猫が異物誤飲してしまったら?食べてはいけないものや対処方法を解説
動物病院の来院理由としてもよくみる「異物誤飲」。猫にとって毒となる食材を食べてしまった場合や、消化できず消化管に詰まると危険なものを飲み込んでしまった場合など状況は様々です。何をいつ頃飲み込んだのかによって、緊急性や対処法は異なります。食べると危険なものや、万が一飲み込んでしまった場合の対処方法を解説いたします。
「異物誤飲」とは?
「異物誤飲」とは本来食べるべきではないものを飲み込んでしまうことをいいます。
人間が食べても問題がない食べ物でも猫にとって危険なものや中毒を引き起こすものを飲み込んでしまったときに「異物」として扱われます。
「異物誤飲」は飼い主さんの日頃の対策で防ぐことのできるトラブルです。誤って飲み込んでしまうような状況を作らないように対策・工夫することが大切です。食べると危険なものは、猫の手が届かない場所に片づけておきましょう。
猫が食べると危険なもの
果物
・レーズン・ぶどう
急性腎不全を引き起こします。少量の摂取でも死に至るケースがあるため決して与えないでください。
・イチジク
中毒により口の中や唇に炎症を起こしてしまうことがあります。最悪の場合、死に至ることもあるため要注意です。
野菜
・ネギ類(ネギ・タマネギ・ニラ・ニンニク・ラッキョウ)
ネギ類には有機硫黄化合物という成分が含まれており、これが赤血球の膜や内部に影響を与え、赤血球を破壊し、重い貧血、血尿や消化器症状を引き起こします。
加熱してもこの成分は消えないため、お味噌汁に含まれるネギのエキスや、ハンバーグに含まれるみじん切りのタマネギ、魚肉ソーゼージに含まれるタマネギなどにも注意しましょう。
魚介類
・イカ・タコ・カニ・エビ・貝類
チアミナーゼという酵素が含まれ、ビタミンB1を分解してしまいます。ビタミンB1の不足が続くと欠乏症となり食欲低下、嘔吐、けいれん、歩行困難などの症状が現れます。
チアミナーゼは熱を加えると消滅するため、与える際にはしっかり加熱し、少量を与えるようにしましょう。
・あわび・サザエ
肝臓に含まれる「フェオホルバイト」という成分は強い光に反応して炎症を引き起こします。特に毛が薄く、日光にさらされやすい猫の耳は症状が出やすく、光線過敏症により腫れ、壊死してしまうことがあるといわれています。
嗜好品
・チョコレートやココア
カカオに含まれている成分「テオブロミン」で中毒を起こし下痢、嘔吐、けいれんなどを引き起こします。ときには命にかかわることもあるため、欲しがっても与えないでください。ダークチョコレートはミルクチョコレートに比べて含有成分量が多いためとくに注意が必要です。
・コーヒー・紅茶・緑茶・エナジードリンク
「カフェイン」による中毒で神経症状や心臓に悪影響を及ぼすことがあります。
・アルコール類
猫はアルコールの分解が上手くできません。少量の摂取でも嘔吐や下痢、異常行動に繋がり、最悪の場合死に至るため与えないでください。
そのほかに猫が誤飲しやすいもの
・ユリ科植物
急性の腎不全を引き起こします。ユリの毒性は茎・葉・花粉すべてに含まれており、花瓶に入っていた水も要注意です。
・糸
長いものを好む猫は、糸や毛糸で遊んでいる間に飲み込んでしまうことがあります。消化管の中で引っかかり、傷つけたり詰まったりした場合に、腸に穴が開くおそれがあるため取り出すための手術が必要になります。
・魚や肉の骨
飼い主さんが食べ終えた魚や肉の骨は、飲み込んだときに喉や食道を傷つけるおそれがあります。
・竹串
焼き鳥やお団子の串、割りばし、爪楊枝のような細長いものや先端が尖っているものは、飲み込むと喉や消化管を傷つけてしまうため要注意です。
・食品トレー
大きさや量次第では、腸に詰まり腸閉塞を引き起こします。ラップも消化できず詰まるおそれがあるため要注意。
猫が誤って食べないための対策法
猫は犬に比べてしつけが難しいといわれています。一般的に、犬は悪いことをしたら叱り、ちゃんとできたら褒めることでしつけができますが、猫の場合には、叱ったり大声を出したりすることは逆効果になってしまいます。
飼い主さん側が問題行動だと思う行動でも、猫にとっては普通の行動であることが多いため、叱られても意味が理解できません。叱りすぎると、飼い主さんを「嫌なことをする人」と判断し、飼い主さんを嫌いになり心を閉ざしてしまうこともあるため要注意です。しつけるよりも、盗み食いする状況を作らないように対策・工夫することが大切です。
買ってきた食品はすぐにしまう
猫が好みそうな食品はすぐに冷蔵庫や扉がついた棚の中にしまいましょう。
使用済みの食品トレーや串などはすぐに処理する
危険なものは速やかに、猫の手が届かない場所に片づけましょう。食べた後の食器類は置きっぱなしにせず、できればすぐ洗いましょう。
蓋がついたゴミ箱を準備
ゴミは、蓋がしっかり閉まり、猫が簡単に開けられないゴミ箱に捨てましょう。
人の食事中は食べ物を見せないようにする
人の食事中に机や膝に乗ったらすぐ下におろし、猫に構わないようにしましょう。また、人の食事中は猫を別室やケージに移し、食べ物をなるべく見せないようにするのもひとつの方法です。
猫の異物誤飲が疑われる場合には速やかに動物病院を受診
飼い主さんが目を離した隙に、食べてはいけないものを飲み込んでしまう子もいます。
以下の症状がみられたら、異物を誤飲したり、何かしらの病気を隠れていたりする可能性があります。早めに動物病院を受診しましょう。
【こんな症状には要注意!】
- 頻繁に嘔吐している
- 吐こうとしているが吐けない
- 口をくちゃくちゃしている
- よだれが多く出ている
- 食欲がない
- 口を開けたり閉じたりを繰り返している
猫が異物誤食をした場合の病院での対処方法
猫が異物誤飲をした場合、どの治療法を選択するかは、獣医師が総合的に判断します。
食道内の異物
胃まで行かずに食道内に異物が詰まっている場合は緊急処置が必要です。食道内に異物がある状態が続くと食道に穴が開いたり狭窄したりと非常に危険な状況につながるため、疑わしい場合は可能な限り早い動物病院の受診をしましょう。
早期発見ができれば緊急内視鏡手術などで対応できます。
胃内の異物
胃内の異物がある場合、症状は悪心や食欲不振、激しい嘔吐を起こすこともあれば、無症状のこともあります。胃内に異物があるのであれば、無症状であっても摘出する必要があります。治療は、以下の方法です。
・催吐処置
食べてから時間があまりたっていない場合、催吐剤を注射し、胃の内容物を吐かせます。中毒を起こす食べ物を食べてしまった場合にも、飲み込んでから時間が浅い場合にはこの処置をおこないます。
一方、竹串や針などの先端が尖っている異物は吐き出す過程で体内に刺さって穴を開けてしまう危険があるためこの処置はおこないません。
・開腹手術
全身麻酔下で開腹し、異物を摘出します。尖ったものなど消化管を傷つける異物でも摘出が可能な方法です。
・内視鏡を用いた異物摘出
全身麻酔をかけて胃に消化管用の内視鏡を挿入し、異物を摘出します。全身麻酔が必要ではありますが、異物が小さく、内視鏡が届く範囲にある場合には安全に摘出でき、開腹せずにすむため犬や猫本人の負担が少なくすみます。
腸での閉塞/穿孔(せんこう)
異物が胃から小腸へ流れた場合、閉塞を起こす危険性があります。腸閉塞を起こしてしまったとしても早期に診断、手術ができればほとんどの場合で良好な結果が期待できます。
しかし、閉塞したものの大きさや形状、閉塞してからの時間によっては消化管の血管の血行障害が起こり、一部に穿孔(穴が開くこと)や壊死が起こることがあり、その結果細菌性腹膜炎を併発してしまうと、緊急で開腹手術をしても命を助けられない場合があります。
その他
異物があるかの判断が難しい、食べた量が少なく危険性が低いなどの場合は何もせずに便から排出されるか様子をみることもあります。
まとめ
猫の場合、異物誤飲をしないようにしつけるよりも、異物誤飲する状況を作らないように対策・工夫することが大切です。
食べると危険なものは、猫の手が届かない場所に片づけましょう。
どれだけ欲しがっても、猫にとって有害な食べものは絶対にあげないでください。
万が一食べてしまった場合には、すぐに動物病院を受診し相談しましょう。
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ライター情報
獣医師/ペット栄養管理士森井知里
- 所属
- yourmother合同会社
- 略歴
-
1992年 三重県に生まれる
2011年 麻布大学獣医学部動物応用科学科に入学
2013年 麻布大学獣医学部獣医学科に転学科、在学中、料理教室で講師を務める
2018年 獣医師国家資格取得
2018年 東京都内動物病院に勤務
2019年~2021年 千葉県内動物病院に勤務
2022年~2023年 東京大学附属動物医療センターで内科系研修医として勤務
2023年4月~ yourmother合同会社に勤務
- 所属学会
- 日本ペット栄養学会
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2024年1月23日)
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