している建物が床上浸水になり、家電製品が使えなくなったとします。たとえ家財保険に加入していたとしても、対象とする災害に水災を含めていないときは、補償を受けることができません。
火災保険のおもな補償内容
補償内容 | 補償される一例 |
---|---|
火災 | 失火やもらい火による損害 |
落雷 | 落雷による火災や電化製品などの損害 |
破裂・爆発 | ガス漏れなどによる爆発や火災など、破裂や爆発による損害 |
風災・雹(ひょう)災・雪災 | 台風や雹(ひょう)・大雪などによる損害 |
水災 | 台風や大雨などにともなう洪水・床上浸水などによる損害 |
建物の外部から物体の衝突など | 物件への自動車の衝突、石・ボールなどの衝突など、建物外部からの物体による損害 |
水濡れ | 上階からの水漏れや配管の設備の故障で水浸しになるなど、水漏れによる損害 |
騒擾(じょう)・労働争議 | 騒擾(じょう)や集団行為にともない物件が壊されるなど、破壊行為や暴力による物件の損害 |
盗難 | 盗難にともなう盗取・汚損・損傷による損害 |
不測かつ突発的な事故 | 自宅で起きた、故意ではなく突発的な事故による損害 |
※保険会社や契約内容によって異なる場合があります。
家財保険の補償対象になる家財の種類
自然災害などによって家財に損害を受けた場合でも、必ずしも補償を受けられるとは限りません。家財保険において補償を受けられる家財とは、基本的には「家の中にあるもの」と「敷地内にある」ものに限られます。
たとえば、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの家電製品、衣類、カバン、アクセサリー、食器などの日用品、ゲーム、本、CD、運動グッズなどの趣味の持ち物などは対象になると考えられます。
■家財保険の補償対象にならない家財もある
家の中や敷地内である家財であっても、以下のように家財保険の補償対象にならないものもあります。
【家財保険の補償対象にならないもの】
- 通貨※1
- 有価証券
- 預貯金証書※1
- 印紙
- 切手
- クレジットカード
- プリペイドカード
- 電子マネー
- プログラム
- データ
- 自動車※2
- その他これらに類するもの
出典:一般社団法人 日本損害保険協会「損害保険Q&A」より抜粋
※1 通貨や預貯金証書については、建物に収容されている場合の盗難リスクのみ補償対象としている商品もあります。
※2 敷地内に止めていたとしても、自動車は家財保険で補償を受けることはできません(自動三輪車および自動二輪車を含み、総排気量が125cc以下の原動機付自転車を除く)。
■保険証券に記載しないと補償対象にならない「明記物件」
貴金属・宝玉・宝石・書画・骨董(とう)・彫刻物その他の美術品のうち、1個または1組の価額が30万円を超えるものは、保険証券に明記されていなければ、補償の対象にならない場合があります。これを「明記物件」といいます。これらを家財保険の対象にするためには契約時に手続きを行うことが必要となります。
「賃貸」と「持ち家」、それぞれで検討したい特約とは?
前述のとおり、家財保険は、持ち家に住んでいる場合だけでなく、賃貸住宅に住んでいる場合にも加入することができます。加入にあたっては、火災や自然災害、盗難などの基本的な補償以外にも、特約(オプション)としてセットできる補償があります。
しかし、特約は「賃貸」と「持ち家」では、それぞれ適した特約が異なります。以下で、具体的にみていきましょう。
「賃貸」の場合に検討したい家財保険の特約とは?
火災や自然災害、盗難などの基本的な補償以外にも、特約としてセットすることができる補償があります(賃貸物件に入居する際には、賃貸用の火災保険に加入することが入居の前提になっているケースもあり、すでにセットされていることもあります)。
賃貸住宅で家財保険に加入するときには、以下の4つの補償を検討するとよいでしょう。
- 借家人賠償責任特約
- 個人賠償責任特約
- 修理費用補償
- 携行品損害特約
■借家人賠償責任特約
借家人賠償特約とは、貸主である大家に対する賠償責任費用を補償するものです。契約者である借主の過失によって借りている部屋に損害を与えてしまった場合には、大家に対して法律上の損害賠償責任を負います。
たとえば、火災や漏水などで住宅や設備が損壊してしまった場合など、原状回復をして退居することが求められます。借家人賠償特約がある場合、このようなケースで補償を受けることができます。
■個人賠償責任特約
個人賠償責任特約とは、日常生活において、偶然な事故により法律上の損害賠償責任を負担することにより被った損害を補償するものです。
たとえば、部屋の水漏れが原因で下階の部屋に被害を生じさせてしまった場合などに個人賠償責任特約がある場合、補償を受けることができます。
なお、契約者本人だけでなく、家族が賠償責任を負うリスクにも備えることができます。
■修理費用補償
修理費用補償とは、大家に対しての損害賠償責任はないものの、賃貸借契約上で借主が費用負担するものと定められている場合に自己負担した修理費用のことです。
たとえば、「空き巣によって玄関の鍵を壊され、ドアの鍵が閉まらない状態になってしまったが、賃貸借契約では玄関の鍵は入居者が修理することになっていたため修理を行った」などの場合に補償を受けられることがあります。
■携行品損害特約
家財保険に、携行品損害特約をセットすると外出先に持ち出した家財が、突発的な事故で損害が生じた場合でも補償されます。補償される金額の上限や自己負担額は、保険会社や保険商品によって異なりますので、補償対象の範囲や保険金額について、事前に確認しておきましょう。
「持ち家」の場合に加入すべき家財保険の特約とは?
持ち家に住んでいる場合に家財保険に加入しているときは、次の2つの特約を検討するとよいでしょう。
- 個人賠償責任特約
- 携行品損害特約
■個人賠償責任特約
個人賠償責任特約で補償がされるのは、住宅関連のトラブルだけではありません。ペットの犬が噛みついて他人をケガさせたときや、自転車走行中に通行人にぶつかってケガを負わせたとき、住宅の塀が倒れて通行中の車を傷つけたときなどにも適用されます。
■携行品損害特約
携行品損害特約も、賃貸住宅に住んでいる場合と同様に検討するとよいでしょう。被保険者が外出中に持ちだしている携行品(バッグやビデオカメラなど)に、不測かつ突発的な事故で生じた損害が補償されます。
家財保険に加入する際の注意点
ご自身の家財を守るために必要な家財保険ですが、加入時に注意したいポイントとして、次の2点を紹介します。
- 明記物件はあらかじめ申告する
- 適切な保険金額を設定する
必要な補償を受けられるように注意して保険を契約しましょう。
明記物件はあらかじめ申告する
前述のとおり、1個または1組の価額が30万円を超えるものは、「明記物件」として、あらかじめ申告し保険証券に明記されていなければ、補償の対象にならない場合があります。
そのままでは家財保険による補償を受けられませんので、家財保険の補償を受けたい場合には明記物件として契約時に申告することを忘れないようにしましょう。
なお、保険会社によっては、契約時に明記しなくても補償の対象とする商品もあります。たとえば、1個または1組の損害額が30万円を超える場合はその損害額を30万円とみなしたり、1回の事故につき限度額(合計100万円や300万円など)を設けたりするケースもあります。
適切な保険金額を設定する
家財保険は、保険金額によって保険料が変わります。保険金額を高く設定すると、万が一火災や自然災害などで家財が損害を受けたときにも安心ですが、その分、保険料も高くなり負担も大きくなります。
適切な保険金額がいくらなのかについては、ライフスタイルや家族の人数、各家庭にどれだけの家財があるかによって大きく異なります。火災保険の保険金額は、損害を受けた家財と同等のものを新たに購入するために必要な費用を計算し、決めていくことが決めるのがおすすめです。多くの保険会社は年齢や家族構成などで保険金額の目安を提示しているため、それらも参考にするとよいでしょう。
■地震による損害は地震保険で備える
火災保険に加入し、家財保険をセットしている場合でも、地震や津波による家財への損害は補償されません。地震や津波による家財への損害にも備えたいときは、火災保険に加えて地震保険に加入する必要があります。
地震保険も火災保険と同様、家財の保険金額の30%~50%の範囲内で設定できるため、適切な金額に設定しましょう。なお、家財の保険金額は1,000万円を限度額としています。
なお、地震保険は単体では加入できません。火災保険に加入した場合のみ、同一保険会社で、同一物件を対象とした地震保険に加入することができます。
まとめ
家財保険は火災だけでなく、台風や豪雨などの自然災害や盗難や日常的な事故、賠償責任まで、さまざまなリスクから「家財」を守る保険です。
「家財保険は本当に必要?」「建物の補償があれば大丈夫なのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、実は、家の中には思っているよりも多くの家財があり、万が一それらをすべて失ってしまうと大きなダメージを負う可能性があります。そのような場合に家財の再調達を容易にするためにも、火災保険に家財保険をつけることをおすすめします。火災のみならず、自然災害による損害で家財を失ったときにも、自己負担額を減らして早期にもとの生活に戻ることができるでしょう。
なお、家財保険に加入したときの保険料がどのくらいになるのか気になる場合は、「建物のみ」と「建物と家財の両方」の場合の保険料を比較してみたり、保険金額を低めに設定した場合でシミュレーションしたりすることをおすすめします。比較サイトを活用すると、複数の家財保険をまとめて比較できるため、必要な補償を選びやすいでしょう。
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監修者情報
ファイナンシャルプランナー 生川 奈美子
株式会社アスト 代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、相続診断士、終活カウンセラー、住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター。大手生命保険会社に12年勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。2007年に株式会社アストを設立。現在、「わくわくの明日と共に」をモットーに、子育て世代、リタイア世代のライフプラン作成や家計相談、相続相談などのコンサルタントとして活動中。また、各種マネー講座の講師や執筆も担当。2015年度金融知識普及功労者として金融庁・日本銀行から表彰を受ける。
- 資格情報
- ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、相続診断士、終活カウンセラー、住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年6月20日)
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