猫がかかりやすい病気について
愛猫が元気で過ごすためには、体調の変化に早く気づいて対処することが大切ですが、普段と違う変化とはどのような症状でしょうか。
この記事では、猫がかかりやすい病気によく見られる症状、病気になったときの治療方法と予防対策を詳しく解説します。
猫がかかりやすい病気ベスト3は?
国内大手のペット保険会社2社のデータによると、猫がかかりやすい病気は、大別すると以下の3つです。
- 消化器疾患
- 泌尿器疾患
- 皮膚疾患
猫の消化器疾患
消化器とは食べ物が口に入ってから排泄されるまでの器官で、消化器疾患とは食道や胃、腸など消化器系の病気のことを表します。
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猫の消化器疾患によくみられる症状
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消化器疾患によくみられるのは以下の症状です。
- 下痢
- 嘔吐
- 食欲不振
- 元気がなく寝てばかりいる
- 体重が減ってくる
- 背中を丸めてうずくまっている
- 腹部膨満
消化器疾患の原因は、消化不良など治療すればすぐに治るものから、腫瘍や異物誤飲など命に関わるものまでさまざまです。
消化器疾患のなかで多い症状は下痢といわれています。下痢とは、便の水分含有量が増えたり排便回数が増えたりすることをいいます。
下痢は、見た目でわかりやすく気づきやすい症状ですが、排便回数や便の性状には個体差があります。
愛猫の普段の排便回数や便の状態を確認しておきましょう。
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猫の消化器疾患の治療方法
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消化器疾患が疑われる場合は、問診・聴診・触診などの一般検査をおこない、症状によって糞便検査・血液検査・レントゲン検査・エコーなどの検査をおこないます。
治療は、症状に合わせて抗生物質・下痢止め・制吐剤の投与、点滴治療などの内科治療をおこなうことが一般的ですが、異物や腫瘍が疑われる場合は内視鏡検査や開腹手術をおこないます。
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猫の消化器疾患の予防対策
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腫瘍などの重篤な消化器疾患を完全に予防することは不可能です。しかし、食事の管理をすることで、消化器疾患に対してある程度の予防効果は期待できます。
具体的な食事管理方法は以下の3つです。
- 食べすぎを防ぐために食事やおやつは量を決めて与える
- 食事は好きな時に好きなだけ食べさせる「置きエサ」ではなく時間を決めて与える
- 異物誤飲を防ぐために食べ物や猫が食べそうなものを置きっぱなしにしないようにする
食事を管理することは、消化器疾患の予防だけではなく、多くの病気のリスクを高める肥満や過体重を予防することにもつながります。
猫の泌尿器疾患
泌尿器とは腎臓から尿道までの、尿を作って体の外に排出するために働く器官のことで、泌尿器疾患とはそれらの病気のことを表します。
猫に多いのは、慢性腎不全(慢性腎臓病)と膀胱炎と尿石症などの下部尿路疾患です。
猫の慢性腎臓病は、加齢、ウイルス・細菌感染、腎炎などさまざまな原因が考えられていますが、猫特有の先天的な原因による一種の遺伝病であるという研究発表もあります。
膀胱炎の原因はおもに、マグネシウムなどのミネラル分のバランスが悪いフードを食べることで発症する尿石症や細菌感染などが考えられますが、「突発性膀胱炎」という原因不明の膀胱炎が5割以上を占めています。
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猫の泌尿器疾患によくみられる症状
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「尿を作り出し、排出する」働きにそれぞれトラブルが生じるため、以下の症状がみられます。
【尿を作り出す器官:腎臓のトラブル】
- 飲水量が増える
- 食欲がない
- 嘔吐する
- 寝てばかりいる
- 薄い尿をたくさんする
- 痩せてきて毛並みが悪くなる
【作り出された尿の通り道・一時的に貯めて体外に排出する器官:尿管・膀胱・尿道のトラブル】
- 何度もトイレにいく
- トイレの中で排尿姿勢をしたままでいる
- トイレ以外のところで排尿する
- 排尿姿勢をしているのに尿がほとんど出ていない
- 陰部を頻繁になめている
- 排尿時に痛がる・鳴く
- 血尿が出る
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猫の泌尿器疾患の治療方法
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泌尿器疾患が疑われる場合は、問診・聴診・触診などの一般検査をおこない、尿検査・血液検査・レントゲン検査・エコーなどの検査をおこないます。
尿路が完全に閉塞している場合は、急性腎不全を起こして命に関わる可能性があるため、カテーテルなどを用いてなるべく早く閉塞を解除する必要があります。膀胱炎や尿石症は、抗生剤や消炎剤の投薬、療法食に食事を変更するなどの治療をおこないます。
慢性腎臓病の場合は、血圧を下げて腎臓の働きを助ける薬や経口吸着剤の投薬、腎臓病用の療法食による食事の改善、輸液療法で水分を補うなどの治療により、残された腎臓の機能を維持して病気の進行を遅らせる治療が必要です。
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猫の泌尿器疾患の予防対策
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泌尿器疾患を完全に予防することはできません。
しかし、水分を十分に与えてバランスの良い食事を与えることや、血液検査や尿検査など健康診断を定期的におこなうことで早期発見が可能です。とくに、飲水量の変化に気づくことが病気の早期発見につながります。
愛猫の飲水量や尿量を毎日チェックしましょう。
猫の皮膚疾患
皮膚疾患とは皮膚に生じる病気のことですが、皮膚そのもののトラブルだけでなく、全身の病気に関わる問題が皮膚に見られる可能性が考えられます。
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猫に多い皮膚疾患の原因と症状
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猫の皮膚疾患はノミなどの外部寄生虫によるものから皮膚腫瘍など多種多様ですが、猫に多い一般的な皮膚疾患とその原因は以下の3つです。
①アレルギー性皮膚炎
ノミに噛まれた唾液に反応し、強いかゆみをともなうノミアレルギー性皮膚炎をはじめ、花粉やカビ、食べ物などに反応して脱毛する、赤くなる、湿疹ができる
②疥癬(ヒゼンダニ)の寄生による皮膚炎や痒み
③ニキビ(猫にきび・猫ざそう)
- 猫の舌が届かずグルーミングしづらく汚れやすいあごにできる
- 毛が抜けて湿疹・赤みが生じる
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猫の皮膚疾患の治療方法
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ノミや疥癬(かいせん)などの外部寄生虫が原因であれば駆虫することで、比較的早く治ります。
しかし、原因がはっきりしない場合や複数の原因がある場合は治療が長期にわたる場合も少なくありません。一般的には食事療法・抗生剤や消炎剤の投薬などの内科治療をおこないますが、内科治療の反応が悪い場合は、皮膚腫瘍の可能性もあるため皮膚生検を実施し、病理診断をおこないます。
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猫の皮膚疾患の予防対策
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屋外にでる飼育環境の猫は、ノミやヒゼンダニに感染する機会が多くなります。皮膚疾患を予防するためには、室内飼いをしたり、ノミやダニの予防をしたりするなどの対策が有効です。
まとめ
猫がかかりやすい病気は、消化器疾患、泌尿器疾患、皮膚疾患です。少しでも気になる症状がみられたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
また、病気を完全に予防することはできなくても、定期的な健康診断は病気の早期発見に有効です。
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ライター情報
獣医師大熊真穂
動物病院で臨床獣医師として勤務しながら、専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信しています。ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」ことです。
ドリトルけいのいぬねこ健康相談室- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年12月7日)
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