地域によって気をつけたい犬や猫の病気とは?
犬や猫がかかる病気は、地域によって差はあるのでしょうか?地域差がある病気として感染症がありますが、具体的にどんな病気で、どのように気をつけたら良いのでしょうか。今回はそれらの病気についてわかりやすくお話しします。
地域によって犬や猫が気をつけたい病気って?
犬や猫を飼ううえで気をつけたい病気はさまざまあると思います。
その中でも"地域によって" 気をつける病気に違いはあるのでしょうか。
犬猫に限らず人においても気候の違い、季節の違いなどで発生する病気は違います。
とくに日本は南北の緯度の差や、四季の温度差があるので地域差が大きいです。
ではどういった違いがあるのでしょうか。とくに地域差がある病気として感染症を中心にお話します。
地域ごとに気をつけたい犬や猫の病気①フィラリア症
最初はフィラリア症(犬糸状虫症)です。
フィラリア症は、蚊を媒介して感染する寄生虫症です。
犬や猫が蚊に刺された際には、感染する可能性があります。
感染した場合、フィラリア幼虫が成長する前にしっかり予防薬を飲んでいれば、駆虫(予防)に成功します。しかし、予防薬を飲んでない場合、心臓や肺に成長したフィラリア寄生虫が寄生し、大きな負担がかかります。治療には、犬では特殊な手術もしくは数年近くの継続投薬が必要になります。
動物病院で、フィラリア予防薬の説明を受けたことはみなさんあると思います。
フィラリア症は東京や神奈川でも今でもみられる病気です。
ではフィラリア症は "地域によって" 何に気をつけたらよいでしょうか。
実は気温によってフィラリア感染の期間が変わるので、予防薬の投薬期間が変わってきます。これは地域やその年の気温によって変わりますので、かかりつけの動物病院でいつまで投薬するのかをしっかり聞いてください。
とくに最後の投薬はとても大事なので、夏が終わり蚊をほとんどみないから大丈夫と自己判断で止めないようにしてくださいね。
最近は温暖化の影響もあり、通年で投薬していくことも世界的に推奨されてきています。
また猫もフィラリア症に感染します。
犬よりも感染リスクは低いですが、猫の体内でフィラリア寄生虫が成長していくと、犬よりも治療が難しいことが多く、突然死や重篤な呼吸器症状を起こす可能性があります。
マンション飼育でも感染した例がありますので猫も予防をしていきましょう。
地域ごとに気をつけたい犬や猫の病気②レプトスピラ症
次はレプトスピラ症です。
レプトスピラ症は細菌感染症で、とくに犬で問題になります(猫は発症することが少ないですが、感染経路になる可能性はあります)。
多くは不顕性感染(感染しても病気を発症しない)ですが、発症した動物は、元気食欲の低下、下痢嘔吐、出血性黄疸、腎機能障害、肝機能障害など命にかかわる重篤な症状になることもあり、また人にも感染する人獣共通感染症としても怖い病気です。
レプトスピラ症は西日本を中心に暖かい地域でみられることが多いですが、静岡や千葉、東京など東日本の各地でも発生しています。
野生動物の尿から感染する病気で、淡水や泥地など山や川辺での感染に注意が必要です。またこの病気に感染している犬同士でも感染します。近年はドッグランなどでも市中感染がおきているので注意が必要です。
混合ワクチンの接種で予防できる病気ですので、アクティブにおでかけする子は混合ワクチンの接種のときにレプトスピラも一緒に予防をお願いします。
地域ごとに気をつけたい犬や猫の病気③エキノコックス症
エキノコックス症は寄生虫感染症です。キタキツネのイメージですね。
野ネズミを食べた動物(キツネ、犬にも)に感染します。
犬や猫がこの病気で症状が出ることは少ないですが、感染した犬猫は糞便にエキノコックスの虫卵を排泄し、人に感染するリスクとなります。人に感染すると肝臓に寄生し10年以上の潜伏期間ののちに重篤な症状を引き起こします。
北海道の病気のイメージでしたが、近年、愛知県の知多半島で犬のエキノコックス症が報告されています。
対策は、感染したネズミを犬や猫が食べると感染するため、放し飼い・外飼いにしてネズミを食べないようにすること。感染した可能性があるならば動物病院で検査・駆虫をおこなう。便で汚染された可能性のある水は煮沸してから、野菜・果物はよく洗ってから食べるなどの注意が必要です。
地域ごとに気をつけたい犬や猫の病気④ノミ・マダニ
ノミは約2mmのサイズの外部寄生虫で犬猫の皮膚を這い回ります。
吸血すると、皮膚炎を起こしたり、大量の寄生時には貧血を引き起こしたりすることもあります。
マダニは吸血前には5mm前後のサイズですが、吸血後は腹部が膨れて2cm前後に大きくなります。顔周りなどの皮膚にマダニが噛み付いている犬猫はよく来院します。
ノミやマダニが寄生してしまったときは無理にとろうとせず、かかりつけの動物病院にご相談ください。
ノミ・マダニも気温によって活動性が変化します。
暖かいときに活発になるので暖かい地域はノミ・マダニの予防がより重要になります。
意外に都心の公園でもマダニに噛まれる犬はいますし、屋内飼育の猫にも縁側やベランダの植木や植物から入ってきたのかノミが寄生してしまった子も診察した経験があります。
最近では昔からの薬剤に対する耐性をもつノミも報告されています。
暖かい季節の予防はもちろんですが、動物病院で処方された予防薬の使用をあらためておすすめします。市販の予防薬もありますが、できるだけ動物病院で診察を受け、症状にあった薬を動物病院で処方してもらいましょう。
近年、ニュースにもとりあげられ注目されているマダニ媒介の病気としてSFTS(重症熱性血小板減少症候群)があります。この病気は西日本での発生が多いことが知られています。
また感染猫の致死率は約70%といわれ、犬や人でも致死率が約30%との報告があります(2019年現在)。
衰弱した感染猫に噛まれた女性が亡くなったり、直接噛まれたりひっかかれたりしていない獣医師が感染した例もあります。こういった地域では外に出てマダニに接触する可能性のある動物をさわるときには不注意にさわらないよう気をつけてください。
地域ごとに気をつけたい犬や猫の病気⑤内部寄生虫
体の中に寄生する寄生虫を内部寄生虫といいます。
腸管内に寄生する寄生虫が問題になることが多く、下痢や嘔吐などの症状が一般的です。
地域によっては腸以外にも肺や肝臓などに寄生する虫もいます。
それらの寄生虫は咳などの呼吸器症状や、肝障害が出ることもあります。地域によっては、そういった寄生虫をみることが少ないので、犬猫を連れて地方に旅行した後に体調をくずしたときはかかりつけの先生にしっかりと報告しましょう。
感染経路は便に汚染された土壌や草だったり、川魚、貝、カエル、ヘビ、ネズミなどを食べたりすることで感染します。
外を出歩く猫はとくにですが、お散歩や外で遊ぶ犬も感染リスクがあります。
動物病院で処方されるフィラリアの予防薬を飲んでいれば、一緒に予防される寄生虫も多いですが、少し珍しい寄生虫に感染した場合はその寄生虫に対する専用のお薬が必要になることもあります。
地域ごとに気をつけたい犬や猫の病気⑥狂犬病
地域によって気をつけたい病気として、日本では発生はありませんが、狂犬病は依然としてとても重要な病気です。日本、英国、オーストラリアなど一部の国を除き、ほとんどすべての国でこの病気は存在しています。すべての哺乳類に感染するこの病気は、発症するとほぼ100%の致死率の最悪の病気のひとつとして知られています。
狂犬病という名前ですが、すべての哺乳類に感染します。
感染動物に咬まれることで感染します。
症状は約2〜3週間の潜伏期間の後に、異常な攻撃性、沈鬱、流涎、麻痺などの神経症状がみられ、その後麻痺が全身性に進行し死に至ります。
外国に渡航するときには、すべての動物にむやみにさわらないことがとても大事です。
動物に噛まれた際にはただちに医療機関を受診し暴露後ワクチン接種など適切な治療が必要です。日本での感染はありませんが、2020年にフィリピンから帰国した男性が日本国内で発症し死亡した例があります。
日本は島国なので、他の国に比べると狂犬病が入ってくる可能性は低いですが、コロナウイルス感染症やヒアリなど、日本に今はない病気や動物が入ってきてしまう可能性はゼロではありません。
日本での犬の飼育は、法律で年1回の狂犬病ワクチンの接種が定められているということもありますが、万が一、狂犬病が日本に入ってきたときにも拡大を防ぐためにワクチン接種での集団免疫の獲得は公衆衛生学的にもとても重要です。
まとめ
「犬、猫の地域によって気をつけたい病気について」というテーマで、いくつかの病気をお話しました。
今回のこのお話で地域別の病気を網羅することはもちろんできません。
その地域の病気については、その地域の動物病院の先生が一番精通しています。
大事なことは、かかりつけの先生にしっかり相談し、しっかりと予防をおこなうこと。また調子が悪いときには検査をして、治療してあげてください。
基本的なことですが、とくに外に出る動物にさわった後に手を洗うこともとても大事です。特別な消毒ではなくていいので石鹸での手洗いも忘れずにおこないましょう。
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ライター情報
獣医師多田大輝
- 所属
- オハナペットクリニック
- 略歴
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1988年 東京都に生まれる
2008年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
2015年 獣医師国家資格取得
2015年〜2020年 神奈川県内動物病院に勤務
2020年〜2021年 東京都内動物病院に勤務
2021年〜 千葉県内動物病院に勤務
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(掲載開始日:2024年1月23日)
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