ペット保険にはデメリットもある?加入前に知っておきたいメリットと選び方を解説
ペットの場合、人間のように公的医療保険がないため、動物病院での治療費は飼い主が全額自己負担しなければなりません。しかし、ペット保険に加入していると、万が一ペットが病気やケガをしたときに補償が受けられ、飼い主の負担を軽減してくれます。
ただし、ペット保険に加入すると当然ながら保険料はかかります。また、一般的にはペットの年齢が上がるほど、保険料が上がることも多くなるでしょう。さらに、ペット保険は基本的には掛け捨て型の保険となるため、病気やケガで病院にいくことがなければ保険料を支払っただけとなり「必要ないのでは?」「もったいない」と考える方もいるかもしれません。そこでこの記事では、ペット保険の注意点やデメリットにフォーカスしつつ、加入するメリットや選び方についてもわかりやすく解説します。
INDEX
ペット保険とは?
ペット保険とは、ペットが病気やケガにより動物病院で治療などを受けたときに、通院や入院、手術などの費用を補償する保険のことです。
人間が医療機関を受診した場合には、公的医療保険制度により医療費の1~3割の自己負担で済みますが、ペットにはこのような公的制度はなく、ペットの病気やケガの治療にかかった費用はすべて飼い主の負担となり、高額な出費となる可能性があります。
しかし、ペット保険に加入すると、各保険会社が定める一定の範囲内で補償を受けられるようになります。補償の割合は保険契約によっても異なりますが、実際にかかった費用の「50%」「70%」などの補償割合が設定されているものが多く、全額補償されるものは限られています。
また、ペット保険には主契約の補償内容を充実させるためにセットできる「特約」というオプションもあります。特約の内容は保険会社によって異なり、たとえばペットが他人やものなどに損害を与えたときに給付金が支給される特約や、ペットが亡くなったときに火葬費用などを補償する特約など、さまざまです。
ペット保険に加入する4つのデメリットと注意点
前述のとおり、さまざまなシーンで役立つペット保険ですが、気を付けておきたい点も存在します。おもなデメリットや注意点としては、次の4つがあげられます。
- ①ペットの年齢が上がるほど保険料も上がる
- ②補償対象外となる治療や手術もある
- ③治療費全額が補償される保険は少ない
- ④給付金の支払回数・日数に制限がある場合が多い
それぞれ、詳しくみていきましょう。
①ペットの年齢が上がるほど保険料も上がる
ペット保険に加入すると、当然ながら保険料が発生します。そして、基本的には年齢が上がるにつれて保険料も高くなっていく可能性があります。ペット保険の保険料は保険会社や保険商品によって異なりますが、たとえば、5歳でペット保険に加入したときと 10 歳で加入のときの月額保険料では、保険料が倍以上違うこともあります。
また、ほとんどのペット保険は掛け捨て型なので、その点を「デメリット」と感じる方もいるかもしれません。掛け捨て型とは、解約返戻金や満期保険金がないか、あってもごくわずかとなる保険商品のことをいいます。
ペットが健康で治療などの必要がなく、保険金を請求する機会がない場合、結果的には保険料を支払ったけれど受け取るお金はない、ということになります。
なお、保険料の負担をできるだけ抑えたい場合には、保険料の支払い方法を見直すなど検討してみるとよいでしょう。保険料の支払い方法には、一般的に「年払い」、「月払い」などがあり、年払いを選択すると、保険料の総額を抑えられることが一般的です。
支払う保険料の総額を抑えたいという方は年払いを選択するとよいですし、まとまった保険料の負担を避け、月々支払う方がいいと考える方は月払いを選択するとよいでしょう。
②補償対象外となる治療や手術もある
ペット保険は、それぞれの商品ごとに補償対象となる病気や治療が決まっています。そのため、動物病院で実施されるすべての治療や処置について保険が適用されるわけではありません。たとえば、去勢手術、避妊手術、妊娠や出産による手術や入院、健康診断、予防接種などについては、ペット保険で補償対象外となる場合がほとんどです。
③治療費全額が補償される保険は少ない
保険会社や保険商品により補償割合(負担割合)が異なる点にも注意が必要です。前述のとおり、補償割合とは「治療にかかった費用のどのくらいが保険金として支払われるか」を示す割合で、「50%」や「70%」などさまざまなケースがあります。たとえば、補償割合が70%のペット保険に加入している場合には、手術代などで10万円かかった場合、7万円が補償され、自己負担をするのは3万円だけとなります。
ただし、補償割合が低い場合には、たとえ保険が適用されても自己負担金額が増えてしまうので「あまりメリットに感じられない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、補償割合が低い保険はそのぶん支払う保険料を抑えやすいメリットもあります。反対に補償割合が高いペット保険は、保険料は高くなりやすい傾向にあります。支払う保険料と受け取る保険金のバランスを考慮して選ぶことが大切です。
④保険金の支払回数・日数に制限がある場合が多い
一般的にペット保険では、保険金の支払限度回数や支払限度日数に上限があります。
たとえば、通院の日数制限が年間22日までに設定されている場合、23日目の通院に関しては補償の対象外となります。そのため、長期の通院が必要になった場合などは、補償を受けられない可能性があるため注意が必要です。
ペット保険に加入する4つのメリット
もちろん、ペット保険に加入するメリットもあります。たとえば、次の4つがあげられます。
- ①高額な治療費をカバーできる
- ②早期治療が可能になる
- ③治療の選択肢が増える
- ④賠償責任の特約をつけられることもある
それぞれ、詳しくみていきましょう。
①高額な治療費をカバーできる
動物病院は自由診療のため治療費などは動物病院によって異なりますが、治療内容によっては高額になる場合があります。ペット保険に加入していれば、給付金の金額や対象となる診療などに制限はあるものの、治療費をある程度カバーできるようになります。
たとえば、愛犬が骨折をして手術治療が必要になった場合、費用が数万円かかる場合があります。予期せぬ出費だとすれば、経済的な負担となってしまうでしょう。しかし、ペット保険に加入していれば負担を軽減でき、安心して治療を受けられます。
②早期治療が可能になる
ペット保険に加入すると医療費の負担が減るため、動物病院を利用する心理的ハードルを下げることが期待できます。
異変を確認したら動物病院に行くようにすると、早期発見・早期治療につながることもあるでしょう。早期に発見できると、病状が深刻化する前に治療を終えられる可能性もあります。ペットの体への負担軽減にもつながるため、メリットといえます。
③治療の選択肢が増える
ペット保険に加入すると、一定の範囲ではあるものの治療費をカバーできるようになります。
治療の選択肢が複数あるときも、治療費だけではなく、本当に必要なものを考えた最善の治療方法を選択できるようになるでしょう。たとえば、犬も猫も治療で月間数十万円かかる高額なケースもあります。体力や病気の進行具合によって適切な治療は異なりますが、ペットに合う治療を選択するためにも保険加入で備えておくことが大切です。
④賠償責任の特約をつけられることもある
ペット保険によっては、ペット賠償責任特約※を付帯できます。ペット賠償責任特約とは、ペットが他人の身体やものに損害を与え、法的な賠償責任が生じた場合に補償する特約です。
万が一、ペットが他人をかむなどをしてケガをさせた場合には賠償責任が生じるかもしれません。賠償責任の特約を付帯すると、ペットが原因で賠償金が発生したときでも、給付金で補填できることがあります。
ただし、賠償責任特約は、人間が加入する個人賠償責任保険でペットが第三者に与えた賠償も補償できることがあります。そのため、すでに個人賠償責任保険を契約している方には不要かもしれません。すでに加入している火災保険や自動車保険などの補償内容を確認し、補償が重複しないように注意しましょう。
※特約の名称は、保険会社によって異なります。
ペット保険を選ぶときのポイント
ここまで、あえて「デメリット」にも着目しながら解説してきましたが、ペット保険の意義やメリットについてもご理解いただけたのではないでしょうか?ただし、いざペット保険を検討しようと思っても、ペット保険には種類が多く、どれを選べばよいのか迷うという方も多いでしょう。迷ったときは以下の点について参考にしていただくと、ご自身に合う保険を選びやすくなります。
- ペットがかかりやすい病気やケガを事前に把握しておく
- 加入年齢や更新年齢の制限の有無を確認する
- 特約(付帯サービス)の有無を確認する
- 自己負担する金額の目安を知っておく
- 保険金の受け取り方法を確認する
それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。
ペットがかかりやすい病気やケガを把握する
ペット保険の保険料は、犬種や猫種、年齢などによって大きく異なります。また、かかりやすい病気も犬種や猫種などによって異なるため、ご自身のペットがどんな病気にかかりやすいのか、どんなケガをしやすいのか、事前に確認しておくことはとても大切です。ペット保険選びにおいて、補償内容や補償範囲を決める際の目安にもなるでしょう。
加入年齢や更新年齢の制限の有無を確認する
ペット保険へ加入する際は、加入年齢や更新年齢の制限をあらかじめ確認しておきましょう。
犬や猫も、人間と同様に年齢とともに病気やケガのリスクが高まるため、高齢になると、ペット保険への加入が難しくなったり、契約しているペット保険の更新ができなかったりする場合があります。また、補償が手厚くなれば保険料が上がる可能性があるため、無理なく支払える保険料であるかもみておきましょう。
特約(付帯サービス)の有無を確認する
ペット保険は、主契約とは別に任意で特約(主契約に付帯できるオプション)をつけられます。保険会社によって特約の内容は異なりますが、代表的な特約には以下の2つがあります。
ペット保険の特約の例
特約の種類 | 内容 |
---|---|
火葬費用特約 | ペットの火葬費用を補償する特約 |
賠償責任特約 | ペットが他人にケガを負わせてしまった場合の特約 |
※特約の種類や内容は、保険会社によって異なります。
自己負担する金額の目安を知っておく
加入を検討しているペット保険について、免責金額と補償割合、補償限度額などを知っておけば、病院でペットの治療をおこなう際に自己負担する金額の目安がつきやすいでしょう。
免責金額 |
治療費の一定額部分について飼い主が自己負担する金額のこと。 (例)免責金額を1万円と設定している場合、治療費が3万円の場合には1万円は自己負担額として支払い、2万円が保険金として受け取れる※1 |
補償割合 |
治療費のうちどのくらいが保険金として受け取れるかを示す割合のこと。 (例)補償割合が70%であれば、治療費の70%が保険でカバーされる※2 |
補償限度額 |
補償される上限金額のこと。 補償限度額には、「1回の入院あたりの補償限度額」や「1回の手術あたりの補償限度額」、「保険期間中に請求できる保険金額の限度額」などの種類がある |
※1免責金額1万円の場合、治療費が1万円以下のケースでは保険金の受け取りはありません。
※2補償割合が高くなると、保険料も高くなる傾向があります。
保険金の受け取り方法
保険金の受け取り方法には「直接請求(後日精算)」と「窓口精算」の2つの方法があります。「直接請求(後日精算)」の場合、飼い主が動物病院で治療費をいったん全額負担し、後日給付金の受け取りとなる方法です。一方、「窓口精算」は、人間の健康保険と同じように、窓口で保険適用後の診療費のみを支払います。
一時的にでも費用の立て替えを避けたい方や手間をなるべく省きたい方は窓口精算を選ぶとよいでしょう。ただし、すべてのペット保険・動物病院で窓口精算に対応しているわけではないため、加入するペット保険や動物病院で対応しているのか事前に確認する必要があります。
なお、ペット保険の選び方をもっと詳しく知りたい場合は、以下のサイトをご確認ください。
まとめ
ペット保険は、ペットの年齢が上がればあがるほど保険料が上がりやすくなるため、金銭的負担は増える可能性があります。また、一度も病気やケガで病院にいったりすることがなければ保険料を支払っただけとなる可能性もあるかもしれません。
しかし、ペットの病気やケガのリスクは、そのペットの種類や年齢によっても大きく異なるため、一概に保険が必要ないとは言い切れないでしょう。むしろ、保険に加入していることで、万が一ペットが病気をした場合に治療費の負担が軽減されるほか、病気の早期発見・早期治療もしやすくなります。また、手術などが必要な病気の場合には、費用にとらわれずに済むことから治療の選択肢が広がることもあり、メリットも大きいといえます。
まずはご自身のペットがかかりやすい病気やケガのリスクを事前に確認のうえ、必要となる補償はどのようなものかを考えてみるとよいでしょう。そのうえで、大切なペットとこの先も長く暮らしていくためにも、一度、保険の検討をしてみることをおすすめします。
ペット保険の選び方がよく分からない、という場合には、各保険会社のウェブサイトや比較サイトを利用すれば、補償内容や保険料、対応しているサービスなどを確認することができます。とくに比較サイトを活用すると、複数のペット保険の情報を一覧で比べることができるので、自分にあった保険を選びやすいでしょう。
- ペット保険
-
ペット保険の見積(無料)・比較
詳しく見る
監修者情報
ファイナンシャルプランナー生川奈美子
株式会社アスト 代表取締役
日本FP協会会員(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、相続診断士、終活カウンセラー、住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター。大手生命保険会社に12年勤務後、2003年にファイナンシャルプランナーとして独立。2007年に株式会社アストを設立。現在、「わくわくの明日と共に」をモットーに、子育て世代、リタイア世代のライフプラン作成や家計相談、相続相談などのコンサルタントとして活動中。また、各種マネー講座の講師や執筆も担当。2015年度金融知識普及功労者として金融庁・日本銀行から表彰を受ける。
- 資格情報
- 日本FP協会会員(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、相続診断士、終活カウンセラー、住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年03月16日)
2302090-2402