フクロモモンガの飼い方や生態、注意点を解説(初心者向け)

フクロモモンガの飼い方や生態、注意点を解説(初心者向け)
公開日:2024年7月30日

モモンガにはいくつか種類があり、個人で飼育できるもの、できないものがあります。
現在、個人が飼育できるモモンガは「フクロモモンガ」が主流です。大きな目と小柄な体型が愛らしく、近年ペットとしての人気が高まっています。フクロモモンガを飼ってみたいけど、「飼うのは大変?」「どうやってお世話するの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、フクロモモンガの種類や生態、長生きするための飼い方、飼育に必要なものを解説します。フクロモモンガを大切な家族の一員としてお迎えしたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

モモンガとは?

モモンガとは?

モモンガは、手足の間にある皮膜を広げて滑空する動物です。ただし、モモンガには複数の種類があり、個人で飼育できるモモンガは限られます。
具体的にはモモンガは、以下の2つに分類できます。

【モモンガの分類】

  • 「げっ歯類」に分類されるモモンガ
  • 「有袋類」に分類されるモモンガ

ひとつは、リスやモルモットなどと同じ「げっ歯類」に分類されるモモンガです。もうひとつは、お腹に育児嚢(いくじのう)と呼ばれる袋を持つ「有袋類」に分類されるモモンガです。有袋類の仲間には、コアラやカンガルーなどがいます。

げっ歯類と有袋類のモモンガは、どちらも滑空(かっくう)するための皮膜を持っており、体つきは似ているものの分類上異なる動物です。

モモンガの種類

モモンガのおもな種類は、以下のとおりです。

タイリクモモンガ

タイリクモモンガ

「タイリクモモンガ」は、ヨーロッパから中国東北部、朝鮮半島、北海道などに広く生息するげっ歯類のモモンガです。ほかのモモンガと比べてやや大きく、体長は15cm~20cm程度あります。

タイリクモモンガは特定外来生物に指定されているため、原則として飼育はできません。従来は飼育が認められていましたが、日本に生息しているエゾモモンガと交尾することで、異なる種の雄と雌が交わってしまうおそれがあるため、現在新たに輸入することや飼育を始めることが禁止されています。

エゾモモンガ(げっ歯類)

エゾモモンガ(げっ歯類)

「エゾモモンガ」は、タイリクモモンガの亜種(同一種で、種をさらに細かく分けたときの分類が異なる)にあたるげっ歯類のモモンガで、体長は15cm~16cm程度です。北海道全域の平地や山間部に分布しており、札幌市内では森林公園や円山動物園の近辺に生息しています。ただし、生息数が少ないことから個人での飼育が認められていません。

アメリカモモンガ(げっ歯類)

アメリカモモンガ(げっ歯類)

「アメリカモモンガ」は、アメリカ合衆国からホンジュラスにかけて生息するげっ歯類のモモンガです。タイリクモモンガと比べると小ぶりで、体長は14cm程度です。アメリカモモンガはペットとして流通していましたが、人への感染症の原因となり得るため、現在は輸入規制の対象となっています。

フクロモモンガ

フクロモモンガ

現在ペットとして個人が飼育できるのは、「フクロモモンガ」が主流です。フクロモモンガは、カンガルーやコアラと同じ有袋類のモモンガです。げっ歯類のタイリクモモンガやエゾモモンガ、アメリカモモンガとは分類が異なります。

モモンガとムササビとの違い

モモンガとムササビとの違い

ムササビとモモンガの見た目は似ていますが、ムササビは、リスやネズミと同じ、げっ歯類の動物です。
また、身体のサイズも大きく異なります。皮膜を広げると新聞紙一面ほどの大きさがあるムササビに対し、モモンガは大人の手のひらほどの大きさしかありません。ムササビと比べて小型なモモンガですが、顔の面積に対して目が大きく、ぱっちりとしているのが特徴です。

ムササビとモモンガは、どちらも皮膜を広げ木々の間を滑空します。ただし、滑空できる距離は、身体の大きいムササビの方が長い傾向があります。

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フクロモモンガの飼育は大変?知っておきたい生態

フクロモモンガの飼育は大変?知っておきたい生態

フクロモモンガは警戒心が強く、懐くのに時間がかかります。また、フクロモモンガを診療できる動物病院はまだ多くありません。そのため、「フクロモモンガのお世話は大変」と感じる方もいるでしょう。「臭いが気になる」、「一定の場所で排泄をしない」など、悩みが生じる場合もあります。

フクロモモンガをペットとして迎え入れた後に飼い始めたことを後悔しないためにも、事前に生態を理解しておくことが大切です。

以下で、フクロモモンガの特徴、性格、寿命、鳴き声、オスとメスの違いを解説します。

フクロモモンガの特徴

フクロモモンガは、大きな目と耳、平たいしっぽが特徴の動物です。両脇に皮膜を持っており、それを伸縮させて木々の間を滑空します。平たく長いしっぽは、滑空する際に舵を取る役割を持ちます。

また、樹皮に穴を開けて樹液を出すための長い前歯も特徴です。前足の4番目の指は、樹の割れ目などにいる虫を掻き出して食べるために長くなっています。

身長、体重の目安はそれぞれ以下のとおりです。

【フクロモモンガの身長と体重のめやす】

  • 身長:約10cm~15cm
  • 体重:オス115g~160g程度、メス95g~135g程度

フクロモモンガは、木の上で生活する夜行性の動物です。オーストラリア、ニューギニア島、ビスマルク諸島の森林地帯や、温帯から熱帯の森林に生息しており、集団で過ごします。縄張り意識や警戒心が強く、甲高い警戒音を鳴らすこともあります。

フクロモモンガの性格

フクロモモンガは社会性が強いため、単独で飼うよりも複数で飼う方(多頭飼い)が適しています。ただし、オスは縄張り意識が強く喧嘩になる場合もあるため、オス同士を同じケージに入れないようにしましょう。繁殖を望まない場合は、オスとメスを同じケージに入れるのは避けた方が良いです。

また、警戒心が強いため、小さい頃からコミュニケーションをとると、人に慣れやすい傾向があります。

フクロモモンガの寿命

フクロモモンガの寿命は、5年~10年程度といわれます(野生下では5年~10年程度、飼育下では12年~15年程度ともいわれます)。
ほかの小動物と比べてみると、比較的長生きする動物であることがわかります。

フクロモモンガとほかの小動物の寿命の違い

小動物の種類 寿命
フクロモモンガ 5年~10年程度
(飼育下では12年~15年程度の場合もある)
ハムスター 2年~3年程度
フェレット 6年~10年程度
モルモット 5年~15年(平均10年)程度
出典:環境省「家庭動物等飼養保管技術マニュアル」をもとに作成

フクロモモンガの鳴き声

フクロモモンガは、鳴き声でコミュニケーションをとります。

鳴き方の違いで感情を察することもできます。たとえば、怖いときや威嚇しているときは「ジージー」「ジコジコ」、仲間を呼ぶときや寂しいときは「キャンキャン」や「アンアン」、触れ合っている際に気持ち良いときは「プクプク」「ププププ」と鳴きます。

フクロモモンガのオスとメスの違い

フクロモモンガは、臭腺(強い臭いの液を分泌する器官)が発達しており、とくにオスは臭いが強い傾向があります。

外見から判断する場合は、頭部や胸部などをみると見分けがつきやすいでしょう。オスは頭部や胸部などにある臭腺から出した液をこすりつけて臭いをつけます。そのため、頭部(額部分)や胸部に脱毛が起きる場合があります。

一方、メスはお腹に育児嚢(いくじのう)と呼ばれる袋があるのが特徴です。未熟なまま赤ちゃんを産み、育児嚢の中で育てます。

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フクロモモンガを飼う前に準備するもの

フクロモモンガを飼う前に準備するもの

フクロモモンガをお迎えする際に必要な飼育用品ですが、以下のものを準備すると安心です。

【フクロモモンガに必要な飼育用品】

  • ケージ
  • 寝床(木箱、巣箱、寝袋ポーチ、ハンモックなど)
  • 温度管理グッズ(温度計やヒーターなど)
  • 足場(ステージや止まり木など)
  • 餌入れ
  • 水入れ

フクロモモンガは、本来高い木の上で生活するため、ケージは高さが60cm以上あるものを選んだ方が良いでしょう。逃げ足が早いため、脱走しないよう網目が細かく、扉がしっかり閉まるケージを選ぶと安全です。

ケージの底には、排泄物の臭いなどを緩和させるために床材を敷きます。床材には、小動物用のペレットや木質のチップを選びましょう。

また、フクロモモンガは熱帯・亜熱帯で暮らす動物のため、寒さが苦手です。温度は24~28℃程度、湿度は45~55%程度が適しています。ケージ内に温度計を設置し、寒い時期は冷えないよう側面や背面にヒーターを用意しましょう。

比較的暑さには強いですが、暑過ぎる場合は熱中症に罹患する危険性があります。28℃を超える場合はエアコンが必要です。ただし、エアコンの風がケージに直接あたって冷え過ぎないよう注意してください。

水入れは、お皿のタイプだとひっくり返してしまうことが多いため、給水ボトルがおすすめです。

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フクロモモンガの飼い方

フクロモモンガの飼い方

フクロモモンガを飼育したいと考えている方に向けて、適した飼育環境やコミュニケーションの取り方、食餌の与え方を解説します。

フクロモモンガに適した飼育環境

前述のとおり、フクロモモンガの飼育に適した温度は24~28℃程度、湿度は45~55%程度です。本来、熱帯雨林に住む動物であるため、温度が低いと食欲が落ちて体調を崩すことがあります。直射日光を避け、寒暖差がない場所にケージを設置しましょう。音や振動にも敏感であるため、静かな場所を選ぶようにしてください。

また、群れで生活するため、数匹で飼育する(多頭飼い)の方が望ましいです。1匹だけで飼育する場合は、しっかり構ってあげないとストレスで自傷行為をおこなってしまう可能性があります。

フクロモモンガのとのコミュニケーションの取り方

群れで生活をするフクロモモンガは、コミュニケーションを大事にします。夜行性のため、昼間は静かな環境でしっかり休ませてあげましょう。慣れてきたら夜に1日2時間以上はふれあい、長く遊んであげてください。

遊んであげられない日でも声をかけて毎日コミュニケーションを取ることが大切です。そのほか、フクロモモンガをポーチのような袋に入れて首からかけると、飼い主さんのにおいを覚えてくれます。

フクロモモンガの食餌の与え方

食餌は1日1回、夜行性のフクロモモンガが活動し始める夕方から夜に与えます。

食餌の目安量は、体重の15〜20%程度です。主食として総合栄養食(モモンガ専用フード)を与えましょう。さらに、タンパク質と炭水化物をそれぞれ50%の割合で与えると良いとされています。

また、フクロモモンガは雑食性のため、動物性から植物性の食材までさまざまなものを食べます。食材の例は以下のとおりです。

フクロモモンガの食材の例

区分 食材の例
動物質
  • 昆虫食(蚕・蛹など)
  • 固ゆで卵
  • ピンクマウス
  • 赤身肉、ササミ肉など
植物質
  • 野菜
  • くだもの
  • 花蜜
  • 樹脂・樹液
  • ローリーネクター(花蜜食の鳥用餌)

樹脂や樹液が入手できない場合は、代わりにメープルシロップが利用できます。市販のメープルシロップを水で半分程度に薄め、給水ボトルなどで与えましょう。ただし、高温多湿の環境では発酵しやすくなるため、こまめに取り換えましょう。

フクロモモンガはさまざまな食材を食べることができますが、偏食で好きなものばかり食べる傾向があります。甘いものを好み、肥満や栄養性疾患になりやすいため、主食以外のものを与え過ぎないようにしましょう。

また、少量ずつさまざまな種類の食材を与えることが大切です。食べのこした場合は全て処分し、毎日新鮮な食餌を与えるようにしてください。

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フクロモモンガを飼育する際の注意点

フクロモモンガを飼育する際の注意点

前述のとおり、フクロモモンガは神経質でストレスに弱いため、飼育環境には十分な配慮が必要です。また、飼い始める前に以下2つの注意点も確認しておきましょう。

【フクロモモンガを飼育する際の注意点】

  • トイレのしつけができない
  • 診てくれる動物病院が限られている

フクロモモンガはトイレのしつけができない

フクロモモンガは排泄を特定の場所に決めておこなう習性がありません。

そのため、床材にウッドチップやペーパーチップ、牧草などを敷き詰めたペットシーツなどを敷くと掃除がしやすくなります。なお、新聞紙を敷く場合はこまめな掃除が必要になります。ケージの外に排泄する場合もあるため、周りの壁や床を養生するなどの対策をしましょう。

フクロモモンガを診てくれる動物病院が限られている

ペットとして人気が高いフクロモモンガですが、診察してくれる動物病院は、犬や猫と比べて多くありません。自宅から通える距離にフクロモモンガを診てもらえる動物病院があるのか、飼育前に確認しておきましょう。

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フクロモモンガの飼育にかかる初期費用の目安

フクロモモンガの飼育にかかる初期費用の目安

フクロモモンガの値段は、1万円~5万円程度が目安です。ただし、珍しいカラーは値段が高い傾向があり、10万円を超える場合もあります。

また、フクロモモンガを飼育するときに必要なケージや食器、トイレ用品などのトータル費用は、2万円~4万円程度です。そのほかに、フードや消耗品(床材や消臭スプレーなど)に毎月数千円かかります。

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フクロモモンガが罹患しやすい病気

フクロモモンガが罹患しやすい病気

フクロモモンガが罹患しやすい病気は、「自咬症(自傷行為)」や「ペニス脱」、「代謝性骨疾患」などです。

フクロモモンガが罹患しやすい病気

病気 症状 治療法
自咬症(自傷行為) しっぽ、陰部、胸部など、自分の体の部位を咬んでしまうことによって出血や皮膚の裂傷などが起きる
  • 傷口の止血、消毒、縫合
  • 抗生物質や痛み止めの投与
  • 去勢手術など
ペニス脱 陰茎が総排泄孔内に適切に収納されず、外部に露出したままになることで壊死などを起こす
  • 去勢手術
  • 陰茎切除など
代謝性骨疾患 不適切な食事によってさまざまな症状(痙攣(けいれん)、便秘、食欲不振、骨折など)が起きる
  • 食餌の改善
  • カルシウム剤の投与など

このほか、栄養性疾患に罹患したり、布や繊維でしめ付けられ、足先の壊死を引き起こしたりする場合があります。

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フクロモモンガのペット保険に加入して万一に備えよう

フクロモモンガのペット保険に加入して万一に備えよう

フクロモモンガは、適切な飼育環境で育てると比較的長生きする動物ですが、自咬症、ペニス脱、代謝性骨疾患、不意のケガなどで治療が必要になる場合があります。

万一に備えて、ペット保険への加入を検討すると良いでしょう。
フクロモモンガが加入できるペット保険は、犬・猫と比べると数は少ないものの、加入できるプランはあります。ペットには公的な医療保険制度がないため、診療にかかる費用は全額自己負担になりますが、ペット保険に加入すれば、治療を受けた際の自己負担をおさえられ、治療の選択肢も広がります。

ペット保険の選び方や補償内容に悩んだ場合は、比較サイトの利用がおすすめです。比較サイトでは、そのサイトで紹介可能なペット保険の中から比較することができます。複数のペット保険の補償内容や保険料などを一覧で確認できるため、ご自身にあった保険を見つけやすいでしょう。

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まとめ

モモンガと名の付く動物は、リスやネズミと同じ「げっ歯類」と、コアラやカンガルーと同じ「有袋類」に分類されます。このうち、個人が飼育できるフクロモモンガはぱっちりとした目が愛らしく、近年ペットとしての人気が高まっています。

警戒心が強く、懐くのに時間がかかりますが、社交性が高いため、しっかりコミュニケーションをとれば慣れていきます。ただし、ストレスがかかると自傷行為をしてしまう傾向があるため、十分な配慮が必要です。

ペットには公的な医療保険制度がないため、大切な家族の一員であるフクロモモンガが病気やケガをした場合、治療費は全額自己負担となります。病気やケガに備えて、ペット保険への加入を検討しましょう。

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監修者情報

井上いのうえひとみ

井上ひとみ

獣医師。住之江公園南トート動物病院副院長。幼少期から動物が好きだったため小学校では飼育委員をし、自宅では犬や猫、ハムスター、フェレット、うさぎ、ラットなどたくさんの動物たちと暮らす。大学在学時には一時的にタヌキを保護していた経験もある。大阪府立大学農学部獣医学科(現:大阪公立大学獣医学部・獣医学研究科)を卒業後は大阪府内の動物病院に勤務した後に友人と動物病院を開業。現在は保護犬5匹、保護猫2匹と一緒に暮らす。

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  • このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
  • 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。

(掲載開始日:2024年7月30日)
2024266-2406