猫のがんとは?おもな症状と予防方法、治療方法などについて解説
猫も人間と同じようにがんになります。
全身いたるところにがんができる可能性がありますが、猫にとくに多いのはリンパ腫と体表にできる腫瘍です。
この記事では、猫に多いがんのおもな症状と予防方法、治療方法などについて詳しく解説しました。
猫のがんとは?
腫瘍は、さまざまな原因により正常な細胞が変異することが原因で起こります。
腫瘍には良性と悪性があり、良性腫瘍の特徴は、増殖が緩やかで転移や全身に悪影響を与えることはほとんどありません。
反対に、悪性腫瘍は増殖スピードが早く、異常な細胞が周りに広がる、ほかの臓器に移る、外科手術や抗がん剤で治療しても再発しやすいなど臓器や生命に重大な影響を与えます。
猫のがんで多くみられるものは、リンパ腫、扁平上皮がん、乳腺腫瘍の3つです。
がんの治療は、早期発見が大切です。
しかし、皮膚の表面にできたしこりや膨らみ、治りにくい皮膚病など体表にできた病変はみつけやすいものの、身体の中にできたがんはなかなか気づきにくく、食欲不振や元気がなくなる、嘔吐や下痢が長引く、体重が減るなどの症状が出たときには病状が進行しているケースもあります。
また、リンパ腫は鼻腔内にもできることが多く、鼻汁、くしゃみ、鼻出血などの症状にも注意が必要です。
猫に多いがんの原因と症状
リンパ腫
リンパ球は白血球の一種で、ウイルスなどの病原微生物の侵入を防ぐ働きやがん化した細胞やウイルスに感染した細胞を破壊するなど、身体の免疫機構の大部分を受け持っている細胞です。
リンパ腫は、このリンパ球が色々なところでがん化して起こります。
また、発生する場所や特徴などにより多様な型に分類され、同じリンパ腫でも型によって症状や治療の反応、予後は異なります。
リンパ腫のうち、腸にできる消化管型が最も多くみられ、おもな症状は嘔吐や下痢、食欲不振です。
ほかに、1歳以下の猫で多くみられる体表のリンパ節が腫れる多中心型、胸腺や前縦隔リンパ節が腫れて呼吸困難や胸水がみられる前縦隔型、リンパ節以外の場所(鼻腔内や腎臓、脳や脊髄等の中枢神経、皮膚、眼球など)にできる節外性リンパ腫があります。
リンパ球は全身を巡っていて1ヵ所でリンパ腫がみつかると全身に転移している可能性があるため、型の違いに関わらず治療は抗がん剤治療をおこなうことが基本です。
また、発生部位によっては放射線療法や外科治療が適用になる場合もあります。
リンパ腫は、基本的に抗がん剤治療に対する反応は良好ですが、いったん症状が治ったかのようにみえても再発を繰り返し完治することはありません。
無治療の場合の平均余命は1~2ヵ月といわれています。
扁平上皮がん
扁平上皮がんは、皮膚の細胞のひとつである扁平上皮細胞に発生します。
扁平上皮細胞がある場所であればどこにでもできる可能性がありますが、できやすい場所は耳や鼻、口腔内などで、猫の口腔内腫瘍のうち60%以上が扁平上皮がんだといわれています。
また、皮膚に発生する場合は白系の猫に多くみられます。
扁平上皮がんの原因の詳細は不明ですが、遺伝的な要因と、紫外線や日光、ノミ除け首輪、タバコの煙などの環境的な要因が考えられており、数か所に渡って病変ができる多中心性表皮内扁平上皮がんはパピローマウイルスが関与しているといわれています。
扁平上皮がんは、遠隔部位への転移は比較的少ない腫瘍ですが、顔面にできたものは顎下リンパ節等に転移するケースもあります。
潰瘍やただれ、カリフラワーのように盛り上がる病変ができるため、皮膚などわかりやすい場所に出た場合気づきやすい腫瘍ですが、口腔内にできた場合は気づきにくく、とくに高齢猫で口の中の潰瘍性の病変がなかなか治らないケースや口臭が強くよだれが多いなどの症状がある場合は注意が必要です。
治療は、外科手術をおこない取り切れれば予後は良好なことが多い腫瘍ですが、上顎・舌・喉頭・咽頭など手術で取り切れない場所にできた場合は、色々な治療をおこなっても1年生存率は10%以下で予後不良です。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍には悪性と良性がありますが猫の場合はほとんどが悪性腫瘍で、猫の腫瘍全体の8.2%~40%を占めるといわれています。
乳腺腫瘍の原因は、性周期に伴う性ホルモンの変動が関わっていると考えられています。
また、10歳~12歳の高齢の雌猫に多くみられますが、若齢の猫や雄猫にも発生します。
品種ではシャム、アビシニアン、オリエンタルショートヘア、ソマリなどが乳腺腫瘍になりやすく、とくにシャムは若齢での発生が多い(9歳で発生のピークを迎える)ことで知られています。
初期症状は、胸部や腹部の皮膚の表面に小さなしこりができる(複数できる場合が多い)ことですが、猫は無症状の場合がほとんどでみためだけで発見することは困難です。
病状が進行すると、しこりの数が増える、しこりがどんどん大きくなって自壊する、肺に転移して呼吸が苦しくなるなどの症状がみられます。
治療は、外科手術が第1選択です。
乳腺にできたしこりがたとえ1ヵ所でも、猫の場合はほとんどが悪性でリンパ管を通じて肺に転移しやすいことから、乳腺を片側もしくは両側全摘出することが推奨されています。
しかし、すでに肺転移していて健康状態が悪い場合や高齢で手術ができない場合もあり、さらに手術をして補助的に化学療法をおこなっても根治は難しく予後不良のケースが多いといわれています。
しかし、早期発見して手術すれは長期生存ができる可能性があるため、普段から愛猫の身体を触る習慣をつけて、少しでも気になる膨らみやしこりをみつけたらすぐに動物病院を受診しましょう。
猫のがんの治療方法
猫のがんは、外科治療、化学療法(抗がん剤)、放射線治療でおこないます。
また、2つ以上の治療法を組み合わせて治療するケースもあります。
どの治療方法を選択するかは、がんの性質(転移しやすいかなど)やがんの進行度合い、がんができている場所、猫の体調などを踏まえて決めますが、飼い主様の考え方や要望も治療方法を決める上で非常に重要なポイントです。
がんの予防方法はある?
がんを完全に予防することは不可能です。
しかし、がんの原因と考えられることを避けることで、ある程度の予防効果は期待できます。
具体的な対策は、室内飼いをする、早期(1歳になる前)に不妊手術をする、紫外線を避ける、猫のいる場所でタバコを吸わないなどで、さらに猫に強いストレスがかからないように住環境を整えることも大切です。
また、定期的な健康診断はがんの早期発見につながるため、とくに腫瘍ができやすくなる7歳以降は少なくとも1年に1回は血液検査や尿検査、エコー検査などの健康診断を受けるようにしましょう。
まとめ
猫のがんは早期発見と早期治療が大切です。
体表にできるがんが比較的多いので、毎日愛猫の身体を触ってしこりや膨らみがないか、耳や口の周りに皮膚病変がないかをチェックするとともに、食事量や飲水量、体重の変化に気をつけましょう。
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ライター情報
獣医師大熊真穂
動物病院で臨床獣医師として勤務しながら、専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信しています。ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」ことです。
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(掲載開始日:2023年12月26日)
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