犬のアレルギーの種類や症状、治療方法について
愛犬の「かゆい」「体が赤い」「お腹の調子が優れない」などの症状は原因がアレルギーである可能性があります。しかし、アレルギー以外でも、同じような症状を引き起こすことがあるため、診断は一筋縄ではいきません。診断には時間がかかることもあり、病気と生涯付き合わなければならない可能性もあるため、正しい知識で病気と向き合っていただければと存じます。この記事では、犬のアレルギーの種類や症状、治療方法についてわかりやすく解説します。
犬の食物アレルギーとは?
食べ物に対して体の免疫が過剰に反応してしまうことを「食物アレルギー」といいます。食物アレルギーは3歳くらいまでに発症することが多く、赤み、かゆみなどの皮膚症状や嘔吐や下痢、排便回数の増加といった消化器症状を引き起こすことがあります。
牛、乳、小麦、卵、鶏に食物アレルギーを持つ個体が多いですが、これらの食材が食物アレルギーになりやすいというわけではなく、接触する回数が多いため、アレルギーを引き起こす確率が高いと考えられています。
そのため、食物アレルギーの症状がない状態で、これらの食材を回避しても意味はなく、さらに、食の幅を狭めてしまうことは、QOL(Quality of life)の低下につながることがあります。
食物アレルギーは、除去食試験と負荷試験をおこなうことで確定診断をつけることになります。
以下で詳しくみていきましょう。
除去食試験とは
食物アレルギーの原因として疑わしい食材を一定期間除去し、症状が改善するかをみる方法。口から入るものを、シンプルかつ一定にすることで、食物アレルギーの有無を判断します。おやつやサプリメントなどにもアレルゲンが含まれますので、基本的にはすべてを中止しなければ、正確な評価をすることはできません。
一般的に2ヵ月間は、除去食試験を継続し、その後、皮膚や消化器症状の改善の有無を評価します。2ヵ月の間続けることが重要で、途中で他のものを食べたり、症状が改善しないからといってやめてしまったりすると除去食試験をおこなう意味がなくなってしまいます。
また、あくまでも原因として「疑わしい」食材を除去しているだけで、除去した食材が食物アレルギーとは関係ない場合は、当然ながら症状の改善は見込めません。そのため、除去食試験を1回やっただけでは、わからない場合も多々あります。市販フードや手作り食など、原材料の異なる食べ物で除去食試験数回おこなうことで、食物アレルギーだと診断がつくこともあります。
除去食試験で大切なことは、この試験の意味を飼い主さんが理解し、根気をよく長いスパンで考えることです。
負荷試験とは
除去食試験で、症状が落ち着いた後に、再度除去食試験で除いた食材をあえて与えることで症状の再現性を確認する方法です。
除去食試験を開始し、かゆみが治まった、下痢がとまったとなると、それでよいではないかと思う方も多いです。しかし、たまたま別の要因でかゆみや下痢が起こっており、除去食試験のタイミングと重なって、除去食試験によって改善したと誤認している可能性もあります。再現性を確認することで、食べられないものを明確にし、食の幅を広げることができます。
アレルギー検査について
アレルギー検査は大きくわけてIgE検査とリンパ球反応検査の2つがあります。なお、毛でおこなわれるアレルギー検査は、科学的根拠がありません。
食物アレルギーに関しては、リンパ球反応検査のほうが精度が高く、IgE検査の精度はそこまで高いわけではありません。また、どちらの検査に関してもあくまでも、検査結果としてある食べ物に高い値が出たからといって、実際にその食べ物を摂取したときに必ず症状が出ると言い切れるわけではありません。アレルギー検査は、あくまでもひとつの目安です。
犬アトピー性皮膚炎とは?
ハウスダストや花粉などの環境因子に対して、犬がアレルギー症状を引き起こす病気をアトピー性皮膚炎といいます。
犬アトピー性皮膚炎にかかった犬の症状は、かゆみや赤みといった皮膚症状が多く、ひどい場合には、かゆみにより皮膚を掻き続けることで、皮膚が分厚くなったり、出血をしてしまったりする場合もあります。人間の花粉症のように、くしゃみや鼻水といった症状を引き起こすことは比較的少ないです。
柴犬、ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア、フレンチブルドッグ、シーズーなどの犬がアトピー性皮膚炎になりやすいです。
食物アレルギーとは異なり、対象となるアレルゲンが多い時期に症状が悪化しやすい傾向になります。治療はシャンプーで体に付着するアレルゲンを除去したり、スキンケアをしたりすることがメインとなり、それでもコントロールが難しい場合は、投薬治療によって症状を緩和させます。原因を完全に除去することは難しいため、うまく付き合っていかなければなりません。
食事アレルギーと犬アトピー性皮膚炎は併発することが多い
食物アレルギーを持つ犬の多くはアトピー性皮膚炎も持っています。そのため、食物アレルギーの原因となる食べ物を完全に除去したとしても、皮膚のかゆみなどが完全に収まらないことがあります。
毎日一緒に暮らしていると、皮膚の状態やかゆみの変化に気づきにくくなることがあります。改善していても、かゆみはまだ存在するため改善していないと判断してしまうことが多く、可能な限り客観的に評価する必要性があります。
日々のかゆみをスコア化することで、経時的な変化を数字としてとらえる方法(PVAS)が一般的によく使われます。また、光の量を同じにするため同じ時間帯に、同じポーズで定期的に撮影することでも、客観的に評価する方法などがあります。
犬のノミアレルギー性皮膚炎とは?
ノミが体表に寄生し、吸血する際に体内に侵入したノミの唾液によって引き起こされるアレルギー反応をノミアレルギー性皮膚炎といいます。かゆみや赤みなど皮膚症状を示します。
ノミに寄生されないことが予防となるので、定期的なノミ・ダニの駆虫薬を使用することが強く推奨されます。一般的にノミは、13度以上で活性化すると言われており、冬では外での感染のリスクは低いですが、冬でも室内が温かかったり、地域によっては13度以上であったりすることも。生活環境に応じた予防が大切です。
また、ノミは瓜実条虫に感染していることがあり、誤ってノミを摂取すると、瓜実条虫が消化管に寄生してしまうリスクがあります。
ノミに感染した場合、下痢などの消化器症状が続いて起こらないかも注意深く見守る必要があります。一般的にノミを予防する薬や、フィラリアの駆虫薬には、消化管内の寄生虫を駆除する薬剤も含まれていることが多いです。かかりつけの先生と相談して、予防薬の選択をしましょう。
犬の皮膚のバリア機能を維持しよう
皮膚にアレルギー疾患の症状があると、炎症や、かゆみによって自分自身を傷つけ皮膚のバリア機能が低下します。そこに細菌が感染したり、常在細菌やマラセチアという酵母様真菌が異常に繁殖したりすることでさらに、皮膚の状態を悪化させます。
すでに細菌感染が起こった状態(膿皮症)では、アレルギーの治療だけをおこなっていても、改善は乏しいため、かかりつけの先生に皮膚の状態を判断してもらい、投薬治療やシャンプー、スキンケアを必要に応じて指導してもらいましょう。
まとめ
アレルギーといっても、食事によって起こるもの、環境因子によって起こるもの、ノミによって起こるものとあります。これらが併発していることが非常に多いため、飼い主さんのみでの判断はかなり難しいです。
とくに食物アレルギーは、原因となる食物を特定するのには、時間がかかるため、腰を据えてかかりつけの先生と治療をしていくことが大切です。
「かゆみ」は生活の質を大きく下げる症状です。かゆがっている様子が頻繁に観察されるのであれば、ひとりで悩まずに早めの受診を検討してください。
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ライター情報
獣医師成田有輝
- 所属
- yourmother合同会社 代表
- 略歴
-
1988年 埼玉県に生まれる
2007年 麻布大学獣医学部獣医学科に入学
2011年~ウサギのハート公開
2013年 獣医師国家資格取得
2013年~2019年 東京都内動物病院に勤務
2018年~DC one dish 設立
2019年 フードメーカー勤務
2020年~yourmother合同会社 設立
2023年 日本獣医腎泌尿器学会認定医取得
- 所属学会
- 日本獣医腎泌尿器学会、日本獣医エキゾチック動物学会
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(掲載開始日:2023年12月12日)
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