シーズーを知る!べたついたり目が傷ついたりが多い?その対策は?
伴侶動物として根強い人気を誇るシーズー。一時期ほど多くはありませんが、それでも今なお人気は高く、飼われている方も多くいらっしゃいます。シーズーの特徴といえば全身を覆う長く美しい被毛ですが、なりやすい病気などはあるのでしょうか。
これから飼う方にもすでに飼っている方にも役立つ情報をお届けします。
シーズーのルーツと特徴
シーズーは、中国の王宮で長く飼育されていたラサ・アプソとペキニーズの混血により誕生したといわれています。シーズーは中国語でライオンを意味する獅子狗(シー・ズー・クウ)と呼ばれ、仏教の神の使者として大切にされました。
頭から尻尾まで美しく長い被毛で覆われており、目も被毛で覆われています。その被毛の美しさを保つためには毎日のブラッシングと定期的なシャンプーが欠かせません。
体重は4㎏~7.5kgと比較的幅があります。小さめの子でも骨格は意外とガッシリとしています。
性格は自尊心が強いですが、明るく遊び好きで、人間が好きな子が多いです。
平均寿命はおおよそ14歳前後とされています。
シーズーがなりやすい病気①角膜疾患
角膜とは眼球の表面を覆う透明な膜のことで、5層構造からなりその厚みは部位によっても異なりますが約0.6 mm~8mmほどです。
シーズーはまつ毛が眼球に向かって生えてしまうことが多く、また顔回りも長い被毛に覆われているため、まつ毛や被毛で角膜を傷つけてしまうことが多いです。
傷害の程度により、潰瘍になってしまうこともあります。
角膜潰瘍の診断はフルオレセイン染色という、黄色い色素を目に入れて青い光を当てると損傷部が濃い黄色に染まるという検査法、スリットランプという線状のライトを目の表面に当てる方法などで診断されます。
結膜炎をともなって目がショボショボしている様子がみられたら、病院で診てもらって点眼治療をした方がよいでしょう。目薬は抗菌剤・抗炎症剤・抗コラゲナーゼ剤(角膜実質の融解を防ぐ)など複数種類出されることが多いですが、いくつもの目薬を連続してさしてしまうと浸透する前に流れてしまうので、それぞれ数分空けるようにしてください。
治療用のソフトコンタクトレンズが用いられることもあります。
角膜潰瘍は進行すると、角膜穿孔(かくまくせんこうがいしょう)という角膜に穴が開いた状態になってしまい、そうなると点眼薬だけでは対応できないため外科手術が必要になることもあります。
ドライアイにもなりやすい
シーズーは乾性角結膜炎(KCS)という、いわゆるドライアイにもなりやすい犬種です。その原因の多くは自己免疫性だといわれています。
ほかにも先天性・神経性・感染性・外傷性・内分泌疾患などが原因になることもあります。涙の量が少なくなることで、目の表面の光沢がなくなり、角膜や結膜の炎症を起こし、慢性的な角膜潰瘍に進行することもしばしばです。
さらに慢性化すると角膜は線維化し、色素沈着して分厚くなります。診断にはシルマー涙液試験という、下眼瞼に目盛りが書かれた細い紙を引っ掛けてその刺激により涙がどれだけ出るかという方法により診断されます。
治療には、涙液刺激薬としての免疫調整剤や、涙液代用薬としてヒアルロン酸点眼などが用いられ、角膜潰瘍もある場合には前述した複数種類の点眼剤が用いられます。
シーズーがなりやすい病気②本態性脂漏症
先天的に皮膚の角化亢進や皮脂の分泌が過剰な犬に起きる、皮膚のコンディション異常のことを本態性脂漏症と呼びます。ウエストハイランドホワイトテリアや、シーズーにとくに多くみられます。
本態性脂漏症には以下があり、日常生活にもっとも支障を来たすのは、③の脂漏性皮膚炎です。
- ①乾性脂漏症:皮膚が乾燥してフケがたくさん出る
- ②油性脂漏症:皮膚や毛がべたつき、独特の臭気を放つ
- ③脂漏性皮膚炎:ワキや股などの擦れるところ(間擦部)に油性脂漏と皮膚炎を伴う
③の脂漏性皮膚炎では、マラセチアという真菌(カビの仲間)の増殖が起きることで、皮膚炎が悪化することが多いです。マラセチアは健康な犬の皮膚にも存在する常在菌ですが、脂を好むため、皮膚がべたべたしている犬では増加する傾向にあり、増加したマラセチアによりさらに脂の分泌が促進され、皮膚炎が悪化するという負のスパイラルが起きてしまいます。
また、ブドウ球菌という細菌による感染症も合併することが多いです。
治療としては、抗炎症薬により炎症やかゆみをおさえ、抗真菌薬・抗菌薬のシャンプーや内服薬などでマラセチアやブドウ球菌をコントロールします。これらの菌の増殖はあくまでも二次的に皮膚の状態を悪化させるものであり、根本的な原因である脂漏性皮膚炎の管理ができていないといつまでもよくなりません。
継続的なスキンケアが必要
本態性脂漏症はいずれも先天的なもので、根治的な原因治療は困難です。若齢から発症し、加齢とともに範囲が広がっていきます。
一般に乾性脂漏症は冬に、油性脂漏症と脂漏性皮膚炎は夏に悪化する傾向にあり、良好な皮膚の状態を保っていくには、季節に合わせたシャンプーなどによるスキンケア、場合によっては内服薬の投与が必要になります。適切なスキンケアができていれば、生活の質を充分に保つことができるでしょう。
逆にいうと、放置して慢性化してしまうと、皮膚の構造が変化し、皮膚の色が変わってしまったり(色素沈着)、象の皮膚のように分厚くなってしまったり(苔癬化)します。
こうなってしまうと、綺麗な皮膚にするのに時間がかかったり難しくなったりしてしまうので、変だなと思ったら早めに病院で相談するようにしましょう。場合によっては、皮膚科の先生にセカンドオピニオンを求めてもよいかもしれません。
シーズーがなりやすい病気③クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
腎臓のそばにある副腎という臓器からは、コルチゾールというホルモンが出ており、体内の恒常性を保つのに役立っています。クッシング症候群とは、副腎が腫瘍化、もしくはコルチゾールを分泌するよう指示する脳下垂体の腫瘍・過形成によりコルチゾールが出過ぎてしまう病気になります。
発症してすぐに死んでしまうような病気では基本的にありませんが、症状として多飲多尿・多食・腹囲膨満・皮膚が薄くなって血管がみえてくる・皮膚が黒ずんでくるなどがみられるようになります。
このような症状がみられた上で、一般血液検査で肝酵素値の上昇などがみられたらクッシング症候群を疑い、ACTH刺激試験という検査がおこなわれます。
この検査によりクッシング症候群の疑いが強まったらエコーやCTを用いて、副腎腫瘍と脳下垂体腫瘍・過形成のどちらなのかを判断し、治療計画を立てます。脳下垂体が原因であることの方が多く、その場合は内服薬によりコルチゾールの分泌をコントロールします。副腎腫瘍の場合は外科手術が選択されることが多いです。
まとめ
いかがだったでしょうか。角膜疾患・脂漏症・クッシング症候群はいずれも命に関わる可能性は低いですが、生活の質を大きく下げてしまうものになるので、早期発見と対策が必要なものになります。
日常的なケアと必要に応じた治療により、シーズーとの楽しい生活をお送りください。
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ライター情報
獣医師長尾大喜
- 所属
- ラパン動物病院
- 略歴
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1994年 静岡に生まれる
2012年 北里大学獣医学部獣医学科に入学
2018年 獣医師国家資格取得
2018年よりラパン動物病院に勤務
- 所属学会
- 日本獣医エキゾチック動物学会、日本獣医がん学会
- 資格
- 獣医師免許、ロイヤルカナン栄養管理アドバイザー、ヒルズフードアドバイザー
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(掲載開始日:2023年12月12日)
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