キャバリアについて深掘り!心臓や目の病気になりやすい?病態や治療法を知っておこう
ふわふわで大きな耳を持つ優雅で愛らしい姿と、人懐っこい性格から人気のキャバリア。
「心臓が悪くなりやすいというのはなんとなく知っている」という方も、どういった病態になりやすく、どのように治療するのかまではご存じないかもしれません。
また、心臓以外にも何かかかりやすい病気などはあるのでしょうか。
これからキャバリアをお迎えしようと検討している方にも、すでに飼われている方にも役立つ情報をお届けします。
キャバリアの歴史と特徴とは?
正式名称は「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」です。その祖先犬は、17世紀イギリス国王のチャールズ2世に寵愛された、宮廷の人気者だったようです。
長くて大きなたれ耳と脚にはふさふさとした飾り毛が豊富に生え、とても優雅な姿が特徴的です。温厚で明るい性格のため、非常に付き合いやすい犬種になります。体重はおよそ5kg~8kgほど、平均寿命は12歳前後とされます。毛色もブラック&タン、濃い栗色、濃い栗茶色、黄金色、ブラック・タン・ホワイトのトライカラーとさまざまな柄の子がいます。
太りやすい犬種のため、食事管理はきちんとおこなう必要があります。フードの量は計測し、体重も病院だけでなく家庭でも測るようにしましょう。
キャバリアのなりやすい病気①僧帽弁閉鎖不全症
心臓は大きく4つの部屋(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれており、全身に血液を送り出すポンプのような役割を果たしています。血液の流れは常に一方通行となっており、これは心臓の各部位に弁があり、血液が流れていった後に弁が閉じることで、血液の逆流を防いでいるためです。
キャバリアや、チワワのような小型犬では、中高齢になると左心房と左心室の間にある僧帽弁という弁が閉じ切らなくなることで、血液が一部逆流するという病態に陥りやすく、これを僧帽弁閉鎖不全症(MR)と呼びます。
弁が閉じ切らなくなってしまう原因は、弁自体が変性して分厚くなってしまうことなどにより、初期は症状が無く、普段の診察や健康診断で心雑音が聴取されてみつかることが多いです。診断にはレントゲン検査や超音波検査が必要になってきます。
MRが進行してくると活動性が低下したり、咳が出たりするようになってきます。また、血液の逆流量が増えることで、心臓自体が肥大したり、肺に水が溜まったりして呼吸が苦しくなる(肺水腫)という命に関わる状態になってしまうこともあります。
MRの進行は一般的にはゆっくりで、全員が肺水腫まで進行するというわけではありませんが、予測はできないので、一度MRだと診断されたら症状がなくても定期的な検診に通うようにしましょう。
ACVIM(米国獣医内科学会)より僧帽弁閉鎖不全症の治療に対するガイドラインが発表されており、それに則って治療をしていきます。
キャバリアのなりやすい病気②角膜ジストロフィー(角膜異栄養症)
角膜とは眼球の表面を覆う透明な膜のことで、5層構造から成りその厚みは部位によっても異なりますが約0.6mm~8mmほどです。そして角膜ジストロフィーとは、角膜炎や全身疾患とは関係なく発症する遺伝性・家族性の角膜疾患で、左右対称・局所的に角膜の濁りや変性を引き起こします。
病態として、上皮ジストロフィー、角膜実質の脂質ジストロフィー、内皮ジストロフィーの3つに分けられますが、キャバリアがなりやすいのは、角膜実質の脂質ジストロフィーになり、若齢から発症して、沈着物が角膜表層の中心部から発生して徐々に拡大していきます。炎症反応はなく、視覚障害も重度でない限りみられません。
その他の角膜疾患を除外し診断します。治療を必要としない場合が多いです。
キャバリアのなりやすい病気③乾性角結膜炎(KCS)
いわゆるドライアイにもなりやすいです。その原因の多くは自己免疫性だといわれています。他にも先天性・神経性・感染性・外傷性・内分泌疾患などが原因になることもあります。
涙の量が少なくなることで、目の表面の光沢がなくなり、角膜や結膜の炎症を起こし、慢性的な角膜潰瘍に進行することもしばしばです。さらに慢性化すると角膜は線維化し、色素沈着して分厚くなります。
診断にはシルマー涙液試験という、下眼瞼に目盛りが書かれた細い紙を引っ掛けてその刺激により涙がどれだけ出るかという方法により診断されます。
治療には、涙液刺激薬としての免疫調整剤や、涙液代用薬としてヒアルロン酸点眼などが用いられます。角膜潰瘍もある場合には、抗菌剤・抗炎症剤・抗コラゲナーゼ剤(角膜実質の融解を防ぐ)など複数種類出されることが多いですが、いくつもの目薬を連続してさしてしまうと浸透する前に流れてしまうので、それぞれ数分あけるようにしてください。
キャバリアのなりやすい病気④脊髄空洞症
先天性奇形、外傷、腫瘍、炎症などの要因により、脊髄内に液体(脳脊髄液:CSF)の貯留する空洞が形成された状態のことをいいます。キャバリアではキアリ様奇形という、後頭骨の発育不全により小脳の一部が脊柱管内に入り込んでしまう先天的な奇形が原因になることが多いです。
これまであげた心臓病や目の病気に比べれば、そもそもの発症数は少ないですが、この病気になるのはキャバリアやチワワ、ダックスフンドが多いとされています。
症状としては頸部の痛み、四肢の不全麻痺、頸部や体幹部を書こうとしたり手足の先を盛んに舐めようとしたりする知覚過敏などがみられます。
診断にはMRIやCTが必要になります。
治療は、症状が軽い場合には鎮痛剤などを用いた内科的な保存療法が選択されますが、大後頭口拡大術という外科手術が適応になる場合もあります。
診断も手術も、一般的な小規模動物病院では難しい場合が多いと思われます。
まとめ
いかかだったでしょうか。キャバリアは心臓が悪くなりやすいというのは多くの方がご存じだったかもしれませんが、目の病気も実は多いというのはあまり知られていないかもしれません。
心臓病は前述したように早期発見し、内服薬でコントロールしていくことが予後を大きく左右します。中高齢以降は、ワクチンやフィラリアだけでなく定期的に病院で健康診断してもらいましょう。
目の病気も今回紹介したもの以外にもさまざまなものがありますが、様子見することによって状態が悪化し、とりかえしのつかない状態になってしまうこともあるので早めに病院に行くに越したことはないでしょう。
なりやすい病気の病態について知っておき、1日でも長くキャバリアと健康的な生活を共に過ごせるようにしましょう。
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ライター情報
獣医師長尾大喜
- 所属
- ラパン動物病院
- 略歴
-
1994年 静岡に生まれる
2012年 北里大学獣医学部獣医学科に入学
2018年 獣医師国家資格取得
2018年よりラパン動物病院に勤務
- 所属学会
- 日本獣医エキゾチック動物学会、日本獣医がん学会
- 資格
- 獣医師免許、ロイヤルカナン栄養管理アドバイザー、ヒルズフードアドバイザー
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(掲載開始日:2023年12月26日)
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