マルチーズの特徴とは?なりやすい病気についても解説
マルチーズは古くから各国の王族や貴族に愛されてきた犬です。
見た目の可愛らしさに加えて飼い主や家族に一途な性格で、愛玩犬として日本でも人気のある犬種です。
この記事では、マルチーズの特徴となりやすい病気について詳しく解説します。
マルチーズはどんな犬?
マルチーズの性格
マルチーズは、明るく活発で遊び好きな性格で、さらに飼い主にも従順な犬種です。
家族や飼い主に一途な甘えん坊で、家族と一緒に過ごすことを好みます。
賢い犬種なのでしつけはしやすいものの、過保護に育てるとわがままになったり無駄吠えが多くなったりする傾向があるため、しっかり社会化をおこない甘やかしすぎないようにしましょう。
マルチーズのルーツ
マルチーズの歴史は古く、紀元前1500年頃にアジアから地中海のマルタ島に持ち込まれた犬がルーツといわれています。
なお、マルチーズの祖先の犬は中央地中海の港の倉庫や船倉に住んでいたネズミを狩っていたという説もあります。
マルチーズは船員のペットとして愛され、やがてヨーロッパへ渡り19世紀末には世界中で愛されるようになりました。
マルチーズの身体的特徴
マルチーズの被毛はシングルコート(しっかりしたオーバーコートのみ)で、抜け毛がほとんどなく伸びていくという特徴があります。
被毛の色は純白が基本ですが、淡い茶色やレモン色の毛色のマルチーズもいます。
体重は3 kg~4kgで、体高は20㎝~25㎝の小型犬です。
マルチーズは活発な犬ですが、ハードな運動は必要がなく日々のお散歩と室内の遊びで問題はありません。
マルチーズの特徴であるシルクのような美しい被毛は絡まったり汚れたりしやすく、きれいな状態を維持するためには丁寧なブラッシングやこまめなケアが必要です。
また、目の周りや口の周りが汚れやすいので、家庭犬として飼う場合は短めのスタイルにトリミングしてもらうとお手入れがしやすくなります。
マルチーズがなりやすい病気
マルチーズが他犬種と比較してなりやすい病気は、心臓疾患、とくに弁膜症で、その他には流涙症(りゅうるいしょう)や眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)などの目の疾患です。
また、耳が垂れていて蒸れやすいため外耳炎も多くみられます。
心臓疾患
心臓疾患は非常に多いため、マルチーズによくみられる弁膜症について解説します。
-
弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)
-
心臓は2つの心房(右心房・左心房)と2つの心室(右心室・左心室)の4つに分かれていて、2つの役割を分担しています。
心臓の左側の部分(左心房と左心室)は肺から酸素が多く含まれた血液を全身に届ける役割、心臓の右側の部分(右心房と右心室)は身体を巡って受け取った二酸化炭素が多く含まれた血液を肺に送る役割です。この2つの役割を担うためには血流は一方向に流れる必要があり、逆流を防ぐために心房と心室の間には房室弁という弁があります。
弁膜症は、この房室弁のうち左心房と左心室の間にある僧帽弁がしっかり閉じなくなることで血液が逆流してしまう病気で僧帽弁閉鎖不全症ともいいます。
僧帽弁がしっかり閉じないことで血液が逆流して一度に十分な血液を送り出せなくなるため、必要な血液量を送り出すために心臓が疲労し、さまざまな症状があらわれます。弁膜症は、疲れやすい、なんとなく元気がない、咳が出るなどの症状からはじまり、進行すると肺水腫(逆流した血液の影響で肺に水がたまること)になる、苦しくて横になれない、呼吸困難になるなどの重い症状になります。
弁膜症の治療は、血管拡張剤などの心臓の働きを助けて症状を緩和する内服薬を投薬する内科療法と僧帽弁を修復する外科療法があります。
なお、外科療法は専門的な技術が必要なため、獣医療では限られた施設でのみ実施可能です。
目の疾患
-
流涙症
-
流涙症は、涙の量が増える、もしくは涙がうまく鼻腔に排出できないことが原因で、目の周りが常に涙で濡れ目の周りの毛が茶色く変色する疾病です。
原因は、鼻涙管の閉塞、逆さまつ毛、異物、アレルギー性結膜炎、角膜の傷などが考えられます。
治療方法は原因によって異なりますが、異物や逆さまつ毛の除去、点眼薬の使用、アレルギーに対する食事療法や内服薬の投薬などの治療をおこないます。
また、鼻涙管の閉塞の場合は、全身麻酔下で鼻涙管の洗浄をおこなうケースもあります。
-
眼瞼内反症
-
眼瞼(まぶた)が眼球側に内転し、皮膚やまつ毛が眼球に接触する疾患を眼瞼内反症といいます。
内反の原因は、遺伝性、外傷や手術などの慢性的な炎症に伴って起こる瘢痕(はんこん)性、さらに眼瞼内反の二次的な変化でまぶたを動かす眼輪筋の緊張やけいれんによる痙攣(けいれん)性の3つです。
眼瞼内反の一番の問題点は、眼瞼内反により角膜の表面が傷ついて、悪化すると角膜潰瘍や角膜穿孔をひき起こすことです。また、涙が過剰に出ることで角膜障害と痛みが生じ、さらに眼瞼内反がひどくなるという悪循環に陥ることがあります。
幼若犬の場合は、成長に伴って自然に治るケースもあり、内反が軽度の場合は、角膜に接触しているまつ毛を抜き点眼薬で治療をすることで改善するケースもあります。
しかし、重度の場合は外科治療が一般的です。
耳の疾患
-
外耳炎
-
外耳炎とは、鼓膜の手前の耳道(外耳)に炎症が起こることをいいます。
かゆみや痛みが生じる場合が多く、耳の後ろをいつも掻いている、頭を振るなどの症状がみられます。
外耳炎の原因は、真菌や細菌感染、耳ヒゼンダニなどの寄生虫、アトピーやアレルギー疾患、内分泌疾患、異物、腫瘍などさまざまです。また、過剰な耳洗浄や綿棒を用いたセルフケアが原因となる場合もあります。
外耳炎の治療は原因によって異なりますが、基本的には点耳薬や抗生剤、消炎剤などの内服薬、駆虫薬の投薬など内科治療をおこないますが、耳道を切除する全耳道切除手術をおこなうケースもあります。
まとめ
マルチーズは、古くから現在に至るまで愛玩犬として愛され続けている魅力的な犬種です。
被毛のお手入れは少し大変ですが、しつけと社会化を怠らないようにすることで、家族に合わせた生活にも順応してくれる家族想いの家庭犬になれる犬種です。
- ペット保険
-
ペット保険の見積(無料)・比較
詳しく見る
ライター情報
獣医師大熊真穂
動物病院で臨床獣医師として勤務しながら、専門知識や経験を活かして各種メディアや個人サイトでライターとして情報を発信しています。ライフワークは「ペットと飼い主様がより元気で幸せに過ごすお手伝いをする」ことです。
ドリトルけいのいぬねこ健康相談室- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年12月19日)
2311050-2411