ハリネズミの飼い方ガイド!種類や罹患しやすい病気も紹介
丸い目とコロンとした愛らしい姿が人気のハリネズミを飼いたいけれど、育て方が難しそうと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ハリネズミの飼い方や飼う前に知っておきたい特性など、基礎知識をまとめました。また、ハリネズミの種類や罹患しやすい病気、病院に連れて行くタイミングについても紹介します。ハリネズミをこれから飼育しようか迷っている方はぜひご覧ください。
INDEX
初心者が知っておきたいハリネズミの基礎知識
ハリネズミを飼うなら、生態や性格について知っておくことが大切です。あまりよく知らずに飼うと、ハリネズミと人間のお互いがストレスを感じて暮らすことにもなりかねません。飼う前に知っておきたいポイントを紹介するため、ぜひ参考にしてください。
ハリネズミの生態
ハリネズミは、基本的に夜行性です。視覚があまり発達していないため、直射日光があたるような場所にケージを置くのは避けましょう。昼間は明るく、夜は暗くなるような場所が良いです。
一方、嗅覚と聴覚は発達しているため、清潔で静かな環境が好ましいといえます。
ハリネズミは怖がりで臆病な性質のため、初めて会った人にでも簡単に懐く動物ではありません。また人への懐きやすさには個体差も大きく、根気よく接する必要がありますが、飼い主さんを判別できるようになることは可能です。焦らず、ゆっくりと関係を築いていきましょう。
ハリネズミの特徴
ハリネズミは、その名のとおり、ハリが特徴的な動物です。背中は約5,000本の針で覆われていますが、顔や腹部、足、尻尾にはハリが生えていません。また、頭部全体はハリに覆われているものの、頭頂部の中心にはハリがない部分があります。ハリは約18ヵ月で抜け、生え変わることが一般的です。
成体になったときの体長は14cmほどで、大きく育っても30cmくらいまでとされています。成体の体重も種類や個体の差はありますが、400~900gほどが一般的です。
また、ハリネズミ特有の行動として、「アンティング(セルフ・アノインティング)」が知られています。アンティングとは、見慣れないものに遭遇すると、それを舐めたりかじったりして口から泡を出し、自身の身体に塗りつける行動のことです。おもに針にこすりつけますが、理由についてはまだよくわかっていません。
ハリネズミの性格
ハリネズミは基本的には臆病な性格で、群れずに単独行動を好みます。また、起きているときはじっとしていないことも多く、とくに夜は活発に動く傾向にあります。
ハリネズミのエサ
ハリネズミは昆虫食傾向の強い雑食であり、野生のハリネズミは昆虫やミミズ、カタツムリなど小さな無脊椎動物を食べて生活しています。
ペットとして飼うときは、ハリネズミ用のペットフードを与えてください。ミルワームやコオロギなどの昆虫の生餌は、健康維持や食欲増進効果があるため、ペットフードに追加して与えることがあります。ただし、カロリーが高いため、ミルワームやコオロギは1日に2~3匹を目安としましょう。
ハリネズミの寿命
野生のハリネズミの寿命は3~5年といわれています。一方、家庭で飼育する場合はコヨーテやテン、フクロウなどの天敵がほぼなく、規則的に食事ができることもあり、約5~10年になります。
ただし、3歳頃になると腫瘍が発生するリスクが高まる点に注意が必要です。そのため、4歳前後で寿命を迎えるハリネズミも多いようです。
ハリネズミの臭い(体臭)
ハリネズミの体臭は、ほとんどありません。そのため、ペット特有の臭いが気になる方にも、飼いやすい動物といえます。
しかし、尿はにおいの原因になり、糞をあちこちでしてしまうため、こまめに掃除をしないとケージや周囲が清潔に保てません。また、糞をした場所でハリネズミが遊び、ハリネズミ自身についてしまうこともあるため注意してください。
ハリネズミの値段
ハリネズミの値段は、色や種類、ペットショップによって異なります。2万円前後で取引されていることが一般的です。国産のハリネズミや毛色の珍しい個体は4万円以上で取引されることもあるようです。
また、ハリネズミの月齢によっても値段が異なるため、いくつかのペットショップで比較してから選びましょう。
ハリネズミの種類
ハリネズミのなかには、日本で飼育が禁止されている種類がいます。そのため、飼育できる種類が限られている点に注意してください。
具体的には、ヨツユビハリネズミ以外のハリネズミ属は特定外来生物に指定されているため、現在、ペットとして新たに飼育することが禁じられています。たとえば、ナミハリネズミやマンシュウハリネズミなどの冬眠できる種類のハリネズミはペットとして飼育できません。ハリネズミを選ぶときは、信頼できるペットショップに相談するようにしてください。
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミは、日本で飼育可能なハリネズミです。もともとは中央アフリカに広く分布している種類で、後ろ足の指が4本であることから、「ヨツユビ」と名付けられました。なお、前足の指は5本です。
ハリの色は、グレーに近いノーマル(ソルト&ペッパー)やプラチナ、色素が薄いアルビノ、やや赤茶みをおびたシナモンなどのバリエーションがあります。
ナミハリネズミ(ヨーロッパハリネズミ)
ナミハリネズミは特定外来生物に指定されているため、日本では飼育を禁止されています。もともとヨーロッパ北東部や西部に分布していた種類であることから、ヨーロッパハリネズミとも呼ばれています。
マンシュウハリネズミ(アムールハリネズミ)
マンシュウハリネズミ(アムールハリネズミ)も、ナミハリネズミと同じく特定外来生物に指定されているため、日本での飼育は禁止されています。
静岡県と神奈川県では、野生化したマンシュウハリネズミの定着が確認されています。また、定着は確認されていませんが、岩手県や長野県、栃木県、富山県で、マンシュウハリネズミが目撃・捕獲されています。なお、いずれも、ペットとして飼われていたハリネズミが逃走したものと考えられています。
ハリネズミの飼い方
ハリネズミは、暑すぎたり寒すぎたりすると休眠状態に陥る動物です。種類によって異なりますが、もともとハリネズミに夏眠や冬眠の習性はなく休眠状態になると体に負担がかかるため、温度の管理が非常に重要な生き物です。また、湿度が高すぎるとダニやカビが発生するリスクが高まり、反対に湿度が低すぎると皮膚が乾燥してトラブルの原因になってしまうため、湿度管理も重要です。そのため、室内に適切な飼育環境を準備しないと健康を損なうだけでなく、長生きできないことがあります。
ペットは大切な家族です。ストレスをあまり感じず、健康に長生きしてもらうためにも、以下で述べるようなハリネズミに適した飼育環境を準備し、適切な方法でスキンシップを取りましょう。
飼育グッズ
ハリネズミが快適に生活するために、少なくとも次の飼育グッズが必要です。
- ケージ
- 回し車
- 給水瓶
- 寝床
ハリネズミは本来、行動範囲が広く、半径200~300mをテリトリーとするといわれています。また、活発に動き回るため、狭いケージではストレスが溜まりかねません。できれば広めのケージを準備し、ストレスなく動き回れるようにしましょう。
回し車があると、ケージ内でも運動しやすくなります。ただし、ケージも回し車もワイヤーでつくられたものは避けましょう。ハリネズミが足を引っかけ、ケガをするリスクがあります。
また、ハリネズミがいつでも水を飲めるように、給水瓶も準備しましょう。
ケージのなかには寝床も準備します。ウッドチップや紙製チップ、牧草、新聞紙などの柔らかいものを敷き詰めましょう。ケージ内を清潔な状態に保つためにも、定期的に乾いたものに取り換えてください。
ハリネズミは薄暗い環境を好むため、隠れられる場所も準備しましょう。ティッシュボックスやプラスチックの丸太、植木鉢、寝袋などをケージ内に置くと、中に入って休むようになります。
ハリネズミがトイレを利用するかしないかは、個体によって異なります。一度、トイレとトイレ砂を購入し、トイレトレーニングを始めるのも良いかもしれません。
飼育環境
ハリネズミは温度変化に強い動物ではありません。温度は20~27℃程度を保ち、湿度40%程度の常に乾燥した状態にしてください。ハリネズミは暑すぎたり寒すぎたりすることで、休眠状態に陥る可能性があります。また、湿度が高いとダニやカビの発生、反対に湿度が低すぎると皮膚トラブルが起こる可能性があるため適切に管理しましょう。
また、ハリネズミは単独生活を好みます。基本的には多頭飼いを避け、複数飼育するときはケージを分けましょう。
スキンシップ
広めのケージであっても、長時間ケージ内にこもっていると運動不足になることがあります。時間を決めて、室内を走らせるのもおすすめです。ただし、脱走すると危ないため、室内を走らせるときは、窓やドアが閉まっていることを確認してください。
ハリネズミは基本的に憶病なため、いきなりスキンシップを取るのは難しいでしょう。少しずつ触って慣れさせていき、ストレスを与えないようにしてください。
ハリネズミの飼い始めのときは、まずは飼い主さんの指の臭いに慣れさせて、手を怖がる様子がなくなったら手のひらの上に乗ってもらえるようにすることから始めましょう。懐いてくれば針を寝かせてくれるため、体をなでたり、あおむけで持って手乗り状態にしたりすることもできます。
ハリネズミは基本的に噛みつくことはありませんが、恐怖を感じたときは予想外の行動をすることも想定されます。ハリネズミもスキンシップを楽しんでくれるよう、時間をかけて関係を築いていきましょう。
飼育時の注意点
ハリネズミは臆病な性格のため、音や光で驚かせないように注意してください。また、環境や飼い主さんに慣れるまでは無理に触らないことも大切なポイントです。
ハリネズミが「シューシュー」と音をたてているときや針を立てているとき、体を丸めているときは、威嚇している可能性があります。ハリネズミが飼い主さんに懐くまでは、無理にスキンシップを取らないようにしましょう。
なお、ハリネズミは一頭飼いが原則です。複数のハリネズミを飼うときはケージを分けるようにしてください。
ハリネズミが罹患しやすい病気
ハリネズミは、病気に罹患しやすい動物です。しかし、病気によってはある程度予防できることもあります。また、早期に発見して治療を開始することで、完治できるものもあります。
ここでは、ハリネズミによくある病気を紹介します。
【ハリネズミのおもな病気】
- ダニ寄生
- 皮膚糸状菌症
- 子宮・卵巣の病気
- 気管支炎
- 歯周病
健康で長生きしてもらうためにも、病気の特徴と対処法を確認しておくことが大切です。詳しくみていきましょう。
ダニ寄生
ダニ寄生は、ハリネズミの皮膚病の中で比較的多い病気です。無症状のケースもありますが、フケが増えたり、針が抜けたり、かゆそうにしたりすることもあります。このような症状が見られたときは、ダニ寄生の可能性があるため、病院に連れて行き獣医師に相談してください。
ダニの種類によって、駆虫薬の注射やスポット剤、スプレー剤によって治療できることがあります。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌はハリネズミに常在しているといわれている菌で、ダニの寄生などにより皮膚免疫能が低下すると皮膚糸状菌症に罹患することがあります。
皮膚糸状菌症に罹患すると、フケやかさぶたが増えたり、針が抜けたりすることがあります。なお、皮膚糸状菌症は人に感染する可能性もあるため、気づいたらすぐに病院に連れて行くことが大切です。
病院では抗真菌薬を投与するなどの方法で、治療を進めていくことが一般的です。
子宮・卵巣の病気
陰部からの出血や排膿が見られるメスは、悪性腫瘍などの子宮・卵巣の病気に罹患している可能性があります。3歳以上の中高齢に多い病気のため、出血や排膿が見られた場合は早めに病院に連れて行きましょう。
手術ができる場合は子宮・卵巣の摘出をおこないますが、病気の進行度によっては治療が難しいこともあるため、早めに病院で相談してください。
気管支炎
不衛生な環境や温度管理が不十分な場所で飼育している場合は、気管支炎になりやすいといわれています。ハリネズミが気管支炎に罹患すると、くしゃみや鼻水が慢性的に出るようになるため注意が必要です。
また、くしゃみや鼻水は細菌性鼻炎の可能性もあります。症状や診断によっては、抗生物質の投与やネブライザーでの吸入で治療をおこないます。気づいたときは、早めに病院に連れて行きましょう。
歯周病
歯周病は、とくに高齢のハリネズミが罹患しやすい病気です。おもに歯肉炎や歯周炎などが一般的で、歯肉が腫れたり、歯が変色したり、抜けてしまったりすることがあります。また、口元から悪臭がすることもあるため、臭いにも注意してみましょう。
歯周病に罹患すると口腔内に痛みがあるため、ごはんを食べるのに時間がかかるようになったり、硬いフードを食べるのを嫌がったりするようになることがあります。場合によっては食欲が落ち、健康を損なうこともあるかもしれません。異常が見られたときや食べる量が減ったときは、動物病院に連れて行きましょう。
病院では、麻酔をかけて歯石を除去したり、抗生剤の投与をおこなったりといった治療を実施することがあります。歯周病の進行度によっては、抜歯することもあります。
なお、歯石を除去しても、その後また歯石はついてしまうため注意が必要です。こまめに口内もチェックして、ハリネズミが健康に生活できるようにお世話してください。
ハリネズミを病院に連れて行くタイミング
次のような症状が見られたときは、ハリネズミが何らかの病気に罹患している可能性があります。早めに病院に連れて行き、適切な治療を受けられるようにしましょう。
【病院にいくべきおもな症状】
- 体重が低下している
- フケが見られる
- 針が多く抜ける
- よだれが多い
- 目ヤニがついている
- 血尿・血便がある
- ふらつきが見られる
- 食欲が低下している
- 鼻水が濁っている
- 咳やぜいぜいする音が聞こえる
ハリネズミは病気に罹患すると体重が低下する傾向にあります。こまめに体重を計測し、病気を早期発見できるようにしてください。
ペット保険に加入してハリネズミの万が一に備えよう
ハリネズミが健康に長生きするためにも、何らかの異常や、体重低下、フケ・脱針などが見られるときは早めに動物病院に連れて行くことが大切です。ただし、病気の種類や進行度、治療法によっては高額な費用がかかることもあるため、事前に備えておきましょう。
ペット保険に加入していると、万が一のときに費用面での負担をおさえられる可能性がありますが、犬や猫のペット保険と比べると数は少ない傾向にあります。保険会社によって補償内容や保険料が異なるため、いくつかのペット保険を比較してご自身に合うものを選ぶことが大切です。
ペット保険の選び方や補償内容に悩んだ場合は、比較サイトの利用がおすすめです。比較サイトでは、そのサイトで紹介可能なペット保険を比較することができます。複数のペット保険の補償内容や保険料などを一覧で確認できるため、ご自身にあった保険を見つけやすいでしょう。
まとめ
飼い方や特性、性格などを理解すると、ハリネズミにとってストレスのない環境を準備しやすくなります。健康で長生きしてもらうためにも、ハリネズミが居心地よく過ごせるようにしましょう。
万が一に備えて、ペット保険に加入するのもひとつの方法です。病気の種類や進行度、治療法によっては、予想以上の費用がかかることもあります。ペット保険に加入していると費用が高いときに負担が軽減されるだけでなく、より気軽に病院を受診できるようになるため、早期発見・早期治療が可能になります。
また、ハリネズミは小動物やエキゾチックアニマル(犬猫以外に家庭で飼育できるペットたちを総称した呼び方)を扱う動物病院でしか診てもらえないため、健康なときから動物病院を探しておくことも大切です。家庭で定期的に体重を計測するだけでなく、病院で定期的に健診を受けると病気に早く気づける可能性が高まり、治療の選択肢も広がります。ハリネズミを飼うときは、病院と保険についても考えておくようにしましょう。
- ペット保険
-
ペット保険の見積(無料)・比較
詳しく見る
監修者情報
井上ひとみ
獣医師。住之江公園南トート動物病院副院長。幼少期から動物が好きだったため小学校では飼育委員をし、自宅では犬や猫、ハムスター、フェレット、うさぎ、ラットなどたくさんの動物たちと暮らす。大学在学時には一時的にタヌキを保護していた経験もある。大阪府立大学農学部獣医学科(現:大阪公立大学獣医学部・獣医学研究科)を卒業後は大阪府内の動物病院に勤務した後に友人と動物病院を開業。現在は保護犬5匹、保護猫2匹と一緒に暮らす。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2024年7月30日)
2406278-2406