犬の寄生虫の種類や症状とは?原因や予防法についても解説
犬に寄生して、かゆみや炎症、下痢や嘔吐などを引き起こす寄生虫は少なくありません。場合によっては治療が長引いたり、重症化したりするケースもあります。また、犬から人間にうつって寄生することもあるため、注意が必要です。日頃から愛犬の様子をしっかり観察しておきましょう。
この記事では、犬の寄生虫の種類や症状とともに、その原因や治療法、予防法についてもわかりやすく解説します。愛犬の健康維持のためにぜひ参考にしてください。
犬の寄生虫の種類は大きくわけて2つ
犬の寄生虫は大きく2つにわけられます。
ひとつは体表や皮膚に寄生する「外部寄生虫」です。散歩の途中など屋外や、家の中でもつくことがあります。
もうひとつは動物の体内に寄生する「内部寄生虫」です。口から入ることもありますが、蚊などが媒介して体内に入り込むこともあります。
外部寄生虫と内部寄生虫、それぞれのよくある種類と寄生されたときの症状についてみていきましょう。
(1)「外部寄生虫」の種類と原因・症状
外部寄生虫のうち、代表的なものとしてノミやマダニなどがあげられます。いずれも草むらなどにいることが多く、夏場は散歩中についてしまうことが多いです。散歩から帰ってきたら動物用のブラシなどでブラッシングをするなどしましょう。また、冬場は室内が暖かいと発生しやすくなるため、基本的には通年予防を意識する必要があります。
■ノミ
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ノミは1~2mm程度の小さな寄生虫です。ノミが犬の体表につくと、ノミ本体だけでなく糞が発見されることもあります。ノミの糞は黒い粒々のような形で、被毛の根元に多くみられます。
ノミがつくと、かゆみや炎症を起こすことがあります。また、ノミに噛まれると瓜実条虫感染症などに罹患し、下痢などを引き起こす可能性もあります。ブラッシングをこまめにすることで、発見しやすくなるでしょう。
■マダニ
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マダニは吸血する寄生虫です。マダニの大きさは血を吸って大きくなる前は3~8mmほどになります。マダニに咬まれると、強いかゆみが生じたり、患部が腫れたりすることがあります。また、マダニが大量に寄生すると吸血量が増え、貧血を起こす可能性があるだけでなく、犬バベシア症やSFTS(重症熱性血小板減少症候群)のような命に関わる大きな病気を罹患する可能性もあります。
なお、マダニが寄生しているのを発見したときは、無理に取らないようにしましょう。無理に引っ張って取ると出血したり、マダニの胴体が千切れて頭部が体内にのこり化膿やウイルス感染を起こしたりする可能性があるため、ご自身で取るのではなく、動物病院に連れていきましょう。駆除薬などを用いて治療が行われます。
(2)「内部寄生虫」の種類と原因・症状
犬の寄生虫には、前述したノミやダニなどの「外部寄生虫」のほかにも、体内に寄生する「内部寄生虫」がいます。内部寄生虫は、ノミやマダニなどの外部寄生虫と異なり目に見えないため、感染を見過ごしやすい面があります。
内部寄生虫のうち代表的なものとしては、回虫(かいちゅう)や鞭虫(べんちゅう)、フィラリア、糞線虫(ふんせんちゅう)があげられます。
以下でそれぞれの寄生虫の特徴や寄生して引き起こす症状についてみていきましょう。
■回虫(かいちゅう)
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犬に寄生する「回虫」は4〜18cm程度の長さの消化管内寄生虫で、おもに口から入り込み、腸に寄生します。糞便中に回虫が混ざって出てくるため、こまめに観察することで早めに発見できることがあります。
回虫が寄生しても無症状のことがほとんどですが、子犬に大量寄生した場合は軟便や下痢、嘔吐などの消化器症状のほか、栄養失調や体重低下、貧血、皮膚のたるみなどの症状を起こすため注意が必要です。なお、成犬になれば回虫に対する抵抗性がついてくるため、回虫も成虫まで成長しにくくなります。一般的に回虫が犬の体内で成虫まで成長できるのは、6ヵ月以内の子犬までといわれています。
なお、口から入り込む感染のほかにも、感染経路には体内に寄生された犬が妊娠した場合、胎盤などを通して母子感染することもあります。
■鞭虫(べんちゅう)
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犬に寄生する「鞭虫(べんちゅう)」は、6cm程度の長さで、都市部よりも農村部に多い寄生虫です。屋外で過ごすことが多い犬は、比較的寄生されやすいといえるでしょう。
犬の体内に入り込むと、最初は盲腸に寄生しますが、寄生数が増えると結腸(大腸)にもみられるようになり、下痢を引き起こすことがあります。鞭虫が多数寄生すると、下痢、血便、排便の際のしぶりなどが生じやすくなります。慢性化するだけでなく、再発することもあるため、早めに動物病院に連れていきましょう。また、ひどい場合は死に至ることもあるため注意が必要です。
鞭虫に寄生されても、無症状あるいは軽い症状であれば駆虫薬のみで治療できることがあります。下痢などの消化器症状をともなう場合は、駆虫薬に加えて対症療法が必要です。
■フィラリア
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「フィラリア」は蚊の媒介によって犬の体内に寄生する寄生虫です。成虫になると長さ10~30cmにもなる白い長い寄生虫です。心臓に寄生し、寄生すると元気や食欲がなくなってしまうことや、咳、呼吸困難(肺水腫)や心臓の雑音、むくみや腹水などの症状がみられることもあり、死に至る場合もある危険な寄生虫です。
もしもフィラリアが寄生してしまったら、駆虫薬の投与をしますが、程度によっては外科手術で成虫を取り出します。
フィラリアの予防は、内服薬で実施することが一般的ですが、蚊が多い場所を避けて散歩したり、蚊が家の中に入らないように注意したりすることもフィラリアの予防につながります。
■糞線虫(ふんせんちゅう)
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糞線虫は、経口感染だけでなく経皮感染、粘膜感染する恐れのある寄生虫です。糞線虫は、成虫で体長約2mmと小さく、肉眼ではほとんど見ることができません。
都市部にはほとんどいないとされていますが、多くの犬と一緒に暮らしている環境では寄生していることがあるため、里親募集などで保護犬を引き取った場合などは注意しましょう。寄生している場合は無症状のケースもありますが、軟便や下痢が生じることもあります。
授乳期の子犬の場合は、経乳感染が生じることがあります。また、免疫力に問題のある犬は重症化しやすいため、より注意が必要です。とくに生後間もない子犬が感染すると急性出血性の腸炎(腸に炎症が起きること)が起きて命に関わる場合もあります。
糞線虫は、駆虫薬の投与により予防することができます。また、糞線虫の駆虫薬を予防に用いることもあります。疑わしいときは早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。
犬の寄生虫は人間にうつる?
ここまで、犬の寄生虫の種類や原因・症状について解説してきましたが、これらの犬の寄生虫が人間にうつる場合もあります。たとえば、犬の体毛に付着した回虫卵が、体毛とともに室内に落ちて、人間の口に入るケースなどです。
万が一、人間に回虫が感染すると発熱やせきのほか、体内のどこかにとどまり、さまざまな障害を起こすなど深刻な症状につながる可能性もあるため注意が必要です。また、寄生虫によって引き起こされる症状は、高齢者や小児のほか、風邪や病気などによって免疫力が低下している場合には重症化する可能性が高くなるため気をつけましょう。
ペットからの感染を防ぐにためには、人と動物は別の生き物だということを認識し、ペットとの間に一定の距離を保つことも大切です。一緒に寝たり、口移しで食べさせたりしない、動物に触ったあとは必ず手を洗う、ペットのトイレなどを清潔にするようにしましょう。ほかにも、寄生虫について正しい知識をもち、ペットからの感染が疑われるようであれば、早めに病院で受診するようにしましょう。
また、犬に寄生虫などの予防薬やワクチンを投与するなどして感染を防ぐことが、人間への感染リスクをおさえることにもつながります。そして、犬の健康を維持するためにも、犬にノミやマダニなどの寄生虫がついているときや、糞便中に寄生虫が見えたとき、下痢や食欲不振などの症状が生じたときは、放置せずにすぐに動物病院に連れていきましょう。
犬の寄生虫を予防する方法
寄生虫を予防する方法としては、おもに以下の3つがあげられます。
- 定期的に予防薬を投与する
- 年に一度は健康診断を受ける
- 衛生管理と健康的な生活
それぞれの方法について、詳しくみていきましょう。
定期的に予防薬を投与する
ノミやマダニなどの外部寄生虫だけでなく、回虫やフィラリアなどの体内に寄生する内部寄生虫も、ある程度数が増えて、症状が出てからでないとなかなか気づけません。
気づいたときには症状が重症化していて、外科手術が必要となる可能性もあります。症状が出てからではなく、定期的に予防薬を投与することが大切です。動物病院で獣医師と相談し、犬の年齢などに合わせた予防スケジュールを組んでもらいましょう。
年に一度は健康診断を受ける
回虫やフィラリアなどの内部寄生虫の早期発見、ノミやマダニなどの外部寄生虫の早期発見のためにも、年に一度は動物病院で健康診断を受けるようにしましょう。なお、健康診断やワクチン接種費用などについて保険は適用されませんが、愛犬の健康を維持するためにもできる限り健康診断を定期的に受けることをおすすめします。
衛生管理と健康的な生活
犬に体力がついていないと、寄生虫に寄生されたときの症状が重症化することがあります。体力や抵抗力を維持するためにも、運動習慣をつけて健康的な生活が送れるようにしましょう。
また、草むらや寄生虫に感染している可能性が高い野良・野生動物の近くにはいかせないこと、シャンプーなどをして体を衛生的に保つこと、食事を管理して健康な体をつくることも大切です。室内で犬を飼っている場合には、部屋を掃除して衛生的にすることでダニなどの発生をおさえましょう。
まとめ
愛犬が寄生虫に感染した可能性があると思われるときには、早めに動物病院に連れていき適切な治療を受けさせることが大切です。そのままにしておくと、犬の免疫力が低下してほかの病気も罹患しやすくなり治療が長引いてしまうことがあります。また、寄生虫の種類や症状の程度によっては重症化したり手術が必要になったりすることもあります。その場合、愛犬が苦しむだけでなく、飼い主の経済的な負担も少なくないでしょう。
万が一、動物病院などで治療を受ける場合、犬には公的な医療保険はないため基本的には治療費の全額が飼い主の負担となりますので注意が必要です。ただし、ペット保険に加入していれば自己負担額をおさえることができ、安心して治療を受けさせることができます。寄生虫をはじめ、ペットがさまざまな病気にかかるリスクに備えて、ペット保険への加入について検討してみましょう。
ただし、ペット保険は商品ごとに補償内容や保険料、保険金支払いの条件などが異なるため、いくつかの商品を比較することをおすすめします。なお、ペット保険の選び方がよくわからない、という場合には、各保険会社のウェブサイトや比較サイトを利用すれば、補償内容や保険料、対応しているサービスなどを確認することができます。とくに比較サイトを活用すると、複数のペット保険の情報を一覧で比べることができるため、ご自身にあった保険を選びやすいでしょう。
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監修者情報
獣医師嘉本浩之
さいたま動物病院の院長。麻布大学卒業後、獣医師免許を取得。ペッツネクスト株式会社代表取締役ほか、獣医神経病学会、日本獣医皮膚科学会など複数の学会に所属。メディアにも多数出演。
- ※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2023年6月5日)
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