犬の熱中症対策とは?原因、症状、応急処置、予防法について解説
毎年、夏になるとニュースで「熱中症」という言葉をよく聞きます。熱中症はしっかり早期に対応すれば大丈夫ですが、対応が遅れると最悪の場合には死につながることがある怖い病気のひとつです。この記事では、飼い主さんが知っておくべき熱中症について原因・症状・治療や応急処置・対策などを解説していきます。
犬の熱中症とは?
熱中症とは、体の中の水分バランスが崩れたり、体温が上がったりと体温調節機能がうまく働かなくなることで引き起こされる全身性の疾患です。犬の熱中症は7~8月が圧倒的に多く、6月頃から熱中症対策するのがベストでしょう。
犬が熱中症になるとまずは脱水症状を示します。そして、症状が悪化すると消化器症状(嘔吐や下痢など)や虚脱(立ち上がれないぐらいぐったりする症状)につながることがあります。そのため、飼い主が熱中症にならないようにしっかり気をつける必要性があります。
犬の熱中症の原因は?
犬は、人とは違い汗をたくさんかくことができません。そのため、犬はパンティング(ハァハァと激しく口で呼吸する症状)や水分を摂取することで体温調整をおこなっています。
犬の熱中症はさまざまな要因で引き起こされます。具体的に、熱中症の要因をみていきましょう。
高温多湿環境に放置する
熱中症は外出中に起きるというイメージが強いですが、室内でも高温多湿環境であれば熱中症になる可能性があります。夏場にエアコンや扇風機をつけていない室内や車の中は注意が必要です。とくに暑い時期の車内温度は非常に高くなっているため、短い時間のお留守番でも容易に熱中症になりやすい状態です。
暑い中での長時間の散歩・運動
暑い時期の地面はかなり熱くなっています。犬は人より地面との距離が近いため、地面からの熱をダイレクトに受けやすく、熱中症になりやすい状況にあります。そのため暑い時間帯の散歩は短時間であっても注意が必要となります。
水分不足
人と同様、犬の水分不足は熱中症につながりやすいです。こまめな水分補給が重要となります。
熱中症になりやすい犬の特徴とは?
とくに以下の犬は熱中症になりやすいため注意が必要になります。
短頭種(パク、フレンチブルドック、ボストン・テリアなど鼻が短い犬種)
短頭種の犬は、他の犬種と比べて呼吸効率がよくないため、熱の発散能力が弱いです。そのため、体の中に熱がたまりやすく熱中症になりやすいとされています。
熱の発散のためパンティングが異常に起こると、喉頭で炎症が引き起こされることがあります。喉が炎症で腫れあがることで喉が閉塞し呼吸ができなくなり、チアノーゼ(舌の色が紫色になっている状態)や窒息につながり死に至る場合があります。
肥満の犬
肥満の犬は、皮下脂肪により体表から熱が放熱しにくいです。また、首回りに脂肪がついていることで気道が狭くなり熱中症になりやすい要素となります。
寒冷地出身の犬種(シベリアン・ハスキー、サモエドなど)
寒冷地出身の犬の場合、涼しい地域での犬種のため暑さに弱い傾向にあります。
心臓病、呼吸器疾患など基礎疾患を持っている犬
心臓病や呼吸器疾患などの基礎疾患を持っている犬は脱水になりやすい、暑さストレスに弱いなど、健康な犬に比べて熱中症になりやすい可能性があります。
犬の熱中症の症状について
犬の熱中症の症状には以下のような症状があらわれます。
初期症状
熱中症の初期症状は、暑さでいつもより元気がなくなったり、いつもより呼吸が速くなったり(パンティング)します。また、よだれが普段より多く出る傾向にあります。
中期症状
初期症状に加えて、頻脈や消化器症状(嘔吐・下痢など)が出てきます。あまりにひどい場合は、ぐったりして普段より元気がない状態になることが多いです。
重度症状
脱水が重度になると、虚脱・起立困難、呼吸困難になることがあります。肩やお腹など体全体で呼吸している、チアノーゼ(舌の色が紫色になっている状態)などの症状を示している場合は、緊急性が高い可能性があります。とくに短頭種の場合は、呼吸器が弱いため、異常なパンティングが続くだけで喉が炎症で腫れあがり呼吸困難になることがあります。
より悪化すると肝不全・腎不全など多臓器不全、痙攣(けいれん)、ショック症状につながり死に至る場合があります。緊急性を要する場合は、すぐに動物病院にいきましょう。
愛犬が熱中症になったときの応急処置・対応はどうすればいいの?
愛犬の熱中症が疑われる場合は、以下の応急処置をとりましょう。
日陰や室内などの涼しい場所に移動する
熱中症が疑われる場合は、涼しい場所に移動して体温を調整する必要性があります。直射日光が当たらない日陰や室内に移動しましょう。また、室内であればクーラーや扇風機などで体を冷やすのも効果的です。
体を冷やす
愛犬の体を冷やす応急処置として、具体的な方法は以下の2つです。
- 体表を水で濡らす、また濡らしたタオルを体に当てた後に扇風機で送風し、気化熱を利用して徐々に冷却する。
- 保冷剤や氷のうなどを使用する。体を冷やす場所としては、首や脇の下、鼠径部(太ももの付け根あたり)など太い血管が走っているため箇所を冷やすと効果的。
また、体を冷やす際は可能であれば体温(直腸温)を測定しましょう。犬の平均体温は38~39度になります。熱中症の場合、目標体温を39.4度として冷却処置をおこないます。体温が39.4度になったら冷却処置を中止してください。体を冷やした場合、冷却を中止した後も体温がしばらく下がり続けます。それにより、過剰に体温が下がり低体温症につながる可能性があるので注意が必要です。
応急処置を終えた、または症状の悪化・緊急性を要する場合は、すぐに動物病院に連絡し対応してもらいましょう。熱中症の状態によっては、気管挿管や点滴治療など早急な対応が必要になる場合があります。
愛犬の熱中症の予防・対策法について
愛犬を熱中症から守るために、予防や対策として以下について確認しておきましょう。
屋内編:室内温度を適度にする
人の場合も同様ですが、熱中症は室外だけでなく室内でも起こる可能性があります。犬に適した室内温度は25~28℃といわれています。部屋が暑い場合は、エアコンや扇風機などを利用して室温を適度に保つようにしてください。
とくに飼い主の外出時は部屋の温度が適温かどうか確認し、日中暑くなる可能性がある場合はエアコンなどを利用して室温が適温になるように設定してから外出するようにしましょう。また水分も自由に飲めるように数か所、水飲み場を設置しましょう。
屋外編:散歩の時間をできるだけ涼しい時間帯にする
犬の散歩は早朝や太陽が沈んだ夕方などの時間帯にいきましょう。
近年、日本の夏の気温は上昇傾向にあり、真夏になると35度近い日もあります。犬は人より地面との距離が近いため、地面からの熱をダイレクトに受けやすく、熱中症になりやすい状況にあります。
また、熱したアスファルトの上は非常に暑くなっているため、肉球が火傷してしまう可能性もあります。散歩の時間は比較的涼しい時間帯を選ぶようにしましょう。
屋外編:水分補給をこまめにおこなう
外出時は脱水予防のため、水分補給をこまめにとりましょう。外出時にパンティングが多い、散歩中に座り込むときが多い場合は、一度木陰で休んで水分補給をとるようにしてください。
屋外編:車内では冷房をつけて水分確保する
犬を車内でお留守番させる場合は注意が必要です。夏の時期、車内はかなり蒸し暑くなっています。エアコンをつけずに停車した車内はとくに熱がこもりやすく、熱中症になりやすい状態になっています。犬を車の中でお留守番させるのは控えるのがベストです。
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冷房をつける、保冷グッズを駆使する
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どうしても車内でお留守番させる場合は、冷房をしっかりかけましょう。また、車内でのお留守番の時間はできるだけ短くしましょう。犬の近くに保冷剤を置いたり、冷却グッズなどを使用したりしましょう。
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水分の確保をする
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いつでも飲水ができる状態を確保して、脱水予防をしましょう。
愛犬が熱中症になったときの動物病院での対応とは?
愛犬が熱中症になり動物病院で診察をする場合、動物病院により異なる部分はありますが、まずは身体検査(視診、触診、体重、体温、心拍数、呼吸数のチェックなど)をおこない、犬の状態を把握します。
必要であれば、追加検査として血液検査、X線検査、超音波検査、尿検査などをおこないます。とくに血液検査は、脱水、肝臓・腎臓の機能障害、電解質のバランスの崩れがないかなどを確認するためによく実施されます。
治療に関しては、犬の状態により異なりますが、軽度であれば対症療法(皮下点滴など)、状態が悪い場合は静脈点滴などを含めた入院治療をおこなうこともあります。また、呼吸困難、ショック状態など緊急性を要する場合は、気管挿管、心肺蘇生など緊急処置をおこないます。
まとめ
熱中症は、人と同様、状態が悪化すると死につながる可能性のある疾患のひとつです。飼い主さんが愛犬を気にかけてしっかり予防してあげることが重要となります。
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ライター情報
獣医師島村剛史
- 所属
- 東京都国立市 ふく動物病院 副院長
- 略歴
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1989年 和歌山県和歌山市に生まれる
1989年~2008年 和歌山県和歌山市に滞在
2008年 麻布大学 獣医学部・獣医学科に入学
2014年 獣医師国家資格取得
2014年~現在 東京都国立市 ふく動物病院に勤務
2015年4月~2021年 麻布大学附属動物病院 腫瘍科研修医、軟部外科腫瘍外科
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(掲載開始日:2023年11月27日)
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